きみの血を
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
きみの血をの総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
全1件 1~1 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
手紙や手記を通してジョージの過去や内面を知っていくので独特の雰囲気がありました。 | ||||
| ||||
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
在日米軍基地で兵士のジョージ・スミスは郵送しようとした書簡の文面を質された途端に異常行動をとり始める。ジョージは上官を殴りつけた結果、本国アメリカへ送還されて精神科医のフィリップ・アウターブリッジ軍曹の診断を受けることになる。果たしてジョージが出そうとした手紙には何が書かれていたのか…。 --------------------- この小説はアウターブリッジ医師と、彼にジョージの診断を命じたアル・ウィリアムズ大佐の間に交わされる往復書簡、そしてジョージ自身の手記を中心に構成されています。 シオドア・スタージョンといえば、ここ10年ほど『不思議のひと触れ』などの新訳などが出て日本でも再び注目を浴びるようになったSF作家、幻想作家です。ですが、この『きみの血を』は、古なじみであることをうかがわせる医師と大佐の手紙のやりとりを読んでいても、どこがSFなのか、なにが怪異譚なのか、そもそもお話は一体どこへ向かっていくのか、なかなか判然としません。そうこうするうちにジョージ自身の不幸きわまりない生い立ちが綴られはじめ、両親の死や叔母夫婦に引き取られた幼少期などは同情に値するとは思うものの、これまた何がこの物語の要諦であるかが不透明なままです。 むしろこの語り手たちが――物語の開巻部で「これは作り話(フィクション)」だと声高らかに宣言していたとはいえ――<騙り手>でなのではないかという疑念が読み手の私の中に徐々に湧き上がってくるのが分かります。<フィクション>を前にして読者が当然持ち合わせるべき心構えを根底から否定されるような不思議な気分に襲われます。 そして終盤、ジョージがしたためた問題の手紙の文面が明らかにされるのですが、その内容自体はさして読者に驚きを与えないでしょう。むしろジョージが年上の逢引相手であるアンナとの間でどのような行為に及んでいたのかが、それとなく示唆されるくだりに至って、そのおぞましさに衝撃を覚えるはずです。その行為はこの小説のなかでは明確には書かれていません。そのことをアンナから聞き取ったルーシー・クイッグリー譲の報告書簡に暗に示されるだけ――「この行為は二十八日の周期でもたれます。ジョージはきっと、動物的な嗅覚によってそれを嗅ぎあてたのでしょう。」(217頁)――ですから、このくだりを読み逃すと物語の核心を取りこぼすことになります。 この小説がアメリカ本国で発表されたのは1961年です。当時このジョージの行為-―念のために言うと、吸血行為ではありません――を法的に厳しく罰していた州は多かったはずです。今もってこれを禁じている州がわずかに残っているとも聞いています。そうした法律のない日本でもその行為は異常なものとみなされるでしょうが、禁断の行為だからこそ、それはどことなくタナトスと背中合わせであるがゆえの甘美なエロスを感じさせる要素があるのかもしれません。<異常>が与えてくれる甘美を描くこの小説は確かに異様ではあるけれども、実は<生>を賛美する、すぐれた寓話なのではないかという気がしてきます。なかなか手ごわい怪異譚です。 最後に、翻訳について付記しておきたいことがあります。 頁を繰り始めてすぐ、この翻訳が異常ともいえるほどに読みやすい、流れるような和文で綴られていることに気づきました。翻訳者の山本光伸氏の名にはお目にかかった記憶がありませんでしたが、検索してみたところ、独自の翻訳学校を設立されたベテラン翻訳者だと知りました。同氏には『誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか』と『R・チャンドラーの『長いお別れ』をいかに楽しむか―清水俊二vs村上春樹vs山本光伸』という翻訳論(ともに柏艪舎刊)に関する著作があるそうで、機会があればぜひ手にとってみたいと思いました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[?] ネタバレを表示する | ||||
---|---|---|---|---|
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
実は、他のスタージョンの短編集を途中で投げ出してしまった前科 を持つ私ですが、本作は普通に楽しめた気がします。 私にとって本作は、ジョージの行動-コップを握り潰して自らの血 をすするに至った謎の真相にせまるミステリーとして読めました。 彼は本当にヴァンパイアなのか、それとも精神を病んでいるのか、彼の著した(達者でありながらどこか不完全な)回想録と、軍医に よる心理テストによって徐々に明らかにされていきます。 ピュアな物語であると同時にダーク。ホラーでありミステリー。 独特の雰囲気が印象に残る作品です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
いやあもう、困るね、こういう洗練された作品読んじゃうと。困る困る。めっぽう面白くて、なおかつ、その面白さを他人に伝えようとするとネタバレになってしまう、というのも困る一因なのだが、それ以上に、この作品が非常にユニークな存在であり、作品の存在自体が、ジャンルとかカテゴライズとかをキャンセルしまくっているから、非常に説明がしづらい、というのもある。 このあたりの老練さは、流石にスタージョンってところですか。 サイコ・ホラー? まあ、その要素もあるけど。 吸血鬼物? 間違いではないはな。 ミステリ? 謎解きは、あります。 入り組んだ構成の現代小説? そういう側面もある。 そして、そのどれとも微妙に違う、という感触もあるんだよなあ。 ページ数の半分以上を占める、「ジョージ・スミスの回想録」は、一見地味で起伏がない半生記のように読めるんだけど、前後の挿入される「精神科医」と「大佐」の書簡とかから、なぜその「回想録」が書かれることになったのか、実際に書いているの人は誰なのか、その「回想録」にある「欠落」とはなにか? とかいった情報が行間にじわじわと沁みてきて、「ジョージ・スミス」という人間のそれまで見えなかった「実像」が徐々に明らかにされていく様子とか、このあたりの「暗示/明示」の匙加減といったら、もう、「メチャ巧!」の一言に尽きる。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
軍の兵士が恋人に出した手紙が検閲にひっかかり、 彼は医師のカウンセリングを受けることになる・・・・彼の不思議な生い立ちが不思議に思えない。 スタージョンの書き方が見事。 ラストは不思議で奇妙で印象深い。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 9件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|