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バサジャウンの影



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【この小説が収録されている参考書籍】
バサジャウンの影 (ハヤカワ・ミステリ1914)

バサジャウンの影の評価: 5.00/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

女性捜査官がバスクの森で発生した猟奇的連続殺人の謎に挑むスペイン発のミステリ小説

2012年、スペイン北部バスク地方のバスタン渓谷で連続少女殺人事件が発生する。ナバラ州警察の捜査官アマイア・サラサルは地元エリソンド出身であることを理由にこの事件の捜査の陣頭指揮を命じられる。久しぶりに叔母エングラシのもとに夫ジェームズとともに身を寄せながら捜査にあたるが、さらに新たな犠牲者が出る。地元の人々はこの奇怪な事件を、バスク神話の精霊バサジャウンの仕業ではないかと噂し始める…。

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 本国スペインでは100万部のヒットとなり、世界30カ国以上で翻訳出版されているというミステリ小説です。
 犠牲者である少女たちは全裸にされ、恥部の上にはバスク伝統の焼き菓子チャンチゴリ(txantxigorri)がひとつ載せられているという異様な事件が続きます。アマイアは米国クワンティコでFBI捜査の研修を受けたこともあるという理論派の捜査官ですから焼き菓子の成分を科学分析するといった理詰めの捜査を進めていくのですが、その一方で、伝説の怪人バサジャウンやエングラシ叔母さんの謎めいたタロット占いといった超自然的な現象にも翻弄されていきます。(バサジャウンは身長が2メートル半もある原人で、姿を見せることが稀な森の番人(el guardián invisible)とされる存在。)さらには、二人の姉が今も暮らす故郷で、長く封印していた幼いころのおぞましい体験の記憶に再びさいなまれることになります。
 正統派の警察小説であると同時に、主人公の家族との葛藤の物語、そしてヨーロッパとは異質な文化と言語をもつバスクの地で現実と幻の境が徐々に薄れていく様を楽しむ小説といった具合に、一冊で様々なジャンルを楽しむことができる一冊です。

 白川貴子氏の翻訳は大変読みやすく、このミステリ小説を見事な日本語に移し替えてくれています。監察医のサン・マルティンが「わしもソフィアと同じことを話していたんじゃよ」と言ったり、姉ロサウラが「ばかなことをお言いでないよ」とか「自分の部屋にもっておいき」と言ったりする点は、どちらもおとぎ話のような古臭い口調になっていて2012年の物語にはふさわしくない気がしましたが、全体的には、ページを繰る手を妨げることのない日本語になっていて助かりました。400頁超でしかも上下二段組というこの大部の小説を、おかげで難なく読みこなすことができました。

 本国スペインではアマイアを主人公とするバスク・ミステリはこのあと2作が出版されています。この『バサジャウンの影』の最終行に魅せられた私は、続編2作がハヤカワ・ミステリで翻訳出版されることを強く期待します。
 また今年2017年3月にはスペインで映画化作品が公開予定です。すでに2分程度の予告編がインターネットで公開されていて、精悍であると同時にどこか脆さを感じさせるアマイアの姿を見ることができます。演じているのは自身バスク地方出身の女優Marta Etura。機会があればぜひ見てみたいと思います。

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 今後増刷される際、あるいはひょっとしたら文庫化される際に修正されることを期待して、誤字脱字、そして気になる言葉が使われている箇所を以下に指摘しておきます。

*135頁:「ホワイトボート」とありますが、正しくは「ホワイトボード」です。

*252頁:アマイアが被害者の遺族に「娘さんの死体が(発見されました)」と語りかけるくだりがありますが、アマイアのように思慮のある捜査官ならば、遺族に対しては「死体」ではなく「遺体」という言葉を使うはずです。

*382頁:「混乱を洗い流してくれる洗礼になればちょうといいと思い」とありますが、正しくは「混乱を洗い流してくれる洗礼になればちょうどいいと思い」です。「と」の字に濁点が必要です。

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 もう一冊スペインのミステリ小説を紹介しておきます。

◆ジョルディ・ヨブレギャット『』(集英社文庫)
:19世紀のバルセロナを舞台に、猟奇ミステリー、ゴシック・ホラー、スティーム・パンク、ロマンスと様々なエンタメ要素を盛り込んだスペインの小説です。
バサジャウンの影 (ハヤカワ・ミステリ1914)Amazon書評・レビュー:バサジャウンの影 (ハヤカワ・ミステリ1914)より
4150019142
No.1:
(5pt)

スペインのベストセラーミステリ

スペインではベストセラーになって、映画化もされているというミステリ・シリーズの第1作。
バスク地方のさらに山奥の地方で起きた連続殺人を追う、地元出身の女性捜査官。
いろいろあるが、最後の1行が強烈に印象に残った。
次作に期待したい。
そして、タイトルにもなっている「バサジャウン」
世界各地にイェティとかビッグフットとか野人とかヒバゴンとかいるわけだが、いわばそのバスク版。
目撃談も多いそのバサジャウンが、登場するのかしないのかは、読んでもお楽しみ。
バサジャウンの影 (ハヤカワ・ミステリ1914)Amazon書評・レビュー:バサジャウンの影 (ハヤカワ・ミステリ1914)より
4150019142

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