■スポンサードリンク


夏の裁断



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
夏の裁断

夏の裁断の評価: 3.16/5点 レビュー 25件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.16pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全25件 21~25 2/2ページ
<<12
No.5:
(3pt)

良い小説だ

本を裁断してスキャンして機械が読み取ってデータ保存するってことでいいのかな?これが感覚的によく分からなかった。紙の本が無くなってしまうこと(を示唆しているが)が嫌で仕方ないとか、そういう話でも無いらしい。
 裁断というタイトルの通り、なんだかとても繋がりの悪い話だと思った。

 以上少々ピントがズレたことを書いたかも知れません。

 しかし、島本理生は良い小説家だと思う。刊行中の河出版日本文学全集で春色梅児誉美の口語訳を島本が担当する、つまり池澤夏樹は十分に島本を認めているのである。

 おしゃれな屋敷に住む西藪さんのところでごちそうになるのだが、自信満々で出された料理が全然おいしくないというのが結構なインパクト。実父が母と別れた後も、母の経営する店に飲みに来るというのもいい。猪俣君が帰るかと思いきや絵を描き始めるなんてのもまさに純文学テイストじゃないか。

 ま、これが芥川賞というのが無難だったと思います。好きか、と訊かれれば好きではないんですけどね。これが受賞して文藝春秋に載る、というのが従来の形なのではないでしょうか?
日頃本読まない人が又吉の『火花』や羽田の『スクラップ…』を手にとって、純文学とはこんなモノかと自分に言い聞かせる姿は悲劇です。本作を芥川賞受賞作として世に問う意味はあったと思います。
夏の裁断Amazon書評・レビュー:夏の裁断より
4163903240
No.4:
(1pt)

シンデレラの三人目の姉

柴田さんと飲み終わった後、謝りのメールを送る千紘。柴田さんからの返信を読んで怪訝な千紘はおののく。

「人間同士ですから、どんなことがあっても僕はいいと思っているんです」

千紘の指す‘悪魔’とは理不尽で無様にもほどがある人間でもない、ひたすら怯える存在。
登場人物(特に千紘)の心情が記憶に近く手に取れるように目に浮かび、その表現は文学的形式として、あどけない少女のような比喩に、床をのた打ち回る書き方は分かりやすく評価できる部分、特に’横暴’の象徴である柴田さんの肖像は見事。

しかし、僕が残念に思ったのは島本理生自身のTwitterでの言動。
以下、本作に対する彼女のツイート。

「基本的に作者が語りすぎるのは読者にとってよくないと思うのですが、過去の作品からの流れもあるので、ちょっとだけ『夏の裁断』に絡めつつ触れておきます。『夏の裁断』でのラストの教授の介入について。たしかに賛否分かれるところだと思いますが、もともと臨床心理学科であった主人公がそちらに救いを求めるのは、個人的には不自然な展開ではないと思います。また性的な心的外傷は、お金や時間が許すなら、専門的な知識のある相手に頼ったほうがいいという、私自身の考えもありました。過去の積み重ねで何重にも混乱した主人公が自力で解決しようとしたら結論を間違える可能性が高い。また相手を好きなほど主観的になって傷つけあい、責められたといっそう口を閉ざすこともある。(その象徴としての猪俣君です)教授の後半の台詞は『夏の裁断』の肝です。むしろ物語としては傷であっても、2人の「意味」に関する言及は本作で一番伝えたかった部分です。そして、その台詞が言える相手はやっぱり教授であったと思います。」

僕は小説を読んでいる途中にこのツイートを見て本を閉じる前に冷めた。本末転倒とはこのことだ。まだこの小説を手に取っていない人、熱心なファンもあっけにとられるいわゆる‘あとがき’彼女が本作に込めた熱意が作風同様ひたむきで純情に写るが単純に本作はこれまでの島本理生作品の系譜通り感傷的な切なさのみ。読書離れは止まらない。作家がいて読者がいるのではなく、読者がいて作家はいる。

人間同士ですから、どんなことがあっても僕はいいと思っているんです。
夏の裁断Amazon書評・レビュー:夏の裁断より
4163903240
No.3:
(5pt)

本物の芸術作品

今回の芥川賞受賞作二作品とは比ぶべくもありません。うますぎます。一流の職人技を感じます。抑制のきいたすっきりした文章、現実から回想へのスムーズな移行、読んでいて安心感を覚えます(内容に関する感情は別にして)。ここ数年の芥川賞受賞作と比べても秀でている作品だと思います。なのにどうして受賞できなかったのでしょう。本作品には反社会的テーマが潜んでいるからでしょうか、それとも芸術性より利益性、文章力より集客力を重んじる文学業界の失態あるいは凋落なのでしょうか……。文学に限らず、本物や優れたものが正当に評価されない日本社会の現状が悲しいです。
夏の裁断Amazon書評・レビュー:夏の裁断より
4163903240
No.2:
(3pt)

純文学の存在意義

ことわっておきますが、私は著者の熱心な読者ではありません。
が、著者が過去何度も候補にあがっていたのぐらいは知っていました。
本書をさっそく手にとったのは、「火花」も本書も実際に読んでみて
自分の審美眼のほどはいかに?という下世話な関心からのみでした。
で、両方読んでみて・・・
純文学という営みにまだ一遍の価値を認めるのであれば、
やはり火花よりも本作を選択するのが妥当だと素直に思えました。
逆にいうと、プロの作家(選者)とは自分の評価はずいぶんちがうん
だなあ~と、結構、自信をうしないました。
芥川賞は表面的な構成力や文章力の巧拙だけで決まるもの
だとはおもいませんが、ベースの技量としては圧倒的だと思えます。
もっとも、文学史的にどうかといわれると、両作品とも画期
というほどのインパクトを感じはしませんでしたが・・・
結果としては、TVでの話題ぶりを目にして、正直、かなり著者
に同情せざるをえなかった。「純文学」の領域を信じ、そこへ
自分なりの痕跡を刻もうと志す作家さんにとっては、芥川賞と
いうのは、やはり今だに特別な思い入れがあるんじゃないかと
思うからです。

「どちらかを捨てなきゃならない」または、「どちらがもう
一回読み返してみたいか?」ととわれたら、圧倒的に本作の
ほうが、「手元に残しておきたい」「よみかえしたい」になります。

著者にとっては、こうしたレビュ(比較)は迷惑千万なのかもしれ
ませんが、現実的に本を手にした動機、その顛末という意味でのレ
ビュをするとしたら、このような形にならざるをえませんでした。
向田邦子が直木賞で火花が芥川賞か・・・時代の刻印?
夏の裁断Amazon書評・レビュー:夏の裁断より
4163903240
No.1:
(5pt)

こちらが芥川賞をとるべきだった。

芥川賞がおかしいのは芥川賞の伝統だが、今回はこれがダントツの出来で、受賞すべきはこちらであった。ダブル受賞なのに落とすなんて信じられない。純文学というのは、人間のこういうやや無気味で理解不能な行動を描くのが本義である。
夏の裁断Amazon書評・レビュー:夏の裁断より
4163903240

スポンサードリンク

  



<<12
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!