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ヒッキーヒッキーシェイク
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ヒッキーヒッキーシェイクの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.66pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全39件 1~20 1/2ページ
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面白い小説だった。 読んで損はない作品。 著者・津原泰水さんのご逝去が残念すぎる。 | ||||
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曲者心理カウンセラーが、引きこもりの若者とウィザード級の超ハッカーとをつなげて活躍させるストーリー。それぞれの事情が断片的にパッチワークされていて、最初は全体像や個々の関係性をつかみにくい。でも、津原作品としては安定して読みやすい出来。 引きこもりのゴールを、社会に復帰することとせず、それぞれの生き方を見つけることでOKとしたところがよい。ほんの少し社会とのつながりがあれば、居心地のいい独りぼっちだってアリだよ、という主張が心地よい。 ただし、引きこもりの原因に必ず障害やいじめがあったというのはいかがなものか。確かに現実的にその比率は大きいが、最近の引きこもりには、無気力系やゲーム依存系が無視できない割合を占めてきている。 | ||||
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一気呵成に読んだ... 自分ではめずらしく2回読み.... 終盤「同じくらい○○っ〇います」 ぐっ..と来た。 | ||||
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申し訳ないけれど、こんなに良い話だとは、思ってなかったです (ごめんね、津原さん) タイトルや表紙が、いかにも軽快なイメージだから、音楽にまつわる青春モノかと勝手に思いこんで、読み始めてましたから 良い意味で裏切られました 読後、心がほっこりと温まりました 「ヒッキー」って、引きこもりの意味だったのですね あとがきに「hikikomori」がオックスフォード英語辞典にも載ってる万国共通語と化してるとあり、驚きました 津原さんの小説を読むのは、ブラバン以来でしたが、これは、私にとっては運命的な出会いの一冊になりました …と申しますのは、我が家には、発達障害と健常の兄弟がいて、ジェリーフィッシュと竺原の関係が、他人事には思えませんでした 関わりたくても上手く関われない関係って、もどかしいのでしょうね うちの場合は、健常の兄弟は、学生時代から障害のある方を相手にするボランティアに精を出していました 何とか、アイツを理解したいという気持ちの表れだと、親は解釈しておりました 竺原のような人は、実際にいらっしゃることでしょう 説得力があります ヒッキーさんたちも、好きでヒッキーさんやってるわけではなくて、誰かが、ほんの少しだけ手を差し伸べてくれたら、楽しい事を共有し合える仲間が出来るのではないでしょうか? この本を読んで、そんな希望を抱きました ヒッキーさんたちの未来に幸あれ! | ||||
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不思議に爽やかな読後感! 僕はふだん、話を理解しながら読み進め、展開を想像して楽しむことが多いけど、この作品に関しては次に何が書かれるかさっぱりわからないまま最後まで読まされてしまう。情報量が少なく、頻繁に切り替わる視点と舞台。いつまで経っても明らかにならない人物の造形と物語の全容。これが、イライラしつつも心地よい。 引きこもりたちがネットを通じて繋がり合う、「生きづらい者たちの文化祭」。とてもとても好き。 | ||||
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モノを創れる、てのは呪われてるってことだなって思いました。 初めて読む方→低評価は大半「最後まで読めなかった」というものですね。 なるほど、分かりやすい対立構造や波乱、アクシデント、カタルシス、ドラマを期待する読者には読みにくいかもしれないです。 中盤以降が尻すぼみというか、肩透かしに感じるかもしれません。 僕はそこがしかし、この作品の勘所というか、「社会」と「ものを作るということ」をリアルに描ききるために必要な平坦さだと感じました。 「引きこもり」という設定は大して重要じゃないというか、デフォルメされた結果じゃないかなと。日本人なんてその実相は大半、作中の彼らと同じ「大切な何かの幻想を追う、無自覚な異端かつ精神的な意味での引きこもり」なんじゃないかと思うんですけどね。彼らが仕事を最後までできたのは、実はこの物語では「共同体(チーム)という呪い」の祝福を受けたせい。個人的にはそんな感想です。 短編のファンの方→が、低評価を付けるとすれば頷けます。本当に作風の幅が広い人ですね。 個人的にはスキです。 が、人に勧める場合最初の作品ではないです。 青臭い人、心の若い人に読んでほしいです。良い意味で。 | ||||
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近藤ようこ「五色の舟」の原作者で気に入っていたがSFMで読むぐらいだった。 読んでみると引きこもり達が主役でSF濃度はすごく低いけれども面白いし、 読後感も良いが、JJの症状からこれからどうしていくのかちょっと心配だ。 | ||||
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文庫化の経緯を赤旗書評欄で読み、即ダウンロードしました。若い人向けではあるが、実際に支援事業にあたっている人にも読んでほしい。 | ||||
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現代で小気味の良さとサスペンスの両方を楽しみたいと言われたら、おススメしたいストーリーです。 | ||||
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久々に津原さんの小説を読んだ。不幸な話題から手に取ったが、バレエ メカニックの複雑な雰囲気は 保ち尚且つとても読みやすい技術を駆使し、どえらいものを掴んでしまった感がある。引き込まれ現実から乖離しないため意図的に休み休み読まないと、 魂を持って行かれそうで危なかった。 中盤からは、外で読むと涙が出そうで。 ある種の人を惹きつけてやまない本だが ガガガとかハヤカワでしかマーケティング対応 が難しいだろーなと。 | ||||
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この作家の作品は過去に「バレエ・メカニック」を読んだだけです。 「バレエ・メカニック」は私が勝手に橋本治の初期傑作「暗野--Black Field」とのアナロジーで読んでしまい、思っていた方向と違い肩透かしを食った気がした、という不幸な読み方をしてしまったので、好みに合いそうなものがあればまた読みたいと思っていました。というわけで、出版をめぐる騒動以前に文庫化を待っていた作品です。 で、本書ですが「バレエ・メカニック」のような神経質な印象の文章とは趣が全く異なり非常に読みやすいです。主要登場人物の年代と、根本のところで善意を感じさせるストーリーは、ラノベではないにせよYA向け作品という印象ですが、エンタメとしての魅力は十分にあります。 ただ文庫版編集者の帯コピーは、いくらなんでも力が入りすぎでしょう。編集者の進退をかけるような作品には思えません。 むしろ、商業的に成功がどうかに関わらず、この物語の続きをシリーズとして読ませてほしいですね。特に主要人物の一人「タイム」少年は、人物造形も興味深く、非常に好感が持てるキャラクターなので、ぜひこの少年の成長過程を見てみたいと思うのですが、予定はないのかな... | ||||
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ストーリーのある部分が、今回のゴタゴタ劇を連想させた。実際に本作品を売るためのカンフル剤として、関係者握り合いでゴタゴタが“演じられていた”としたら大したもの。さすがG舎。でも、さすがにそれはないかな。エンタテイメントとしては普通に面白い。ミリオンとか何十万部売れるとは思わないが、G舎が損しない程度には売れた(はずの)作品だと思う。つまり作品の良し悪しではなく、出版社(または担当?)の売り方が拙かったのだろう。どうでもいいけど。 蛇足。単行本表紙のイラストは某有名アーティストが手掛けたそうだが、個人的にはストーリーのイメージと合っていないように思う。てか、チト古い。Beatles世代はこの本を手に取らないんじゃないかな。ジャケ買いを狙ったのかも知れないけど、もしそうなら思惑は見事に外れたね。 | ||||
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見えない真実が 見えて来る マジかぁw マジでぇw マジやべぇw そう言う作品ですwwww | ||||
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こういうのを小説というんですよ。 ヒッキーこと引きこもりが光と闇の闘いを…とかの方向でなくて、よかった。 爽やかで鮮やかな着地。 そこそこの才能と、病と。そして、無力なnot引きこもり達と。 リソース創出の物語であり、リゾート開発の話です。ひとつだけ納得いけないくだりもあるけれど、それ含めて、いい。 | ||||
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津原氏のことは全く知りませんでしたが、今回の騒動そのものというより、騒動をきっかけに目にした氏のツイッターの文章に惹かれ、いっちょう読んでみるかなと購入。 結論から言うと大正解。基本的には読みだしたらやめられないエンタメですが、適度な毒と、明確な希望への意思が感じられるところが魅力です。読後感は爽快ですが軽薄さがない。 読了後、調子に乗って同じ作者の2冊目(11 eleven)を購入してみましたが、こちらはもっとヘビーだったので(手練れの作家だと感心はしましたが)、最初に出会ったのが爽やかで入りやすい本書で良かった。 ただし本書も、もともと読書が好きな人向けではあるとは思います。重要事項が言葉少なに語られるのを、読み解かないといけないので。 JJからは、漫画ですがナウシカのクロトワとか、ヴィンランド・サガのアシェラッドを想起したので、ひょっとすると本書はその手のお話が好きな方と相性が良いかもしれません。(JJは作者の分身なんだろうか。) ところで津原氏は少女小説を書かれていたとのこと。少女小説は、私の人生をいろいろな局面で支えてくれました。少女小説は内容も濃いものが多いのに、なぜ一般に軽く扱われるのでしょうか。 今後、この作者の本を遡って一冊ずつ読むつもりですが、それは単に津原ワールドをもっと知りたいのと、良いと思った本は主体的に買い支えていかないと、いつのまにか読みたい本が消え、結局自分に跳ね返ってくる日が来るかもしれない、という危機感からそう思います。 娯楽小説でありながら、適度な重みをもった本にはなかなか出会えないです。本書は、ある時は世間に流されながらも、どこかで理不尽さに憤慨し、希望をもって生きていきたい中年諸氏にお勧めです。 | ||||
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他の方を同じように応援のつもりで購入しましたが、なるほど賛否の別れる内容だと序盤から感じました。 ふわふわした文体に違和感を覚えたり、作中人物の気取った、芝居じみた言い回しに戸惑ったり、モヤモヤしたりしますが、 テンポの良い展開がそう言った気持ちとは真逆な爽快感を感じさせてくれて、すらすらと物語を読み進められ、没入させてくれます。 最近は文庫本ですら中々読まなくなっていたので、この本を出版し、世間に改めて広めてくれたハヤカワ出版には感謝しかないです。 | ||||
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何かと話題だったので初めてこの作者の本をkindleで購入。大変面白かった。出来すぎていてアニメ化・映画化を踏まえて書かれたようにも感じてしまう。肯定的なコメントを書かれている方々と同感想なので内容については言及しませんが、あとがきを読んで単行本のカバーアートが気になり検索してみると…うわっ、これは素晴らしい。すぐさま入手しなくては。作品の趣旨の深い理解の上に描かれたもので心をうつ。このイラストへの言及は、単行本の版元への礼儀とか感謝の気持ちがこもったものではないだろうか。 | ||||
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文庫版ヒッキーヒッキーシェイク、キンドルにてようやく読了。途中の転換点から、どんどんと行動的になっていくのと同時に、JJがすべてを燃やしながら生きているさまがとても良かった。そして、ラストの一言が、勇気を与える。読むに値しない作品もたくさんある中、久々にしっくりと読めました。 | ||||
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私にとって津原泰水とは『11』や『綺譚集』の作家だったので、「おや、こんなフツーの(笑)人間の会話も書けるんだ」というのが最初に感じた素朴な驚きでした。私の中では久生十蘭とか江戸川乱歩の系譜に連なる作家だったのに、ねえ。これで驚いて改めて津原さんについて調べてみたら、(未読ですが)最初は少女小説でスタートされた方なんですってね。幅の広さに改めて恐れ入りました。 当作品は私にとっては初の非・幻想系津原小説となりましたが、登場人物がどれもこれもいい人ばかり(ロックスミスですらもだんだん人の良さが...)だし、お互いになんとなく語り口が似ているのがちょっと物足りない。いつか誰かがドロドロの内面をさらけ出すんじゃないかとドキドキしながら読んだのに、そこはちょっと拍子抜けでした。最後もやや結末を急いだような感じがして、それで星を1個減らしてしまったのだけど、引きこもりの共同作業が向かった先、というプロットが大変面白かった。場面転換の早さとか、ヴィジュアルの説明などから、「この作品は映画化を前提にしているな」と感じました。 正直申しまして幻想系の方が好きだな、と思うのですが、とにかくこちらの想像を超えて幅広い作家でいらっしゃるようなので、文句を言わずに他の作品も拝読しようと思います。 | ||||
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Amazonレビューをざっと眺めて、いささか苛ついた。 読みもしないで酷い点をつけるというのは、ネトウヨたちがパヨク認定した著者の本に対して、いつもやっていることだし見慣れてもいるが、それに対抗する方も、まともな作品評価を置去りにして、「傑作」の連呼だの「文庫版を読め」のといった「政治運動」をやっている姿には、うんざりするだけでは済まない、大衆的な度し難さを感じさせられたからである。 言うまでもなく、作品レビューは「政治運動」のために書くものではない。作品を、その評者なりに正直に語るのがレビューでなのだ。 「我らの側に正義あり」といった「政治意識」で書かれた作品評価など、ネトウヨの悪口票と同じく、本質的に、信用できないものでしかないし、そんな誉め評価は、作品自体の信用をも貶めるものなのだ。 小説読みならば、そのくらいの常識は弁えてもらいたい。どんな小説を読んできたら、そんな愚かなことができるのか、ということである。 ○ ○ ○ さて、つまらない一部レビュアーに対する苦言はこのくらいにして、私の『ヒッキーヒッキーシェイク』評価を語ろう。 まず、お話としては、それほど新しくも面白くもないが、登場人物たちには惹かれるものがあった。たぶん、この作品を高く評価する読者の多くも、そこに魅力を感じたのではないかと思う。 例えば、ハヤカワ文庫版の帯には、担当編集者の本書への想いが、次のような言葉で語られている。 『人にこのような美しい感情を抱いてもらうことにこそ、文芸の価値はあるのだと』 『文芸の価値』が、そんなにわかりやすいものだとは思わないが、「本書の魅力」がそのあたりにあるというのは間違いないと思うし、この言葉はそうした評価の傍証にはなろう。 さて、それでは本書における『このような美しい感情』とは、どのようなものなのだろうか。 それを書いてこそのレビューなのだが、とレビュアーへの苦言は、本当にここで止めて、肝心の「作品の核心」を書いておこう。 それは「子供の想い(幼心)」である。 本書のポイントとなるのは「子供の想い(幼心)」なのだ。 物語は、それを見え隠れさせながら展開する。 「ひきこもり」というものは、「大人の世界=大人の論理が規定した社会」に馴染むことのできなかった「子供」たちだと言えるだろう。「大人の世界」は、タテマエの立派さに反して、しばしば理不尽だし、うす汚い。 だから、それに順応できなかった人たちを、「純粋」だと賞賛することもできるし、「敵前逃亡者」だと非難することもできる。そして、この二つの意見は、どちらも、それなりに正しいのだが、当然その両立は容易なことではない。 しかし、この現実的困難について、文芸に描くべきものがあるとしたら、それはやはり「両立への希望」であろう。 本書が描くのは、単なる「子供の純粋さへの賛美=世間の理不尽さへの批判」でもなければ「逃亡者批判=現実世界の全的追認」でもない。その「両立への希望」なのである。 そして、そんな「希望」は、どこから生み出されたものなのか。 無論それは、津原泰水という人から生み出されたのだ。 津原自身が、ある意味で「子供」であり、「大人の世界」に対して順応しきれない違和感を感じている。 だからこそ、彼は「怒り泣き叫ぶ子供」のように、しばしば「大人の世界」に食ってかかる。むろん、そこには「大人の損得打算」など無い。津原が「子供」の直観で「こいつは(幼心の)裏切り者だ」と思えば、彼はそれを黙認することができなくなって、子供のように相手にむしゃぶりついていく。 そんな彼の姿は、たぶん多くの大人にとっては、ちょっと理解不能で理不尽なものにすら映るだろう。「なんでそこまで怒るの?」「津原の怒りスイッチは、よくわからないよ」という当惑を、津原の怒りは、周囲の大人たちに与えがちなのではないか。 しかし、彼の感情はいたってシンプルだ。彼が言いたいのは「おまえだって、昔はそうじゃなかっただろう。そんな損得ではなく、もっとシンプルな正義とか、理想とか、友達への想い(友情)とか、そんなものをこそ大切にしてたんじゃないのか。少なくとも、友達との間では、それこそが関係原理だったのではなかったのか? 裏切られたよ! お前を信じた俺がバカだったよ! 俺は悲しいよ!」一一そんな「幼心の側に立った義憤」が、彼をして「幼心の化身」にさせるのだ。 作中で語られる、ある子供が考えた「ロボットアニメの企画書」には、こんな言葉がある。 『しいたげられた人々のねがいが彼を生み、けん力に立ちむかう』(P345) そして、それは、次のように評される。 『下手糞な小学生の落書きに過ぎないが、小賢しい知恵がなかったぶん、作為性も薄い。正義感に満ちた勇気への、率直な憧れが詰まっている。』(P348) 一方、作中の「敵」の性格は、次のように描かれる。 『自分が劣った人間だと思われることが、あいつにとって一番の恐怖なんだ。もともと情緒面や社会性に於いては劣っているから、優位性をひけらかすのに必死でいる』(P357〜358) 津原泰水が最近、ケンカを売った相手を見てみるといい。「私はこんなに人気者ですよ」「それは数字にも表れてますよ」といった「自慢話」を、臆面もなく吐き散らせるような手合いではなかったか。 やつらは「社会的に高く評価されること」「社会的に力を得ること」が勝利であり正義であって、それがすべてなのだ。だから「売れない作家はダメ」だということにもなるのだが、しかし「文学というものの初志」つまり「文学の幼心」というものは、そういうものではない。大西巨人も言ったとおりで、「勝てば官軍」などではないのである。 「勝てば官軍」とは、社会に敗れ、迎合を余儀なくされた(文芸的)敗者の「言い訳(自己正当化)」に過ぎない。 彼らが、どんな言葉で自身を飾ろうと、彼ら「敗者」の顔は、醜く歪んでいる。 『審美眼と手先には自信をお持ちなんでしょう。その心根をもってモデルとして絵描きを操るだなんて、最悪の遠回りは如何かと思いまして。絵描きはしょせん自画像しか描きえません。』(P383) ○ ○ ○ すでにお気づきの方もあろうが、本稿のタイトルは、湯浅政明監督のアニメーション作品『DEVILMAN crybaby』(原作:永井豪)を踏まえたものである。この作品で、印象に残ったのは、この世の不条理に対する「子供の慟哭」の声だった。 津原泰水という「人」は、社会人としてはいささか「困った人」なのであろう。 彼がケンカを吹っかける相手というのは、決して「ケンカをすることで得をする」相手ばかりではなく、ごく身近な友人あることの方が多いのではないか。 なぜなら、彼のケンカは、子供のそれのように極めて「感情的」なものであって、大人のそれのような「打算的」なものではないからである。だからこそ、彼の「批判」は、殊に「感情的な批判」は、身近なものに向けられやすいし、異質な遠い存在に向けられた怒りは、逆に「極めて冷静」なものにもなるのである。 『DEVILMAN crybaby』のクライマックスで、主人公であるデビルマン=不動明は、度しがたく卑劣な人間たちに向かって、自分はそんな「人間」でもなければ、もちろん「悪魔」そのものでもない、「俺はデビルマン(悪魔人間)だ!」と泣きながら叫ぶ。 そして、津原泰水という人にも、こうした「二重性」がある。 「大人げないトラブルメーカー」であり、かつ「幼心の保持者」という「二重性」。 本書『ヒッキーヒッキーシェイク』で描かれた期待も、「このうす汚れた世界で生き抜く強さを持ちながら、それでも幼心を失わない人間であること」なのではないか。 無論、それは現実には容易なことでないというのは、津原自身が体現して見せてくれている。 しかしまた、それでも「正義や理想や友情といった奇麗事」を信じる心を失わない小説が、ここにある。 もちろんこれは「フィクション」であり、多くの読者は「ああ面白かった」「感動した」と言って、作品を消費した後は、また「勝てば官軍」の世界原理をそのまま是認する「大人の世界」に戻ってしまうことであろう。 それでもまた、本書で語られた「希望」や「子供の慟哭」の声は、どこかへ届いているはずだ。 たとえ、届いた先の人数が1800人どころか、5人、いや1人きりであったとしても、この作品は「祈りの言葉を届けた作品」として、その存在価値を静かに誇るはずである。 『 どうあれ人は死ぬ。エリートだろうがヒキコモリだろうが、皇族であろうが泥棒であろうが医者であろうがホームレスであろうが、全員が死ぬときにはあっさりと死ぬのだ。ベッドの上で、自動車の座席で、花園で、自動販売機の前で。』(P326) ならば、「美しい記憶(希望)」を遺した者こそが、真の「勝利者」なのではないだろうか。 --------------------------- 【補記】(2019.06.17) 本年6月12日にAmazonにアップされ、同月14日にAmazonサイト上に反映された、当レビューが、2日後の同月16日に、何者かの違反通告によってか、削除されてしまったので、この【補記】を付し「増補版」として、再度アップする。 当レビューが、Amazonレビューの利用規約に反するものかどうか、是非とも各位に、ご確認いただきたい。 私のレビューに対しては、時々このようなイヤガラセが為されるが、断じて私は、このような陰湿な言論妨害に甘んじるつもりはない。 | ||||
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