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何者



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【この小説が収録されている参考書籍】
何者
何者 (新潮文庫)

何者の評価: 3.95/5点 レビュー 389件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.95pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全279件 241~260 13/14ページ
No.39:
(4pt)

就職を目指す大学生の物語だが大人社会と変わらない

twitterやfacebookを屈指する若者5人の姿を通して多くの人が抱える陰を映し出した物語

最初は現代の若者はこんな感じが・・・・・

そんな程度での感想で読み進めたが

最後の結末が私には意外性があって面白く読まさせて頂きました

携帯電話もポケベルもなかった私たちの時代とは違う様に、単にそれらの様子を読んで面白く感じていましたし、その程度の本とも思っていましたが

最終章で現代の大人社会とたいして変わらない現実があるのだと、妙に納得してしまいました・・・

客観的に達観して周囲を見渡し心中で蔑んだり馬鹿にしたり・・・・

そして

何物にもなれない自分がただそこに存在するだけ・・・

そんな大人は学生よりも大勢いるかもしれません
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.38:
(5pt)

やっぱりスゴイ

実際大学生活、就活などで感じたことが見事に書かれている。 懐かしい気持ちと、自分もそんなこと考えてたなと笑ってしまった。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.37:
(5pt)

じゃあ自分って何者ですか

「就活」という軸を中心に、性格も境遇も異なった学生達が微妙な距離感で関係を築いていく。著者が最近まで現役の学生だったため、同世代の読者にとっては思わずあるあると共感してしまう箇所が多いのも魅力。

この作品において、就活という括りのなかに潜んでいるもう一つの大きなテーマ、それはTwitterを代表とするSNSとの関わり方である印象を受けた。
誰もがツイートをする前に意識する他者からの目。そして他人のたった140文字にこめられた意図を汲み取ろうとする懐疑的な目。
そんな煩わしいツールであることは周知の事実なのに、繋がりを断つのが怖い。自分の存在の無いところで何が行われているのか、気になるあの人が何をしているのか、そして自分が遅れをとっていないか、確認しないと落ち着かない。就活中の学生にとってTwitterの存在自体が精神安定剤とも言えるのではないか。
そしてこの手軽なツールで誰かを傷つけることは予想以上に簡単で、予想以上に暴力的な行為なのだ。

名目だけのWEBテスト、何本ものスラッシュで区切られた肩書き、背伸びして作った名刺、そんな就活のために固めた必死でカッコ悪い姿を「らしく」ないなぁと薄々感じている人も多いはず。
しかし、皆そこにあえて触れない。触れて欲しくない。そこに疑問を持ってしまえば、今までの自分の頑張りや存在を否定してしまう事になるから。
気付かない"フリ"をしていた部分をチラチラ見せられているようで、読んでいて胸がチクっとすることもしばしばあった。知るのが怖かったと言っても正しい。「痛いとこついてくるなー」という感じ。

「自分は自分以外の何者にもなれない」という台詞の裏には「そんな自分も自分が何者かわからない」という暗示が含まれているように感じる。
私も就活の時期になれば、慣れないスーツを着て、自己分析に苦戦してESに膨大な時間を費やすのだろう。
私達みんな、誰かになろうとしてもなりきれない得体のしれない何者でしかない。そして自分が何者なのかも分からない。所詮は誰かの真似で生きている。そんな何百人もの何者かが今日もTL上には溢れているのだろう。みんな、同じだ。

これから就活を始める人は勿論、就活中で行き詰まってる人の突破口にもなる一冊ではなかろうか。
厳しく言ってしまうと一定世代の共感しか得られない作品でもあるが、そこがいい。身体への染み込み方が違う。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.36:
(4pt)

就活生が、リアルすぎて読めない、というのはよく分かる。おっさんでも読んでて辛い部分もあった。若いのにすごい作家。

本書は、今就活をするような世代の考え方を理解できるかなと、中年のスタンスで、余裕をかまして読んだのですが、、、

叫びたいぐらい、ハラワタがえぐられた感じがします。とても冷静には読めませんでした。

自分の弱いところに切り傷をつけて、さらに塩を塗りこまれた感じがしました。。。

就活の年代の学生さん達が「リアルすぎて読めない」と評しているのが良く分かります。就活中&前後の学生さんにとってだけではありません。少なからず人生に、生き方に迷いを持っている大人にとっても、この若い作家が追究する人間のある側面に、つい目を背けたくなるでしょう。

さらに、はっきりいって、私は、この自分より十数歳年下の彼の才能に大いに嫉妬してます。観察眼がスゴイです。それを咀嚼して一つの物語にする能力もすごいと思います。

本書は小説なので、内容については書きません。直木賞受賞作だとか、若い作者だとか、学生が同世代のことを書いたに過ぎないとか、表面的な感想は無視して、気になったらぜひ読んでみてください。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.35:
(5pt)

最後まで。

何度も読むのをやめようかと思ったけど… 最後まで読んで良かった。 賞の名前で判断されてしまって可哀そうですが、 非常に面白かった。 ちょっとした謎解き本でした。 文章が軽いのは、わざとか。 そうだったらすごい。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.34:
(4pt)

直木賞受賞に惹かれた

芥川賞を受賞して、前のほうだけ『オール読み物』誌に載ったので読み、続きが読みたくて買った。出だしのキャラクター設定が非常に良く、これならさまざまな展開が可能だとわくわくした。三分の二くらいまでは、四(+1)人の掛け合いが面白く、期待して読み進んだが、最後のほうはちょっとがっかり。特に文章が一言だれかがしゃべると地の文で解説が入るというパターンがつづいて、それが鼻につき始めるといやになった。これも『桐島、部活やめるってよ』と同様、他人に(ただで)貸しているので手元にないが、貸すとき『桐島、』の方がいいと言って行って貸した。最後のほうはいそいで書いたように思う。今、サラリーマンと作家を両立させるのは大変だとは思うが。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.33:
(5pt)

こういう人いるよね、痛いわ〜と最初笑ってたけど…。

就活が遠い昔(シューカツって略してもなかった。かろうじて一部メールが使えた、まだ資料請求ハガキもあった!)の私なので、他の朝井作品と同じく最初メタ的な視点でいました。
が、終盤で鮮やかに突きつけられる事実で、全然メタでなかった自分を思い知らされ、主人公同様体が熱くなり、穴があれば入りたくなった。
人が何者かであろうとする普遍的な欲求、そこに入ってきたSNSというツールがもたらす光のような影のような微妙さって若者でなくとも、例えば職場やママ友間でも同じだろう。
朝井さんは「若い割にすごい」んじゃなく本当にすごい!
でもほんと、他の方も書いていましたが、このレビューをSNSなどに投稿するという行為自体がとってもやりづらいわ。
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4101269319
No.32:
(4pt)

「これ、ただの俺の日常じゃん。」

新大学3年生というタイミングで本書を読んだ。率直な感想は「これ、ただの俺の日常じゃん。」

僕のTwitterのタイムラインにも、本書の登場人物と同じような人達がツイートを重ねている。
「意識高い」格好良い言葉を並べる人がいる。
格好良さげにツイートをする人の中にも、「本当に格好よい」と思って書いている人もいれば「精一杯背伸びして」書いている人もいる。
そのツイートを見て「あいつ意識たけーw何が『本質』だよw」と冷めた目で俯瞰して物を言う人がいる。
そんなこと気にせず「すごい!すごい!」と純粋無垢に相手を問わず感動できる人がいる。

本書では上記のような性格を持つ就活生達が、就職を目指す中でお互いをどのように見ているかがリアル、Twitterの2世界を通して描かれている。

本書に描かれている人物はどの人にも共感してしまう。
一人に共感するのではなく、様々な登場人物に共感し、どの登場人物にも自分自身が内包されている気分になる。
そのため、僕にとって本書の感想を記すことは、自分自身の言動、振る舞いを振り返ることと同義である。

そこで、僕自身のツイートを振り返って思うのは
1つ1つのツイートに込められた本当の自分の思いを考えると、思いとは逆行する結果に向かってしまっている、ということである。

誰かに会いたいなら、会いたいと言えばいい。「今日の午後暇だー」なんてツイートせずに。
頑張ったことを認められたいなら、何も言わなくても相手から認められるまで頑張ればいい。「うわーもう3時だ、寝ないと」なんて言わずに。

ツイートをすることが、自分の思いに対して解決策を打ったこととしてすり替えられているのである。
自分の思いから逃げた結果がツイートであり、ツイートはもはや原因であるとも言える。
Twitterが日本で流行っているのは「情報収集」としてのTwitterではなく「自分から逃げる」ためのツイッターなのかもしれない。
一方でこのような批判は
「つぶやきなのに、演じなくてはいけないの?」「見たくないならフォロー外せばいいだけの話。自分がつぶやきたいことをつぶやける場所がTwitter」
という意見に内包されているTwitterの良い面をも見逃していることもまた事実。

結局Twitterは無意識に使われやすく、無意識から生まれるツイートは本当の自分なのか自分自身でも判断できないからこそ、惰性で使われ続ける。

ただ、これらはTwitterのユーザー誰しもが思う、今更長文を書いて主張するまでもないありきたりな意見である。

本書の特筆すべき点はこのような「ありきたりな意見」を「身に迫る事実」として読者に訴えかけることに成功している点ではないのかな。

それにしても本書を読んだ後のツイートのしにくさといったら。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.31:
(4pt)

スマホ就活術では「何者」(大人)になれない若者の生態がわかる

就活という試練をうけている50万人を超える、同世代の過半の大学生の生の声がよく集められて小説にしている。読んでいると、学生の就職相談をキャリアアドバイザーとして傾聴しているときに聞かされるフレーズが、次々に出てくる。巧みな表現ではある。内々定をとろうとする過程で悩み苦しんでいる姿を20代の若者はこのような言葉で会話しているのかと知る上では大変興味深い。ノンフィクション表現としては秀逸なのかもしれない。
厳しい言い方をすると、採用する側からは限られた時間の中で採否を決める仕事をしているので、このような大人になっていない何者としての学生は「欲しくない人材群」として見えるだろう。スマホというツールのリテラシーを高めることは就活では必要であるが、人間対人間という生のコミュニケーション力をもっと磨いて欲しい。この小説は反面教師としての教訓も与えてくれるのではないだろうか。何者という問いかけの原点には、何のために働こうとするのかの思いが深くなければと思って読んでいたが、その答えはこの小説には見えなかった。就活モラトリアム時代の若者論としては良い作品なのかもしれないとも思った。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.30:
(4pt)

すごい

作者の作品は初めて読みました。 中盤までは、え?これが直木賞?ただ学生の生活の羅列じゃん・・・なんて思いましたが、ラストはすごかった。 舌を巻くとはこのこと。 気味の悪さが後を引きました。 女学生の描き方もリアルですよね。 こういう人いるもんね。 文章がすごく上手いと思います。 流れるように読めますし、携帯やネットを頻繁に使う人は面白いと思います。 ただ、それらを使わない年配の選考委員からも褒められたということは、この作者には力量があるんでしょうね。
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4101269319
No.29:
(5pt)

ユージュアルサスペクツ

就活をしたばかりの作者(桐島、部活やめるってよ)が描いた就活のリアル。 石田衣良「ワタクシハ」とは比べ物にならないリアルさ。 ラストに理香が、結局の所、「ユージュアルサスペクツ」のカイザーソゼ的な存在であった拓人へ繰り出す言葉のパンチが、特に生々しい。 作者は、会社員生活をどういう視点でとらえているのか、次作が楽しみだ。
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4101269319
No.28:
(4pt)

これから就活を始める人に

既に就活が始まっている人は忙しくて読めないか、読んでもあまりプラスにはならないかもしれない。一番読んで欲しいと思うのは大学1年生か2年生の人。

新卒者に限らず、とにかく、就職活動というものは特別な繋がりやコネが無い限り理不尽に満ち溢れたものです。若干名の求人に何十倍という応募者が群がり、企業はとにかく何らかの理由を付けて選ぶ。落とされた側は、その理由も明確にされず、ただ自分を否定されたような気持ちだけが残る。

社会に出て、採用や人事に関わるようになると、初めから採用できる人の数も期間も決められており(それも、人事担当者の預かり知らぬ所で)選べなかった人たちのその後を思って苦悩することもあるということがわかるのですが、本書ではそこには触れられず、企業の人事や就職活動というものはとにかく理不尽なものとして描き貫かれています。

本書が本当に伝えたいのは、どうやって就活の苦しさを乗り越えるかということではありません。

日本の若者にとって就職活動は一番わかりやすい自立への入口であり、そこに立つまでの幾人かの若者の物語が綴られています。

Twitterに親しんでいる人には、あるあると思わせる描写が多いのでより楽しめるはず。

青春物っぽい進め方をしながら、主人公とヒロインの関係が煮え切らずに終わってしまったこと、伏線を張って回収するという技巧的な部分が見えすぎてやや大雑把なところで、今後の期待を込めて☆-1としました。
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4101269319
No.27:
(4pt)

直木賞の審査員の想像力が高まった!?

作者が直木賞を獲得した時、随分と驚いたが、私はこの作品に直木賞を送ったオッサン達を高く評価したい。

この作品、社会風刺的な意味合いも強い。現役就活生の私のように、読後の脳みそ停止状態になるこの感覚は、就職システムの現状の理解に乏しい世代には分からない。だが、これを直木賞というステータスを与えたことで、幅広い世代の方にこの本は読まれるだろう。その時、「最近の若者は〜」の、「若者」の真の姿を想像してみて欲しいと思う。多分審査員も、その中身を垣間見たと感じたのだろう。微細な若者特有の表現や言い回しが、現実の匂い嗅ぐことが出来る。

個人的だが、私も以前は、飲み会では端っこで、鳥のごとく高い視点で周囲を観察する立場を格好いいと思っていたクチである。

つまり、「体育の授業で本気出す奴とかマジダセェ」←(いやお前のがダセェよ)←だが口には出さない、これが以前の私であり、この本の主人公だ。

ちなみに、この「以前の私」という言い方も、「今はそうでもないから、そんな人間じゃないからアピール」を含有している。twitterの様な、簡単な言葉で自分の気持ちや状況を発信出来る時代に、人の言葉の真意を想像することは難しい。だが、言葉の真意を、裏の部分をこのようにいちいち詳細に説明していては埒があかない。だから、想像してあげること。これはこの本の最大のメッセージであると私は感じた。
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4101269319
No.26:
(4pt)

きっとボンクラで痛い自分に出会える。

今をリアルに伝えるための口当たりの悪さというか、不愉快な文章の列挙にうんざりさせられながらも最終的にはこの作品の持つトリッキーな構造に嘆息させられるという上等なエンターテイメント。
とても緻密に計算されているにもかかわらず、上質であるが故におそらくは誰もが登場人物の誰かに寄せて身につまされてしまうエモーショナルな小説。その手管はミステリー並。
どこを向いても、何をやっても、何を考えていても「痛い」存在にしかなりようがなくなってしまった、どこにも辿りつく事のない日々を送らざるを得ない現代と全てのボンクラが身悶えするラストに戦慄する快感。
と、こんなレビューを書いている自分にもゾッとするサド・マゾ娯楽小説最新型。恥の上塗り。
軽く痛い思いをしたい方、ぜひ。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.25:
(5pt)

何者

新進気鋭の作家の作品であるし、私の子ども達が直面している就活の辛さ、若者がそれをどう捉えどう乗り越えようとしているのか垣間見ることができました。 作者が考えぬいたような一文一文にも感動しました。 次の作品も期待しています。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.24:
(4pt)

''全人格評価''の恐ろしさ

「桐島、部活やめるってよ」でデビューした著者の6作目。

ルームシェアをきっかけに知りあった学生達の、
シューカツを通した友人関係や自己像の設定に四苦八苦する物語。
本書のコアは、タイトルの「何者」というとおり、設定した自己像との剥離や他者からの承認にある。

元々劇団サークルで脚本を書いていた拓人、留学から帰ってきた瑞月、海外ボランティアやインターンに熱心に参加した理香、バンドのボーカルの光太郎、読書家で就活に興味を示さない隆良を軸に話は進んでいく。
物語の中心に置かれるのは、就活での合否そのものの葛藤ではなく、就活の渦の中で巻き起こる人間関係だ。
例えば主人公の拓人は、ルームメイトの光太郎が使っていたPC画面に成績証明書映っていることから、光太郎が最終面接に進んでいることを推察する。拓人は成績証明書の画面を見た瞬間、手が止まってしまう。
理香は、自己アピールのためにインターンやボランティアなどの経歴をこれでもかと載せた名刺を作成する。主人公の拓人はそれを「イタイ」と思いながらも口には決して出さない。

というような調子で、まさに現代のほとんどの大学生、特にそれも就職活動に熱心な層が陥りそうな「シューカツレース」の様子が描かれている。
そこにあるのは、就職という言葉が本来表すはずの職業や業界への現実的な理解、職業能力の開発といったとこからかけ離れた「シューカツ」だ。

昨年それを経験した自分としては、彼らの視野の狭さや思考の浅はかさがなんとも開けたくないアルバムをのぞかれているような気味の悪さを感じてしまう。

レビュータイトルの全人格評価の話だが、登場人物がシューカツに必死になるのはどこの企業に内定をもらえるか、面接を突破できるかがまるで「潜在能力」の証明のように感じられるからだろう。企業に内定して初めて、「何物」かになれる。自己実現できると思いこむ。

個々にそのような意図はないにしても、企業が紹介するデキる若手社員、新卒求人の広告業者、内定までのテクニックを喧伝する出版社や著者、学生内定者アドバイザー、キャリアコンサルタントと呼ばれる就活業者、あまりにも労働社会に無知な就活生、さまざまなアクターが自己実現レースとしてのシューカツの舞台を作り上げていく。
シューカツ市場の舞台では、有名企業の内定者はヒエラルキーのトップに立ち、潜在能力「A」の扱いを受ける。なんとも不毛なレースが行われている。

就活生がかわいそうだから新卒採用は廃止しろ!などと浅はかな批判はしないが、これが現実の一端であることを多くの世代の人に知っていただきたいとは思うところである
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.23:
(4pt)

今度は孤独のみならず、ストーリーの冴えも素晴らしく

『桐島、部活やめるってよ』で交わりそうで交わらない高校生の心を描いた朝井リョウも実生活で大学を卒業し、今度は就職活動に挑む大学生の交流と葛藤を描いて直木賞に輝いた。デビュー当時から見せていた非凡さ、同時代性ゆえの新鮮さ。今回はツイッターを小道具に配し(『桐島〜』ではウォークマンだった)、孤独の描写に止まらず、ストリーテラーとしての冴えも見せてくれた。他の方もコメントしているけど、朝井リョウは成長した、と実感させてくれた。

そもそも、就職活動に協力とか情報交換なんてあるのだろうか。四人の主人公たちは無邪気にもアパートの一室に集い、模擬エントリーシートに取り組み始める。しかしモラトリアムの最中にある高校生とは違い、彼らは通過儀礼の出口に立つ大学四年生。始めて大人社会から受ける否定の嵐に耐えながら、『桐島〜』では剥がれなかった無邪気さのメッキが、少しづつ剥がれ始める。そして迎えるクライマックス・・・。

もやもやと見えなかった感情が見えるようになる。ならなければ大人になれない、とすれば、朝井リョウは次作以降で社会に出て「何者か」になった同世代をどう描くのだろうか。同世代人ならずとも将来の楽しみを感じさせる、直木賞受賞作でした。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.22:
(4pt)

痛さを繊細に表現した小説

ツイッターのアカウントや文章が文章のあちこちに登場し、ネットでつながる若者文化をベースにした、
まさに若い人でないと書けない、現代のあたらしい小説だな、と思った。

この不況の中で就職活動に挑む学生たちの日常と、社会人になる前のジレンマを題材にした小説。

ネット社会を当たり前として受け入れ、便利なモノがあふれた世界を生きている若者たちは、
のっけからノリが軽く、人生の舵をとる大切な就活にもどこか「生活を賄うための必死さ」みたいなものがなくて、
社会人が読むと、学生時代特有の甘さの出た世界に、最初は辟易とするかもしれない。

私も、読み進めて中盤以降くらいまでは、あー、いやだな、いやな感じの人たちだな。
海外で留学を経験しただの、バンドをやってるだの、舞台をやってるだの、
なんだかきらびやかに学生生活をエンジョイしている感じが、
学生たちの自己顕示欲を次々と見せつけられている感じがしたからだ。

主人公も好きになれないし、周りの人たちもお互いを牽制し合っていて、
誰の「本気」も見えないような気がしていた。

それは痛くて、いたたまれなくて、見ていられないような、こっちが恥ずかしくなるような感じを引き起こした。

しかし、後半以降、この小説はそれだけじゃないな、と思った。

自分の能力や、今までやってきたことの努力の過程を、結果は無くても認められたいと思うこと。
人と同じ、ひかれたレールの上を走るんじゃなく、自分だけの個性で生きていきたいと思うこと。
必死にあがいてもがいている同世代の友人を、分析してこきおどすことで、自分が一段上みたいな気持になること。

お互いの本当の気持ちが、会話からむき出しになるにつれて、痛いように見えた人たちが、
たまらなく切なく思えて、「分るよ」って言ってあげたくなった。
今はしれっと社会人の顔をしている私も、同じような痛さがあったし、今もあると思った。

人間として若者から大人へ変わる瞬間、下手したら大人になってもひきずるような類の、
あえて言葉にしないような自己顕示欲のもがきを、すごく上手に表現していると思う。

他人と他人がてんでばらばらの目的で交差している社会の中へ、
複数で決められた方向へ進んでいた学生たちがぽんっと放り出される時の、
自分が動かなければ何も始まらない、何も注目されないあの感じ。

著者はリアルタイムで感じてきたその瞬間を、今しかない、そのかけがえのない若い感性で、
切り取るみたいに正確に作品にしている。

少なくともモラトリアムに浸る余裕があり、それぞれの生き方が自由で多様化した時代に
就職活動をした世代までは、共感することも多い小説ではないか。

「直木賞」という箔がつくと、いろんな世代や立場の人が読むことになるから、評価は二分するだろう。
作品は多少荒削りで、痛い、見たくない感情が起きる小説だけれど、それでも就活生のみならず、
多くの人の気持ちに、すいっと食い込むとても優れた何かを持っている小説だと思う。
何者 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:何者 (新潮文庫)より
4101269319
No.21:
(4pt)

面白かったです

娘と一緒に読みました。 作者らしい内容で面白かったです。 次回作も期待したいです。
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4101269319
No.20:
(5pt)

多重人格にならざるをえない社会

女子をくどく時の殺し文句は「君だけは他の人とは違うと思ってた。」だそうである。多分その言葉は女子に限らず、全ての人にあてはまる。人間誰にでも自分独自の存在・価値を認めて欲しいという欲望はある。
 だが、今の世知辛い競争社会では簡単に他人の価値を認めることはできない。就職試験ならば誰かが受かり誰かが落ちる。就活生は、落ちる度に人間を否定されたように思うだろう。そのショックに耐えかねて、「落ちたのは面接官に見る目がないからだ。」「自分の本当の価値を見きわめられる目を持った人間が少ないのだ。」と自分を正当化するのである。そして、終いには、友人の前でさえ、キャラを作り始める。この作品の登場人物が、友達の前の自分と、ツイッターでの自分、別アカウントの自分とを使い分けるように。その姿は、親の虐待に耐えかねて多重人格化する子どもに似てはいないだろうか。自分を守るために必死なのだと考えればその若者の姿は、私、中年の母親世代の人間から見れば、「痛い」と批判するより「痛々しい」となでさすりたい姿である。そして、その分裂した人格の統合される社会の実現を望んでやまない。素の自分でいられる社会の実現である。
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4101269319

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