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火星年代記



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火星年代記の評価: 4.49/5点 レビュー 80件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.49pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全69件 21~40 2/4ページ
No.49:
(5pt)

最高。

特定の感情を意図的に刺激する様な、「人工的な安い感動」ではなく。泣いたら良いのか笑ったら良いのかよく分からない、形容し難い感情が渦巻く。そんな余韻に浸れる。しかもこれは短編。一話読み上げる毎に、違った味わいがあります。
小難しい話も無く、誰にでもおすすめできる。そういう意味でも、短編集という意味でも、隙間時間に少しずつ読み進めるにも丁度良いです。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.48:
(5pt)

何度読み返しても面白みが尽きない名作

レイ・ブラッドベリの名作SF『火星年代記』の“新版”である。

何が新版かというと、目次を見れば分かるが、1999年スタートだった年代記が2030年スタートに変わっている。それだけでなく、いくつかの短編が追加になった。もちろん新訳は読みやすくなり、活字は大きくなり、少年時代にレイ・ブラッドベリに魅せられた我々も老眼で再び名作を楽しむことができるという仕組みだ。
21世紀に入り、レイ・ブラッドベリ自らが改訂した、最新で最後の『火星年代記』である。

最初に『火星年代記』を呼んだのは35年前のこと。その直後、アイザック・アシモフ『銀河帝国の興亡』シリーズを読む。『銀河帝国の興亡』が『ローマ帝国衰亡史』をオマージュしているように、火星年代記はアメリカ開拓史を彷彿とさせる。
では、本書は歴史書か。いや、違う。とはいえ、純粋なSFではない。ファンタジーでもないし、風刺小説でもない。
もう、レイ・ブラッドベリの世界としか言いようがない。

『火星年代記』が名作であるとする私なりの理由は、本書は、読んだ人の年齢や経験に応じて、その感想が千変万化することである。
私が最初に読んだときは、これはスペースオペラだと感じた。ちょうどスター・ウォーズ(エピソード4)が上映され、スペースオペラが息を吹き返した時期だった。本書には派手な戦闘シーンがあるわけではないが、火星人と地球人の戦いは、幼い頃に読んだE・E・スミス『レンズマン』シリーズを想起させた。
大学生の時に読み返したとき、本書は風刺小説だと感じた。エドガー・アラン・ポーやラヴクラフトを読み、体制に胡散臭さを感じていた私は、『第二のアッシャー邸』に涙したものである。
そして、わが子が大学生になろうとしている今、再び読み返してみると、これは家族の愛を描いた小説であり、生命の普遍性を謳う人間ドラマであると感じる。『長の年月』で、製造者の家族の生き写しとしてつくられたロボットたちが、にっこり笑って破壊者に対応する。破壊者は思わず、「ああ、あの連中を破壊したら殺人です!」(374ページ)と逃げ出す。だが本編には、ロボットという言葉も、アンドロイドという言葉も登場しない。これが「レイ・ブラッドベリの世界」なのである。
何度読み返しても面白みが尽きない――これこそ小説の真骨頂ではないか。

というわけで、本書は定本として、本棚のいつでも取り出せる位置に置かれることを、強くお勧めする。ページが手垢で黒くなるまで、何度でも読み返そう。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
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No.47:
(4pt)

純文学や詩で新しいものを読みたい方に!

SFの名著として「これだけは読んでおけ!」的な本です。 火星での人の営みの描写が基本でSF的な要素はかなり少ないです。 SFも多少読むので有名な本署を購入しましたが、「星を継ぐもの」を読んだ後で似たものを期待していたので肩すかしを食らいました。 もちろんそれが悪いという意味ではなく、SFとは思えない詩な描写(?)だったという意味です。 ストーリーもそんなにSFっぽくないですが、人の営みは基本的に変わらないんだなと感じさせてくれました。 もし先にも書いた「星を継ぐもの」のような謎解き&スリルのあるSFを求める方よりも、純文学や詩で新しいものを読みたい方に強くお勧めします。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.46:
(5pt)

まだまだ新鮮です

40年ぶりに読みました。 初めて読んだ感動が甦りました。 大大大好きです。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.45:
(5pt)

ただただ美しい

天才レイブラッドベリが淡々と描く火星の年代記。 今やありがちになった現代文明と人間の業の風刺ものながらも、全編に渡る美しくもユーモラスなイメージと静かな諦念が作品の品格を落とさない。 年代別に並べられた短編集としても読めるけれど、互いに密接に連関しているのでやはり長編として読み通すのが正しいかもしれない。 火星の火球に信仰を説く章、アッシャー邸、スペンダーの離脱、斬新で美しく、しかしどこか寂しく悲しいエピソードの数々は新規読者である僕にも充分に心に食い込むものだった。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.44:
(5pt)

懐かしい!

昔読んだ火星年代記、もう一度読みたいと思えど文庫本は文字が小さくて読むのがつらいと諦めていたところ、amazonで電子版を見つけて早速購入。 文字を拡大して読めるので有り難い。 早速懐かしい世界に浸りました。 『十月はたそがれの月』も電子版にならないかな。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.43:
(5pt)

我が青春のブラッドベリ

というとクサイなあと思うのですが、やっぱりそうだからしょうがない。
高校生〜大学生ぐらいは、ほんと、ブラッドベリばかり読んでました。
そのあと社会に出て、転勤につぐ転勤、年をとり、手放していった本は数知れず、、、
それでも手放せなかった数少ない本のひとつがこの火星年代記、です。
これをSFではない、どこがオールタイムベストだ、という方もネットで見かけました。
センスオブワンダーがSFの醍醐味だ、という方には物足りないかもしれない。時代感も受け付けないというひともいるかもしれない。
ただブラッドベリの本質はファンタジー、おとぎ話だと思うのです。
短詩型をこよなく愛する日本人ごのみな?連作短編という形、詩情、たぶんもともとの原作もいいのでしょうが、おそらく訳も日本語として美しいというのも大きな要因なのかも(大森望の翻訳講座だったか、にそんな話が出てきますが、全く同感。再版かけても訳は小笠原さんから変えてほしくない・・・)
ブラッドベリのある短編集を少し原語で読んだときがありますが、どうも日本語で読んだときほど感動できなくて、それ以後ブラッドベリの作品を英語で読むのはやめました。自分の英語能力が足りなかったからかもしれませんが、翻訳ものはもしかして、訳がよくて原作を凌駕する、というのもありえるのかもしれない。
だからこの作品は英語で読んでみたいけど、読みたくない作品集でもあります、、、でも死ぬまでに一度は読みたいかなあ、、、。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.42:
(5pt)

人間社会をあぶり出すブラッドベリの連作短編

まず、これが書かれたのが50年代だということ。

短編の連作は年代順に並べられていきます。
子どものころに読んだブラッドベリ作品を今読み返すと、当時の未来が、すでに過去になっているのです。
そこがかえって魅力にもなっています。

彼がどの作品にも提起している人間社会の醜悪さ、危機感は、時代を超えて今ますます浮上してきています。
ブラッドベリが書くものは、いわゆるサイエンスフィクションではなく、
あくまでも「人間」をテーマにしている普遍的なものです。

ブラッドベリが面白いのは、とくに彼の描写力。
見事なディティール描写と比喩で、読者を「おかしな日常」へ引きずり込みます。
気がつけば、ありえない設定、仮定を、ごく「あり得る」ことのように感じてしまいます。

たまたま舞台が宇宙や未来だからSFのジャンルに入っていますが、ブラッドベリ作品は純粋に文学だと思います。
(そもそも、そういうジャンル分けがおかしいと思いますが!)
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.41:
(5pt)

地球人が火星を侵略した

西暦2030年に最初のロケットが地球の季節を変えてから2050年まで、20年間にわたる地球人による火星侵略を描いた物語。
アメリカ人による、か。
途中ちらっとアメリカ先住民が登場するが、火星人に共感するようなこともなくすぐに殺されてしまう。火星人と共感するのは何か特別な才能が必要なようだ。

火星人に共感することのない人々がいろいろな物や想いを持ち込んで火星はどんどん変わって、ちょっと歪んだ「地球の鏡」みたいになってゆく。
が。
侵略者はその特性にふさわしい末路を辿る。

30年以上前に、高校の図書館で1冊だけ借りたのが「火星年代記」と「華氏451度」が1冊になっている本だった。夢中で読んだ。
「火星年代記」が20年間の物語なので、最初に読んだその時からさらに十数年余計に生きてるわけだ。
地球人が初めて火星に行ってから、最後の一遍「百万年ピクニック」に出てくる子どもたちが成人するくらいの年数。
今回は電子書籍版で読んだが、そんな環境の変化も含めて個人的にとても感慨深かった。作中の「問題提起」や「懸念」のようなもののほとんどは現代に通ずる。驚くくらい。
そんな意味も含んで、次は「華氏451度」だな。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.40:
(4pt)

懐かしいほろ苦さ

「火星年代記」[Kindle版](レイ・ブラッドベリ:小笠原豊樹 訳)を読んだ。 初めてこれを読んでからもうかれこれ40年も経つんだな。 やれやれ。 だけど何度読んでもやっぱり最後には(少しほろ苦いけれど)何か温かいものがこみあげてくるよね。
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4150117640
No.39:
(4pt)

星新一氏の原点

火星探査から移民、火星人との接触、地球の果てが ブラックユーモアで描かれている。 星新一氏が影響を受けた作品ということもり、 ブラックユーモアがたっぷり使われている。 星新一作品が好きな人は一読の価値あり。
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4150117640
No.38:
(5pt)

偉大なる詩人のファンタジー

SFとしては、科学の要素はまったくありませんが、 それだからこそ、時を超えた名作です。
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4150117640
No.37:
(4pt)

辿りついた最後の章がシミジミとします。

あとがきに、星新一さんが「コンナ面白いものはめったにない」と日記にお書きになっていた事を紹介しています。
レイ・ブラッドベリィの敷居が低いのに奥の深い感触は、星新一さんの作品とも共通するかな、などと思いを馳せました。
それとこの本を読んですぐにイメージしたのは、手塚治虫さんの初期のSF作品でした。
『キャプテンKen』や『来るべき世界』。『火星博士』というのもありました。
特に『キャプテンKen』ですね。これは火星が舞台ですし、オブセッションというのでしょうか、頭からずっと離れませんでした。
『火星年代記』は、翻訳本という形式だけではなく、日本の小説家や漫画家たちの作品を通して、知らず知らずに私たちに届けられていたのではないかと思うのです。
日本のSFの原点に当たるのかもしれない、などとも想像を膨らませました。
そして、非常に難解な作品なのではないかと今は思っています。読みやすいのですけれども、意味を読みとるのが難しいといいますか。
幻想的といいますか、比喩やレトリックやパロディがふんだんに使われていて、しっかり読まないとふっとどこかに連れ去られてしまうような感じがしました。
作品全体が、一つのメタファーと言えるかと思います。
じっくりとお読みになるべき本だと思います。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.36:
(5pt)

とても懐かしい

昔読んだ本が現在このような形で読めるなんて感無量です。 SFジャンルを増やして下さい。
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4150117640
No.35:
(5pt)

未来という過去からつづく永遠

色褪せてない、と思いました。 1950年4 月の初版(アメリカ)と記されています。 今回購入の日本での初版は1976年でしたが。 そして思ったのは、最後の最後まで物語は生きているということ。 終いのページまで、作者・ブラッドベリは語るのです。 未来という過去からつづく永遠を。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.34:
(5pt)

一見堅苦しそうなタイトルだが、読み始めたら止まらない

自分は特にSF好きというわけではない。どちらかといえば、ファンタジーやミステリといわれるジャンルの方が好きだ。
なのでこの本も作者も名前だけは知っていたが、これまではなんとなく敬遠していた。

それがたまたま図書館で「これ面白かったよ」という高校生の会話を聞き、へえと思って手に取り、ちょいと読んでみたのだが。
最初の方の第二、第三探検隊の話辺りからぐいぐいひきこまれた。
「第二のアッシャー邸」はミステリ好きにはたまらない話で。
「沈黙の町」は昔読んだ「死の影の谷間」を思い出させた。でもあれとは違い、この作品はユーモアが勝っているので楽しい。ジェヌヴィエーヴの造形が・・・(笑)。

年代記というタイトルから大層な作品だろうと身構えていたのだが、ごくごく短い短編を年代順にオムニバス形式で連ねているだけなので、あっというまに読めた。後の方で、前の話に出てきた登場人物が出てきたりするので、何度かページをめくりかえすことになるのも楽しい。

火星という星を舞台にしながら、中心に描かれているのは地球人であり、にもかかわらず「火星年代記」というタイトルがしっくりくる作品。
60年以上前に書かれた作品とは思えないぐらい、今読んでも味わい深かった。

人間(および火星人)以外の動物が登場しないとか、電気やほかのライフラインが死滅した町でなぜ働くのかとか、いろいろと疑問は生じるものの、この作品に関してはそういう突っ込みは野暮なのだ。
リアルな設定の構築に腐心せず、人間のエゴを描く、まさにその一点に絞ったからこそ、この作品は魅力的なものになったのだから。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.33:
(5pt)

SFとかファンタジーと云ったジャンルを超えた傑作集!

著者の出世作となった連作短編集。 人類が火星に到達するが、色々あって三回目迄の探検隊はいずれも火星人に殺されてしまう。 だが、三回目の探検隊に依って病気をうつされた火星人は全滅、第四次探検隊に依り植民地化が始まるが地球は世界大戦が勃発し、滅亡してしまい・・・ SFとファンタジーが融合し微妙に入り混じる幻想味豊かな名作!
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.32:
(5pt)

怖い側面も表現されてて、面白いです。

作品は忘れましたが、村上春樹さんがこの本を読んだことがあるみたいで、

興味を持って読みました。

(グレートギャッツビーも同じ理由で読みましたが、こちらは合わなかったですが。)

年代記というのは、古い順に、火星で起きるエピソードが語られる感じです。

〜があった。その数年後、〜があった。さらに数十年後〜があった。という感じです。

〜は、数十ページ分です。

各年代のエピソードは、関連のあるものが多いですが、年月が経ちすぎると、

関連性が土地や場所であったりします。

火星人とそこを訪れる人間の間の、色々なやり取りが、お互いの意図や感情を交えて、

面白く、ときには怖く感じるような内容でした。

近未来的は面白さは全く無いですが、異文化、異人種の交わりの中で、おこる現象が、

いかにもありそうな感じで、でも火星チックな感じで、面白く感じました。

読んでも、損はしない名作だと思います。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640
No.31:
(5pt)

火星という幻想

2007年に、書店でいちばん新しい版を買ったつもりでいたら、現在、既に「新版」が出ている。
本書のカバー絵は、個人的に、とても気に入っているのだけれど、これから読まれる方は「新版」が良さそう。

買ってから五年間も読みあぐねていたのは、SFは世界観や設定をこそ楽しむもので、『火星年代記』はその代表作である、という先入観のせい。もっと小難しい小説だと勘違いしていたので、気合いが入るまで、手を出しにくかった。
が、このたび、作者の追悼のため改めて手に取ってみると、堅苦しい小説ではなく、どちらかというと、詩的な群像劇だった。
描かれているのは、未来社会や見知らぬ星のことではなく、いつの時代もどこにいても、愚かしくて優しい人間たち。
争いをやめられず、死んだ家族をあきらめきれず、変化を好まず、正しいのは自分だと思いたがり、乱暴で性急で、ほんとうにどうしようもない、と重たい溜息がでそう、なのだが、皮肉が可笑しくもある。また、暗い諷刺のなかにも、心があたたかくなる一言がある。
「動物は生に疑問をもったりしません。ただ生きています。生きている理由が、生そのものです」
「何も訊かないで。神様がやさしくして下さるわ。わたしたちは幸せになればいいんだよ」

個人的に、もっともパワフルだと感じられたのが、「第二のアッシャー邸」。
『華氏451度』的な検閲が行われた後の世界なのだが、すべては「漫画の本の統制から」始まった、と書かれているのが、どこかの条例を思い出させて、暗くニヤっと笑ってしまう。
私自身、家族から漫画を禁じられた時期があって、長い間、友達や親戚の家でしか漫画は読んだことがなかった。両親にしてみれば、真面目な教育方針、だったと思うが、権力で禁止することはほんとうに無意味で、私は虎視眈々とチャンスを狙い隙あらば他人の漫画を読み耽り、おかげで十代の頃に読んだ漫画の内容は、恐いくらい、よく覚えている。大人になっても漫画が大好きで、いやなことがあると長編のコミックスを一気読みして痛快になるが、このとき感じる「痛快さ」には、子供の頃に禁じられていた「禁書」を読んでいるのだ!という甘い味が少なからず混じっている筈で、禁止することで余計に熱狂するのが人間なのだ。
「第二のアッシャー邸」は、そうした人間の、愚かさと可笑しさがたっぷり。
短篇の連作で成り立っている『火星年代記』だが、これは単独で読んでも面白いだろう、と思う。

インタビュー集『ブラッドベリ、自作を語る』を読んでいると、九歳のブラッドベリ少年は『バック・ロジャース』の漫画に夢中、切り抜きを集めていて、他の子供たちにからかわれる。ロケットの宇宙船なんかできない。月にも火星にも行けるわけがない。バカだな。
少年は切り抜きを破り捨てるが、後日後悔して泣きわめく。そして、「なぜ泣いてるんだ、誰が死んだんだ」と自問する。
「おまえだ、おまえが死んだんだ。未来を殺してしまった。あんなバカどもの言うことをきいてしまった」
少年はもういちど切り抜きを始める。
「以来、バカの言うことなんかには耳を貸さなかった」
・・・このくだり、読みながら大笑いしてしまった。実に痛快なエピソード。

好きな書籍を禁止されたら、素知らぬ顔でもとの棚に入れておけばよい、注意されたら、おや、そうでしたか、という顔をして、また素知らぬ顔でもとの棚に入れておけばよいのだ、と、ブラッドベリは云う。
長い目でみれば、検閲なんてあり得ない。
否定され、踏みつけられ、ついには滅亡させられても、また甦る。
「優しく雨ぞ降りしきる」のあとには、「百万年ピクニック」が続くのだ。必ず。
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)より
4150401144
No.30:
(5pt)

追悼 レイ・ブラッドベリ

2030年、人類初の火星探検隊は地球へ帰還することがなく消息を絶つ。2度目の探検隊もやはり帰ることはなかった。しかし人間は諦めることなく陸続と火星へ渡る。地球人たちはやがて、長年その惑星に住み続けた火星人たちにとって代わる存在となっていく。

 1940年代から50年代にかけて書き継がれた連作短編をまとめた一冊です。
 巻末の解説によれば、1997年にブラッドベリが新たに編み直した原本に基づいて、日本で以前出た版とは収録短編をたがえた新版とのことです。

 ブラッドベリは今月(2012年6月)に91歳で大往生を遂げた作家です。その訃報に接してかの有名な『火星年代記』を手にした次第です。火星に関する40〜50年代当時の素朴で限られた情報に基づいた、大変温もりのある移民編年史といった物語です。 
 そのほとんどはコロンブスのアメリカ大陸到達、先住民族との邂逅、その友好と征服、西部開拓史といった、新世界における歴史を想起させるものです。

 「第二のアッシャー邸」は『華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)』同様、焚書をめぐる怪異に満ちた物語ですが、実にブラッドベリらしいといえます。
 
 「火の玉」と題した短編は、新大陸でのカトリック布教に邁進した宣教師たちの姿に重ねて描かれた物語でしょうが、その結末は史実における先住民族たちがたどった末路とは異なります。地球の宣教師たちが最後に出会う存在は、彼らに思わぬ心の安寧をもたらします。クリスチャンではない私のような読者にも、心にそっと添う思いがします。
 
 掉尾を飾る短編「百万年ピクニック」の主人公たちのように今から数百年後、開拓地・火星に暮らす人々が、このブラッドベリの物語をひもとく日が来るかもしれない。そんな淡い空想を胸にこの書を閉じました。
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)より
4150117640

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