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シミュラクラ
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シミュラクラの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.44pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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1980年、米中間で起きた衝突により勃発した第三次世界大戦。戦後、世界はワルシャワを中心とする共産主義体制と、ヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)とに二極化された。 90年代には、USEAでは大統領ではなくそのファーストレディの方が民衆の圧倒的な信頼と絶対的な地位を持った母権性に移行していった。 21世紀半ば、ニコル・ティボドーが大統領夫人を務める世の中に於いて、物語は始まる。 念動力を以て楽器演奏をする国民的名音楽家でありながら、深刻な精神的病理を抱える超能力者。 彼の音楽を録音すべく、かつて中国による核攻撃の為に雨林地帯と化し、ネアンデルタール人に退行したミュータントを生んだ北カリフォルニア海岸地帯へと飛ぶレコード会社の三名。 世界で一番の大企業である、シミュラクラと呼ばれる模造人間の製造会社に勤務する弟、対して小規模のシミュラクラ製造会社に勤める兄と、その兄弟の間を揺れ動く弟の妻。 二番目のカルテルであるAG製薬が、医療用合成化学薬剤の寡占を図り、政府に施行させた新法によって職を奪われた精神科医。 これらの他、国家警察(NP)の長官による暗躍や、新興宗教のリーダーの不可思議な行動、はたまた、政府の極限られた上層部だけが扱えるタイムトラベル装置の存在と、それによりニコルによって過去から呼び寄せられたドイツ国家元帥などの複雑なプロットの数々がそれぞれ、或いは時に重なり合って物語が進行していく。 主要人物だけで20名以上。しかし、特定の主人公らしい人物が存在しないだけでなく、それら登場人物の誰もが確固とした目的を持って行動をしていくというよりは、状況や現象に対して各々思考し、迷いながらなんらかのアクションをしていく。だが、考えてみれば現実の人間社会に於いてでも殆どの人々は同じ様に生きていると言える。 その場当たり的な筋書きは、先行きの展開が全く読めないままに進んでいくことになり、相互に関係性を育んだりもするが、場合によっては投げ捨て気味にされることもあったりと、それら全てが混じり合うことはない辺りは、ディックらしさのある群像劇である。 終盤に訪れる状況の大転換。そして静かに迎える意外なラスト。 他にも、超小型違法宇宙船、火星生物などのSF素材を満載した、読み応えのある異色の作品である。 | ||||
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一般に粗製乱造期とされても、雑多さが却ってカオスに次ぐカオスの果て訪れるオチに寧ろ強い説得力が付与された気がした。 | ||||
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ディックの作品の世界観はほぼすべてが壊れている。いわゆる統合失調症の人間が見ている世界をそのまま写しているようなものが多い。 だから彼の作品はしばしば支離滅裂で、完璧に意味不明なシロモノになりがちだが、この作品はちゃんとオチがある。壊れた世界がぶっ壊れるというアクロバティックなオチが。 おすすめです。 | ||||
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作家本人も認めているように、とにかく登場人物とSFガジェットがてんこ盛りです。そしてどんなちょっとした人物もガジェットも、パズルのように関連してパッチワークのようです。 最初読みはじめて誰もが挫折するところは、登場人物の名前とそれぞれのストーリーが、前半から全速力で平行して始まるので、覚え切れなくて、誰が誰やら、何が何やらわからなくなる。これまでこの作品が過小評価されてきたのは、その一点に尽きます。 でも、とにかくノートに登場人物の名前と所属など属性、あと出て来た機械、会社名、理論の名称を書き留めて下さい!立ちどころに格段に面白くなります。中南米文学でも百人近く登場人物が出てきてメモ必須の小説ありましたが、同じです。 その全ての人物とガジェットが絡み合って怒涛のラストまでなだれ込む異様なスピード感と、それでいて登場人物のやるせなさが滲む情感(ディックのお家芸ですよね)は、他の作品を凌駕しているかもしれません。 しまった、傑作だった。ディックファンとしてはそういう感想です。 | ||||
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登場人物がとても多くリストが必要、60/358ページまでで30人オーバー。 ストーリーもディックらしく混乱。 SFアイディアも多数登場。シュミラクラ(模造人間)超小型使い捨て宇宙船、火星生物、タイムマシン・・・・ | ||||
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「シミュラクラ」は人間そっくりに作られた工業製品である。現大統領もシミュラクラであり、それを国民は知らずにいる。 ディック作品アンドロ羊とは異なり、シミュラクラが人間と非人間の間で苦悩する姿というものはない。「火星のタイム・スリップ」や「高い城の男」と同じ主人公不在の群像劇となっている。派手なシーンや強いキャラクター性のある小説ではないが妙に面白い。 | ||||
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長らく絶版となっていましたが、ついに日の目を見た本作は、ディックの他の作品とは少し違った印象を受ける隠れた名作です。 ディック自身は本作について「この本が出版された後で登場人物の関係図をつくってみたことがある。はたして首尾一貫しているかどうか確かめるために、もう一度読み返して図を作ったんだ。だめだった。同じグループに属しているのに、おたがいになんの関係もない登場人物たちがいてね」と否定的なコメントを残していますが、いやいやナカナカ良くできた作品だと思います。 これまでとは違う新しいものをつくるんだ、という気合が本書の構成からは感じられます。 確かにディックの他の作品と比べ圧倒的に登場人物が多く、目まぐるしく場面が変わることから前半部分は読みづらさを感じるかもしれません。舞台としては7つほどあるでしょうか。 それでもそれらの関係が整理されてくる中盤あたりから、どんどん面白くなってきます。 ハエの大きさのコマーシャルマシンがぶんぶん飛んで広告を喋り散らしたり、可愛らしい火星人のシミュラクラが人の意識を操作するなど、ディックらしいガジェットの登場にニヤニヤしながら読み進める楽しさもあります。火星移住者の孤独を紛らわすため隣人の役目を果たすシミュラクラとの会話場面は大笑いです。 来るべき世界への余韻を残したエンディングも味があります。 大傑作「火星のタイムスリップ」や「アルファ系衛星の氏族たち」と同じ1964年出版の本書は、同レベルの大傑作とまでは言えずともディックの魅力が発揮された群像作品と言えるでしょう。 これでハヤカワ文庫、創元SF文庫のいずれからも出版されていないSF作品として、残すところは「宇宙の操り人形」くらいでしょうか。 ハヤカワ文庫さん、初期の名作「宇宙の操り人形」の新訳版出版を期待しています。 | ||||
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2050年、アメリカの北カリフォルニア州一帯は中国からの核ミサイル攻撃の影響で放射性 降下物汚染地域となっている。米欧合衆国(USEA)と共産主義体制との二極化に完全に分か れた世界情勢。USEAでは4年に一度大統領が選出される。しかし何十年も昔からファースト レディである一人の女性ニコル・チボドアが常に実権を握っている。 彼女はその美貌は今だ衰えず、特権階級と平民とに分かれた格差社会を形成するUSEA国 民からも憧れと信望を集めていた。 かつては隆盛を極めた精神分析医という職業は現在は法律で禁止された。これはニコルの意 向による法律施行である。さらにニコルは、時間移動機を使って1944年のドイツからゲシュタ ポ創始者であるヘルマン・ゲーリングを現世界へ移送するというプロジェクトを進行中だ。 平民から社会的昇進をする手段として、ホワイトハウスのファーストレディの前での芸術披露 が認められた者がその地位を約束された。 P・K・ディック一流のガジェットやアイデアが複雑に入り組み、メイン・ストーリーが見定め にくいが、間違いなくディックSFの原点となる傑作だと文庫本裏の解説に書かれてある。 確かにそうかもしれない。いつになく多い登場キャラクターたち。その中で一体誰が主役級の 役割を持っているのか? いや皆全て少しづつ重要な役割分担を担って配置されているだけなの だと読後に判る仕掛けじゃないかと思う。1962年の作品であるが、ナチスのネタが入っていたり (都市伝説定番のオカルト=ナチスの様な描写は一切ないが)、放射能汚染地域の登場、深刻な 格差社会などディックのSF的アイデアは今読んだ方が却ってリアル感が増す。 | ||||
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