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(短編集)
インド夜想曲
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インド夜想曲の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.34pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全35件 21~35 2/2ページ
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異国情緒あふれるミステリアスな紀行文学。 主人公はインドで失踪した友人シャビエル(ザビエル)を追って、インドを旅する。ボンベイ〜マドラス〜ゴアへと旅を進めるが、手がかりは一向に掴めず、様々な人物との出会いを通じて、謎ばかりが深まっていく。そして最終到達地、ゴアの高級ホテルで彼が見たものとは。。 ザビエル、神智学協会、呪術師、ゴアの教会など様々な記号を散りばめたこの小説は、紀行文学の形をとりながら、主人公が旅しているのは、実際のインドであると同時に、インド・西洋が織り成してきた500余年の精神史であることに気づく。つまり読者はこの旅を通じて、東洋と西洋がぶつかりあい、融合してきた歴史の一側面をかいまみることになる。最後の解釈は読む人自身に委ねられよう。読んだ人がこの本の中でどんな旅をしてきたのか、が問われるラストだ。 エスニック、オリエンタリズム・スピリチュアリズム、シンクロニシティ、と様々な事を考えさせられる小説だ。本は薄く、須賀敦子氏による翻訳も秀逸で、眠れぬ夜の読書におすすめの一冊といえよう。 | ||||
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ポルトガル出身のある男がインドで消息をたった人物を追い、インドの3つの都市を旅する話しです。この本は出来うる限り予備知識無しで読んでいただくのが1番楽しめる読み方だと思います。 インドはとても大きな国ですし、いわゆる神秘の国でもあるのですが、特に興味を惹かれたことはありませんでしたが、ひょんな事からビートルズのメンバーであるGeorge Harrisonに感銘を受け(音楽も、歌詞も、その哲学も)彼がインドに強くコミットメントしていたので私も少し興味が出てきました。そのインドについてのイメージを、そして夜についての、幻想小説です。私の中にあるインドのイメージを損なわずにしかし新しい1面を見せてくれてしかも不思議な感覚にさせてくれる、読みやすい本です。 何故人を探しているのか?どうしてなのか?誰なのか?様々な謎めいた状態に読み手を置くことで、より神秘の国インドを体験する事になる感覚に陥ります。本を読んでいる間は、何かに周りを取り囲まれます、夜の密度が上がります、是非夜に読んで頂きたい本です。 インドに興味のある方、眠れない夜の読書に、オススメ致します。いわゆるページをめくるのももどかしい!という程のある意味単純な惹き付けるチカラではありませんが、忘れてしまっても、いつか眠れない夜を過ごすときに思い出されるであろう不思議な感覚と世界に繋がる文章です。当然須賀さんの訳も素晴らしいです、変わった物語に興味がある方にも、須賀さんの文章が好きな方にもオススメ致します。 | ||||
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だいぶ前に初めて読んだ時は、 謎めいた暗示やイメージに満ちてはいるものの、 思わせぶりなだけでとくに何かが起こるというわけでもない、 短くて軽い小説としか思わなかったような覚えがあるが、 今回、何度目かに読み直してみて(短いからすぐに読める)、 他にも何人かのレビュアーが述べているように、 上等の酒をごく少量だけ口に含んだような、 独特の味わいがあると感じた。 この何も起こらない短い作品の中に、インドという国の エッセンスのようなものが含まれていると感じるのは、 インドについて誰もが語る極度の貧困や不潔さと、 贅を凝らした超高級ホテル(タージ・マハルやオベロイは、 世界的に見ても五つ星だろう)の調度や料理の華やかさが、 ほとんど等価のものとして取り扱われていて、 美と醜が渾然一体となったインドという広大な迷宮を 夜の夢の中でひたすら彷徨い続けているような、 ひどく曖昧で捉え難い雰囲気が生み出されているからだろうか。 主人公が登場人物と交わす会話には、 形而上学的な話題も多く登場するためか、 どこかボルヘスの作品を思わせるような、衒学的な感触もある。 インドという「重い」対象を扱いながらも、 カルヴィーノが言うような意味での「軽さ」を、 これほどの水準で達成している本書は、紛れもない傑作だと思う。 | ||||
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隣のバングラデシュなら行ったことがあるのですが、やはりインド亜大陸とよばれるほどに 色んなスケールが大きいのでしょうね。そして深い。夜想曲とあるように夜の時間がゆっくりと流れ、伝統に集まる虫の羽音にため息が出ます。インドといってもとても広いので、冒頭にホテルのガイドがあるのは足跡をたどれるのでとても親切な行為だと思います。あー、インドに行きたい。 | ||||
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神秘的で暗い迷宮がこの世のどこかにあって こわいけど行ってみたい、と安全圏にいて思っている方には この小説はとても魅惑的かもしれません。 クリアな世界と論理的ストーリーはないかもしれません。 贅沢なキャンディーをゆっくりと舌でころがすように 小説を味わいたいと思う方にはちょうどいい本です。 私は旅の途中、列車のなか、飛行機のなかでこれを読みます。 そしてじぶんの家にいても。どこでもこの本のなかの世界は一緒です。 | ||||
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私小説風でもあり、ミステリー風でもあるインド紀行。 主人公が訪れるボンベイ(ムンバイ)、マドラス(チェンナイ)、ゴアは、すべてヨーロッパと深いつながりのあるインドの都市。 おそらくヨーロッパ人はこれらの都市に対して、日本人にはなかなかわからない郷愁を感じるものなんだろう。 何度かインドを訪れたことのある自分にとってもっとも印象深かったのは、ある長距離バスのジャンクションのシーン。 待合室で体に障害のある占い師の兄と、その弟に出会った主人公は、自分について占ってもらう。 おそらくは周りに何もないところにぽつんとあるバスの待合室と、その中で行われる伝統的な占い。 なぜだか、そんなシーンにインドというものを強く感じてしまった。 | ||||
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アントニオ・タブッキの代表作の一つ。行方不明の男を探す主人公の幻想的な旅の物語。 独特の世界観の中に、知らず知らず自分も旅人としていざなわれ、迷い込んでしまう。 インドの実在の場所、ホテルなどが登場するので、インドに行った事のある人はさらに楽しめるかも。 | ||||
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語り口が絶妙だ。 最初の一行から、すうっとどここかから手が伸びて襟首をつかみ、物語の世界へひきこまれてしまう。 冒頭で主人公がキレてタクシーを途中で降りてしまうくだりや、ふいに出会った醜悪な容姿の予言者とのやりとりなど、その情景とともに主人公の怒りや畏れが、その場の匂いや主人公の体温とともに伝わってくる。 何かを求め、探し、迷っているのだけれど、その何かがわからないといった青春期特有の逡巡に苛立つ若者にもぜひ読んでほしい。 | ||||
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インドの混沌とした空気が伝わってくる。読者は主人公と共に失踪した友人を探しながら、スラム街のホテルやすえた汗の匂いのする夜の病院など、インド各地を旅するだろう。そして、最後の章に行くにしたがい、自分がインドにいるのではなく、鏡の向こう側に迷いこんでいることに気づく・・・そんな感じにさせられる作品である。なんとも不思議な読後感。とてもおもしろい。 | ||||
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インドで僕は、失踪した友人シャヴィエルの痕跡を追っている。ボンベイ、マドラス、ゴアとインド全土を旅し捜しつづける僕は、その果てにシャビエルと遭遇できるのか・・・?読み手は徐々に、無個性なる語り手「僕」と同体化してゆくことになる。では、そのわれわれの旅の目的とは? それは、「僕」の旅の目的の暗部を、その隠されたところを掬い上げることだ。われわれ自身にそのことが次第にわかり初めてくる。目的の光りに隠れて見えなくなっているものを、冷たく冴えた意識によって、すなわちただ「見る」という純粋行為(それがサディズムだとしても)によって、掬い取ること。たとえそれが非日常の幻と呼ばれるものであったとしても、それを愉しむこと。それが、夜を創りだすということである | ||||
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幻想的でとても美しく、でもクールな印象を与えるとても面白い本です。 物語としてもとてもよく出来ており、長くもなく、難解でもなく、でも味わい深い小説です。夜寝る前に、静かに読みたい一冊です。違う世界に旅できます。 | ||||
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この本は、ぜひ単行本で読んで下さい。単行本でなければ、感動もうすれるというもの。映画もありますが、映画を見ただけではムードだけはつかめますが何だかわからないので、まず、原作をからはいるのをおすすめします。 この世界がお好きならたまらない本です。 | ||||
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本書は現代の幻想文学の傑作に違いない。 簡潔な文体とミステリ-のような筋立ては読者を飽きさせないだろう。 最終章で本書全体の種明かしをされる。果たして、主人公が探してい た人間とは何だったのか・・・それは読んでからのお楽しみである。 | ||||
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最初はよくあるインド好きのヒッピー文学と思いきや、インドはただの舞台でしかなく、その内容はボルヘスの作品のように幻想と思考と知性に満ちているといえるだろう。インドの独特の風土を利用しながら、いつの間にか自分がどこにいるのかわからなくなるような不思議な感覚、友人探しという読むものを引き付けるミステリー性を備えながら、哲学的な命題を探るような短編を重ねあわせたような奇妙な旅行記。最初に書かれた無意味とも思える命題が結論のあっけなさを納得させる循環性はポーの作品と近いような気がした。とにかく幻想的で非常に面白い作品である。訳者の須賀氏が解説で述べているように、「だまされたと思って」是非一度読んでいただきたい本の一冊である。 | ||||
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タブッキの小説は幻想的と言われるが、他のどんな幻想小説にも似ていない。この小説も神秘的なイメージに満ち満ちているが、真に非現実的な事件は何も起きない。ただ淡々と、「ぼく」がインドで出会う人々や事物が書き連ねられているだけである。ところが麻薬のように病みつきになるタブッキ独特の語り口と、核心をさらけ出さずほのめかすにとどめるという文学的詐術があいまって、ただ奇想天外なだけの幻想小説では太刀打ちできない強烈なイメージの「場」が形成される。タブッキは幻想を描写しない。タブッキは読者の心の中に幻想や神秘を作り出す。タブッキの「レクイエム」には「ある幻覚」と副題がつけられているが、彼の小説にはどれもまず一個の「幻覚」として構想されているような気がする。結局す!べては誰かの心の中で起きていることという印象が強く、それが作品全体にやはり幻覚めいた浮遊感を与える。「インド夜想曲」はそんなタブッキの幻覚がもっともおいしい状態で味わえる傑作である。名人芸に達している「さりげない」幻想性の匙加減といい、各々の断片的エピソードの核をなすイメージの美しさといい、絶品としかいいようがない。更にタブッキのもう一つの特徴である小説全体に施された文学的詐術=仕掛けも見事。最終章を読み終えた読者は個々のエピソードの神秘を越えた更なる迷宮へと連れ去られる。タブッキは凡庸な作家のように「説明」(=ご丁寧な謎解き)をしないので、ただ煙に巻かれただけと感じる読者もいるかも知れないが(私も最初はそうだった)、妙に気になって何度も読み返すうちにはまってしまう。それは軽やかで短いタブッキの世界の裏側に、読者のイメージをどこまでも広げて行く懐の広さがあるからだ。タブッキは癖になる。 | ||||
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