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(短編集)
宇喜多の捨て嫁
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宇喜多の捨て嫁の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.36pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全50件 41~50 3/3ページ
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直木賞候補ということで、評判を聞いて手に取った本。 もともと歴史にさほど詳しくなく、宇喜多直家の名も大河ドラマで聞いたことがあるぐらいだったが、読み始めると止まらず、面白く読めた。 表題作では、策略のために実の娘を利用する非道の人物として描かれていた直家だが、読み進めるごとに彼の人間的な一面が浮き彫りにされる。気の毒な出自から始まり、彼が敵に囲まれた戦国の世で生き延びる術として策略を重ねねばならなかったことが分かる。身内にとっては非道な人間だが、家臣を大切にしたというし、意外と部下にとってはよい武将だったのかもと思わされる。 信長や秀吉の活躍の影に隠れがちな、アンチヒーローに光を当てた力作。デビュー作で直木賞ノミネートの実力派、今後が楽しみな歴史小説家の登場だ。 | ||||
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NHK大河で陣内孝則さんが演じていた宇喜多直家の一生の興味が湧き、本書を一読。どこまでが史実で、どこからが創作なのかはありますが、この時代の播磨灘地方一帯をめぐる乱世暗闘の凄まじさがひしひしと迫る一作でした。正に一気読み。 「疑われたら最後なのじゃ。主に灯った疑心の火を消すことが不可能なのは、古今東西の歴史が証明している」(100頁) 「そうせねば、今度は我が一族が主から仕物される。浦上家には人質もとられている。一族のためには殺らねばならなかった」(同) 「婿殿、計略を覚えるのじゃ。孫子も、”兵は詭道なり”と申しておる。百の兵を損じる勇ましき手柄よりも、千の兵や万の民の命を安んずる謀(はかりごと)を駆使せよ。力攻めなど最後の手段じゃ。民のためを思うならば、悪人と罵られることを厭うな」(145頁) なお、評者の一押しは「貝あわせ」。やったと思ったら裏切り者にされていたという劇的展開が見事。本書全体として文章はやや荒削りで意味が取りにくい箇所もありましたが、期待の大型新人の方ですね。 | ||||
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表題作を雑誌掲載時に面白く読み、単行本の発売を楽しみにしていた作者さんです。 全編、期待に違わぬクォリティの高さでした。 宇喜多直家、という一般的にはあまり知られていないであろう戦国武将をメインに据え、 彼とその周辺人物、そして彼の生きた戦乱の世が骨太な筆致で描かれています。 これでもかとばかり繰り返される裏切り、謀略、争い。 残酷な運命に翻弄されながら、それでも必死に生きてゆく人々の姿。 気付けば物語世界に引き込まれて、最後のページを閉じるまで出られなくなっていました。 考え抜かれた構成なのでしょう。 時系列や視点人物をあちこちに飛ばしながらつづられてきた物語が、 最後の一話で最初の一話につながって、ぴたりと円環が閉じる。 なんと見事な、とうならされました。 ・・・じゃあなんで星が一つ少ないのか、という理由ですが。 まず一つは、諱(いみな)の横に官職名のルビを振るという表記のしかた。 斬新ではあるけれど、やはり読みづらい もう一つは、宇喜多“和泉守”直家、という、官職名を“ ”に入れた表記のしかた。 これもわかりやすくするための工夫なのかもしれませんが、“ ”の多用が、目にうるさく感じられる。 普通に、宇喜多和泉守直家、でいいじゃないですか~、と思ってしまったのでした。 細かい点ですが、字面の印象って意外と重要ではないかと。 ぱらっとめくってみて、「うーん・・・なんか読みづらいな」と思ってやめちゃう人もいるかもしれません。 というわけで星四つですが、内容的には文句なく星五つです。 血みどろの戦国時代にどっぷり全身浸ってみたい方、ぜひどうぞ。 | ||||
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タイトルに惹かれて読みました。歴史モノに疎いがそれでも一気に読めた。わかりやすいし難しさもない、それでいて格式ある読み物でした。確かに今年読んだ読み物のなかで心に残る一冊となった。 現代の企業で行われるM&Aなんて生ぬるい。これは戦国時代といっても鎧モノの類でなく、まさしく人の生きざまを描いたもの。今、平凡な人生を送るなかで些細なことでつまずきますが、心の中では嵐となってます。だからでしょうか。凄惨な戦国時代を生きる登場人物に感情移入して自分自身を投影してしまいました。そして読後感はしんみりと。なんといってもそれぞれの人物の行動の根底に愛があったことを感づかされた気がします。 | ||||
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連作短編だが、通読することで宇喜多直家という男の生きざまが浮き彫りになる。 宇喜多直家はいかにして「あの」宇喜多直家になったのか。 冒頭、「宇喜多の捨て嫁」で娘・於葉の目から見た、歴史ドラマや小説でおなじみの悪人・直家を印象付けておいて、2作目からは幼少時の直家の話となる。3作目の「貝あわせ」が直家の悲壮な決意で幕を閉じたあとは、他の視点人物から見た「あの」宇喜多直家が描かれており、その間にあったであろう彼の変化と葛藤に、胸を痛めずにはいられない。最終話「五逆の鼓」の、様々な人物の業の深さに、読後しばらく考えさせられた。 作者が何かのインタビューで「人間を描きたかった」と言っているのを耳にしたが、まさに宇喜多直家という複雑怪奇な男を描き切ったといえよう。 | ||||
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歴史に全く疎い私でも、引き込まれて読み進んでしまう作品です。 直家を決して悪党とは思えない、切なさ、辛さが伝わってきます。 愛情があるからこそ、のようなものさえ感じられます。 胸にきました。 | ||||
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愁眉極まる屍を越えていく宇喜多和泉守の後ろ姿を見ました。 通俗小説に堕していない。戦国という舞台を借りて、生きていくことの厳しさが描かれている。 捨て嫁は、捨て駒。尻はす 和泉の守の業病。 血膿の腐臭か 屍の死臭か。 | ||||
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※誤って消してしまったので再送です。 マイナーな戦国武将・宇喜多直家のお話。 表題作の「宇喜多の捨て嫁」は最初は名前を把握するのに手間取ったが、後半からはスラスラと読めた。終盤の囲碁の場面はハラハラした。 「無想の抜刀術」はうってかわって、二人称視点。二人称の歴史小説は初めてなので戸惑う。最後に二度大きなどんでん返しがあり、一度目は見事。二度目のはどうだろうか。個人的にはありかな。 「貝あわせ」は、最初はまったりと進む。ホームドラマのノリで正直飽きかけたが、後半はドドウの展開。これを前半でもやってほしかった。 「ぐひんの鼻」「松之丞の一太刀」を読んで、作者は歴史小説を書こうとしているのではないと思った。きっと、現代小説ののりで、歴史は題材に選んだにすぎないのだろう。 「五逆の鼓」は、収録作の中で一番感動した。冒頭作のエンディングとリンクするが、一読目と全く違う感動があった。 普通の歴史小説と思って読むと★3つ、最初から歴史小説ではないと思って読んでいれば★4つかな。 ある意味、おしい。 | ||||
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宇喜多直家と言えば、悪党達が跋扈する戦国乱世の中でも最悪中の最悪の人物との評価が一般的なのでしょう。 暗殺・毒殺・裏切り・偽りの降伏、本書でもその様な直家の評価に沿った直家像が描かれています。 そして、何といっても「尻はす」持ちの直家の血膿・腐臭が全編に渡って溢れ・漂ってくる所が本書の特徴でしょうか。 一方で、何故直家がそのような人間となって行ったか、丹念に織り込まれたストーリから作者の意図を理解する事が出来ました。 当たり前ですが、生まれた時は人間皆似たようなもの。 若き日の快活で素直な直家が、次第に戦国の梟雄として変容していく姿は、あたかもスターウォーズのダースベーダを彷彿とさせます。 読後に感じるものは、直家持つ寂しさ・孤独感の凄まじさ。 久しぶりに、どっぷり世界観に浸れる一冊に出会えました。 | ||||
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「碁に捨て石という考え方がありもうす。一石を敵に与えて、それ以上の利を得るというもの。(〜中略〜)宇喜和泉守様のご手腕は、まさにこの捨て石や捨て駒のごとき考え。そう、正室や己の血のつながった娘さえも仕物に利用する。 これを言葉にするなら、捨て石ならぬ……捨て嫁」 オール読み物新人賞を受賞した表題作は、直家によって「捨て嫁」にされてしまった於葉が、それまでに犠牲となった母や姉を思い、強い信念のままに直家と対峙しようとする物語。切れ味の良い短編です。 表題作は他五編とも密接に絡み合っており、この本は六つの短編集でありながら、最終的には宇喜多直家を中心に据えた一つの複雑な物語となっています。 一つ一つのシーンに無駄がなく、恐ろしく緻密にストーリーが練られており、流石はオール読み物新人賞の受賞者だと唸らせられました。文章の切れ味も良く、時代小説としての格調の高さと読みやすさが両立しています。 鮮やかなストーリー展開によって浮かび上がる、それぞれのキャラクターの情念。理不尽な運命に抗った結果、背負わされていく業。後半は不覚にも泣いてしまいました。 | ||||
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