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(短編集)

宇喜多の捨て嫁



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【この小説が収録されている参考書籍】
宇喜多の捨て嫁

宇喜多の捨て嫁の評価: 4.36/5点 レビュー 50件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.36pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

歴史とは作られるもの

梟雄と言われる宇喜多直家だが、悲惨な幼少期を過ごしたことが知られている。その後は血戦を避け、謀略で城主を殺して家を乗っ取るやり方を好んだと言われている。松田、金光、伊賀、後藤、浦上家に娘を娶らせて全て暗殺したとか。実際には松田、後藤以外は怪しいものらしい。後の世で作られた像なのだと思う。

実際、宇喜多家の家臣の結束は固く、明善寺合戦でも見られる様に十倍以上の難敵にも正面が闘って勝っている。浦上氏の方が余程に謀略を駆使している。

この小説はオムニバス形式なのだが、時代が飛ぶのが不自然。登場人物の視点が異なるのはまあ良いとして、読みにくかった。

 良い点を挙げると最後の話で「宇喜多の領地は住みやすい」との評価。農民に重税と軍役を課すのでは無く、謀略で城を落とせれば、民百姓は潤うって訳。恐らく、直家の考えはここに発していると思う。乙子4000石の苦労から労せずして領地を広げる工夫をしたのだろう。
宇喜多の捨て嫁Amazon書評・レビュー:宇喜多の捨て嫁より
4163901507
No.2:
(3pt)

宇喜多直家の巨大な闇と謎深さを再確認

例えば、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」での描かれ方(=陣内孝則が好演!)が典型的だが、梟雄としてのイメージが大変強い宇喜多直家。確かにそのような史的実績も十分なのだが(笑)、意外にも信仰心に厚く、また若い頃に不遇時代を共にした家臣達とは親身に付き合ったという。主家のほか娘や姻戚筋をガンガン謀殺する直家の暗黒エピソードは本作でも描かれているが、古株の家臣達との奇妙な連帯感は描き込みが浅い。それは、恐らく直家のようなヤバイ人間に命を預け続ける近従達の心理、意外に家来は大事にした直家の複雑な内面に踏み込むことが難しかったからではないか。また、最終話がやたら説明的である点、クライマックス(=特に剣戟の描写)で状況が読み取りにくい話が複数あった点から、星は渋めにつけた。「無想の抜刀術」をキーワードに始皇帝や曹操、信長と並ぶ能力を持つ男として直家を散々持ち上げている試みも、信長/秀吉軍の尖兵となることを選ぶ直家の運命に矛盾しているので、あんまり利いていない。

 ただ、直家が梟雄化する過程には、主家(浦上家)における家中の事情がかなり影響していたはずだという視点、また直家のような複雑な人間を描くためには、周囲の複数の人間の目から一つのドラマを描くという手法が有効だということも、この作品により教えられた。作者は最新作「宇喜多の楽土」(2018年)でも、再度、宇喜多氏に挑戦している。そちらも手に取ってみたい。
宇喜多の捨て嫁Amazon書評・レビュー:宇喜多の捨て嫁より
4163901507
No.1:
(3pt)

「捨て嫁」という表題に新鮮さを求めた期待を裏切る凡作

表題作の他、「無想の抜刀術」、「貝あわせ」、「ぐひんの鼻」、「松之丞の一太刀」及び「五逆の鼓」の全6つの短編から構成される、戦国の梟雄、宇喜多直家を題材とした連作短篇集。宇喜多直家に着目した点が目新しいのかも知れないが、内容的には物足りないものを感じた。

表題作は、直家の娘で(名目上の主家である)後藤家へ「捨て嫁」として嫁いだ"於葉"の視点から「直家vs後藤家」の闘い(騙し合い)を描いたもの。しかし、戦国時代、政略結婚や下剋上は当り前の世界の上に、作中にこれといった工夫が織り込まれていないため、さしたる新規性は感じなかった。何より、忠臣や逆臣の描き分けに汲々としていて、肝心の"於葉"のパーソナリティを描き切れていない点が痛い。表題作以外の短編は、数多の戦国小説と大同小異で、表題作の執筆後、一冊の本として出版するために無理やり追加した感が否めない。ちなみに、「無想の抜刀術」の遣い手とは直家自身の事である。表題作以外では、直家は初めは人情に厚い実直(!)な武将として描かれているのである。直家を一人の人間として描こうとしたのだろうが、余り成功しているとは思えない。"於葉"の影が薄い点も表題作との乖離を感じさせる。

宇喜多直家が梟雄と呼ばれる様になった過程を描いている点だけが唯一の取り柄の作品で、「捨て嫁」という表題に新鮮さを求めた私の期待は大きく裏切られた。
宇喜多の捨て嫁Amazon書評・レビュー:宇喜多の捨て嫁より
4163901507

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