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ブラバン
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ブラバンの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.62pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全50件 21~40 2/3ページ
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この作品を紹介する新潮社のリーフレットには、「高校で吹奏楽部に入った僕は、音楽の喜び、忘れえぬ男女と出会った。二十五年後、再結成話が持ち上がって……。胸を熱くする青春組曲!」とあった。このキャッチ・コピーを丸々信じてしまった私は、さぞや感動のドラマが味わえることだろうと思ってこの作品を読み出したのだが、感動とは別次元のドラマはあるものの、どこをどう読んでも、感動は全く得られなかった。 NHK・BS放送に、1年に1回、全国の吹奏楽アマチュア演奏家が集まって一期一会のオリジナル・バンドを結成し、日本を代表するミュージシャンと一夜限りのスペシャル・コンサートを開く「響け!みんなの吹奏楽」という番組がある。この番組は、毎回、約100人のアマチュア演奏家の中から何人かに焦点を合わせたドキュメンタリー・ドラマ・タッチで構成・演出されており、視聴者もその感動を共有することができるので、私も毎年楽しみに観ているのだが、この作品には、読者が共有できるこうした感動のドラマが全くないのだ。 まず、キャッチ・コピーから、私は二十五年後の再結成話がストーリーの中心だと思っていたのだが、それはほとんどサイド・ストーリー扱いで、物語の焦点は、完全に高校の吹奏楽部時代に合っている。しかし、それはそれで、いくらでも感動の青春ドラマにすることはできたはずと思うのだ。 感動のドラマがない原因として、根本的に問題だと思ったのが、巻頭の登場人物一覧に載っている人が34人もいるということだ。とにかく、登場人物が多過ぎて、名前が出てくる度に一々この一覧に戻り、登場人物名の下にある人物プロフィールを見ないと、どんな人だったかわからなくなるのは、私の記憶力の問題だとしても、登場人物が多過ぎるがゆえに、特定の人に焦点が絞られず、ドラマが広く浅く拡散してしまっているのだ。この高校時代の物語は、内容から見て、大半が筆者の広島の高校時代のノンフィクションだと思われるのだが、たとえフィクションになったとしても、もっと登場人物を整理して、特定の人に焦点を絞った感動の人間ドラマを描いてくれないと、読者は、筆者のありきたりで、とりとめのない青春回想記に付き合わされただけというフラストレーションを感じてしまうのだ。 | ||||
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帯に書いてあった「この青春小説をあなたは生涯忘れない」に釣られて買ってしまいました。 結果的に後悔しています。 明るく爽やかな小説を期待していたのですが、結果的に裏切られてしまいましたから。 近くの森から聞こえてくる蝉の声、そして夏の抜けるような青い空、一面の草原、そんな情景を想像していたのに、実は悲しげなウミネコの声が聞こえてくる木枯らし吹きすさぶ北の海岸だったといった感じかな。 この小説、誰かが書いていたとおり伏線(というより思わせぶりなほのめかしみたいな物、このネタがかなり後の完全に忘れてしまっている頃に出て来たりするワケで)がバリバリは貼ってありますので、一度読了後にすぐまた読み返す必要がありました。 「この言葉はあのことを意味してるのかあ。アホくさ」、「こんなこと、ここで書かれても分かるわけないじゃん」なんて再読できます。 1冊で2度おいしい・・・かも。 正直、主人公にまったく感情移入出来ませんでした。単なる人生の敗残者、優柔不断のヘタレ中年です。正真正銘のヘタレ、筋金入りのヘタレです。この男、本当に人のために『損な役回り』なんてしたのだろうか。全く信じられませんね。高校時代には、同学年の吹奏楽部員がチンピラのために破滅しかかっているのに、全く気にしない。助けようとも思わないし、それを知ったことを迷惑とすら考えてしまっているし。結果として彼女が行方不明になってしまっても、我関せずという完全なエゴイストだよ。そして25年後、再会した先生が最後の拠り所として自分を頼りにしているのを分かっていても、ヘタレ特有のひねくれたプライドと自分が成長したと思いたいがために簡単に切り捨てる(愛とか何とかないにしても、弊履の如くポイッですから)という冷血漢ですしね。 といった風に出てくる出てくるエビソートが概ね暗い、重い、情けないの三拍子そろっている。 それが読後感をとても不快にさせてくれる。 「ほろ苦く温かく奏でられる」というよりは「心根が冷え冷えする寒々しい」小説でした。 部員の披露宴で演奏するため25年後に再び再結成・・・、といっても、高校時代のエピソードにその必然性が全く感じられません。 たとえばみんなで切磋琢磨、毎日毎日猛練習、顧問・部員全員一丸となり最高の演奏を披露して、結果として普門館に行けた、そのよき時代の仲間達ともう一度というようなシチュエーションならいざしらず、みんなテンデンバラバラ、好き勝手、顧問とも確執があり、そしてコンクール地区大会での演奏は最低、これで3年春(つまり吹奏楽部の最大のイベント、コンクールに一緒に出場していないわけ)に転出した女の子のために25年後に集まる?笑止千万。 はたして、作者はこの程度の繋がりの連中が高校卒業後25年もたって、また友情(高校時代の描写からすると、それ自体存在したか疑問でもあるが)を育んでいられると信じているのだろうか? はたして、作者は25年間一度も楽器を吹いたことがない人たちが集まって、たった数度の練習で曲が人様に聴かせられるよう仕上がると思っているのだろうか?。 また、高校時代に、一部の部員たちがなぜ80年代にしても、とてつもなく時代遅れのグレン・ミラーの曲をやりたがるのかがまったく説明不足(日本の吹奏楽っていつになったらGミラーやBグッドマンなんかの過去の遺物から卒業するのだろうか。ある人曰く、吹奏楽界の長老達が、昔、進駐軍が持ってきたそれらの曲をハイカラだと信じたため、いまだにその呪縛から逃れられないからだと言ってましたが(笑))。これでは単なるバカ。そして、あんな簡単な曲も出来ない吹奏楽部って・・・。 音楽などの蘊蓄がすごいなんて書いてあったりするが(多分吹奏楽を知らない人でしょう)、間違いも多いし、ただ作者の思い出を書いただけという感じだと思うけど。 そもそも自由曲にあの曲を選ぶというだけで「ありえねー」ですもの。 なぜこんな小説の評価が高いのか・・・全く私には理解できないです。皆さん25年後の再結成というシチュエーションに酔っているのかな。 | ||||
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40歳を過ぎた主人公が高校時代の吹奏楽部の集まりをきっかけにして 高校時代を振り返る、という内容です。 別に何かがドラマチックに動き出すわけでもなく、 激烈なハッピーエンドが待っているわけでもない。 最初から最後まで、淡々とした口調で語られる物語です。 いわゆる「青春ブラバンもの」とは毛色が違いますね。 最初は「登場人物多過ぎて、よく分からんなぁ」と思っていましたが、 これは何度か読むうちに味が出てきます。 むしろその登場人物の多さが、「高校の吹奏楽部」というものを 分かりやすく表しているのかも知れません。 ボリュームも結構あるので、最後の方になると最初のことを忘れますが、 色々と再発見がありますので、読み直してみるのがいいですね。 あと、この主人公の自嘲的というか、自虐的というか、 そういう「独り言」的な語り口調が、個人的には面白かったです。 学生時代を吹奏楽部で過ごした人も、軽音楽部で過ごした人も、 ただそれらのクラブに入ろうかと悩んで過ごしただけの人も、 きっと興味深く読めるのではないかと思います。 | ||||
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バスクラのマウスピースの厚みや音、息使い。 携帯もゲームもパソコンもipodもない、学校とブラバンが全てだった当時の高校生には、大変鮮やかな過去を連れてくる気がします。 クラリネットからバスクラになって得意だった(ちょっと勘違いした)自分を振り返っては恥ずかしく思い出す、そんな内容でした。方言も、情景も、出身が似ているためすんなり入り、天才肌の先輩、物事をややこしくする同級生、極端な音楽至上主義、享楽的なその場しのぎ、本当にそんな高校生が集まっていた部室をまざまざと思い出すことができます。 ごちゃごちゃで合奏の時だけ個人が消え、一つの音になる。 自分はなんだったんだろう。どのピースだったんだろう。登場人物でいえば誰なんだろう。成功者もそうでない者もブラバンのメンバーになれば皆同じ。昔のまま。 合奏している時は本当に天にも昇る、最高の時間でした。あの時間があるからこそ生きてこれたのかもしれません。 捨てていった過去を継ぎ合わせて読み、最後の2ページで自分は救われました。出来なかった事をやってくれたようで、やらなかった自分が情けなくせつなくてしょうがない。25年経って楽器は今でも傍に置いてはいますが、吹いてはいません。 かなり読み手を絞るタイプの内容だと思います。若いブラバンメンバーはまだ読まないほうがいいような。 | ||||
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「高校時代のブラバンメンバーが25年の時を経て再結成する」 吹奏楽に青春を捧げた人なら、この設定を聞いただけでも ワクワク、ウズウズしてしまうだろう。私もその一人です。 あの頃と同じメンバーでもう一度音を奏でたい、 そう思い描いたことのある元吹奏楽部員は少なくないはずです。 けれど、主に楽器や場所の問題から スポーツのようには簡単に再開できないのが吹奏楽。 そんな我々の夢を叶えてしまうとは・・・。 もしかしたら、自分たちにも出来るかもしれない!? いや、それが無理だとしても・・・ 吹奏楽ってやっぱり最高だな、やってて良かったなと あの頃の自分たちと重ね合わせ色々思い出してしまいました。 登場人物が多過ぎたり、方言が読みづらかったり 文章の好き嫌いは多少出てくるとは思いますが、 総合的にみて私はとても楽しめました。 ブラバン経験者にもう一度夢を与えてくれる、そんな1冊です。 | ||||
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Amazonのレビューでも、mixiのレビューでも、単行本の評価が高く、文庫の評価が低い。もちろん内容は同じ。だがここまで差が出る例は少ない。 つまり、特定のファンにとっては大好きな作家で、非常に熱く推薦できる作品なわけだ。だがそれ以外から見ると、わかりにくい作品のようだ。 わたしは、もどかしい。 技術的には非常にすぐれた作家で、だからもっと上手く書けるはずなのだ。 どうしてもっと素直に、生理的に気持ちよい方角に書けないのだろうか、この人は。するっとまっすぐに書いたら、何か不幸なことでも起きると勘違いしているんじゃないだろうか。 考えすぎなんじゃないかな。 考えてもろくなことにならないと思うけど。 | ||||
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お父さんに買ってもらったフェンダーはどうなったのですか? | ||||
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映画「スウィングガールズ」や「ブラス」のようなノリのいい青春物語と思ったが、全く違った。部員の遅い結婚式で演奏しようと再結成されようとする高校時代の吹奏楽部。80年の時代と25年経った現在とをフラッシュバックさせるちょっとほろ苦くもある青春グラフィティ。 作者自身、広島の高校のブラスバンドで弦バスをやっていたそうだ。その自分を投影したと思われる主人公片平が語り部となり、部員の当時と今の姿がカットバックする。作者のその思い入れと今昔の対比のなかに隠された25年の挫折にシュンとなる。いわゆる「失われた20年」という日本の停滞が色濃い…といえばちょっと大げさだろうか。 純化された素描であって、しかも、現実の場面が鮮やか。挿絵は漫画家の福山庸治。そのイラストが見事で、線描と淡い水彩でしかもリアルなのはデッサン力のたまもの。それがとてもこの小説に似合っている。 懇切な「登場人物表」がついている。これには最初はちょっと苦笑したが、読み始めるとこれが必須のものになった。総勢34名の部員と登場人物が多いのと、25年をタイムスリップしながら頻繁に往き来する、「掛ける2」の70人の人物像をつかむのはたいへん。 とても面白かった。 そう思うのは、自分自身が高校でオーケストラに属していたこと、30年、40年という時の隔たりの哀切を痛いように感じる年頃になったからだろうか。 | ||||
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『ブラバン』です。表紙イラストから想像がつく通り、ブラスバンドが題材です。 高校吹奏楽部を扱った青春小説、というよりは、本文にも明記してありますけど、そこから25年後に再結成を目指すエピソードがあくまでもメインです。高校時代描写はあくまでも回想です。 面白いか面白くないかの二者択一でいえば、面白かったです。 ただし、欠点というか問題点も多く、手放しでは賞賛できません。現実に賛否両論になっているようですが、当然だと思います。 以下、良い点と悪い点を箇条書きで。 良い点。 ・音楽に関する蘊蓄が詳しい。へぇー、と思う。 ・随所に良いエピがある。ベースを買うシーン、ローマ法王、定時制に移った同級生、松山の先輩の純情、優しい先輩がビゼーを評するシーン、など。 ・緻密に計算された構成、張り巡らされた伏線は、確かにすごい。 ・起こる出来事がまるでドラマみたいに(そりゃもちろんフィクションの小説ですが)劇的ですごいので、起伏に富んでいるのは確か。 ・登場人物が個性豊か。 ・高校時代の青春エピと、それから四半世紀経って四十路となってのブラバン再結成エピの双方があるため、共感のストライクゾーンが広め。 次に、読む人によっては作品世界に入り込む妨害になりかねない問題点。 ・登場人物が多すぎる。巻頭に主要人物表がありますが、確認しながら読んでも覚えきれない。 ・しかもその登場人物が、四十路の現在シーンと高校時代現役シーンとの二つの顔を持っており、しかも担当楽器もあるので、覚える要素が三倍。 ・本作は、四十路の現代シーンと高校時代シーンと、蘊蓄とがそれぞれ三分の一ずつあります。それらがめまぐるしく入れ替わるので、慌ただしいです。 ・会話シーンで台詞が六個くらい連続すると、どれが誰の台詞だか分からなくなってしまいます。広島の方言のため、一部を除いてキャラの台詞に個性が無いですし。 ・蘊蓄も、音楽に関連するものはともかくとして、音楽に関係無いようなものも多い。そして、読者によって興味深い蘊蓄もある反面、興味を抱けないであろう蘊蓄も多い。 結末はなんとも渋いといいますか、かなりの後味の悪さですが、……それでもその後については語られていないので、読者の想像力に委ねられたと言うことでしょう。 面白さから問題点を差し引いた自分的な評価も、あるいは読む人によって賛否が分かれることを考慮しても、いずれにせよ★は3です。 | ||||
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旧吹奏楽部メンバーの25年ぶりのバンド再結成を巡り、 高校時代の回想と25年後の現在と行き来しながら、物語は進む。 25年という歳月の間に、メンバーそれぞれにいろいろな現実があり、 高校時代という美しく見える過去に対する思い入れがあればあるほど、 そのギャップが切なさを作り出す。 非常にドラマティックなことが発生せず、最後も綺麗にわかりやすく終わらないことも、それでも人生は続いて行くということを描いているようにも思える。 ただ、登場人物も多いにも関わらず、時代が行き交うので、登場人物紹介を何度も読んだし、物語としても雑然とした印象は拭えない。 現実ってそういうものだと言われればその通りなのだが、基本的に ・登場人物と同世代で、描き出される現実に共感できる人 ・吹奏楽経験者 ・80年前後の音楽に造詣が深い人 であれば物語を楽しめると思う。 | ||||
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映画「スウィングガールズ」のファンであるので、二番煎じのような感じがいやで手に取らないでいたが、文庫本になったのをきっかけに読んでみた。たとえ二番煎じでも、良い作品であればいいと思ったからだ。音楽を背景にした青春ものは面白くなる要素が多い、という期待もあった。しかし、その期待は大きく裏切られ、今年読んだ本では最低であり、映画「スウィングガールズ」には到底及ばず、比較するのも失礼ということが分かった。 「スウィングガールズ」には落ちこぼれたちの予想外の音楽との出会いという驚きがあった。「ブラバン」にはそういうものはない。従って、この小説はただの(魅力のない)青春小説に過ぎず、音楽が登場する必然性はまったくない。いろいろな楽器類はその小説を彩る小道具に過ぎない。ただの青春小説でもかまわないが、そのわりに小説の魅力もない。主人公が全く面白みのない人物である。どうしてこういう人物が主人公に選ばれたのか、不思議でしょうがない。また、ほとんどユーモアというものはない。 そして、肝心の物語の設定だが、高校時代のクラブ仲間が20数年後に再び演奏のために集まるというのがその柱になっているのだが、これも非常にクサい感じがする。この作者はところどころでこの手のクサさを発揮している。 どれをとってみても、「スウィングガールズ」に遠く及ばないのである。 | ||||
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申し訳ないけれど、小説としての完成度は低いです。 高校時代のブラスバンド部が、メンバーの結婚披露宴をきっかけに25年ぶりに再結成することになり、 そのメンバー集めと25年前のエピソードが描かれています。 ただ、登場人物が多すぎることと、時系列が行き来する手際が良くないために "この話は後で述べる" と言うような記載がそこかしこに見られます。 現時間と回想を織り交ぜる手法は、上手く使えばリズムに変化を待たせる効果があるのでしょうが、 この作品の場合は、読みにくくしているだけです。 登場人物を減らし、エピソードごとに話を刈り込んで連作短編のようにした上で、 25年後の再結成の話に持って行った方がスッキリと読める作品になった気がします。 また、章の頭で思わせぶりな間を持たせる書き方をしているのですが、 エピソード自体に力がないので、推進力にはなっておらず、不快です。 最後の主人公の思いも独りよがりで感情移入できませんでした。 書きたいことがたくさんあるのは分かりますが、 もっとエピソードを厳選し、丁寧に描いて欲しいと思いました。 | ||||
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はやらないバーを経営している他片は、 高校時代に所属していた吹奏楽部の同級生・皆元が亡くなったことを知る。 同時期、彼らは、元部員・桜井の要望で、 彼女の結婚式のため、25年ぶりに再集結し演奏を披露することになる。 25年ぶりに会う仲間たち、そしてその消息を聞きながら 他平は1980年の、高校時代を回想する。 高校時代からの25年。 同じ時をすごし、同じものに熱狂し、自分たちの未来に漠然とした夢を抱いていた彼らが 25年ぶりに出会って、たぶん当時の彼らは想像もしなかっただろうお互いの現在を知る。 この、高校時代から25年という年月が鍵なのか、 語り手である他片の性格なのか、 彼らの現状が厳しいものであれ、穏やかなものであれ そこには深い感情の移入はなく、たんたんと語られています。 自分と相手を比べて、卑下するでも見下すでもなく、ただ受け止める他片は けれど当時は知らなかった現実も知り、ほんの少し変化する。 それだけといえばそれだけのお話で、 でも何か印象的なお話でした。 クリアな表面部分と、淡々とした印象、まだ自分は知らない「未来」の苦みというのが このお話を読んだ印象なのですが むかし、著者の少女向け小説を読んだ時も、同じような感想を抱いていました。 謎めいた印象が強くて、他の作家さんのお話に比べ、熱狂はしなかったのに 印象深くて、折々に本から学んだ「未来」の苦みを思い出しては怖くなっていました。 今現在は、この『ブラバン』は自分にとってはまだまだ未知の「未来」のお話なのですが また折々に思いだすことになるような気がします。 | ||||
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大変評判のいい作品である。 良さがわからないわけではないが、 私には合わなかった。 「作家志望の、たいして仲のよくもない友人の日記を延々と読まされた感じ」 がしてならない。 日記というほど、深く自分を見つめていないし、 やたらめったら人が出てきて、誰をも書ききれていない。 現実にあったことプラス願望がこの小説なんだろうけど、 所詮「作家志望者」の日記レベルでしかない。 自分の青春時代を書くというのは、 簡単そうで実に難しいということを実証した作品。 「一瞬の風になれ」や「バッテリー」の足元にも及ばない。 | ||||
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文庫の帯の宣伝文句に釣られて買いましたが、ストーリーは大きな山もなく、方言のセリフは 最後までどうしても違和感がぬぐえず、読後の感想と呼べるものが浮かんできません。 主人公の年齢設定よりおそらく15歳くらい年下の私には、高校時代も現代にも共感を持つことができず 例えるなら 「プライベートの付き合いがあるわけでもなく、普段からそれほど面白い人でもない 会社の先輩とランチが一緒になって、高校時代の思い出話をずっと聞いていた」 という感じでした。 吹奏楽・楽器・クラシックに造詣が深い方は、語り手のうんちくの部分を楽しめるかも知れません。 | ||||
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場末のバーに落ち着いた主人公が、吹奏楽部時代の仲間に声をかけられ、 それをきっかけとして過去を振り返りつつ、現在を見つめる物語です。 本書の素晴らしいところは、上記の設定を最大限に生かしているところです。 歳をとった主人公の視点から描写された高校生像は、 同じく歳をとった私が高校時代を振り返る時の実感に一致しました。 では、その実感とはどういうものか。 それはつまり「ほろ苦くも燦然と輝く青春時代」。これに尽きます。 異論はあると思いますが、歳をとってから若い頃の事を思い出すと、 当時はどんなに平凡な出来事であったとしても、 それらは全て美しい思い出や、悔恨の思いなど、強い印象の出来事に昇華します。 平凡な日々など存在しなかったように思えます。 そういった思いを、現在と上手く対比しつつ描いているので、 浮き足立つようなこそばゆい青春物語ではなく、 ほろ苦くも燦然と輝く青春時代を実感させてくれているのです。 そんな実感を覚えるのは、ひょっとしたら、 当時の平凡な日常だけを忘れてしまい、 強く印象に残ったことだけを都合よく覚えているから、だけなのかもしれません。 だからこそ、いつだって過去は印象的で、遠い物語となっている。 しかし現在という現実は、過去と強くつながっている。 本書はその事を読者に強く感じさせます。 読み進めているうちに、自分も過去の自分と対峙するような気分になりました。 社会人になり、高校時代が遠い昔に感じられる大人たちにお勧めします。 | ||||
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ハルモニアが美しい滅びに至る音楽小説なら、こちらは苦い喪失を経て再生に至る音楽小説だ。 語り手の他片(たいら)は赤字続きのバーを営む中年男性。 そんな彼のもとへある日一人の女性がたずねて来る。 「披露宴で皆で集まって吹奏楽を演奏してほしい」と依頼したのは高校吹奏楽部の元メンバー、桜井。 桜井の一言がきっかけとなり、他片は今は散り散りとなった吹奏楽部のメンバーに再結成を呼びかけるが…… 物語は語り手・他片の回想に沿ってすすむ。 吹奏楽部のメンバーはいずれも個性的。 登場人物はのべ数十人。吹奏楽部は大所帯、楽器の数だけ個性がある。 音楽小説であり青春小説であり八十年代ーグロリアス・エイティーの風俗小説である。 中年の他片が吹奏楽部で活動した過去を振り返る形で綴られる物語は、青春真っ只中の輝かしい黄金の光ではなく、ランプシェードで絞ったようなくすんだ黄金の輝きに満ちている。 それは夕暮れが訪れる寸前の、溶けて消えそうな黄金の空に似ている。 桜井と組んでかつての部員の足跡をたどるうちに、他片はさまざまな人生の変遷を知る。 変わった友人がいれば変わらない友人もいる、成功した友人がいれば破滅した友人もいる、そして死んだ友人も…… 現在と過去が交錯するごと陰影は際立ち、部員たちのそれからの人生が浮き彫りになる。 吹奏楽部時代は先輩や友達との馬鹿騒ぎ中心でユーモラスなエピソードが多いが、現実はそうも行かない。 二十数年の歳月は人を変える。変わらないものもある。 幸せになったヤツもいれば不幸せになったヤツもいる。再結成は困難を極める。 それでも他片と桜井の熱心な勧誘にこたえ、一人また一人とかつてのメンバーが集まり始めるのだが…… 音楽はひとを幸せにするばかりじゃない、音楽のせいで不幸になる人間だって確実にいる。 音楽を極めんと志すものこそ、狭き門にはじかれぼろぼろになっていく。 だけど人は音楽を愛する。音楽に情熱を捧げる。それが素晴らしいものだと信じてやまない。 音楽に命をやどすのも意味を与えるのも、人だ。究極的に人でしか有り得ない。 音楽は時としてローマ法王の説教より胸を打つ。 演奏シーンの一体感、上手い音楽と気持ちいい音楽の違いなど、示唆に富んだ考察に目からぽろぽろ鱗おちまくりでした。私が吹奏楽部だったらもっと共感できたんだろうなあ……。 | ||||
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他の方と比べて評価は低いのですが、 「おもしろくない」ってことではないです。 評価が高くない理由は、 1.「学生時代に部活動をしていない。」 2.「自分とは年代が合わない。」 という点にあります。 なので、 「ちょっと、共感できなかった…」 というのが正直な感想です。 文章も悪くないと思うのですが、 感情移入が難しかったので、 読んでいてシックリきませんでした。 1980年代前後に学生だった方や、 部活動に専念していた方などであれば、 もっと評価の高くなる内容だと思います。 というわけで、 私個人としては、評価は星3つです。 | ||||
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高校時代、典型的なぬるい部活に所属していた私ですが、 部員の結婚披露宴のために、四半世紀を経て再結成を試みる元吹奏楽部員の話に、 同年代としてすぐに引き込まれてしまいました。 高校時代には思いもよらないような歴史を刻んできた一人一人の物語が、 それぞれ微妙にクロスオーバーしながら展開され、 当時は明かされなかった秘密もそのなかで解き明かされながら、 現在へと繋がっている。 一気に読んでしまいました。そして、自分の四半世紀に、部活の仲間たちに、しばし思いを馳せました。 現在進行形で活動中の中高生吹奏楽部員には、あまりお勧めしませんが。 | ||||
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元吹奏楽部員です。 しかし、ちょっと世代がズレ過ぎてたみたいです。 それぞれの楽器の特徴(ホルン、オーボエの難しさ)や配置など、無条件に分かる部分もあるんですが、この時代と私が部員だった時代では、吹奏楽のレパートリーがかなり違うみたいで、吹奏楽の部分ではあまり入り込めませんでした。 しかもこの本は、ブラバンというタイトルではありますが、当時の音楽好きな若者のグラフィティという感じです。吹奏楽だけではないのです。読んでいて「青春デンデケデケデケ」という映画を思い出しました。あんな明るいタッチではありませんが。 とは言え、25年前一緒に音楽やってた仲間達は現在…という構成で吹奏楽未経験者でもしっかり楽しめるとは思います。しかし、やはり40代以上の方が感情移入できるでしょう。 30代ではもう少し、過去よりは現在にしがみついて格闘しているような気がするのです。 少し人生終わりが見え始めたかな、あるいはピークを降り始めたな、と感じる世代の方が、より感慨深い1冊になることでしょう。 なお、30代半ばの私が泣いたところは、道後温泉での元テナーサックス奏者の元カノへの激白と、平和公園でのローマ法王の演説ですかね。 星3つですが、書いてること全部を「感じ入る」とこまでいけなかっただけで、文章や構成などから、作者の力量は十分感じとれました。この作者の他の作品も読んでみたいです。 | ||||
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