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ブラバン



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【この小説が収録されている参考書籍】
ブラバン
ブラバン (新潮文庫)

ブラバンの評価: 3.62/5点 レビュー 50件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.62pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全30件 1~20 1/2ページ
12>>
No.30:
(5pt)

懐かしい

自分の通ってたころの環境が割と近く感じられて楽しく読みました。
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No.29:
(4pt)

良いと思う。

まだ読み始めたところですが、本の状態は良いと思います。
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No.28:
(4pt)

どんな曲かが分かっていれば

1980年に高校入学、吹奏楽部と軽音楽部に所属した主人公が、二十数年後に結婚式バンドを結成するために旧吸部を探し回る。筆者は3学年上だが田舎者だったので、懐旧の感じに共感を持った。無口なオーボエの先輩がいつの間にか巨乳アイドルになってTVの中できゃあきゃあ笑っている、という辺りが今よりもイモっぽいけどいざとなったら馬鹿力を発揮してしまう当時の若者っぽい。その象徴が改造○○○コンバスなんだけど、それよりも唐突に吹く曲を差し替えて指揮者を激怒させちゃうエピソードの方が重要なんだというところも当時っぽいような気がする。残念ながら書かれている楽曲の90%以上がどんなのかが分からない。全部分かる読者は星を5つ付けるだろう。
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No.27:
(5pt)

鉄板の盛り上がりネタを徹底的に捻くって、でも圧巻の煌めき

高校時代のブラスバンド仲間が25年を経て再結成、という鉄板の盛りあがり型エンタテインメントの素材。事実かなりのベストセラーとなった模様で、高校時代と現在のカットバックでワクワクと興奮させられる楽しい読物を期待していた人も多いのではないか。
その期待は冒頭であっさり裏切られる。現実の重みがのしかかる、というより、登場人物たちの現在はリアリティを超越して暗い。主人公からして屈託の塊みたいな暗鬱な酒場親父なんだが、それですらまだしも相対的に能動的な感じで話を転がす役割を担うことになる。中では最も明るく幸福に見える人物にも性格破綻があって終盤の暗転を招いたり、とにかく性格設定といい物語展開といい、一筋縄で行かない。捻りに捻ってある。冒頭で亡くなる人物のように読者の想像へ大きく委ねたキャラクターも多い。
じゃあ暗いだけの文学かというと、そうではなくて、やはり心底には一種の、でも圧巻の煌めきが溢れている。外枠から期待されるようなストレートな興奮ではなく、屈曲し、泥にまみれ、苦痛にあえぎながらも溢れ出ずにはいられないエネルギー、人間の営為へ賛歌のようなものを味わい尽くして欲しい。文章は読みやすいエンタテインメント仕様ではないが、ユーモアを適度に讃えつつ緻密で華麗、特に後半、唸らされるほどに素晴らしいフレーズが続出する。暗転からのラストの展開、最後の1行もいい。
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No.26:
(5pt)

聖子ちゃんカットを知っている人は読んでみて!!

25年を経て、ある高校の吹奏楽部のメンバーが、音信不通だったメンバーと再会する物語。高校時代と現在の時間軸を巧みに使い、緻密に作られている。

青春の甘酸っぱさやほろ苦さはノスタルジックな気持ちを誘うと同時に、25年経た後の登場人物も、どこかリアルに燻っており心地よい。

楽曲や楽器はもちろん、ガンボスープなどにも詳細に拘るのも、この小説の魅力。
「1969年以来ここには酒は置いていないんだ」って聞いてピンと来る人にはたまらない。
これがわかる若い人が何人いるか?って思ってしまった。

今吹奏楽をやっている10代の子は、読んでもピンと来ないかもしれない。
聖子ちゃんカットを知っている、中年以降の人たちが、楽しめる小説。

是非、最後までいろんな味をお楽しみあれ。
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No.25:
(5pt)

親密な思い、大切な作品

言葉で語ることが難しい。読みながら号泣したり大笑いしたり、共感とかそういったものを超えてこの本はぼくそのものだった。付いていた人物一覧を財布に入れて持ち歩いてぼろぼろにして失くしてしまった。
津原さんが心配だ。彼がナイーブだということはブラバンを読めばよくわかる。こんな人がこんな騒動の中で大丈夫かなと思い心を痛めている。たぶんハヤカワから出る文庫は大売れするだろう。もう沈黙していい。結果がすべてを語るはずだから。
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No.24:
(4pt)

どこまでも深くて苦い、青春の記憶

語り手である他片(たひら)が、かつて高校の吹奏楽部で一緒だったメンバーの行方を追い、バンドの再結成を目指すストーリー。その合間に彼らの高校生時代のエピソードが挿入される。

物語は過去と現在が錯綜したり、登場人物が多かったりとやや複雑である。そこで本作品については二度読みないしは三度読みすると割り切るのも手であろう。例えば一回めは主要な登場人物(他片、来生、皆本、桜井、安野先生など)の動きに着目して物語の大枠を掴んでおくと、2回目以降は余裕を持ってストーリーに没頭できる。最初はとっつきにくいかもしれないが、徐々に登場人物たちが生き生きと立ち上がってくるのを感じられるだろう。

青春の記憶はどこまでも深くて苦い。他片はかつての輝いていた自分と現在の自分を比較して、後悔や諦めに苛まれているようだ。けれど、他片のブラスバンドに寄せる熱い思いは本質的なところでは変わっていないと信じたい。
「合奏には魔力がある。 (略) ひょっとすると友情よりも素晴らしく、ひょっとすると恋愛よりも過酷なのが、鳥のように音を奏で合うというこの人類特大の発明だ。」
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No.23:
(5pt)

記憶が現在を再生させる、ほろ苦い青春小説

アラフォーの主人公が同級生の結婚をきっかけに、高校時代のブラバンのメンバーを集めて演奏できないかと人探しを始めるが……。似たような物語はたくさんあるが、もともとは本作が元祖ではないだろうか。私たちが実際に思い出を振り返るときのように、現在から過去へ芋づる式に記憶が蘇っていくさまが、巧みな文章で綴られている。そして過去も現在も新たに再生していく。決して、どちらもキラキラ輝いてばかりではないが、生きるかぎり思い出すべき記憶があるのは、きっと幸せなことなのだ。
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No.22:
(4pt)

今の僕。

今があるのも、昔の自分があるからで、振り返ることがない
とはいっても、どうしても比べてしまうのが人間なので。

 1964年と言えば、64という小説でも、オリンピックでも、
クローズアップされる年。
 その1964年生まれの作者の実体験でしょう。
 高校時代のブラスバンド部。
 小説の中では、その呼び名にもこだわりがあるようですが、
私みたいな素人さんには吹奏楽部。オーケストラと、どう違う?
と聞かれたって、分からない。そんな私でも、囲碁を知らずに、
読んでしまったヒカルの碁。そんな感覚でした。

 桜井さんの結婚式で、吹奏楽部再結成。
 20年の日々がもたらした、仲間たちの人生に、そして振り返る
思い出に。
 死んでしまった皆元さんや、片腕を失った仲間や、借金取りに
終われる仲間。気持ちが病んでしまった仲間。
 その中で他片君。
 奮闘します。今の自分を生き抜くために。

 初めて読ませていただきましたし、初めてお名前をお聞きした
この作者。単に、タイトルと、表紙絵にひかれて読み始めましたが、
とても文章が達者。会話が少ないのに、ページが文字で全部埋まって
いるのに、読みやすい。
 とにかく、七五調。リズムが良く、表現が軽やかで、伝わるところ、
くすぐるようです。
 
 惜しむらくは、最終章に至る前で、息切れしちゃったことかな。
 78点。
 あまり知られていない方だと思いますが、思わぬ拾い物と言っては
失礼。とても巧みな達者な文章に、次も読んでみたい津原さんでした。
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No.21:
(4pt)

面白い\(^^)/

どんどん読み進めちゃいました!バスクラ吹きには美味しい始まり方\(^^)/
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No.20:
(5pt)

読み手を選ぶ傑作

青春モノではない。どちらかというと中年オジさん奮闘もの(そんなジャンルがあるとして)だ。
いわゆる青春モノと勘違いしてガッカリしちゃったひとは可哀想ですが、そういうウッカリさんたちの低評価レビューは気にしなくていい。
それから登場人物大杉っていう頭のメモリー容量が少し残念な方々の低評価レビューも気にしなくていいだろう。そもそも彼らは本書の対象読者じゃないからだ。
というわけで少くともそれなりに楽しい高校時代の部活動(それは吹奏楽に限定されない)を過ごした40代の中年オジさんで、
いまもそれなりには幸せなんだけど日常にちょっとした物足りなさを何だか感じちゃっている、そして
たくさんの登場人物に惑わされずきちっと小説を読みこなす能力を持った読書家さん、なんて読者には刺さるでしょうなあ。
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No.19:
(4pt)

津原さんらしい

元ブラスバンド部員が当事の仲間の結婚式で四半世紀後に再結成することになり……というお話。津原さんらしく、かなりほろ苦い。若い人には読ませたくないっていう感想が良く判る。だから、えー、何も話をそこでそう持っていかなくても…… しかし、これはその後のハッピーエンドの予感と解釈してしまいましょう。音楽に限らず、何かクラブに打ち込んでいた人には面白いこと請け合いです
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No.18:
(5pt)

いわゆる「青春ブラバンもの」とは毛色が違いますね。

40歳を過ぎた主人公が高校時代の吹奏楽部の集まりをきっかけにして
高校時代を振り返る、という内容です。

別に何かがドラマチックに動き出すわけでもなく、
激烈なハッピーエンドが待っているわけでもない。

最初から最後まで、淡々とした口調で語られる物語です。
いわゆる「青春ブラバンもの」とは毛色が違いますね。

最初は「登場人物多過ぎて、よく分からんなぁ」と思っていましたが、
これは何度か読むうちに味が出てきます。

むしろその登場人物の多さが、「高校の吹奏楽部」というものを
分かりやすく表しているのかも知れません。

ボリュームも結構あるので、最後の方になると最初のことを忘れますが、
色々と再発見がありますので、読み直してみるのがいいですね。

あと、この主人公の自嘲的というか、自虐的というか、
そういう「独り言」的な語り口調が、個人的には面白かったです。

学生時代を吹奏楽部で過ごした人も、軽音楽部で過ごした人も、
ただそれらのクラブに入ろうかと悩んで過ごしただけの人も、
きっと興味深く読めるのではないかと思います。
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No.17:
(4pt)

40代以上の元ブラバン用の本

バスクラのマウスピースの厚みや音、息使い。
携帯もゲームもパソコンもipodもない、学校とブラバンが全てだった当時の高校生には、大変鮮やかな過去を連れてくる気がします。
クラリネットからバスクラになって得意だった(ちょっと勘違いした)自分を振り返っては恥ずかしく思い出す、そんな内容でした。方言も、情景も、出身が似ているためすんなり入り、天才肌の先輩、物事をややこしくする同級生、極端な音楽至上主義、享楽的なその場しのぎ、本当にそんな高校生が集まっていた部室をまざまざと思い出すことができます。
ごちゃごちゃで合奏の時だけ個人が消え、一つの音になる。
自分はなんだったんだろう。どのピースだったんだろう。登場人物でいえば誰なんだろう。成功者もそうでない者もブラバンのメンバーになれば皆同じ。昔のまま。
合奏している時は本当に天にも昇る、最高の時間でした。あの時間があるからこそ生きてこれたのかもしれません。
捨てていった過去を継ぎ合わせて読み、最後の2ページで自分は救われました。出来なかった事をやってくれたようで、やらなかった自分が情けなくせつなくてしょうがない。25年経って楽器は今でも傍に置いてはいますが、吹いてはいません。
かなり読み手を絞るタイプの内容だと思います。若いブラバンメンバーはまだ読まないほうがいいような。
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No.16:
(4pt)

ブラバン経験者は一読を。

「高校時代のブラバンメンバーが25年の時を経て再結成する」

吹奏楽に青春を捧げた人なら、この設定を聞いただけでも
ワクワク、ウズウズしてしまうだろう。私もその一人です。

あの頃と同じメンバーでもう一度音を奏でたい、
そう思い描いたことのある元吹奏楽部員は少なくないはずです。
けれど、主に楽器や場所の問題から
スポーツのようには簡単に再開できないのが吹奏楽。
そんな我々の夢を叶えてしまうとは・・・。

もしかしたら、自分たちにも出来るかもしれない!?
いや、それが無理だとしても・・・
吹奏楽ってやっぱり最高だな、やってて良かったなと
あの頃の自分たちと重ね合わせ色々思い出してしまいました。

登場人物が多過ぎたり、方言が読みづらかったり
文章の好き嫌いは多少出てくるとは思いますが、
総合的にみて私はとても楽しめました。
ブラバン経験者にもう一度夢を与えてくれる、そんな1冊です。
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No.15:
(5pt)

「失われた20年」という日本の停滞が色濃い…といえばちょっと大げさだろうか

映画「スウィングガールズ」や「ブラス」のようなノリのいい青春物語と思ったが、全く違った。部員の遅い結婚式で演奏しようと再結成されようとする高校時代の吹奏楽部。80年の時代と25年経った現在とをフラッシュバックさせるちょっとほろ苦くもある青春グラフィティ。

作者自身、広島の高校のブラスバンドで弦バスをやっていたそうだ。その自分を投影したと思われる主人公片平が語り部となり、部員の当時と今の姿がカットバックする。作者のその思い入れと今昔の対比のなかに隠された25年の挫折にシュンとなる。いわゆる「失われた20年」という日本の停滞が色濃い…といえばちょっと大げさだろうか。

純化された素描であって、しかも、現実の場面が鮮やか。挿絵は漫画家の福山庸治。そのイラストが見事で、線描と淡い水彩でしかもリアルなのはデッサン力のたまもの。それがとてもこの小説に似合っている。

懇切な「登場人物表」がついている。これには最初はちょっと苦笑したが、読み始めるとこれが必須のものになった。総勢34名の部員と登場人物が多いのと、25年をタイムスリップしながら頻繁に往き来する、「掛ける2」の70人の人物像をつかむのはたいへん。

とても面白かった。

そう思うのは、自分自身が高校でオーケストラに属していたこと、30年、40年という時の隔たりの哀切を痛いように感じる年頃になったからだろうか。
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No.14:
(4pt)

美しく見える過去と、人それぞれの現実

旧吹奏楽部メンバーの25年ぶりのバンド再結成を巡り、
高校時代の回想と25年後の現在と行き来しながら、物語は進む。

25年という歳月の間に、メンバーそれぞれにいろいろな現実があり、
高校時代という美しく見える過去に対する思い入れがあればあるほど、
そのギャップが切なさを作り出す。
非常にドラマティックなことが発生せず、最後も綺麗にわかりやすく終わらないことも、それでも人生は続いて行くということを描いているようにも思える。

ただ、登場人物も多いにも関わらず、時代が行き交うので、登場人物紹介を何度も読んだし、物語としても雑然とした印象は拭えない。
現実ってそういうものだと言われればその通りなのだが、基本的に

・登場人物と同世代で、描き出される現実に共感できる人
・吹奏楽経験者
・80年前後の音楽に造詣が深い人

であれば物語を楽しめると思う。
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No.13:
(4pt)

現在からみる過去と、過去からみる現在

はやらないバーを経営している他片は、
高校時代に所属していた吹奏楽部の同級生・皆元が亡くなったことを知る。
同時期、彼らは、元部員・桜井の要望で、
彼女の結婚式のため、25年ぶりに再集結し演奏を披露することになる。
25年ぶりに会う仲間たち、そしてその消息を聞きながら
他平は1980年の、高校時代を回想する。

高校時代からの25年。
同じ時をすごし、同じものに熱狂し、自分たちの未来に漠然とした夢を抱いていた彼らが
25年ぶりに出会って、たぶん当時の彼らは想像もしなかっただろうお互いの現在を知る。
この、高校時代から25年という年月が鍵なのか、
語り手である他片の性格なのか、
彼らの現状が厳しいものであれ、穏やかなものであれ
そこには深い感情の移入はなく、たんたんと語られています。
自分と相手を比べて、卑下するでも見下すでもなく、ただ受け止める他片は
けれど当時は知らなかった現実も知り、ほんの少し変化する。
それだけといえばそれだけのお話で、
でも何か印象的なお話でした。

クリアな表面部分と、淡々とした印象、まだ自分は知らない「未来」の苦みというのが
このお話を読んだ印象なのですが
むかし、著者の少女向け小説を読んだ時も、同じような感想を抱いていました。
謎めいた印象が強くて、他の作家さんのお話に比べ、熱狂はしなかったのに
印象深くて、折々に本から学んだ「未来」の苦みを思い出しては怖くなっていました。
今現在は、この『ブラバン』は自分にとってはまだまだ未知の「未来」のお話なのですが
また折々に思いだすことになるような気がします。
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No.12:
(4pt)

過去の自分と出会う本

場末のバーに落ち着いた主人公が、吹奏楽部時代の仲間に声をかけられ、
それをきっかけとして過去を振り返りつつ、現在を見つめる物語です。

本書の素晴らしいところは、上記の設定を最大限に生かしているところです。
歳をとった主人公の視点から描写された高校生像は、
同じく歳をとった私が高校時代を振り返る時の実感に一致しました。

では、その実感とはどういうものか。
それはつまり「ほろ苦くも燦然と輝く青春時代」。これに尽きます。

異論はあると思いますが、歳をとってから若い頃の事を思い出すと、
当時はどんなに平凡な出来事であったとしても、
それらは全て美しい思い出や、悔恨の思いなど、強い印象の出来事に昇華します。
平凡な日々など存在しなかったように思えます。
そういった思いを、現在と上手く対比しつつ描いているので、
浮き足立つようなこそばゆい青春物語ではなく、
ほろ苦くも燦然と輝く青春時代を実感させてくれているのです。

そんな実感を覚えるのは、ひょっとしたら、
当時の平凡な日常だけを忘れてしまい、
強く印象に残ったことだけを都合よく覚えているから、だけなのかもしれません。
だからこそ、いつだって過去は印象的で、遠い物語となっている。
しかし現在という現実は、過去と強くつながっている。
本書はその事を読者に強く感じさせます。

読み進めているうちに、自分も過去の自分と対峙するような気分になりました。
社会人になり、高校時代が遠い昔に感じられる大人たちにお勧めします。
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No.11:
(5pt)

確かにあった、今は遠い日々

ハルモニアが美しい滅びに至る音楽小説なら、こちらは苦い喪失を経て再生に至る音楽小説だ。
 
語り手の他片(たいら)は赤字続きのバーを営む中年男性。
そんな彼のもとへある日一人の女性がたずねて来る。
「披露宴で皆で集まって吹奏楽を演奏してほしい」と依頼したのは高校吹奏楽部の元メンバー、桜井。
桜井の一言がきっかけとなり、他片は今は散り散りとなった吹奏楽部のメンバーに再結成を呼びかけるが……

物語は語り手・他片の回想に沿ってすすむ。
吹奏楽部のメンバーはいずれも個性的。
登場人物はのべ数十人。吹奏楽部は大所帯、楽器の数だけ個性がある。
音楽小説であり青春小説であり八十年代ーグロリアス・エイティーの風俗小説である。
中年の他片が吹奏楽部で活動した過去を振り返る形で綴られる物語は、青春真っ只中の輝かしい黄金の光ではなく、ランプシェードで絞ったようなくすんだ黄金の輝きに満ちている。
それは夕暮れが訪れる寸前の、溶けて消えそうな黄金の空に似ている。
桜井と組んでかつての部員の足跡をたどるうちに、他片はさまざまな人生の変遷を知る。
変わった友人がいれば変わらない友人もいる、成功した友人がいれば破滅した友人もいる、そして死んだ友人も……
現在と過去が交錯するごと陰影は際立ち、部員たちのそれからの人生が浮き彫りになる。

吹奏楽部時代は先輩や友達との馬鹿騒ぎ中心でユーモラスなエピソードが多いが、現実はそうも行かない。
二十数年の歳月は人を変える。変わらないものもある。
幸せになったヤツもいれば不幸せになったヤツもいる。再結成は困難を極める。
それでも他片と桜井の熱心な勧誘にこたえ、一人また一人とかつてのメンバーが集まり始めるのだが……

音楽はひとを幸せにするばかりじゃない、音楽のせいで不幸になる人間だって確実にいる。
音楽を極めんと志すものこそ、狭き門にはじかれぼろぼろになっていく。
だけど人は音楽を愛する。音楽に情熱を捧げる。それが素晴らしいものだと信じてやまない。
音楽に命をやどすのも意味を与えるのも、人だ。究極的に人でしか有り得ない。
音楽は時としてローマ法王の説教より胸を打つ。

演奏シーンの一体感、上手い音楽と気持ちいい音楽の違いなど、示唆に富んだ考察に目からぽろぽろ鱗おちまくりでした。私が吹奏楽部だったらもっと共感できたんだろうなあ……。
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