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昭南島に蘭ありや
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【この小説が収録されている参考書籍】
昭南島に蘭ありやの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.35pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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下巻のレビューにも書きましたが、戦時中の日本軍のシンガポールでの振る舞いについて、知るための教材としていいと思います。 残念なのは、ディテールがいい加減でリアリティーが失われてしまっているところです。 例えば、主人公の名前、梁光前。中国語読みはLiang GuangQian、無理にカタカナにすればリィアン・グアン・チィェンかな。 しかし小説の中では、彼を雇っている日本人貿易商、櫻井家の人々が彼の名前を呼び捨てにし「光前を中国語読みでコンチャンと発音すれば、そのまま日本語の愛称になる」という。コンチャンとは?コンちゃん??北京語、広東語、福建語、潮州語のいずれでもそうした発音にはならない。強いて言えば広東語グォン・チンがやや近いかもしれないが、しかしどうひねっても「コンちゃん」にはならない。 また梁と言う姓を主人公が福建語で「ニュン」と名乗るくだりがある。これはニィウの間違いだろう。日本人は語尾のnやngの発音を聞き取るのが苦手なので、やむを得ないのかもしれないが、これらがつくのと付かないので発音は全く違う。主人公が中国人という設定なのに、これではリアリティーが無い。 ちなみに下巻では、チャンドラボースがシンガポールに来て、インド人たちが「チェロ・デリー」と大歓声を上げるというくだりがある。おそらく「チャロ」(ヒンディー語で行くの意味)の間違いではないだろうか。 台湾人、梁光前の民族的アイデンティティについても違和感がある。彼は自分が日本人なのか、中国人なのかという民族意識の間で揺れ動く、という設定だが、その時代の台湾人(少なくとも漢族)は、もっとはっきりと自分のことを「日本人」として規定していたのではないだろうか? また、戦時中にシンガポールで流通した通貨単位は海峡ドル(Straits dollar)だが、この小説の中では「シンガポールドル」になっている。シンガポールがマレーシアから分離独立したのは戦後も1965年になってからだ。ほかにも、密かに抗日スパイの名簿作りをしていたという櫻井庄二郎の軍事協力者としての裏の顔があかされる一方で、光前が東條英機のシンガポール訪問計画を、抗日スパイのもとに頻繁に通って情報を筒抜けにもらしているのに全く気がつかないという矛盾、また攻略直後の華僑検証の時、マラヤ共産党のトップが一般在留邦人の一言であっさり釈放されてしまうところなど、随所に違和感を感じるくだりがある。 小説なので、別に史実と全く同じにする必要はないが、あまりに不自然なディテールが多いと歴史小説としてのリアリティーも輝きも失せてしまう。 全体としては割といい作品なだけに、惜しい。 | ||||
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悪くないと思う。中国大陸では中国共産党が南京大虐殺などさんざん宣伝してるので、南京大虐殺という言葉を聞いたことがない日本人はおそらくほとんどいないと思う。しかしシンガポールで粛清(現地の発音でソッチン)という、日本軍による大量虐殺が行われたことを知ってる日本人は、むしろ少数なのではないか。 そうした中で、戦時中に日本軍がシンガポールで何をしていたかについて、堅苦しくなく、エンターテイメント仕立てで語っているこの小説は、1人でも多くの日本人が歴史を知るきっかけとして意味があると思う。セントーサ島のカジノに遊びにいく日本人観光客が、その場所で何がおこなれたのか知るのは悪いことでない。 日本人の視点ではなく、日本の植民地時代の台湾に生まれた客家人と言う、微妙な立場に立っている主人公の視点から描いているところも優れている。ストーリーテリングが侵略側、日本の一方的な視点に陥ることを、うまく回避している。 とは言え、シンガポール攻略直後に行われた、憲兵隊による恐怖政治、軍刀で中国人達の首を跳ねてオーチャード通りに生首を並べて晒したこと(この恐ろしい写真は日本軍による暴虐の証拠としてシンガポールでは有名)は、かなり強引な感じで正当化されていたり、憲兵隊の拷問を「軽い殴打」と表現するなど、首をひねるところもある。 他の方も書いているように、結末があまりに唐突で安直なのは、かなり残念。 あまりに腑に落ちないので、もう一度読み返してみたが、この結末に繋がる伏線は物語のどこに敷かれていない。 | ||||
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