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(短編集)
満願
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満願の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.82pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全221件 201~220 11/12ページ
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地位や人や物に執着しすぎて、誤った道に踏み出す人々に待ち受ける、ゾッとする結末。 他の方も書かれているように、この作品はテレビの『世にも奇妙な物語』に似ています。 しかし特に私の印象に残ったのは、作者の描写力と伏線のうまさです。 現代の日常光景に、ひと昔前の風景。 日本の田舎のお年寄りに、異国の村の長老。 男性目線に、女性心理。 作家によって、それぞれ分野の得意・不得意があり、短編集ではその特徴がはっきりでてしまうものですが、この作者はどんな風景でも人物でも、いきいきと目に浮かぶように描いています。 その分だけ、ラストにより臨場感があり、恐ろしく感じられました。 また私が一番素晴らしいと思った「万灯」は、伏線の張り方が見事です。 文章中に唐突に異質な表現があると伏線だとばれてしまうし、逆に印象が薄すぎると気づいてもらえず伏線として機能しない。 伏線というのは難しいものだと常々感じていますが、この作品では、伏線が物語の必要な要素として溶け込んでいるので、「確かに読んだし覚えているが、伏線だとは気づかなかった」という理想の形をなしています。 ラストでそれらが1本の糸で繋がる爽快感、本当に素晴らしいです。 物語自体も謎解きもどんでん返しも楽しめる、完成度の高いお勧めの1冊です。 | ||||
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表題作の他、「夜警」、「死人宿」、「柘榴」、「万灯」及び「関守」の全6つの作品から構成される短篇集。各編全てがミステリという訳ではないが、ミステリ的趣向が巧みに織り込まれている。驚くべきは各編の作風の幅広さで、横山秀夫氏風の警察小説である「夜警」から、連城三紀彦氏風の心理(抒情)的トリックを用いた表題作まで多種多様な味わいを堪能出来る。また、一人でこの様な多彩な短編集を構築する事が作者の意匠であったと思われる。 勿論、各編の構想はオリジナルであって、各編毎に作品に合せて文体や風景描写の濃淡を変えている辺りに作者の充実度が窺える。各編に対する好みは勿論読む方によって異なるとは思うが、企業人の端くれだった私にとっては、熱に浮かされた様な文体で、破滅への一直線の道を下って行く海外駐在員の悪夢を描いた「万灯」が一番印象に残った。 各編を執筆するに当って、作者が用意周到な事前取材をした事も良く窺える。幅広い読者にとって読み応え充分の秀作だと思った。 | ||||
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まず、今作は儚い羊たちの祝宴のような連作短編ではない。 一つ一つが独立していて別のお話でありながら、なおバランスを崩さずに絶妙な加減で配置された短編集。 ホワイダニットを中心としていて、フーダニットやハウダニットのような分かりやすい派手さはない。 しかし、長年日常の謎を手掛けてきた米澤先生だからこそできたであろう、見事なまでの人間の心情と謎の組み合わせ。 どの事件も人間の狂気的な部分を描きながらも、身近に起こっても不思議ではないと思わせ、そこにまたぞっとする。 | ||||
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「夜警」 警官になるべきではなかった若者の殉職の真実。 「死人宿」 元カノを追って山中の自殺用温泉宿に来た男。 「柘榴」 類まれなる美貌を持った母とその娘姉妹の輪廻。 「万灯」 在外商社マンがやむなく犯す殺人の意外な綻び。 「関守」 都市伝説を解明すべく訪れたドライブインの話好きなおばあちゃん。 「満願」 下宿先の薄倖な夫人の驚愕の殺人動機。 いやぁ、久しぶりに読者を唸らせる傑作に巡り会えた。 周五郎賞を取ったことで直木賞は残念だったが、文句なしで直木賞モノ! ストーリー構築の緻密度、なにげない伏線とその完ぺきな回収、 読者を飽きさせない各ストーリーの簡潔さ、人間心理の深淵表現、 そして驚愕の結末、意外な真実・・・。 凡庸なミステリーを読まされて、時間の無駄だったなとお嘆きばかりの そこの方、読み応えと読後の満足度は保障するので是非一読を。 ストーリーそのものもすごいのだけど、作者への敬服に尽きます。 どれか一つを選べと言われれば、「柘榴」 最後の科白、「けれどもいまは、それほどでもない・・・。」 人間の心根って・・・。 | ||||
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朝の情報番組で蔦屋書店のブックコンシェルジュがおススメしていた作者の作品でおもわず購入してしまいました!大好きな連城三紀彦さんの作風をほうふつさせるというのでますます気に入っていますし、その通りかも! | ||||
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珠玉の短編集であり、素晴らしい読書の時間を過ごせたのは他のレビュアーと同意見なのですが、最後の満願だけは、元弁護士として看過できない部分がありましたので、星を一つ下げさせて頂きました。 以下、表題作『満願』のネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。 1 検察官について 『返済を逃れるために殺人を犯した』というのは、強盗殺人(二項)の動機です。自ら殺人罪で起訴しておきながら、このような動機を主張する検察官は、あまりにも愚かです。また、検察官が被告人質問で述べた異議も、実際の裁判ではありえないと思います。主人公を有能に見せるために検察官を愚かにしたのでしょうが、こんな人は修習で検察志望しても落とされるんじゃないかなあ。そもそも司法試験に受かるんだろうか。 2 主人公について 主人公も本番ぶっつけで、被告人質問をしているようですが、これは相当駄目な弁護人です。 弁護人は、起訴後、訴訟に関する書証や証拠物を閲覧、謄写することができます。 また、冒頭陳述の時点で検察官が証拠によって証明しようとする事実は分かります。ですので、仮に裁判前に証拠の閲覧謄写をしないダメダメ弁護人であったとしても、冒頭陳述の時点で、検察が犯行現場を特定するための証拠として掛け軸を出すことは分かりますから、それに基づいて、被告人質問を組み、事前に被告人に手渡し、リハーサルを行わなければいけません(本件は殺人罪であり、動機に争いもありますので、冒頭陳述から被告人質問に至るまでは、かなりの期間があったはずです。主人公は何回接見したんだだろう?)。 3 弁護士について なにより許せないのが、312頁『検察の見解に真っ向から意を唱える。これは勇気のいることであり〜』の部分です。 犯行が計画的であったか、偶発的であったか、という点で、検察側の弁護側が争うのは日常茶飯事です(新人だろうと、初めての殺人罪であろうとそれは変わりません)。 被告人が、襲われたからやむをえず殺したと、偶発的犯行を主張しているのに、それを黙殺し、検察側の計画的犯行説を認める弁護人は懲戒ものです。 ありえません。 にもかかわらず、『複数の同業者から「藤井君、若いうちはもう少しおとなしく出た方がいいよ」と忠告を受けた。』とあるのは、ちょっとひどすぎるんじゃないのか、と思いました。 これも主人公の頑張りぶりを際立たせるための、記述だとは思われますが、本作は小説としては素晴らしいだけに、感銘を受けた読者の方が、誤った弁護士像を抱く恐れがあるため、大いに危惧を抱きました。 弁護人とは被告人の味方なのです。 仮に心の中では「こいつ有罪だな」と思っていても、被告人が無罪主張するならば、弁護人も無罪主張しなければなりません。もちろん検察と戦わなければいけません。 それが弁護人の使命です。 もちろん世の中には、普通の弁護士なら弁護人に絶対なりたくないような凶悪犯人がいますが、それでも誰かは弁護人になります。 なぜなら、一方的な裁判では、無辜の者を罰する恐れがあることを歴史が証明しているからです。 まるで一般的な弁護士が検察をおそれ、迎合しているような、『満願』の描写には、不満を憶えました。 検察に迎合しているのは裁判官であって、弁護人ではありません。 | ||||
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初めて読む作家です。直木賞候補ということで購入しました。短編6作ですが、それぞれの完成度が高くてビックリしました。よい本はすぐに引き込まれます。 石榴は女性の心理って恐ろしいと思います。関守はホラー大賞の短編でもいけます。ぜひ直木賞をとって欲しい本です。山本周五郎賞を取ってるので直木賞の審査員は躊躇すると思いますがWクラウンの快挙を期待します。あと2日で分かります。今後、この作家に注目です。 | ||||
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著名な作家ですが、私は初でした。 6編のうち、「万灯」だけはどうにも冗長に感じ、どうかな、とも思い、いまいち全体に粒は揃っていませんが、 逆にとても 力量を感じさせる好短編集でした! | ||||
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著者の作風が淡々としており、今後の執筆にいて大変に参考になりました。 | ||||
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2010年から2013年にかけて書かれた短編を6編収録した本作。その間書かれた上位6編を集めたような完成度だ。 「古典部」シリーズや「小市民」シリーズを読んだ時は、ぬるい作品を書いてるなと思っていたが、本作は硬派でレベルの高いミステリーである。 山本周五郎賞受賞も納得の外れのない短編集。 直木賞候補になっていることも話題である。 今回の候補作6編で、何かひとつ読みたいという人がいるのであれば、本作を推薦したい。 直木賞に関しては、おそらく黒川博行の「破門」が本命で、ダブル受賞だとすると、千早茜の「男ともだち」か本作のどちらかが有力だと思われる。完成度から言えば本作の方が上だが、「男ともだち」は文藝春秋から出ていることを考えると五分五分の勝負といったところだろうか。 個人的には、千早茜はもっといい作品を出すだろうから今回は見送って、過去最高傑作を書いた米澤穂信に受賞して欲しい。 賞のあげ時を間違うことに定評のある直木賞だが、選考員もここ数年でだいぶ代わったことだし、今回は的確なジャッジをしていただきたい。 | ||||
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様々な職業、年齢の人物たちの描写がいいし、展開、伏線ともむだがない。 上質の短編というのは長編小説より濃くていいですね。 自分は特に「万灯」の展開のスピード感がよかった。 「関守」のおばあちゃんもいい味だしていた。 米澤氏は、古典部シリーズやラノベで人気なのは知っていた。 「氷菓」をためしに読んだことがあったが、いい大人の自分にはさすがに中高生向けのラノベは楽しめず、「日常の謎」があまりにも興味をもてない「謎」なので(先生が授業の進捗ページを間違った理由とか、、)その後何年か米澤氏の作品は敬遠していた。 (自分が中学生だったら、身近に感じて楽しめたのかもしれない。) 著者の初期のティーン向けの作品だけ知っていて、自分のように敬遠していた人はこの「満願」をお試しあれ。 | ||||
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6編全て毛色の違った作品で、文句なしに只々面白いです。 殉職した警官に何があったのかと思わせる『夜警』、ラストが衝撃的だった『死人宿』、意外なところから綻んだ『万灯』、そして哀切を感じながらも強かさが伺える表題作『満願』など、いずれも伏線がしっかり散りばめられて、ラストもばっちり着地しています。 | ||||
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山本周五郎賞受賞作。 その冠に恥じない傑作短編集。 6つとも設定・落とし所が異なり、それぞれに楽しめる。 ちなみに私は一日一話、寝る前に読んだ。 * 他のレビューにもあったが、ミステリというよりは 全盛期の「世にも奇妙な物語」の読後感に近い。 とくに「関守」。 これは、そのうち「世にも」で本当にドラマ化されそう。 | ||||
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本書は、「小説新潮」、「小説すばる」、「Story Seller Vol3」に掲載された中短編の6話を集めた本です。 この6話は驚くほど多彩なアイデアに基づきなからも、底に流れるトーンは一貫して同じ色合いを帯びています。 表現するのは難しいのですが、本書の表紙のように暗闇とその対比としてのほのかな明るさといった感じでしょうか。 人間の怖さを感じさせるストーリーばかりです。 私は、それぞれのストーリーの冒頭で「この話はどんな展開にするのだろう」と不思議に思いながら読み始め、その展開が堅実かつ興趣に富んでいるのに耽溺し、そして意外な結末に驚きを覚えながら、本書を読ませていただきました。 すばらしい着想と筆力です。 どの話も、いろんな意味で「残酷な話」で、読み終えた後もずっと心に残り、反芻してしまうような印象的な話ばかりです。 そして、人間の怖さを語った話なのに、読後感は全く悪くない不思議な本です。 お薦めします。 | ||||
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全六話中で最も推理小説的な謎解き味のある「夜警」、主人公の内面描写が胸に響いた「死人宿」、母と娘の危うい関係を描いてこれは凄いと唸らされた「柘榴」、城山三郎全盛時の経済小説を思わせる「万灯」、怪談めいて次第に背筋の寒くなった「関守」、そして松本清張の女性物とも比肩すべき秀逸なプロットの「満願」。日常的な滑り出しに始まり、やがてあらわれる些細な謎と波紋、そしてその脇でドップリと暗い穴を開けて読者を引きずり込もうとする人生の深淵のどす黒さ。どれも読み始めると止まらない、正に一気読みの一冊。 どれか一篇選べと云われれば、評者は「柘榴」を選ぶ。 | ||||
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連作ではない短編集です。 それぞれがきちんとした純文学的な完成度の短編なのですが、それが終盤でミステリー作品であったと分かるという構成です。 姉妹の話は怖かったですね。「いまはそれほどでもない」というところが。 | ||||
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ちょっと、怖いお話、6編。 いわゆる普通の人だと思える人の持っている怖ろしさが、ほんとうにありそうな話になっている。 実際、本書に描かれているような感情はあるんじゃないだろうか。 現実にありそうなだけに、少々辛い話もあった。 | ||||
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古典部シリーズや小市民シリーズしか知らない読者には「上手なラノベ作家」程度の先入観がいまだに強いかもしれないけれど、かつて久生十蘭に感化されたという傑作『追想五断章』をものした実力はここに再び大きく開花。志賀直哉や石川淳がミステリーを書いたらこんな雰囲気に仕上がるに違いないと思われるような熟成された文体と筆運びはさすが。35歳にして文豪の域です。版元が新潮社というアドバンテージはあるにせよ、山本周五郎賞受賞は当然でしょう。 | ||||
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ミステリというより、『世にも奇妙な物語』に近い。理路整然としたストーリー・テリングと文体は説得力があり、読んでいてわからないことはひとつもない。その上、物語の裏側できちんと構築がなされているから、すべてが明らかになったとき、読者はもう身動きが取れないようになっている。見事としか言いようのない作品がいくつかあった(そうでないものもいくつか)。十分、読むに値する一冊である。 | ||||
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これは文句なしの傑作。 また、読まれた方の多くは、ミステリー界の巨匠で昨年惜しまれつつ早世した連城三紀彦の作風を思い起こすのではないか。 人間心理の複雑さを軸にした意外な結末を、これほどトリッキーに描き出した作風はまさに大連城全盛期の作品群にも匹敵すると言って良いだろう。六作どれも傑作だが、冒頭の「夜警」と表題作は特に心に残る名篇。 本年度ベストミステリーの上位はまず確実な必読の短編集。 | ||||
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