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デカルトの密室



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【この小説が収録されている参考書籍】
デカルトの密室
デカルトの密室 (新潮文庫)

デカルトの密室の評価: 3.00/5点 レビュー 23件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全8件 1~8 1/1ページ
No.8:
(4pt)

思弁的なサイエンス・フィクション

途中で読むのが面倒になった。初めはシンギュラリティを扱った作品かと思ったが、それは前提だった。むしろAIに心があるかどうかは外形的に判別できないというテーゼを通奏低音として、自我の解放と拡張という主題が奏でられる。AIに自我があってもよい、人間の自我がAIに置換してもよい、その自我がネットワークを通じて世界を包摂してもよいではないか。即ち、アートマンのブラフマンへの合一である。デカルトは言わばダシである。2008年当時としてはたいした作品だが、作者は自分が発狂しないために書いたのではないかと妄想した。

作中、殺人事件が発生するがミステリーではない。サスペンスの要素はあるが、読者サービスであって、本筋は思弁的なサイエンス・フィクションである(と自分は思った)。デカルトのコギトは近代の科学と哲学の出発点だし、心身二元論や機械論的生命観は重要な問題提起だが、なにより作者自身が自我の牢獄に囚われているように見える。ミトコンドリアの染色体を擬人化したデビュー作以来、久しぶりに読んだが、妄想を科学的と誤解させるほど強力で魅力的な筆力は健在である。
デカルトの密室Amazon書評・レビュー:デカルトの密室より
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No.7:
(5pt)

ああ

ああ、そういう事ね。
この本はMKウルトラの被害にあっている人に読ませたい一冊。
2005年の時点でこんな本があったとは。
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No.6:
(4pt)

文章に重力。

作家ではないので推測でしかない。

でも、この作家さんはもしかしたら、
まるで恩返しをした鶴のように、身を削って作品を仕上げているのではないか、
そしてその作品はあたかも、彼の作品世界への試金石なのではないかと思う。

正直、読みやすくはない。

科学の知識がてんこもり、さらにその文章が精緻で、
いわゆる抜けの部分が少ない。
しかも意図的に(のはずだ、多分)一人称の主語が誰を指すのかが曖昧で、
時にその時制までもが緩やか、章と章に起承転結が分かれて配置されている。

デカルトの密室というタイトルの趣旨は理解しつつも思わず、
デカルトの迷宮‥ と、間違って記憶してしまいそうだ。

いやいや、お菓子で言ったら月餅?クリスマスのフルーツケーキのように、
みっちりと重力を感じる、重たい作品。

文章に重力があるとしたら、きっとそれは作家さんの思いに違いない。

真っ向勝負で、受け止められるか?
デカルトの密室Amazon書評・レビュー:デカルトの密室より
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No.5:
(5pt)

瀬名秀明版「哲学者の密室」。再評価がのぞまれる。

ロボットである「ケンイチ」とロボットの知能にまつわる膨大な議論を中心とした、傑作SFミステリ。ただし内容のウエイトからすればミステリ系SFといったほうがいいかもしれない。
ロボットは考えることができるのか、そもそも考えるの定義とは何か。人間は考えることができているのか、人間は考えることができる、とはどういうことか。ロボットと知能にまつわる話はSFにずっとついて回る大きな主題のひとつであって、本作「デカルトの密室」もそれをメインテーマに据えた、本格的な小説である。

チューリング・テストにおける人間と機械の逆転、フレーム問題、サールによる中国人の部屋、デカルト劇場(カルテジアン劇場のこと?)、比類なき<私>というもの、ウェイソンによる選択課題とコスミデスの実験、ネットを介して拡散してゆく人工知能が描く宇宙像的な進化図、メタ視点問題など、哲学、数学、ロボット工学、認知心理学、ミステリー論を含め多岐にわたる分野から材をとられた溢れんばかりの衒学的思考を前にして初読時にははっきり言って思考停止に陥ってしまったが、いまいちど読み返してみればそれらの知識がただ並べ立てられただけではなく小説の中できわめて有効に活用されていることもわかる。(<私>って永井均のアレか、と実は再読時に気付いた。)
こんな中ロボットが関与する殺人事件が起こるのだが、どうやらそれらの莫大なことと関連があるらしい。ミステリサイドではなぜロボットが殺人を犯すのかというホワイダニットを中心に話は進む。

ただ予想通り読み通すのには恐ろしく体力は必要となり、これも予想通りだが評価が低い。
主人公のユウスケもロボットのケンイチも、他の登場人物となる男性もみな自分を「ぼく」と言い、場面転換も結構行われる。このために立ち止まって今しゃべっているこれは誰かと考える回数も増えるわけだが、解説でも言われている通りこれはおそらく恣意的にやっている。ちなみに本作のもう一人の主役と言ってもいいだろうフランシーヌという科学者が、他作者の某作品の某人物に設定が似ているとの話だが、両作を読んでみた限り違うといってよい。いずれも天才という設定だがこちらの方が品も(天才性を示す)描写も段違いに良い。(ついでに言えば「哲学者の密室」より哲学哲学しているが、これはまあよい。)

本作は「第九の日」収録作品の続編にあたる話だが、そちらも併せて読むと尚よいと思われる。いずれもあまり評価されなかった不遇な傑作である。続編が待たれる。
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No.4:
(5pt)

デカルトの密室、読了

AIもの。この前山本弘の『アイの物語』を読んだが、ここのところ、AIについて読む機会が多い。

『アイの物語』とはAIについての考え方も異なる。こちらのAI論の方がおそらくまっとうなのだろうが、なぜかアイの物語の人間とは異なるAIの知性という考え方に惹かれる。

この小説自体も、すごくスリリングで、あっという間に読み終えた。

『デカルトの密室』は、森博嗣の『すべてがFになる』から始まる真賀田四季シリーズと士郎正宗の『攻殻機動隊』の人形使いの話を思い起こさせた。
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No.3:
(4pt)

ロボットと人間の不思議さ

ロボットというと一般的なイメージとして"機械"の域を出ていない。またロボットの未来予想図として人間と共存している世界を思い描く。

そしてその世界を目指す際に思い至るのがどこからロボットでどこから人間なのか。その臨界点がどこなのか。

本書ではロボットと人間。脳と心の不思議さを物語として、どこか懐かしさも感じる味わいのあるストーリーとして提供している。
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No.2:
(4pt)

システムという絆

「デカルトの密室」の解法をめぐって、作者が用意した解答は三つある。ひとつ目はヘーゲル的な世界精神の擬態。「……ぼくたちは永遠に第三の密室から脱出することはできない。だが第三の密室と一体化することはできる。(中略)いつか他の宇宙さえ理解できるようになるかもしれない。……」(p410)ふたつ目はメルロ=ポンティの両義性の哲学を信頼する態度。「……身体を通り抜けた瞬間、“物語”というひとつの塊に収束してしまう(p430)」自意識の持つ「私」は、「……その確かな手触りと臨場感を経験したことがあるからこそ、世界を信じて(p465)」いる。これを否定すると、ひとつ目の轍に嵌まることになる(p431以下)。みっつ目はルーマンの社会システム論をモラルの実践として捉える姿勢。「……ルールを守ることが大切なんじゃない、ルールを守り続けること(中略)それがいちばん大事なんだ。(中略)昔からずっと決まっていた。だからそれはルールなんだ。……」「ぼくは自分で選ぶんだ!」(p445)これには絶えず「きみはそれを信ずるのか」との囁きが「私」になされるだろう。
 デカルトから端を発するコギト神話は、それが普遍的=抽象的なロゴス操作の自家中毒に陥るかぎり、巧妙に自己を欺きながら、世界を統べる欲望へと転化するだろう。「自意識」を似非コギト神話の濡れた手からいかに庇うか。――作者は、人間にはメルポンの心身相互浸透論を、そして、「ロボット」にはルーマンの機能主義的システム論を、それぞれ武器として手渡したわけだ。とりわけ文学シーンにおいてシステム論をモラルとして「鮮やか」に提示したのは、作者の功績である。新鮮であるし感動する。まさに「人間」と「ロボット」の、現在における優れた教養小説といって差し支えない。
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No.1:
(5pt)

読み応えたっぷり

この著者の5年ぶりの長篇と聞いて思わず買ったものの、分厚くて1、2日はそのままにしておいた。が、読み出したら止まらなくなり、あっという間に読んでしまった。だが、あえて言うと、最近流行の軟弱な小説をあっという間に読んでしまうのとは種類が違う。思わず前のページに戻ったり、同じ箇所何回か読み直したり、高度なパズルやゲームを解いている感じと言えばいいのだろうか? でもパズルやゲームや推理小説は、レベルが高度だからこそ楽しいのであって、そこが醍醐味。難しいから面白いを、まさに実現してくれた。そういう意味だけでも星5つ! さらに悪役たちにも魅力があって、、、これシリーズ化されるらしいけど、いつ出るんだろう。早く続きが読みたい。
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