(短編集)

ハル



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ハル (文春文庫)
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ハル (文春文庫)

2005年10月07日 ハル (文春文庫)

魂を感じさせる妻そっくりのヒューマノイド、幼い日の記憶のなかで語る科学館のロボ次郎、地雷撤去のため、探知犬と共にタイ東部国境をゆくデミル2、玩具として売られたロビタ―機械と人間をむすぶ切なく感動的なドラマが、現代科学の周到な知識のもと熱を孕んだ筆で描かれる。間近に迫る「あした」の物語。 (「BOOK」データベースより)




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ハルの総合評価:7.67/10点レビュー 12件。Bランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

ロボットが日常化する、少し未来のお話

ロボットが人間の生活に入り込んだ、今より少し先の世界をテーマにした短編群に「WASTELAND」という、ロボットのみが生存する近未来の地球を描いた短編が間奏曲のように語られる。

表題作「ハル」は愛玩用ペットロボットの名前が題名になっており、これにヒューマノイドが絡んだちょっと不思議な手触りのする作品だ。
人間が作った人工物が理論を超えた進化を遂げるというのは瀬名氏の過去の作品でも取り上げられていたが、これもそのテーマに沿った一編。ここではロボットに魂は宿るかという命題に取り組んでいる。近い将来、ロボットが単なる玩具や客寄せパンダではなく、一大産業として社会に本格的に盛り込まれていくであろう未来への警告か。

「夏のロボット」は子供の頃にロボットと不思議な人物と出会った出来事が語られる。
ロビタという人工知能を備えた学習型ヒューマノイドと娘の菜都美とのコミュニケーションで次第にロビタが人間に近くなっていくことに気付いた恵が至る真理が「ハル」とは同じなのにその受取り方が逆なのは面白い。片や畏怖や嫌悪感を抱くのに対し、恵は新たなる知性の出現の萌芽に地球上の唯一の知的生命体である人間が孤独感から解放されると喜びを示す。この感覚は理解できる。

個人的に好きなのは「見護るものたち」と次の「亜希への扉」だ。
前者の舞台はタイ。災害救助ロボット、地雷探査ロボットなど前2編にもまして現実味を帯びている題材である。リーというタイの寒村に住む女の子と犬とロボットの交流という、泣かせる要素を全て盛り込んだ作品である。読んでいる途中でリーの行く末が解ってしまった。
しかしここで語られるのはその悲劇を超えて尚且つロボット開発に挑むのかという杵島の覚悟を確認する物語。主人公はあくまで杵島というロボット技術者の挫折と再生の物語なのだ。
彼は災害救助にロボット技術者として携わるたびに、自分の開発したロボットが想像していた以上に役に立たない事に直面し、挫折感と徒労感を味わう。果たして自分は社会に貢献しているのだろうか、人間の役に立っているのだろうかと。しかし最後にパートナー岡田がかける言葉に救われる。
ロボットというのは希望の装置なのだという。誰もがロボットに希望を抱く。それは未来の象徴だからだ。だからその分失敗すると挫折感も大きい。恐らくロボット開発というのはその繰り返しだろう。しかしそれでもなお貴方はロボット開発は止めないだろう。それこそが大事だ。その努力を続ける事こそ理想に近づけく唯一の道なのだ。
このメッセージは瀬名氏がロボット技術者全てに送る励ましの言葉と私は受取った。
余談だが、地雷探査犬の名前アインシュタインに思わずニヤリとしてしまった。クーンツファンである瀬名氏の茶目っ気だろう。

そして「亜希への扉」はなんとも甘いラヴストーリー。
物語の冒頭で断っているようにこの作品はメルヘンだ。といっても模型が生命を宿してしゃべったり、動物がしゃべったりするような類いのものではなく、出来すぎたラヴストーリーと云えるだろう。
しかしこういうベタな作品もまたいいのではないか。それよりもこの作品で述べられる、成長期にある子供がロボットと交流して育ち、やがてロボットのAIを凌駕して成長してしまったときに直面する魔法が解けたときのような喪失感、そして永久的に動き続けるロボットに死のプログラムが必要になるというある人物の考えなど、実に興味深い。そこまで瀬名氏は考えているのかと驚嘆した。
また題名だがこれはハインラインの傑作をもじった物。これも作者の茶目っ気か。

そして本書の主題ともいうべき作品が最後の「アトムの子」だ。
各短編、そして幕間で挿入される掌編「WASTELAND」、これらに共通する1つの軸とも云うべき存在がある。それは鉄腕アトムである。マンガの神様手塚治虫が創作した人型ロボットこそ、日本のロボットの研究の始まりであり、究極形であり、ロボット研究者が至る道だという風に瀬名氏は述べている。その思いが結実したのがこの最後の短編だろう。ここで語られるのは非常に哲学的な話だ。

果たしてロボットに正義を教える事が出来るのか?
そしてまた正義とは一体何なのだろうか?

本書の登場人物の一人の口から語られるロボットが正義を信じる理由が実に哀しいながらも腑に落ちる。人間でも機械でもない継子である彼らがアイデンティティを失う代わりに彼らは正義をアイデンティティとして生きるのだというのは実に興味深い考察だ。

これらの短編群は直接的には関わりは持たないものの、全てが地続きであり、同一の世界で語られ、呼応している。ファンタジックな装いの幕間劇「WASTELAND」もまた最終編「アトムの子」で地続きとなる。

そして本書に挙げられているロボットは実に多彩。愛玩用ロボット、学習型ヒューマノイド、対話型AIを備えた受付ロボット、災害救助ロボットに地雷探査ロボットなどなど。
これらのロボットと人間が共存する世界、そしてロボットを介して築かれる人間同士の絆がまずテーマの1つと云えよう。ロボットがコミュニケーションツールとして、生活のサポーターとして、はたまたパートナーとして人間の生活の中に介入する世界が描かれている。そしてそれらロボットを通じて得られる人間同士の新しい絆もまたそうだ。人間が作ったロボットによって生かされる人間もまたあること。ロボットがいたからこそ知り合えた人々の物語がここには綴られている。

そしてもう1つは人造物がある日突然人間の理解を超えた行動をするだろうという予見だ。特にある日突然飛躍的に発達・進化するという発想はデビュー作の『パラサイト・イヴ』以来、瀬名氏が必ず作品のテーマに盛り込んできた内容だ。
本書では人口の産物ロボットが人間が持ちうる雰囲気、気配といったプログラムできない、抽象的な部分を次第に身に付けていくこと、そして自らの死に際を求め、いずこへと消えてしまうといった都市伝説的事象などが語られている。

ここが瀬名氏という作家の面白いところと云えよう。自身博士号を持つ科学者であるのに、彼の面白いところは論理や理屈では説明できない存在を受け入れている。理科系作家でありながら精霊などといった超常現象を導入するファンタジーを創作するところにこの人の特異性があると思う。

しかし瀬名氏は2002年時点でのロボット工学の最新技術を取材し、それから類推される人々の生活への影響、意識の変化などをしっかり足が地に着いた物語を紡ぎ、ロボットを扱った作品にありがちな人間がロボットに支配される社会を描くデストピア型の作品を書いていないところが素晴らしい。
しかしそれでもロボットが発展する上で直面するだろう云い様の無い畏怖を抱くこともきちんと描いている。

本書に収められたメッセージはそのまま瀬名氏からロボット研究者たちへのエールと云っていいだろう。ロボットが果たして未来に役立つのか、単なる道楽で終わってしまうのか、研究者たちは絶えずその悩みと直面しているに違いない。瀬名氏は現在のロボット技術の進捗とその未来を作品として著す事で彼らの後方支援をしているのだ。

本書の舞台は2001~2030年という近未来。2002年に発表された当時、瀬名氏はこの頃既にロボットは人間生活に入り込み、無くてはならない物と想像していたようだが、2018年の今、残念ながらその予兆はあるものの、この予見はまだ先のことになりそうだ。
果たしてここに語られるような未来は来るのか、まだ先は見えないが、こんな未来はまんざら悪くないなぁと思わせる、心温まる作品群だ。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.11:
(2pt)

ちょっとくどい

ちょっと物悲しい、人類がいなくなったロボットだけの世界という世界観が好きな人や、鉄腕アトム世代の人はハマルかもしれない。
人間に近いロボットとは何か?を考えると人間とは何か?を考えなければならなくなる。そのテーマが全編を通して表されているが、僕にはちょっとくどかったです。
荒廃した未来につながるボタンの掛け違いみたいなものを匂わすシーンがところどころに出て来るが、ちょっと大袈裟なように感じる。
少なくとも、ロボットがあまりに人間的な仕草や反応をしたとしても、僕は気味が悪いとも思わないし、人間だけ知性を持っていて、あらゆるものより特別だとも思わない。
コピー機が開発された時に、本屋が潰れると危惧されたらしいが、そんなことは実際に起きていないし、
テレビゲームが子供の発達に悪影響を与えるという専門家は多いが、良い子はちゃんと育っている。
現実は、そんなものなのにと思ってしまった。
もちろんAIが人間の心に近づけば近づくほど人間の醜さにも近づいてしまうのかもしれないけど。
ハル (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ハル (文春文庫)より
4167679582
No.10:
(5pt)

「人間とは何か」、「生命とは何か」を考えさせられる1冊でした

瀬名秀明と言えば、『パラサイト・イヴ』、『BRAIN VALLEY』が有名だけど、私的には、『デカルトの密室』を始めとするロボットモノのほうが好き。この『ハル』もそのタイトルどおり、ロボットモノ。

ロボット、ヒューマノイドと言ったほうがいいのか、ここのところ、瀬名秀明の小説や評論には、ヒューマノイドを題材にしたものが多い。この『ハル』は、「2001年宇宙の旅」に出てきたHAL2000からその名を取られているように、ロボットを題材にした連作短編集。『デカルトの密室』に先駆けて、2002年10月に出版され、収録されている作品も2000年から20002年にかけて書かれたもので、瀬名秀明のロボットモノの初期のものに当たる。

どれも良かったが、特に良かったのは、「見護るものたち」、「亜希への扉」と「アトムの子」。
「見護るものたち」は地雷除去に従事する地雷犬とロボットとタイの少女の関わりが切ない。
「亜希への扉」は、ロボットを仲介とした小学生の少女とロボットコンサルタントの関係がよく描かれている。
「アトムの子」は、アトムを実際に作ろうとするロボット技術者たちの情熱とアトムがロボットの発展に持つ意味が考えさせられた。

どれもロボットを題材にしてはいるが、そこに描かれているのは、「人間とは何か」、「生命とは何か」という深い問い。考えさせられました。
ハル (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ハル (文春文庫)より
4167679582
No.9:
(4pt)

「ハル」

瀬名さんについては、「パラサイト・イブ」はあんまり好きでなかったのですが、「ブレイン・ヴァレー」ですごくはまって、「あしたのロボット」を図書館で借りて読んでいたのですが、2回借りて、また読み返したくなって、やっぱり買えばよかったーと思っていたころ、「ハル」が出版されたので購入しました。
個人的には「あしたのロボット」の方が題名としても好きだったかな。。
ロボット好きなら外せないと思うのですが、どうでしょう?
ハル (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ハル (文春文庫)より
4167679582
No.8:
(4pt)

SF世界と現実のギャップ。多様性と進化のお話.

瀬名秀明というひとが、ここまで才能にあふれたヒトだったとは「パラサイト・イブ」を読んだときは思わなかった.デビュー作はいわば自分のフィールドから生み出された、SFというよりホラーだった。しかし。「ブレイン・バレー」やこの「ハル」は、脳科学、ロボット工学という全く畑違いのところから、十分な取材を通じて、先の世界をSFとして夢想したものであり、読み物としてもとてもよくできていて、感心した.機械やペットに魂を感じるのは日本人の文化的な背景からくるものなのだろうが、それゆえ2足歩行のロボットは、いろいろなかたちで、創造をかき立て、「アトム」「ガンダム」「エヴァ」と引き継がれ、現実社会ではASIMOなど大型のものから、トイ型の2足歩行ロボットが市販されるまでになっている。つい最近、実寸大女性ロボットが発表され、2−3000万円台で販売されるそうだ。(しかし、どう見てもまだおもちゃの領域だが)来年は2010年、21世紀になって10年になるが、いまだSF世界へは手が届いていない.しかし、SFがあくまで、「科学的な知識をベースにしたフィクション」であって、未来社会を予言したものではないことの証だろう。フィクションはフィクションなのだ。
ハル (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ハル (文春文庫)より
4167679582
No.7:
(4pt)

ロボットはあくまでロボットなのか

2足歩行のロボットがメディアで大々的に取り上げられたのは記憶に新しい。

ペットとしてのロボットも一般消費者にも簡単に手に入る世の中だ。

人型ロボットが人の生活の中に入り込むのは、近い。

そしてその時に人はロボットをロボットとして扱うのか。

人として扱うのか。

その問題を、小説の物語にしている。
ハル (文春文庫)Amazon書評・レビュー:ハル (文春文庫)より
4167679582



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