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ベルファストの12人の亡霊



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【この小説が収録されている参考書籍】
ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)

ベルファストの12人の亡霊の評価: 4.00/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

かつて殺した者たちの亡霊が取り憑いて “復讐”をせがむ

北アイルランド生まれのスチュアート・ネビルが’09年に発表した長編デビュー作。ジェイムズ・エルロイやジョン・コナリーから賛辞が寄せられ、「ロサンゼルス・タイムズ・ミステリー/スリラー・ブックプライズ」最優秀賞を受賞したほか、多くのミステリー賞の最優秀新人賞にノミネートされている。
講談社の文庫情報誌『IN★POCKET』の’10年11月号「2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で、「翻訳家&評論家が選んだ」部門第13位にランクインしている。

元アイルランド・リパブリカン(共和派)のテロリスト、フィーガンが、自分が紛争中に殺した12人の亡霊に取り憑かれ、せがまれ、その苦しみから逃れるため、昔の仲間や指導者、その手先となって働く者たちを次々と殺してゆくという話である。

本書を読み解くには、’98年に和平合意に至るまで激しく対立した、北アイルランドの「リパブリカン」と「ロイヤリスト」の関係を頭に入れておかなければならない。英国政府からの分離独立・南北アイルランド統一を目指すカトリック系の前者と、それを阻もうとするプロテスタント系の後者。この構造を前提にすると、本書がただの「オカルトっぽい、頭のおかしい元兵士のクレイジーな無差別殺人譚」でないことが分かる。

私が思うに本書は、複雑な対立構造と脆い和平状態に危機感を抱く、現在は自らの社会的・政治的・経済的利権に保身する<悪者たち>。実は紛争当時フィーガンの裏で糸を引き自分たちを殺したその男たちに“復讐”する物語である。ガンファイトや殺人シーンはそれこそ魂がこもっていて妙にリアルだし、本書の読みどころだが、果たして“仕事”をやり終えた時、フィーガンは、心を寄せる女性とその娘と共に、心の平安を取り戻すことができるのか、という興味が頭を離れなかった。
ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)Amazon書評・レビュー:ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)より
4270103604
No.1:
(5pt)

悪党ども

かつて北アイルランドの独立のため戦った反政府組織の伝説の兵士ゲイリー・フィーガンは和平による恩赦後に、酒に溺れる日々を過ごしていた。

 かつて殺した人々が、フィーガンの前に亡霊となり現れる。罪悪感にさいなまれるフィーガンに、12人の亡霊たちが復讐を懇願する。裏で糸を引きフィーガンの手を汚させた奴らを殺せと。

 最初にフィーガンが殺した男は、旧友マッケンナである。和平後は北アイルド議会の議員を務めながら、裏では少女の人身売買に手を染めていた。マッケンナを処刑すると、彼のせいで殺された亡霊が一人消えてくれる。

 次の標的は拷問のプロのカフォーラだ。サディスティックな性分を、武装闘争で正当化してきた人間の屑だ。無抵抗な捕虜には滅法強いが、反撃されると何も出来ない。この屑を救うためにフィーガンは二人を殺していた。

 読み進めるにつれ、悪党が増えていく。この人物描写が凄い。
 実在のモデルがいるのか、著者の卓越した洞察による物か、長期の暴力的な闘争でヤクザ者たちが頭角を現す様子に説得力がある。

 フィーガンのかつての上長マギンティーは、非合法な資金集めや、暴力分子を統率するヤクザな能力に加え、政治的嗅覚にも優れていた。和平後は私腹を肥やす政党幹部に変貌した。
 マギンティーもフィーガンの標的の一人であるが、現状の和平を維持する必要悪でもある。大儀のために小さな悪事を許容する別の勢力が、フィーガンに対して刺客を放つ。

 資金力、暴力、政治力、暴力分子を抑える力。悪党どもが他人の持つ力を利用する入り組んだ駆け引きが、物語を複雑にする。
 また登場人物の誰もが人に言えぬ過去を抱え、それがさらに話を複雑にする。

 この小説は単なる復讐劇に留まらず、紛争の裏に巣くう悪党どもを丸ごと描いている。
 残酷な対立に全ての人を巻き込む紛争の恐ろしさと、そこに暗躍する醜い悪党どもの描写が素晴らしい作品である。
ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)Amazon書評・レビュー:ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)より
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