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リバーサイド・チルドレン
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リバーサイド・チルドレンの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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仲間との共同生活は、一種の楽園なのだと思う。 もちろん日々の糧を探すための暑くて臭い重労働や、異分子として虫扱いされて排除される危険性はあるにしても、そこには仲間同士の信頼と絆がある。だからその絆を脅かす別のグループや警察、さらには姿なき殺人者に主人公は憤り、立ち向かった。 ある意味で牧歌的な日常から、殺人の連鎖、旅人との犯人探しの対話、そしてエンディング。高温高湿度な舞台でのスピーディーな展開から一転、旅人との対話でクールダウンされるのがうまい構成だと思った。ここで、雰囲気が一転して状況整理しながら犯人探しを行うミステリが楽しめる。最初は木に竹を接いだような強引なご都合主義の展開に思えたが、旅人が状況を整理して主人公を正解に導いていくところはむしろ楽しめた。 連続殺人というやりきれなさを突き抜けて、エンディングに明るさが戻ってホッとした。主人王が安易に楽園を抜けださなかったのも良かったと思う。 主人公が取り戻した日常、もちろん彼らにはそれが恒久的なものではないことはわかっているだろう。でも彼らが人間である自分を意識して暮らせる場を、実力で取り戻したことは彼らの勝利である。 ドキュメンタリー番組からインスパイアされたようにも思えるが(そういう番組があるかどうかは知らないけど)、ディテールの細かさがそれだけとは思えない。この作家の作品を読んだのは初めてだったが、「どのようにしてこの作品をものにしたのか」に一番興味を惹かれたことは書き記しておきたい。 | ||||
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真相に辿り着くまで三段構えになっており、その点では著者の意気込みが感じられる。 しかし犯人が熱病に冒されたような状態で殺人を続けるため、動機自体が破綻している。 そのため読者に犯意の説得性を与えない。 論理の客観性が失われ、筋道の立った推理を拒絶している。 カンボジアの底辺を生きるストリートチルドレンたちの青春小説としての側面も持つが、 感傷的で甘ったるく、子守唄まで挿入されてはたまらない。 いくら彼らの惨状を伝えようと躍起になったところで、ただのお涙頂戴に堕してしまっている。 伝えたいのであれば、よりシビアな筆致を要するだろう。 見るべき所はよく取材がなされている(と思われる)点だろうか。 "山狩り"や廃品換金システムに関しての詳細、主人公たちが棲む小屋の様子、 その傍らを流れる川や対岸の表情、雨季・乾季に際しての天気の薀蓄、"黒"や観光客が闊歩する "街"の喧騒などなど現地のさまが饒舌に語られている。 | ||||
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カンボジアに住むストリート・チルドレンたちの世界が舞台だ。主人公は日本人少年である。 父親に殺されそうになり、脱走して路上暮らしを始めたのだ。 十数年前ならお笑い草だが、今は全然シャレにならない。日本人にこういう子がいてもおかしくないし。 ゴミ捨て場で廃品を漁る生活は、凄惨きわまりない。さらに主人公の仲間たちが、次々と謎の死を遂げる。 彼らの死は、通常の殺人事件とはまったく趣を異にする。死んでも誰も気にしないのだ。 警察が捜査するどころか、警官の気まぐれで射殺されることもある。人権のない世界で、論理的推理は有効か? 中盤までは目を見張る展開だが、終盤で失速する。 唐突に登場した人物が探偵を気取るとか、安直すぎる。 作中のゴーレム映画のエピソードは、生命の重さに対する暗喩なのだろうか。 うまく機能していないし、蛇足のような気がする。こんな過酷な現実を前に、映画なんか語ってる場合じゃないだろ。 前作のクオリティを期待すると裏切られるが、東南アジアとミステリが好きな人は読んで損はないかな。 | ||||
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叫びと祈りで絶賛を受け、国産短編ミステリのディケイドベスト20に2作滑り込んだ大型新人の2冊目にして初長編。 上がり過ぎたハードルはストリブリングならずとも下をくぐるしかなく、期待を下回るのは致し方ないところ。が、その要素を考慮しても、長編引っ張ってこの解決では見合わないと感じた。また、短編向きの美味しいネタをいくつか、ストーリー上のエピソードにもしない短いトークで使い捨てるのももったいない。連作短編でやってくれればよかったのに!と地団駄しきりだ。 途上国の社会問題社会状況を盛り込んでいる点、そこに日本人糾弾を描き入れる(当然自分は棚上げ)前世紀の文化人ばりの自虐お約束も含め、社会派としては評価されるのかもしれない。 以下【ネタばれ注意】。 かつて近代文明の悪を拒否したアジア的やさしさの国と絶賛された、先進諸国と価値観の異なる国。となれば異文化の理屈である『異世界の論理』を期待するが、個人の理屈である『狂人の論理』止まりだと思った。のみならず『狂人の論理』としても論理が緩く感じる。ラストシーンで戸惑う羽目になる○○トリックもちと辛い。 白眉は「カンボジアを舞台に贈る鎮魂と再生の書」と銘打つ宣伝文句。これに完全にしてやられた。この煽りで当然予期されるあれさえもレッド◯◯◯◯として使うミステリの深い業に慄然とする(褒め言葉)。ミステリ・フロンティアの海外ものならこう来るでしょという思い込みを利用するハイコンテクストな釣り!エクセレント。他方、社会派として評価したい向きにとっては、踏み絵であろう。 | ||||
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