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【この小説が収録されている参考書籍】
凍
凍 (新潮文庫)

の評価: 4.36/5点 レビュー 122件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.36pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全122件 101~120 6/7ページ
No.22:
(4pt)

湘南ダディは読みました。

私達は「自らの死」というものを日常意識することはあまりありません。近親の死に遭えば、その者を亡くした悲しみにひしがれますが、それにしても自らの死ではないわけです。だれにも一時間の後に交通事故で死亡する可能性がありながら、死はいつでもそこにあるものとして意識されることはありません。だからこそ「凍」を読んで深く感動するのだと思います。ここに描かれているのは、目前の自己の死と対峙しながら自らの意志と行為で生に帰還するすさまじいばかりの勇気の記録です。
 世界には8000メートルを超える高峰が14座あり、名をあげようとするアルピニストはこぞってこれらに挑戦するわけですが、それよりわずか数十メートル足りないだけで注目をされてこなかった中国ネパール国境のギャチュンカンは、それ故にこそまた中国名百雪谷の意味するとおり、ルートも開発されていない難攻の山なのだそうです。ここに山野井泰史、妙子夫妻が登頂を試み、結局体調の悪い妙子は残して泰史が成功はするものの、下降(登るより降るほうが技術的には難しいのだそうです)時に悪天候に遭遇し、繰り返し雪崩にあい、零下40度の中で妙子は宙吊りになり、風雪の中でビバークをするも防寒具を失い、6日間の壮絶な闘いの果てに生還するのです。この間2人は、はなればなれになり酸素不足で視力は落ち、幻影に襲われたりするのですが、常に相手の生存を確信し続け自らの生存のため死力をつくして生還への歩みを続けます。
 
 泰史は両手5指、右足指全部、妙子は両手指全部を凍傷で失なってしまうのですが、それでも山への挑みはつづけられ後日談ですが泰史はその後別の難峰への単独登頂に成功しています。
 読み終わって人間はここまで頑張れるのだという勇気が知らずに沸いてくる気がします。私はこの本を手元に置き、かりに私が難局に立ち向かえずくじけそうな時にはこの本を読み返して自らを勇気づけようと思います。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.21:
(5pt)

山の厳しさ、恐ろしさと一組の夫婦

本書は山を愛し、山に魅せられ、しかし表舞台に出る事を好まなかった一組の夫婦の物語です。

登山が、命を賭けたものであり、どれだけ過酷なものなのか、は多くの人が語り尽くしていたように思っていましたが、ここに夫婦というキーワードが入る事で新たな奥行きが物語に付加されています。
ギャチュンカン登攀後にこの夫婦を襲う自然の過酷さと、それを飄々と受け入れる人間の太さに圧倒されました。
それにしても、ここまで人生において打ち込めるものがあるというのは、うらやましい事だと思いました。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.20:
(5pt)

それをやらないと生きてはいけないというもの

読みながら何度もため息をついた。

 僕は登山家でも何でもないので 命を懸けて山に登るという行為がどうしても理解できない。いや「懸けて」ではなくて「賭けて」という漢字のほうがふさわしい。

 「そこに山があるからだ」というのが 有名な人が言った「答え」とも聞くが それにしても この「凍」という本で描かれる夫婦の挑戦は凄まじいものがある。

 阿部謹也という中世史家がいた。先日惜しいことに亡くなったが 彼は史学を選ぶに際し「それをやっていなかったら生きていけないというテーマを探しなさい」と教師に言われたという。

 それと正しく同じ事を 山野井夫妻は 山に登るということで表現している。彼らは山が無かったら生きてはいけないという点が ひしひしと感じられる。

 自分を振りかえる。自分にとっての「山」は何なのか。「それをやっていなかったら生きてはいけないもの」は 果たして自分にあるのか。

 そんな厳しい問いかけを迫られる。それが本書だ。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.19:
(4pt)

夫婦の愛情のおはなしです。

以前から沢木氏のファンで、TVのドキュメンタリー番組で山野井夫妻も見て知っていたので、書店で見てすぐに買い、一気に読んでしまいました。

山野井夫妻のギャチュンカン登頂の記録と思って読み始めましたが、泰史氏の妙子夫人に対する愛情が端々から感じられて、あーこれは山野井夫妻の夫婦の物語だと思いました。極限の状態でも相手のことを考え、それでいてそれのみになることもなく(プロの登山家なら当然なのかもしれませんが)、最善の方法を考え生還を果たした山野井夫妻はほんとにすごいと思いました。

結婚前に、泰史氏が少年の頃ポケットに虫を入れて、それがガサゴソする音が〜と話し、妙子夫人が聴いてるエピソードなども良かったです。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.18:
(5pt)

予想どおり、だけどよい。

この本を手にとって、しまったと思いました。登山開始後数ピッチの苦しさに似ていました。辛い出来事が待っているのにもう引き返すことができないと感じたのです。

 山野井夫妻の奥多摩生活や妙子さんの手については、テレビで見知っていました。何とすごい夫婦なのかと驚嘆の念を禁じえません。沢木耕太郎がこの二人を対象とした理由は分かりすぎるほど分かりますが、内容・出来栄えにこれほど意外性のない沢木作品も少ないでしょう。つまり、予想どおりだったのです。

 ギャチュンカン北壁は予想どおり困難な壁であり、ビバーク、雪崩、凍傷といった困難に次々に襲われます。そして奇跡の生還、これも知っていることですから意外性はありません。

 それでもなお、この本が私を泣かせてしまったのは、実は山野井の母が語る一言だったのです。ギャチュンカンから下山した妙子の指を見た義母は、この子らの面倒を一生見なければならないと思うのです。山のためには凍傷なんてと考える夫妻との強烈な対比が、ここに凝縮されています。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.17:
(3pt)

どっちつかず

帯の「もはや、フィクション、ノンフィクションの区別に意味はない。」というコピーに本書の最大の欠点が表れているように思う。壮絶きわまる登攀がノンフィクションだからこそ意味があり価値があり訴求力があるのであって、もしこれがフィクションとノンフィクションのミックスなら、文中の描写がすごければすごいほど結局は沢木耕太郎の手中で遊ばされているような嘘くささを感じてしまう。むろんいかに綿密な取材を重ねたところで細かい事実まではわからないだろうが(クライマー自身にさえも?)、そこを文学的修辞で補うよりいっそ空白のままのほうがずっと迫力があると思う。

 初めからフィクションであれば、それはそれで割り切って楽しめるのに、どっちつかずの筆致がせっかくの素材を損なっているのではないか。山野井氏は例えるならばオリンピックのメダリスト、ひきかえ私は田舎の日曜スポーツ愛好者でしかないが、それでも文中の描写のところどころに「これはないだろ」と首を傾げた。

 ノンフィクションならせめて山容とルート図の写真の2、3枚くらいはほしいものだ。
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4101235171
No.16:
(3pt)

まさに「凍」の世界

おそらくフィクションでもここまでは書けないだろう。そう思わせる

ほどの過酷な状況だった。おのれの肉体だけでなく精神の限界さえも

超え、登り続けた二人。いったい彼らをここまで駆り立てるものは

何なのだろう。凍傷で手や足の指を何本失っても、二人の山への

情熱は消えない。山と人間。登られるものと登るもの。研ぎ澄まされた

やいばのような緊迫感が、読み手にも伝わってくる。まさに「凍」の

世界。圧倒されそうな作品だった。
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4101235171
No.15:
(5pt)

山野井夫妻の、その精神力の強さと逞しさに、心底敬服してしまう。

昔から、高い処は苦手な私にとって、スカイ・ダイビングやロック・クライミングはもちろん、登山をする事など、どこか別の世界の出来事と思え、それに挑む人たちについても、"尊敬"よりもむしろ"畏怖"の念を持つ事が強かったのだが、今作の日本屈指の名クライマー夫婦の、正に"生死"を超越した崇高なドラマには、ページを追う毎に、ひりひりとした痛みと緊迫感に手に汗握りながらも、その精神力の強さと逞しさに、心底感服した。人生に安定を求める事なく、飽くまで自らの好きな事を極め、それを目指す為には命をも賭けるというクライマーの心意気が潔い。沢木耕太郎の精緻でリアリズム溢れる語り口の中、彼らが絶体絶命の窮地に立たされても、"死"への恐怖などあまり感じる事なく、冷静、迅速に対処していく様は凄いの一言。猛烈に劣悪な状況で、手足の指を殆ど失くしてしまっても、それでも、前向きに生きて、また"大好きな山"を目指そうとする山野井夫妻に、読了後、勇気をもらった気持ちになる。
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4101235171
No.14:
(3pt)

山野井夫妻壮絶な登攀劇。

ヒマラヤ高峰ギャチュンカン7952m。山野井夫妻壮絶な登攀劇。

断崖、無酸素、雪煙、雪崩、厳寒。主題となる登攀描写に圧倒。

登攀用語はまだしも、数箇所不可解な描写にやや首傾げるも、

凍傷・失禁・一時盲目への過程に人間の精魂尽きかけの極限を見る。

果たして以前にも加え計十八指失くした妻。手足系十指失くした夫。

最終章。ギャチュンカンを再訪する夫妻に同行する男性は沢木自身。

その高峰を前に「これで終いだな」との夫妻独白を男性が聞き終焉。

8000mを超える世界高峰14座にも入らない頂を目指す、その目的とは。

遭難寸前の災難に遭うも再びギャチュンカンを訪ねる、その責務とは。

昨今列島を襲う寒波に凍えながら読めば、多少の臨場感増幅に到るか。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
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No.13:
(5pt)

2005年締めくくりの一冊

読んでよかった。
それも年末最後の一冊に選んでよかった、と心から思える本でした。

山関係の本は、「神々の山嶺」夢枕獏著が最高だと思っていたが、ノンフィクションの沢木耕太郎は、それにも増して良い書き手です。

人間とは、ここまで強くなれるのか、体もそうだが心の強さが行間から溢れ出ている。

2006年も良い本に巡り会えることを期待して!
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4101235171
No.12:
(4pt)

沢木節で登山記を読む

全編にわたって人称があいまいなため、小説なのかノンフィクションなのか、

戸惑う部分がありますが、相変わらずの沢木節は健在です。

基本的には、著者特有の私ノンフィクション的な文体なので、

一瞬著者が登山をしているような錯覚にも陥ります。

ネパールへ行くエアーラインをタイ航空にするかネパール航空にするかといったエピソードなどは、

沢木氏ならではのものといえるでしょう。

しかし、所詮は取材による登山記であり、遭難寸前の描写などは、

クライマー自身が記したものには、及びません。

沢木調の登山記が読めるという意味で、両者の好きな方に限ってお勧めです。
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4101235171
No.11:
(5pt)

壮絶な登山の記録

いっきに最後まで通読した。凍傷のために手や足の指が切断されると悟り、クライミングの第一線から引退することを覚悟したとき、「それは死ななくても済むということだ。生き残れるようになったということだ。」と語る山野井泰史氏。「絶対の頂」に魅せられたものは、自分の命よりも前人未踏の頂に自らの足跡を残すことが大切なのか。壮絶な登山の記録に息をのんだ。妙子夫人との関係も同じ志を持って生きる同志としてすばらしい。
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4101235171
No.10:
(2pt)

書きすぎ?

数年前の事、新聞で遭難を知り、奇跡ともいえる生還のニュースに感動したことを覚えています。山野井夫妻の死と隣り合わせの登山をクールに描き、始めから終わりまで一気に読むことが出来ました。登山についての知識を持っていなくても技術や方法が分かるように書いてあります。ただ沢木流といえばそれまでですが、「書き過ぎ」と感じるところが何ヶ所かありました。それ自体が想像を絶するような冒険であるので、些細な事にドラマ性を持たせなくても良いのではないかと思いました。今のところ夫妻のギャチュンカン山行について書かれた最良のものかもしれませんが、別の作家や別の視点からの作品も読んでみたいと思いました。
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4101235171
No.9:
(5pt)

凍える世界に息をも忘れる、文字の力を超える本

登山に興味が無い人も、すぐ物語りに引き込まれてしまいます。
<そこに山があるから登りたい>純粋に山が好きな人の気持ちが
この本を読むことで実感できる1冊。
中国・ネパール国境の標高7952mのギャチュカン。
私なんかは登山に無知なため、山野井夫婦がこの山に挑むエピソードの部分は
標高からも難易度が理解できず困りました。が、物語はすぐ登山未経験者でも夢中になってしまいます。
それは、山野井夫婦が山に惹かれる生い立ちに、二人が知り合いお互いを必要としてゆき、今回のギャチュカンへ定めのように人生が流れてゆくから。
山がどんなに悪天候であっても、山の頂きを目指してしまう。
凍傷に見舞われても、頂きを目指す気持ちと、生きて帰る気持ちは揺るがない。
氷点下の世界で、自分を信じ闘う姿。
読んでいくうちに、息をするのを忘れる。
山に圧倒され、山野井夫婦に圧倒され、沢木耕太郎の文才に圧倒され・・・
文字を超えた力を感じる1冊だった。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.8:
(5pt)

山に登る人は違う

彼らは最初から、ふつうの人たちとは違っているのだと思う。
山に登る話は、よく美しい表現がされていて、
読む側が勘違いしてしまうが、
ここには、喜びや苦痛を含めた、リアルな人間像が描かれており、
自分とは違うけれど、魅力的な生き方をしている人の姿を
感じ取ることができる。
生きることと死ぬことが、常に隣り合わせの登山家にとっては、
どっちを取るかは、驚くほど簡単な回路で選択できてしまう
自分が生きのびるという観点から判断するという
シンプルで恐ろしい解決のしかたなのだけれど、
これは、自分たちが日々の暮らしの中でこだわっている小さな問題を
簡単に吹き飛ばしてしまうほど、迫力がある。
身体的なダメージを受けても、人が望むことが
これほどの迫力を持つ物なのかと驚いて読んだ。
真実だから、すばらしいのかもしれない。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.7:
(4pt)

小説を越えた現実の物語

書店に並んでいるのをみて、衝動買いしてしまいました。世界的なアルパインクライマー・山野井夫妻の、2002年10月・世界第15位の高峰・ギャチュンカン北壁登攀からの生還の記録を書いたノンフィクションです。山野井泰史さんを書いた本は、「ソロ」「垂直の記憶」に続いて3冊目になります。殆どギャチュンカン北壁登攀のみにスポットが当てられた作品で、淡々とした文章によって、この登攀の一部始終が細かく書かれています。執筆者の主観や、特殊な形容などが極力省かれた形で書かれているため、等身大のドキュメントとしてリアルに感じられます。ただ、登山未経験者でもわかりやすいよう、国境の時差やクライミングギア等の説明が丁寧に書かれているため、知識のある人にとってはくどい文章に感じてしまうかもしれません。特に、ギャチュンカン登頂後の下降中における、雪崩などのアクシデントや究極のビバークのシーンは物語のハイライトであり、必読です。山野井氏本人による著書「垂直の記憶」でも、ギャチュンカンの描写はありましたが、この本では氏のヒマラヤ登攀記録をすべて満遍なく取り上げているために省略されている部分が多々ありました。この「凍」は、「深夜特急」で有名な沢木耕太郎氏が「新潮」で連載していたものですが、細かい取材がなされていたのか、「垂直の記憶」のそれよりも描写は緻密です。しかし読みやすいので、すぐに読めてしまうと思います。今の世の中に、現実にこんな人がいるのか、ということを知ってもらいたいですね。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.6:
(5pt)

山に関心がない人にも楽しめるノンフィクションの傑作

沢木耕太郎 初の山岳ノンフィクション。
クライマーとして、日本でよりもむしろ世界的に有名な山野井泰史が、女性登山家として有名な妻の妙子とともにギャチュンカンという7,952mの山に挑んだ際の、緊張感にあふれる登山の様子を、著者特有の綿密な描写で再現している。著者の意見や考え方などは全くあらわれず、死と隣あわせになりながら山に挑む、山野井と妙子を空から見ているような描写である。また、通常この分野の本では多用される写真、地図などを全く使用せずに、簡潔な文章のみで状況を描き出す力量は著者ならではのものである。
山野井については、山岳ノンフィクションライターの丸山直樹による『ソロ』、山野井自身が書いた『垂直の記憶』があり、事実関係のみ考えれば、本書は、この2冊以上の内容はカバーしていない。しかし、これらの2冊は、登山の記録または登山者向けのノンフィクションの域をでていないが、本書は、クライミングの知識がない、クライミングに関心がない読者をも引き込むものとなっている。山岳ノンフィクション分野を越えて、ノンフィクションの傑作と言える内容である。
登山(特にクライミング)の知識がある人にとっては、道具やテクニックに関して一部くどいと思えるような説明がでてくるが、気になるほどではない。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
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No.5:
(4pt)

『喪失と獲得』 『凍と闘』 

最強のクライマーと呼ばれる山野井夫婦のヒマラヤ高峰の壁への挑戦。
「喪失と獲得」を沢木独特の視線で描く。
過酷な条件下、ドラマティックな展開を、少し離れたところから乾いたタッチでクールに進める。山野井夫婦はほとんどの指を失ったが新たな目標を得、
クライマーとしての人生を一からやり直そうとしていることに気付く。それはより難易度の高い厳しい条件下での登頂を目指す彼らにとっては、
ある意味当然受けて立たなければならない『闘』なのかもしれない。沢木はいい題材を得た。
久々の大作でありそれなりの評価を得るだろう。しかし彼は書きながら山野井夫妻に対して羨ましく思っているに違いない。
読みながらそんな気持ちを強くした。目標が明確で闘うべき相手が見えており、
まっすぐ進むべき方向に立ち向かっていく二人に比べ、
「深夜特急」という名山を制した作者のルートは困難だ。沢木はまた新たな登るべき山を探さなければならない。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.4:
(5pt)

フィクションでもノンフィクションでもなく哲学書です。

山野井夫婦の物欲のない清貧なる生活には本当に驚いてしまう。ピュアで、ストイックで、同志的な山野井夫婦には、おおいに惹かれるし、もっともっと知りたくなる。現代において、こういう生き方があるのかと居住まいを正す若い人多くいることだろう。
沢木はいい主題を、いいタイミングで見つけたのものだ。山野井夫婦のギャンチュンカンの「凍」からの生還物語を無駄のない沢木の文体が見事に描いている。沢木も何かを掴んで生還したのではないか。
本題とは関係ないが、20世紀の奇跡と言われたトモ・チェセンのローツェ南壁の単独登頂は嘘だったらしいと山野井も思っていることは少なからずショックだった。また、ギャンチュンカン周辺の地図を掲載してくれれば読者に親切だったと思う。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171
No.3:
(5pt)

登山家夫婦の喪失と再生の物語

ヒマラヤを舞台にした高峰登攀の日々を縦軸に、登山家夫婦の半生を横軸に展開される骨太劇的沢木流ノンフィクション。沢木が完全に黒子に徹するのは、ある作家の妻の生涯を描いた「檀」(新潮社)と同様である。登場人物たちの内面が深く掘り下げられており、登攀の描写は沢木が傍観者としてすぐそばにいたかのような迫力があり、たちまち物語の奔流に呑み込まれてしまう。登山の専門用語がいたるところに出てくるが、その解説もさりげなく丁寧でわかりやすく、門外漢でも心配無用である。読んでいて「凍える」場面が何度も出てきた。からだがブルブルふるえてきて、一服置きたくなったが、文章を這う目線は容赦なくそれを拒む。よじ登るように貪欲に先へ先へと進みつづけるのだ。
凍 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:凍 (新潮文庫)より
4101235171

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