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ディミター
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ディミターの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.92pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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ブラッツィの数少ない邦訳の一冊(2010年発表、邦訳2012年)、 エクソシストほどの衝撃度も新鮮さも重厚さもないが、正体不明の何ものかを巡るほどほどの長編スリラー・ミステリ、 第一部アルバニア編では、無神国家を標榜した当時のアルバニアの闇と、執拗な拷問の描写が続き、拷問による自白強制が不可能であることが徐々に証明されゆく詳細さが方向を変えた闇の存在を示してゆく、 第二部イスラエル編では第一部で堂々巡りした部分に別方向から光が当てられてゆく、 邪道外道な読み方だろうが結論が語られる第三部だけ読むのもありかもしれない、 小説としては第一部の執拗さを高く評価しなければならないと感じる、 当然ながら、無神国家の残虐さを語ることイコール共産主義批判であるから、その筋の評論家や読書家から無視された結果がレビュー数の少なさに影響しているだろう、 第二部の圧がもっと強ければ細かい部分の分析に頭を使いたくなるだろうと思うのだが、なにか思いつけば追記したい、 作者本人は本作を自身の代表作と認識しているようだが、そこまでの魅力は感じなかったのが正直な感想だった、 なお、さまざまな馴染みのない固有名詞がたくさん登場し、その点ではミステリの王道に沿った文章作法になっていると思われる、 | ||||
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ブラッティはマンハッタン生まれ、両親はレバノンからの移民。彼が6歳の時に父が家を去り、母に育てられた。少年時代だけで28回転居をした。カソリック。 「ディミター」について次のような応答が残されている。 Q ブラッティさん、今回の作品、ディミターはエクソシストに匹敵すると思われますか? A 疑いなく、これは私の作品の中の最高作です。本作を超えることは自分にはできません、その事をよく承知しています。 2017年1月12日、89歳の誕生日を5日過ぎた日に亡くなった。心から哀悼の意を捧げつつ、ディミターのレビューを書きます。 ディミターは、凄絶な拷問に耐える無言の男からスタートして、一見関わりのない場所、人物が登場する複雑なプロット。 丁寧に読んでいかないと解らなくなるかもしれない。 やがてあらゆるシーンが蜘蛛巣のように関連づけられて行き、ディミターが追跡する目的人物の名が明かされる。衝撃的なラストシーンは、状況と人物の悲惨さと対照的に愛の輝きに満ちて、目がくらむほどの美しさである。 読み終わると、ブラッティが目指し、構築した世界が理解できて深い感動に満たされた。それはキリストの祈りに満ちた究極の安寧の境地だ。 エクソシスト同様、表面に出ているサスペンス、不思議現象などだけを追っても十分楽しめるが、人物名にしても、選んでいる土地にしても、キリスト教に関する知識の有無が、深い理解のための鍵となってくる。 | ||||
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1973年のアルバニアは「神」という概念を国家的に否定して(もちろん「キリスト教」を弾圧)いたのですが、そこに現れた正体不明の男に当局が事件への関与の疑惑を深め、拷問を加えます。その拷問の指揮を執り、男の名前や過去を探す拷問者ヴロラと謎の男の関係を描く1部、その翌年である1974年のエルサレムの病院で起こる奇跡に接する医師メイヨーとある事件を追いかける刑事メラルの2部、そして終章である3部という構成になっています。 ミステリなんでネタバレなしですが、かなり面白かったです。アルバニアにおける宗教史や因習、鎖国状態に置かれていた事実にもびっくりしましたが、単純なミステリでない、スパイモノを注入し、さらに哲学的な問いかけをまぶすことで、個人的にはかなり好みの作風になっています。さらにその東欧からイスラエルのエルサレムに移るのも納得の展開。 その上描写やプロットの見せ方がいちいち憎らしいくらいでして、物語の緩急の付け方が玄人好みです。一見何の変哲も無いように見せかけて実は・・・という部分や、クライマックスでの盛り上がり結末を早く知りたいという欲求を押さえつけながらページをめくることこそ読書の究極の楽しみのひとつですし、最後のカタルシスも素晴らしく、もうひとつの究極の読書の楽しみである読後の余韻もばっちりです。 とりあえず、あまり知識を入れないで読まれた方が楽しめる作品であることは間違いないと思います。 スティーブン・キングが好きな方にオススメ致します。 | ||||
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オカルト映画ブームの火付け役となった名作「エクソシスト」で一世を風靡した大作家ブラッティが最初の構想から実に三十年の歳月を掛けて完成させたオカルト謀略小説の意欲作です。本書は「エクソシスト」の悪魔祓いという非科学的な超自然の世界から一転して合理的なミステリーの世界に挑戦した著者の意欲作ですが、でも100%論理で割り切れるかと言うとそうではなく読後に一部不可解な謎を残す作風で、過去の推理作品に例えるとJ・D・カーの名作「火刑法廷」の趣向に似ていると言えましょう。 1973年無神国家アルバニアで正体不明の男が国家保安省に連行され人でなしの拷問者の仕打ちに耐え抜き一切口を利かず遂には逆に反撃して逃走する。翌年エルサレムを舞台に医師メイヨーと警官メラルの周囲で不思議な事件や奇跡が相次いで起き、やがてイスラエル情報部やCIAをも巻き込んだ陰謀劇の驚くべき真相が明らかになる。 本書は第一部のヴァイオレンス色が濃く惨たらしい死体が転がる展開と比べて第二部は死体の数では負けていない物の地味目の大人しい印象で、途中意味が判然としない場面の割り込みに戸惑わされたりアクション・シーンも殆どなかったりと迫力に欠ける面があるのはやや残念です。まあ「エクソシスト」での悪魔憑きの少女の首が回転するシーンには勝てる訳がないですが、でも一方で本書のクライマックスには渋い大人の魅力が漂っており著者が人間性や精神の領域で勝負しようとした意図が明らかで憎しみを超越した許しという人間の大きな愛が感じられる点が最も素晴らしいです。本書のミステリー上の技巧は手掛かりに基づく論理的推理と言うよりもスパイ小説流の奔放な想像力が必要となる意外性が肝ですが、その複雑に練り上げられた仕掛けにはまずまず満足しました。考えると本書に登場する死者は夥しい数でそれは著者の芸風で仕方ないのだろうなと想像しますが、途中でユーモアを入れたり割合に淡々とした筆致で描写したり人生の悲哀を知る詩人の様な警官を登場させたりという小説作法で全体として暗い気持ちにさせないのが良かったと思います。そして結末にはまだ正体が完全に理解出来たとは思えないディミターの死体消失というオマケが用意されていまして、これは続きの物語の可能性を示唆しているとも思えますし、私としては舞台を変えた違う場所でのこの神秘的な人物の活躍を何時か再び読んでみたい気がしています。 著者は本書を82歳で発表し2012年現在御歳84歳と非常にご高齢ですので難しいとは思いますが(でも可能性がゼロとは言えませんので)、もし気力が続くならぜひ本書の続編を執筆して欲しいと願っています。 | ||||
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キリスト教における、信仰と神秘体験をモチーフにしたミステリ。 吟味され、時間をかけて書かれたであろう文学的とも言える文章。馴染みのない固有名詞。複雑に散りばめられ過ぎた伏線など、正直読み易いとは言えない作品です。 「つまらない」と感じてしまう人もいるでしょう。 それでも自分は「良かった」と思いました。 ストーリーも良いのですが、その最も大きな理由は、スパイ、警官、医師の主要登場人物たちに、しかも最終的には悪役であるはずの尋問者にまで強く感情移入してしまったからです。 それが出来るか出来ないかで、作品に対する印象はかなり違って来ますから。 決して多くのページが割かれている訳ではありませんが、彼らの人生を想うと切なさを禁じ得ません。 映画エクソシストを好きだという人なら感じたはずの、哀しくも清々しいあのラストの余韻、それと同じ感情が読後に沸き上がって来ます。 独特な雰囲気を持った物語で、無二であるが故に読者を選びますが、ありきたりのミステリには飽きたという方にはお薦めです。 | ||||
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本作の怪しさ、いかがわしさ、そして緊迫感。80歳過ぎてのW. P. ブラッティのソリッドな物語は見事というしかない。 1973年、あらゆる宗教を認めず、激しい弾圧を繰り返しているアルバニアで、正体不明の男が勾留された。男はスパイ容疑で凄まじい拷問を受ける。しかし、口を開くことなく強い印象を残しながら、ある日脱走する。 1974年、エルサレムの病院ではひそかに”奇跡“が囁かれていた。末期患者の癌が消えた、歩行困難者が歩けるようになったこと等である。その一方、街では不審な事件が続いて起きる。1973年、1974年の話が第1部、第2部に相当するのだが、この全く関連しそうもない話を作者ブラッティは、我々の洞察力を超えて結びつける。ホップ・ステップ、そして見事なジャンプ(第3部)、着地が本当に凄い! これはお薦め!! | ||||
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第一部>舞台はアルバニア ひょんな事で囚われた死んだはずの男の名を名乗る[虜因]が、[尋問者]ヴロラ大佐に過酷な拷問を受けるが、まったく痛みにも音を上げる事なく 沈黙を通し、最後には大佐の息子を含む数名を片付けて、鮮やかに脱獄。 この出だしが すごい緊迫感で、痛みを意に介さない(これにも後でちゃんと説明がある)謎が、謎を呼び、いやが上にも今後の展開に ワクワクさせられる。 第二部>舞台は第四次中東戦争を目前にしたエルサレム 病院を舞台に医者と警部補をとりまく怪異現象を発端とした、ここからがメイン・ストーリーとなるのだが、第一部の緊迫感から比べると、 結構のんびりした語りで日常の異変をさりげなく描く方向へと変調しており、緊迫の[虜因]のその後を早く読みたいとジリジリしている こちらは、ちょっと戸惑う。 まぁ、しかし第三部<最終報告>に突入すると、この第二部で伏線が貼りまくられているのが分かるので、適当に第二部を読み飛ばしいた、 当方としては、元へ戻って何度も読み返しをする羽目に陥ってしまった。 エクソシストの原作者であり、さらに[エクソシスト3]の監督の新作ということで、当方勝手にその種の筋立てと思い込んだまま読みすすめたが、 最後は良い意味でも、悪い意味でも期待を覆す結末のオカルト風味の謀略物だった。ただ出だしから期待したほどには、最後は盛り上がらなzかった と言うのが私の感想だが、この辺りは読み手の嗜好の好き嫌いも大きいか... 他国ではThe redemption救済 と言う題名で出版されたとのこと、この題名の方が本作に相応しい気もするが、 Dimiterの方が不気味さを醸し出すには良かったのかも... | ||||
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個人的には、『エクソシスト』の原作者というより、映画『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』の監督としてのブラッティに興味がある。 ブラッティが「わたしの作家としてのキャリアを通じて個人的にもっとも大切な作品」と呼んでいる本作には、作者が長年表現し続けて来た、信仰と懐疑と無神論と救済についての、ひとつの回答が与えられている気がする。 第一部のエピグラフとして、新約聖書の「パウロの回心」について、すなわちキリストの迫害者だったサウロが、キリスト者に転身する箇所が引用されているが、読後に気付いた。これは本作の鍵のひとつ。 登場人物の名前を考えても興味深い。 例えば、謎と神秘の目撃者である警部補は「ピーター」であり、つまり作者と同名。 聖書上のポール(パウロ)とピーター(ペテロ)の関係を考えても面白いかもしれない。 後半部、情報が断片的に提示されるので、話に追いつけなくなるが、それが最後に見事にまとまるのも凄い。しかし、イスラエルに対する作者の思いを、深く理解出来ていないのは心残りである。 深い余韻を残す神秘主義小説であり、繰り返し読んでみたいと思わせる。 『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』が好きな人にはたまらない一作。 | ||||
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エクソシストのイメージが強すぎてオカルト色が強いかと思っていたが、前半のアルバニアでのミステリアスな断片だけで、それが後半の謎解きパートでしっかりと収斂していくところはさすがのお手並みであった。 ジャンルとしては広義のミステリー、もしくはエスピオナージに含まれると思うが、宗教的な神秘性をスパイスにするところがブラッティたる所以であろうか? エスピオナージ、ミステリが好きな方にはぜひおすすめしたい。 | ||||
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