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疾走
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疾走の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.14pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全215件 101~120 6/11ページ
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救いのない物語だ、と思った。 偉大な物語だ、と思った。 誤魔化していない、向き合っている物語だ、と。 悲劇を書くのは簡単なことで、悲惨さを謳うのも容易ではあるのだろうけれども、一つの線を貫いて、抑制を効かせた文体は、悲劇を黙示録へと昇華させている。 いや、批評はいいや。 この作品に、こういうことはくだらない。 エリとシュウジの終盤を読みながら、本当に暗澹たる気持ちになっていたのだけれど、実は読み終わって仕事をしながら、 「これは、救いの物語なのではないか」 と思い始めた。 シュウジは、エリが変わってしまい、損なわれてしまっても、自分勝手にエリを操作しようとしなかった。 全てを含めて、エリと、エリに連なる世界とを、受け容れて、大切に思った。それは、作中では出てこない言葉であり、手垢の付き過ぎた述語ではあるけれども、シュウジなりの愛という姿勢であったのだろうと思う。 極限の苦難の中。 全ての救いと支えはエリだった。 そのエリが、変質した。 それは微妙でありながら、やはり決定的な変質だった。 救いは、喪われた、はずだった。 外部に、信じられるものは、無くなった、はずだった。 シュウジは、しかし走り続けた。 シュウジの態度が、黙示録なのだと思う。 ・・・言葉にしにくい。 けれども逃げないで、何度も読み返して、何度も味わって、何度も考えて、そして生きよう。 | ||||
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主人公シュウジを「おまえ」と呼ぶ語り口に違和感を感じて,感情移入にちょっと時間がかかったが,読み出してみると本当に止まらない。上下とも,休む時間すら惜しくて,あっという間に読み終えてしまった。 シュウジを取り巻く状況は,本当にシビアだ。家庭崩壊,自殺一歩手前まで追い込まれるイジメ,暴力的セックス(読んでいて,これほど辛い性描写は初めてだった)と殺人,孤独。 本当に救いのない状況だし,その救いのない状況を本当に誰も救ってはくれないのだけど,ラストで,「シュウジ」と語りかけられる部分ではボロボロと泣かされ,ああ,「おまえ」という語り口はそういうことだったのか,とも納得させられた。 読んでいて居ても立ってもいられないほどの辛さと,一転しての心地よい涙と……やっぱり,重松清はうまいなぁと思う。 | ||||
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心の底から恐かった。逃げ場のない子供たちを次から次へと大人が襲う。そしてあの男。あの男たち。重松清の本は普通のサラリーマンが主人公の物語が好きだけど、きよしこといい疾走といい読んでいてティシュが一箱なくなりそうなくらい泣かされる作品も多い。TVの矢沢栄吉ルポみたいなのの重松清見てると同世代の親近感溢れる人なのに。作家って凄いなぁ。 | ||||
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主人公は言葉に絶望しながらも、最後まで「言葉」を捨てられない。彼にとっての「聖書」は超越的な存在としての「神」ではない。「言葉」そのもの。「ことばとはなんだろう」主人公はかつて問ういました。彼が最後のギリギリの場面で聞いたのも、見ず知らずの者の「言葉」でした。 物語に救いはあったか、彼は、救われたのか。彼の存在そのものを許して、信じていた存在。人生が、ここまで堕ちるほどに、人間がここまで壊れるほどに酷くないならば、確かに救いの手はあるのかもしれません。 | ||||
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一度見たら忘れられない装丁だった。 書店に行くたびに平積みにされたその男の顔が気になってはいた。 顔を背けることを許されず、何かに釘付けになったような目。 断末魔の叫びが聞こえそうな大きく開かれたままの口。 ・・・装丁は、先日NHKプロフェッショナルでプロ意識を披露した鈴木成一氏。 彼は装丁を依頼されると、小説を読み込んだ上でふさわしい唯一のデザインに辿り着くという。 それが、あの表紙か・・・だったらどんな空気を孕む小説なのか、自ずとうかがい知れた。 読み始め、弟に弟らしさを求める兄と、兄の機嫌を損ねたくない弟の、何気ない会話の様子が描かれ、 干拓地から見えるという景色と心地よい風に、体の力を抜いていると急に「おまえは」と名指しされ、一瞬戸惑った。 地の文なのか、誰かの回想だったのか、と混乱してしまったのだ。 しかし更に続く、おまえは、おまえは、おまえは。 いくらか読み進んで気づいた。作者は、僕は、俺は、私は、シュウジはなどではなく「おまえ」で、 主人公の言動を示しているのだ。 シュウジを指して「おまえは」と呼んでいる訳は、きっと最後で明らかになるのだろうと思った。 主人公は、期待を抱けない人生を生きざるを得なくなってしまったシュウジだ。 彼と交わる人々もまた、期待通りに人生を生きることを許されない人ばかりで 読むにつれてどんよりとした気分になり、何度溜め息をついたことか。 彼らは、誰かとつながりたいと思うのと裏腹に、誰かに裏切られる人ばかりだ。 読む人によっては非常に重要に思われるだろうテーマとして、聖書の言葉がある。 随所に引用されており、言葉とは何かという問いかけと共に、 シュウジは事あるごとに触れているのであるが、私が無宗教だからなのか 私の胸には響いてはこなかった。 また中盤、数ページにわたる、性描写にとどまらない激しく残酷な性的暴行描写がある。 その部分は、シュウジがある行動に出るのには必要不可欠な動機となるのだが、 「性的」暴行の必要があったのか?と疑問に思った。 求めつ追われつ疾走したシュウジの人生が終るころ、シュウジを「おまえ」と呼んだ人が、 残された人々のその後を語る。彼らは感情を殺したり無関心を装ったりすることをやめ ひたすらに、人生と人間に向き合うことだけをし、誰かとつながれたようだ。 疾走したシュウジの、犠牲の上に。 ともかくも一筋の光を残して、哀しい物語は終わる。 | ||||
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ひとりで生きるしかなくなった状況の中で、まだ中学生という幼さからくるのか彼(シュウジ)はそれでも人と繋がることを欲する。誰かと孤独を分かり合いたい。僕も、常に自分はひとりだと感じているが、誰かと繋がりたいとはもう思っていない。それは、僕はシュウジより幾分、時間を重ねているからであろうか、それとも僕はアナボコのような目をしているからだろうか。 | ||||
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他のレビュアが書かれている通り、シュウジとエリの軌跡は胸が痛む描写ばかりです。 ただ、著者はそのような状況のなかでも、シュウジとエリは東京でのやり取りや帰郷を通じて 孤高を取り戻した・保ちきったことを描きたかったように思われます。 それは ・作中でいう「ひとり」だったシュウジとエリが「ひとりたち」になる過程 ・「ひとりたち」は自身らに理不尽な宿命を負わせた故郷や弱い大人に対して最終的には 憎みきらずどこかでそれらを許したこと(『―おまえは優しいから』) ・シュウジ自身が、客観的に見れば錯乱した15歳にしかみえないような状況を仕立てあげ、 自分と同じ人であるエリをかばい、世間の理不尽さや悪意・誤解を一身に受けたこと ・その後のシュウジの表情 ・作品の最後 でうかがえるように思われます。 | ||||
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どこからどう歯車が違ってしまって、こんな過酷な人生を送らなくてはならなくなったのか。 物語の間中どんどん落ちていく「シュウジ」をなんとかしてあげたい!という思いで読みました。「これはフィクションなんだから、」と時に思い返さないと、どんどん引き込まれていつか「シュウジ」の人生を背負い込んでいる自分がいました。 「ひとり」「言葉」「つながり」、人生を支えるいろいろなキーワードが出てきます。作者は私達が通常はそこまで降りていくことのない深いところにまで引き摺り下ろし、絶望の中になにかを伝えようとしているようです。 上下巻で800ページ近いボリュームですが、私は2日で読み終えました。読み終わった後、かなり引きずります。忘れられない1冊になりました。 | ||||
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これはもう読み終わった直後の感動が半端じゃないです。 感動っていっても、「あぁ、なんていい話なんだ」とかいって涙を流すのではなくて、 文字通り「心を動かす」という感覚です。 「わたし」という存在はなんだったのかがわかりだすくだりから、畳み掛けるように 淡々と、それ故に切なく登場人物たちの現在が書かれていて、 そこから読んでるほうの気持ちが一気に高まります。 上下巻ありますが、3日くらい部屋に閉じこもって黙々と読み終えてしまいました。 重松清さんはこんなにも辛い話を、ただ暗い話というだけではなくしてしまう。 ほんとにすごいなぁ。 | ||||
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「クリムゾンキングの宮殿」のジャケットを彷彿させるような表紙の人物画と 「疾走」というタイトルに惹かれ、この本を手に取りました。 その表紙とタイトルから想像する域を遥かに超えて、少年の壮絶な人生が そこには描かれていました。 もし自分が同じ立場だったら、シュウジやエリほど強く生きられるだろうか、 そんな問いを投げ掛けられ、答えに窮し、読み終わった後は暫く放心状態でした。 「その日の前に」や「流星ワゴン」といった名作とは対極をなす作品だと 思いますが、重松さんの懐の深さを見せつけられました。恐れ入りました。 | ||||
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少年の生活は崩れ出して決して救われず、ただひたすらに堕ちていく。 そんな暗くて重い話。だれど彼らをしくしく憐れむための本でもない。 終わりはどうあれ主人公は走りきるから、読後はちょっと元気なれる。 個人的には、資本に犯され死んでゆく地方都市の表現が興味深かった。 | ||||
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地域や職場や学校や家族など,複綜する人間関係のなかで,人の「弱さ」が幾重にも積み重ねられて,もっとも無防備な者である「子ども」の人生を粉砕していく。加速度的に転げ落ちていく少年の運命は,リンゴの実が重力にしたがって落ちたり,時計の針が歯車にしたがって回ったりするのと同様,まるで機械の運動のように思えてくる。悪者探しをするのは的はずれなのだ。だれのせいでもなく,どうしようもなくそうなっていく。 重いテーマの物語がなんとも読みやすく,引き込まれるように書かれていて,文庫では二分冊で刊行されたちょっとした分量の作品が,ページをめくるのももどかしいような思いで,すいすい読み通せてしまう。重松清のストリーテラーとしての力量が,本作品でも遺憾なく発揮されているからだろうと思うけれど,この陰残な悲劇がこんなにも軽やかに読めてしまっていいものかとも思う。 しばしば引用される聖書の記述は,十二分には生きていない気がした。その引用が必要でないわけではないし,作者の思いが通じないわけでもないのだけれど,なんかいまいちなのだ。それがなぜなのかわからない。もしかしたら,作者の文体のリズムやトーンの軽さと,聖書の言葉の重さとが,ミスマッチなのかもしれない。作者がもう少し持ち前の文体に暴力を加えて,ネチネチと重々しく書いたなら,もっと良くなった気もする。 | ||||
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私が、本作の上巻で印象に残ったのは、 作者が、いじめの情景であったり、だんだんと落ちこぼれていく兄の顛末を的確に表現していたことでした。 まるで、ドキュメンタリーフィルムを見るように、微妙な時期の少年たちが深く描かれていました。 やはり、重松さんが教育学部出身であることとも無関係ではないのだろうと思いました。 | ||||
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この小説は、わかってくれた。 「ひとりぼっち」の僕のきもちを。 もう終わった人生を歩むしかない「ぬけがら」の人間のきもちを。 本作は、表紙を見れば、想像がつくだろうけれどかなりダークな内容だ。 主人公の少年は、「ひとり」では抱えきれないほどの不幸を背負う。 学校内のいじめ、村八分、少年犯罪、親の多重債務など。 作者の重松清は、教育学部出身だけあって、いじめの描写や少年犯罪に至る少年の心理を、かなり的確に描いていると思う。 僕の人生も、暗くて惨めったらしいものなので、すごくわかってくれている小説だなと感じた。 | ||||
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重松清作品って『ビタミンF』しか読んだことがなく、すっかり油断してたらモロに食らってしまった、という印象(涙) 壮絶でした。読み終わる頃には虚脱状態に陥ってること請け合い。精神力の余力があるときに読んで下さい、でないと、消耗しすぎてつらいと思う。 最後は救いがないようで、あるようで、でもやっぱりシュウジを思うとこんなものは救いじゃない、と言いたい… かなり骨太な作品です。アクも強いです。性的描写と暴力描写(どちらも暴力描写で括ってしまっていいかもしれない)に弱い人にはおすすめしません。あと食前もアウトですね、食欲なくすよ、いろんな意味で。 ただ、すごく心に色々なものを残す作品、でもあります。なので評価は、★★★★★以外には考えられません。 | ||||
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読み終わった後、主人公が生きてきた逆境すぎる人生にため息が出た。ただ悪い意味だけのため息ではない。 最後の語りは静かな感動があった。ただ映画はおすすめできない。 | ||||
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差別に始まり、血族が被る悲劇までどん底に落ちていく主人公を見事に描いている。 いくつかの悲劇は自ら選んでしまった道ではあるが。。 最後の部分が惜しい。新宿という犯罪の溢れる都会を舞台にしながら、 その中で起こりずらい事件を選んでしまったように感じる。 更に言うとその前の事件とその後の経過(報道等を含む)にしてもあまり現実的ではない。 もっと起こりうる「えぐい」悲劇が他にもあったのではないかと個人的に思う。 | ||||
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「疾走」そのタイトルどおり、読みはじめから止まりません。 主人公の少年の、15歳で背負うにはあまりに酷過ぎる人生。 小説(フィクション)でこんなに涙が流れたのは初めてで、正直 驚いています。ラスト、涙で字が読めないほど感動しました。 友人から借りたのですが、自分でも買ってしまいそうです。 | ||||
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中一の夏に、雑誌でYOUが推薦してたので、読みました。 子供なりに、物凄く真剣に読んだ本です。 読み終わった後は、ぶっ通しで読んだ疲労感と共に、不思議な後味がしばらく残っていました。 主人公の身に起こることや、その他いろいろ、悲しくて辛い。 深くてほの暗い部分を、重松さんは容赦なくずぶずぶと入っていくように書いてる気がする。 あれから読み返していませんが、この小説の一部一部、はっきりと鮮明に残っています。 私だったら絶対書けない。作家としての才能がもしあったとしても、絶対に書けないような、濃くて重くて暗くて、なぜか透明な話。 | ||||
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私はそうは感じませんでした。 たくさんの障害を駆け抜けて行くスピード感あふれる話。 読み終えたあと引きずるような後味の悪さも感じず なんだかすっきりと読めました。 とても良かったです。 | ||||
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