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警視庁草紙
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【この小説が収録されている参考書籍】
警視庁草紙の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.76pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全38件 21~38 2/2ページ
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巻末の解説が充実しているのでそこから引用すると、「史実に無理なく、嘘を書く」著者の「手並みのあざやかさ」と「背後にうかがえる教養の深さ」を讃えるしかない。ラストの処理も見事で心にくい。風太郎明治小説の第一作がこれなのだから、中毒になるのもむべなるかな。 | ||||
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山田風太郎というと、「魔界転生」や忍法帖シリーズ、または「戦中派日記」などで知られるが、明治ものというのは意外に知られていないのではないだろうか。一つにはあまり映像化されていないということもあるだろう。しかし、今から10年前の平成13年、NHKで「山田風太郎からくり事件帖」として放送されたことがある。主役の千羽兵四郎を田辺誠一が演じ、音楽をアコーディオンのcoba氏が担当するという、なかなかしゃれた時代劇だった。 明治初頭の混沌とした時勢に生じた難事件を、隅のご隠居の力を借りて解決していく話は、さもありそうな雰囲気を醸し出して、歴史上の人物が目の前で息づいているかのようである。唯一いただけないのは、表紙のマンガチックな絵である。 | ||||
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「山田風太郎の明治物はすごい」としばしば耳にするので、どんなものかと手にしてみました。 魅了されました。 虚実ないまぜとはこのことでしょう。 司馬遼太郎などを読んでいて、ある程度のことは歴史上の事実として知っていることですが、その歴史上の出来事と完全なフィクションが織りなすようにつむぎだされています。 フィクションではありながら、なるほどあの事件(人物)にはこんな後日談があったのかと納得しそうになります。 逆に言うと、維新前後の予備知識がないと十分には楽しめないかもしれません。 そして、これは評判として聞いていたことですが、明治初期の風俗や人情が実に細やかに描かれています。 これは、読み進むしかないでしょう、山田風太郎の明治物。 宝の山を見つけた気分です。 | ||||
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風太郎翁の小説は、紆余曲折、波乱万丈、奇想天外、痛快無比、天下無双。 この作もまた同じである。 「仔細に検討するとおかしなことがたくさんあるがそんなことは気にならなくなってしまう展開のスピード感と面白さ」 なのである。 その他面にはどんな苦労をしたかは知らないが、その苦労を見せること感じさせることこそ野暮の骨頂だった。 「怠ける方へ、怠ける方へ、いかにすればラクに、いい加減に、この世を渡れるか、ということを目的として 『悪戦苦闘』してきたようだ」 という悪戦苦闘ぶりが、この『警視庁草紙』には満載である。 せめて読者は「寸暇をおしんで」読みますか。 | ||||
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山田作品に共通して言える事ですが、軽いタッチの小説のようでいて、真の教養を持っていないとなかなか読みこなせません。けれども、文句なしに面白い。野暮の真逆、粋の極致。現代は、私の様に教養人とは程遠い人間でも携帯を少しいじれば何でも教えてもらえる良い時代。恐れず読みすすめましょう!上巻はまだ江戸の名残が濃い雰囲気です。下巻は、それなりの時間が経って、必然的な流れになっていきます。結末はどうあれ、読んで損は無いと思います。 | ||||
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千羽兵四郎と長連豪、二人の二枚目っぷりは、歴女の心にも充分響くのでは?。哀しい運命を背負っているという事も、重要なファクターであると思われます。哀しい結末と思いながら、兵四郎の決断には充分納得させられます。女が口出しできる事ではありませんね。 | ||||
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◆「皇女の駅馬車」 静寛院宮(皇女和の宮)から、故十四代将軍家茂公の御木像を、 京都から東京へ、陸路のみで運ぶように命じられた山岡鉄舟。 その御用が、御隠居を介して、兵四郎に託されることになる。 兵四郎たちは、京都から、御木像といっしょに、 台座と称して、あるものを運ぼうと企てる……。 ◆「川路大警視」 将軍木像とともに、まんまと目的の機械を 京都から運び出すことに成功した兵四郎たち。 道中では、遠州駿河の渡世人たちと、 それを束ねる大親分に助けられる。 いっぽう、不平士族が暴発寸前となっている薩摩に対し、川路大警視は、 後に“日本のフーシェ”と称せられる原因となった、ある非情な決断を下す……。 ◆「泣く子も黙る抜刀隊」 築地にある海軍操練場に、軽気球実験の見物にやって来た 御隠居は、そこではじめて、川路大警視と、直接対峙する。 ちょうどその頃、市ヶ谷監獄におびき出された 兵四郎は、絶体絶命の窮地に立たされていた……。 本作のクライマックスである御隠居と川路大警視の 対話に、作者の人間観・歴史観が凝縮されています。 物語の最後で兵四郎が下す決断は、愚かで矛盾に満ちたものですが、 この連作物語を締めくくるにはそれしかない、と思わせる皮肉と哀愁が たたえられており、深い余韻を残します。 ◆第十話〜第十二話 ◆第十三話〜第十五話 | ||||
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◆「妖恋高橋お伝」 明治十一年に内務卿大久保利通を暗殺する加賀の四人組、そのうちの一人、 長連豪に想いを寄せる高橋お伝、そして、お伝に騙されるも、物語の結末で、 皮肉な再会をはたすことになる市ヶ谷囚獄署首斬り役山田浅右衛門といった 面々が織り成す「警視庁草紙・外伝」というべきエピソード。 ◆「東京神風連」 会津浪人永岡敬次郎は、長州の前参議前原一誠と 示し合わせ、新政府に対する謀反を企てるが……。 密偵使いの名手・川路大警視の本領が発揮される一篇。 結末における御隠居のメタ的(!)裏読みが面白いです。 ◆「吉五郎流恨録」 安政六年、伝馬町で、のちに死罪となった ある浪人と相牢だった、むささびの吉五郎。 その後、吉五郎は三宅島に流刑となり……。 吉五郎が、河鍋暁斎の春画を「武器」に、過酷な島での生活を サバイヴしていくさまは、極限状況の切実さがうかがえる半面、 バカバカしくも思えるもの。 しかし、吉五郎が流刑生活の間、片時も忘れることのなかった ある「約束」が成就された時、思いがけない感動がうまれます。 | ||||
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◆「幻燈煉瓦街」 前大蔵大輔井上馨を告発する内容の、のぞきからくりが行われていた 「からくり煉瓦」のなかで、右手に匕首、左手に三味線を握りしめた屍骸 が発見される……。 貪官の典型・井上馨を筆頭に、河竹黙阿弥、幸田鉄四郎(露伴)、 東芝の原型を創った、からくり儀右衛門こと田中久重などが登場。 高橋由一の絵も、重要な小道具となっています。 ◆「数奇屋橋門外の変」 井上馨の「からくり煉瓦」で、またもや彼の配下が屍体となって発見 される。しかも今回は、屍体が十八体、という常識外れの数だった。 のちに、殺害された者たちが元彦根藩士であったこと、さらに屍体を発見したのが、 海後嵯磯之介という巡査で、その男は桜田門外で井伊直弼を殺害した水戸浪士の 生き残りだったことが判明し、彦根藩と水戸藩の因縁が事件の背景にあると考えられたが……。 ◆「最後の牢奉行」 遠からず取払いになる伝馬町囚獄署で、死刑囚が絞殺された。 三代将軍の時代から、代々、牢屋敷の奉行を務めてきた、 石出帯刀の十七代目が責任を問われることになるが……。 明暦の大火に見舞われた際、当時の石出帯刀は、鎮火後ふたたび牢に帰って来ること を命じて囚人を自由に逃走させる「切放し」を行い、以後それが不文律とされたそうです。 ところで、本作の事件には、若き日のある文豪がカメオ出演し ており、はからずも、犯人捕縛の手助けをすることになります。 ◆第一話〜第三話 ◆第四話〜第六話 | ||||
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◆「幻談大名小路」 按摩の宅市は、自分を失明させ、主家を裏切った、 加賀大聖寺藩の国家老の息子・奥戸外記とともに、 大名小路にある、大聖寺藩邸に連れて行かれる。 しかし、大名小路は、もうこの世に存在していないのだ……。 本筋の事件以外に、とある文豪二人の、実際にあり 得たかもしれない、幼年期の邂逅が描かれています。 ◆「開化写真鬼図」 ある遊女を巡る、果し合いの介添人をすることになった兵四郎。 しかし、その果し合いをひそかに見ていた加治木警部に、 おんな牢事件の新聞記者であることを見破られてしまう。 果し合いの当事者で、肥後熊本出身の桜井直成が警察の手に落ちた ため、彼の口から兵四郎の素性が明かされるのも時間の問題である。 進退窮まった兵四郎に、御隠居は起死回生の奇策を授けるが……。 御隠居の策は、当時の最先端の技術を用いたもの。 しかし川路大警視は、その策をも利用する冷徹さを見せます。 本作には、ハリスの妾という謂れのないレッテルを張られた唐人お吉、 東条英機の父である東条英教、そして、横浜に写真館を開いた、日本 写真術の開祖・下岡蓮杖などが登場しています。 ◆「残月剣士伝」 元講武所師範役榊原鍵吉は、警視庁からの招聘を固辞するも、 増え過ぎた食客を養っていくため、門下生である天田五郎の 発案で「撃剣会」という剣術の興行を始めた。 撃剣会は連日、大入満員となる。それを面白く思わない警視庁側は、 新撰組初代局長芹沢鴨の元配下・平間重助によるある催しを黙認し、 撃剣会を潰させようとするが……。 いつの時代も、独創者を安易に模倣し、パロディ化することで成功する エピゴーネンは跡を絶たないが、しょせん、この世はそんなものだ―― といった、作者の醒めた認識が印象的。 平間以外にも、ある新撰組の生き残りが登場します。 ◆第一話〜第三話 ◆第七話〜第九話 | ||||
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◆「明治牡丹燈籠」 落語家・三遊亭円朝の隣家に住む、若い 浪人が変死し、円朝に容疑が掛けられる。 事件現場の部屋は、内側から血紙で 封印されているという密室状態だった。 事件があった夜、油戸杖五郎巡査は、牡丹が 描かれた人力俥に乗る不審な美女に遭遇する。 しかも、その人力俥は、あとに血だまりを残し、消えてしまい……。 事件の解決と、のちの「怪談牡丹燈籠」の原型 となる怪談噺の誕生秘話を重ねる手腕が見事。 ◆「黒暗淵の警視庁」 土佐の不穏分子が、赤坂喰違いの土堤で右大臣岩倉具視を襲撃するが、失敗する。 警察は、ただちに襲撃犯の潜伏場所をつきとめ、完全に包囲した。 事件に、大国源次郎が関与していることを知った千羽兵四郎は、 自分たちにまで累が及ばぬよう、彼らを逃がそうとするのだが……。 兵四郎たちは、今回もまんまと警察を出し抜きますが、 彼らの活躍が、思いもかけない悲劇を生むことに。 ◆「人も獣も天地の虫」 警視庁による私娼の徹底的検挙が始まった。 捕らえられた女たちを解放するため、兵四郎たちは、 警視庁の警部を色仕掛けではめ、強請ろうとするが……。 女囚のなかに意外な人物がおり、ある歴史的事件の真相が明かされます。 ◆第四〜六話 ◆第七〜九話 ◆第十〜十二話 ◆第十三〜十五話 ◆第十六〜十八話 | ||||
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詳細は十分に前のお二人が書かれているので省略するが、笑った笑った。それはそうだろう、仕事の引き継ぎなんかないわけだから、二つの警察組織があった時期は絶対にあったはずで、旧の側が新の方を邪魔するのは、しごく当然であろう。 司馬遼太郎氏の「翔ぶが如く」を読んだ後、青山墓地墓参ツアーを決行し、そのときにも行ったのだが、これを読んだ後でもう一度、花見を兼ねて川路大警視の墓参りをし、墓前で一献傾けてきた。苦労したよね、この人(笑)。 | ||||
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上巻から通しで事件のからくりもさること乍、この下巻は特に人物のひとりひとりが男女問わず恰好いい!(まあまあ‥救いようのないような人もいるけれども) 実在の人物が多く出てくるので、誰がいつどこで死んでしまうかわかっている人などには、その恰好良さが切ないことと思います。 あと通行人のように有名人が出てくるのもニクいトコロ。 「あんたこんなところにいたのか!でも全然注目されてない!(笑)」と。 それからこれは、登場人物について調べたくなるので困ります。 調べなくてもまったく楽しめるけれど、楽しかったからこそ調べたくなってしまう。 とりあえず柴五郎は調べました! 川路大警視は論文を書こうとして断念しました… あ、私『るろうに剣心』から斎藤一が気になったクチだけど、この斎藤一も大好きです!(笑) | ||||
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ふっと影のように、人物の前を横切っていく実在の者たち。 その顔が明らかになった瞬間、事件の真相がベールのようにはぎとられていく過程。何度も何度も背筋がぞっとする大傑作。 山風明治ものにはずれなしだが、そんな中でもこれは最高峰に位置するだろう。 ラストに向けての哀感も見事! | ||||
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明治時代がこんなに面白い時代だったのか!と教えてくれる小説だ。 おなじみの名前の面々がぞろぞろと登場する。 「士族の乱」とは何か?なぜ起こったのか? そして、誰が乱を起こしたのか?誰が乱を収めたのか? 知りたい人は、この本を手に取ってみよ。 | ||||
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生まれてから読んだ本の中で本当に一番、面白かった。おまけに日本史の勉強になった。西郷隆盛から夏目漱石まで盛りだくさんに歴史上の人物が出てくるとはいえ、史実とはかけ離れたストーリーのどこが勉強になると言うのか、とおっしゃる人は無粋の極み。明治という時代の雰囲気がこうも伝わるものは他にあるまいに。 | ||||
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明治がまだ、江戸時代の雰囲気を残している東京。「文明開化」で変わりつつある日本、そして東京の行く末を自分の目で確かめる元江戸町奉行駒井相模守。見るだけでなく元同心千羽兵四郎、元岡引かん八とともに、薩摩藩出身の警視庁大警視川治利路を相手にちょっかいを出してしまう。 時代は変わるが、変わらないものがある。これがこの作品のテーマとみました。 この作品は、江戸からの明治への時代が変わるさまを第2次世界大戦後の敗戦日本の変化と合わせて書かれたそうですが、第2次世界大戦後のやり方が否定されつつある今の時代とも重なるのではないでしょうか。 原作者がお亡くなりになったのが残念です。ご存命ならば、今の状況を見て、続編を書いてほしいと思う作品です。 | ||||
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山田風太郎の「明治物」の存在は知っていたが、今まで食わず嫌いだった。しかしこれが食べて(読んで)みると結構いける。忍法帖のように奇想天外な忍法が出て来る訳ではないのだが、「意外性」があるのだ。「発見」がある、といってもいい。円朝の名作「怪談牡丹灯篭」誕生の秘密を扱った冒頭作に始まり、桜田門外の変で井伊大老を暗殺した水戸浪士の生き残りが警視庁巡査になっており、新撰組副長斎藤一も巡査になっている。それは多分史実であろうが、一方虚構として、「物語」が始まる。それが織りなすもの哀しさ。この物語「あわれ」という言葉が最もぴったりくる | ||||
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