(短編集)

犯罪

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評判

犯罪の評価:

4.22/5点 レビュー 116件。 B ランク

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平均点4.22pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全226件 201〜220 11/12ページ
No.26
(4pt)

ドライに描かれる『犯罪』のリアル

ドイツを舞台にした連作短編なのですが、著者は現実の弁護士です。で、さすがの設定の細かさと、短編ならではの切り方が上手く、まるで供述調書を読んでいるかのような感じです。供述調書のようなドライな文体であるのに、いや、ドライだからこその「事実」だけを積み重ねるかのような文体だからこその、犯罪者にとっての「事実」と読者である読み手の「真実」との距離を確かめられます。犯罪に手を染めるまでを丁寧に、しかし簡潔に積み重ねているので、返って登場人物の心情を想像しやすく、汲み取り易くなっています。しかも直接は言及していないので、上手いです。

中でも気に入ったのが、善良な医師であるフェーナー氏の限界を超えるまでの自分に対する自制と超えた後の心の静寂を描く「フェーナー氏」、美しい兄弟を襲った悲劇と家族の葛藤と終息を色合い鮮やかに描いた「チェロ」、犯罪一家の末っ子の隠された才能を法廷劇で見せる「ハリネズミ」、ある不幸な瞬間から迷走する最底辺の恋人たちが味わった「幸運」、恐らく何らかの現実から着想を得ているのでしょうがだからこそ恐ろしい沈黙を描いた「正当防衛」、現代の(と言いつつもきっと太古の昔から存在していたでしょうけれど)病とも言うべき弱い存在へと向かう狂気の顛末「緑」、ひとつのことに執着することの怖さ「棘」、病を放置することの恐ろしさと有史以来ずっと続いていることを考えさせられるハンニバル・レクター博士やペーター・キュルテンやジェフリー・ダーマーや・・・の「愛情」、そして映画になりそうな物語性の高い「エチオピアの男」です。

どの短編も非常に完成度高く中でも割合短編の作りが標準的な「サマータイム」も印象的ではありますが、この方の短編としてはオーソドックスすぎると感じました。それでも充分楽しめるレベルですので、クオリティ高いと思います。

単純な動機や単純な作りにはなっていませんし、某かの背景があるからこそ、そしてその背景が(誰にでもと言うわけではないにしろ)日常的だからこその恐ろしさ、犯罪を犯してしまった側の心情がリアルです。ドライに書かれる事でのコントラストの大きさが良かったです。この人の新作はまた購入すると思いました。

短編もので、犯罪ものが好きな方に、リアリティある作品が好きな方に、オススメ致します。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.25
(5pt)

各篇短編ながらも重厚にして深い味わい

出張時の搭乗前、飛行場内の書店にて何となく眼に留まり気になったので購入。正解でした。時間が経つのを忘れて物語に入り込みながら読み耽りました。

著者が実体験で遭遇したのであろう様々な犯罪者が登場人物のモティーフになっていると思われますが、読んでいて人間存在の深淵というか怖さ(あるいは素晴らしさ)を垣間見させてくれる一書です。著者は法律家(弁護士)の由ですが、お堅い起訴状ないしは判決文を想起させる短文形式の事実・心理描写のシークエンスでこのような物語を紡ぎ出せるというのは、一つの発見でした(文体の勝利!)。また、所々に記される刑事司法に関する鋭い警句も一読に値します。

「ある警官がある裁判官に、弁護人は正義という車のブレーキでしかないといったことがある。その裁判官は、ブレーキがなければ車は役に立たないと答えたという。刑事裁判は、この力の綱引きのなかではじめて機能するのだ」(120頁)。

重厚さという点では、読後の余韻はベルンハルト・シュリンクの『朗読者』に近いものがありましたが、三篇選べと云われれば、個人的には「タナタ氏の茶碗」、「正当防衛」そして「エチオピアの男」になります。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.24
(5pt)

各篇短編ながらも重厚にして深い味わい

出張時の搭乗前、飛行場内の書店にて何となく眼に留まり気になったので購入。正解でした。時間が経つのを忘れて物語に入り込みながら読み耽りました。

著者が実体験で遭遇したのであろう様々な犯罪者が登場人物のモティーフになっていると思われますが、読んでいて人間存在の深淵というか怖さ(あるいは素晴らしさ)を垣間見させてくれる一書です。著者は法律家(弁護士)の由ですが、お堅い起訴状ないしは判決文を想起させる短文形式の事実・心理描写のシークエンスでこのような物語を紡ぎ出せるというのは、一つの発見でした(文体の勝利!)。また、所々に記される刑事司法に関する鋭い警句も一読に値します。

「ある警官がある裁判官に、弁護人は正義という車のブレーキでしかないといったことがある。その裁判官は、ブレーキがなければ車は役に立たないと答えたという。刑事裁判は、この力の綱引きのなかではじめて機能するのだ」(120頁)。

重厚さという点では、読後の余韻はベルンハルト・シュリンクの『朗読者』に近いものがありましたが、三篇選べと云われれば、個人的には「タナタ氏の茶碗」、「正当防衛」そして「エチオピアの男」になります。

犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.23
(4pt)

エチオピアの男

「エチオピアの男」だけで買う価値あり。
 
移民に関するお話が多かったですね。
ドイツの社会問題の一部も垣間みられて興味深かったです。
 
“リンゴ”がキーワードなのを心に留めて読まれると味わいがまた深く。
 
表紙のデザインも良い。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.22
(4pt)

エチオピアの男

「エチオピアの男」だけで買う価値あり。
 
移民に関するお話が多かったですね。
ドイツの社会問題の一部も垣間みられて興味深かったです。
 
“リンゴ”がキーワードなのを心に留めて読まれると味わいがまた深く。
 
表紙のデザインも良い。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.21
(5pt)

本物の犯罪者を描いた作品

ミステリ小説を読んでいて違和感を感じることの多くは、そこに描かれる犯人の動機や心理が、理解しやすいことにある。そこに登場する犯罪者は、明らかに我々の良く知っている人々、いや、我々自身なのだ。
 しかし本物の犯罪者が、そんなにわかりやすい人物だろうか? 我々と同じように考える人々は、やはり我々と同じく、犯罪など犯さないのではないだろうか。

 シーラッハの短編に描かれる人々は違う。
 日本人はどうにもこうにも日本人らしくないし、犯罪一家の天才児にもリアリティはない。
 しかし、日常犯罪者に接する職業だけが目にする、罪を犯す人々の、転がり落ちるようにそこを目指す情緒がはっきりと読み取れるのだ。
 我々がニュース記事に記載された犯罪者の行動に感じる、理解できない思い、独特の違和感にぴったりと符合し、その感触は、まさに実物の犯罪者に会ったと思わせる。

 さらりと簡略された表現も美しく、他のどの小説にも似ていない独特の作品集だ。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.20
(5pt)

本物の犯罪者を描いた作品

ミステリ小説を読んでいて違和感を感じることの多くは、そこに描かれる犯人の動機や心理が、理解しやすいことにある。そこに登場する犯罪者は、明らかに我々の良く知っている人々、いや、我々自身なのだ。
 しかし本物の犯罪者が、そんなにわかりやすい人物だろうか? 我々と同じように考える人々は、やはり我々と同じく、犯罪など犯さないのではないだろうか。

 シーラッハの短編に描かれる人々は違う。
 日本人はどうにもこうにも日本人らしくないし、犯罪一家の天才児にもリアリティはない。
 しかし、日常犯罪者に接する職業だけが目にする、罪を犯す人々の、転がり落ちるようにそこを目指す情緒がはっきりと読み取れるのだ。
 我々がニュース記事に記載された犯罪者の行動に感じる、理解できない思い、独特の違和感にぴったりと符合し、その感触は、まさに実物の犯罪者に会ったと思わせる。

 さらりと簡略された表現も美しく、他のどの小説にも似ていない独特の作品集だ。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.19
(4pt)

なぜか心を打つストーリー多数

いやぁ,本当に面白かった。ある意味,感動的です。
本書は短編集で,全部で11篇の物語が収録されています。
本書には,くどい情景描写もなければ,長々としゃべりまくる人物も登場しません。場面転換が大胆で,断片的な映像のカットが次から次へと提示されるようなイメージと言ったらいいのでしょうか。あるシーンで普通に生きていた人間が,数カット後ではあっけなく死んでいたりするわけです。
救いようのない悲惨な話もありますが,悲惨な中にも心が温まるような話,無性に心を動かされる話も収録されています。
個人的には「ハリネズミ」「棘」「エチオピアの男」の3篇が気に入りました。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.18
(4pt)

なぜか心を打つストーリー多数

いやぁ,本当に面白かった。ある意味,感動的です。
本書は短編集で,全部で11篇の物語が収録されています。
本書には,くどい情景描写もなければ,長々としゃべりまくる人物も登場しません。場面転換が大胆で,断片的な映像のカットが次から次へと提示されるようなイメージと言ったらいいのでしょうか。あるシーンで普通に生きていた人間が,数カット後ではあっけなく死んでいたりするわけです。
救いようのない悲惨な話もありますが,悲惨な中にも心が温まるような話,無性に心を動かされる話も収録されています。
個人的には「ハリネズミ」「棘」「エチオピアの男」の3篇が気に入りました。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.17
(5pt)

人間の物語

読むことをやめることができない。 静謐なモノクロのドキュメンタリー映画を見るようである。 読者は身体を離れた視点そのものとなって、11の犯罪を見届けることになる。 やがて、今見ているものが「物語」なのか、それとも事実の報告なのか、判然としなくなる。 それは、11の物語が特異な犯罪を取り扱っているにもかかわらず、その経緯の中に、人間として共感できるものが見いだされ、理解できるからである。 11の短編には切れ味の良し悪しがあるようには思う。しかしそれが更に物語に真実味を与えて、尚一層犯罪に関わった人間の姿を浮かびあがらせる。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.16
(5pt)

人が人であることを証明してみせる犯罪というものがある。

11の短編を束ねた一冊。ドイツ人作家シーラッハの作品としてはこれが本邦初訳のようです。

 収録作品のどれもがなんからの犯罪に手を染めた人々の姿を描いています。
 一生愛し続けると誓って暮らしてきた医師と妻。それでも老妻を手にかけた夫の理由とは何だったのか。(「フェーナー氏」)
 資産家の父親には愛されず、互いだけを頼りに生きて来た姉と弟。姉が弟を溺死させた経緯とは。(「チェロ」)
 ネオナチ青年二人にからまれ、そのまま彼らを殺してしまった中年の男。果たして彼の行為は正当防衛か過剰防衛か。(「正当防衛」)
 エチオピア人孤児だった男が2度も銀行強盗を行なうに至った事情とは。(「エチオピアの男」)

 被疑者たちの弁護を引き受けた弁護士の視点で語られるこの11の物語のいくつかは犯罪そのもの描くというよりは、人はなぜ犯罪に走るのかを見つめ、そのやむにやまれぬ胸の奥の心模様をつぶさに描いています。憎むべき犯罪であるはずなのに、物語に私たち読者の心模様がどこか重なることを否定できないのです。
 そして思い至るのは、むしろそうした犯罪に至る彼らの姿こそが、人間であることの証であり、捨ててはならない人間性を描いているといえるかもしれないということなのです。

 そしてまたどれもが、一種独特の乾いた短い文章を連ねて紡がれている点が特徴的です。
 犯罪者の心模様をウェットに描かないからこそ、説明的ではありませんが、だからこそむしろ強く迫って来るものがあるといえるでしょう。

 なお、私は「チェロ」という作品に特に心打たれたのですが、これからこの『犯罪』を読まれるかたには、フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」を先に読んでおくことを強くお勧めします。私があの小説の一番のお気に入りで読後以来幾度も反芻してきた一節が出てくるのです。あの言葉が胸に沈むのは、やはりフィッツジェラルドの小説を手にしたことのある読者だけでしょう。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.15
(5pt)

人が人であることを証明してみせる犯罪というものがある。


 11の短編を束ねた一冊。ドイツ人作家シーラッハの作品としてはこれが本邦初訳のようです。

 収録作品のどれもがなんからの犯罪に手を染めた人々の姿を描いています。
 一生愛し続けると誓って暮らしてきた医師と妻。それでも老妻を手にかけた夫の理由とは何だったのか。(「フェーナー氏」)
 資産家の父親には愛されず、互いだけを頼りに生きて来た姉と弟。姉が弟を溺死させた経緯とは。(「チェロ」)
 ネオナチ青年二人にからまれ、そのまま彼らを殺してしまった中年の男。果たして彼の行為は正当防衛か過剰防衛か。(「正当防衛」)
 エチオピア人孤児だった男が2度も銀行強盗を行なうに至った事情とは。(「エチオピアの男」)

 被疑者たちの弁護を引き受けた弁護士の視点で語られるこの11の物語のいくつかは犯罪そのもの描くというよりは、人はなぜ犯罪に走るのかを見つめ、そのやむにやまれぬ胸の奥の心模様をつぶさに描いています。憎むべき犯罪であるはずなのに、物語に私たち読者の心模様がどこか重なることを否定できないのです。
 そして思い至るのは、むしろそうした犯罪に至る彼らの姿こそが、人間であることの証であり、捨ててはならない人間性を描いているといえるかもしれないということなのです。

 そしてまたどれもが、一種独特の乾いた短い文章を連ねて紡がれている点が特徴的です。
 犯罪者の心模様をウェットに描かないからこそ、説明的ではありませんが、だからこそむしろ強く迫って来るものがあるといえるでしょう。

 なお、私は「チェロ」という作品に特に心打たれたのですが、これからこの『犯罪』を読まれるかたには、フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」を先に読んでおくことを強くお勧めします。私があの小説の一番のお気に入りで読後以来幾度も反芻してきた一節が出てくるのです。あの言葉が胸に沈むのは、やはりフィッツジェラルドの小説を手にしたことのある読者だけでしょう。

犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.14
(4pt)

創作なのか、実話なのか?

ありそうな犯罪のエピソード、でも現実とは思えないけれども、これはあり得る、実話だろうとも思わせる。著者の淡々とした表現の巧みさに、引き込まれる一冊でした。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.13
(4pt)

創作なのか、実話なのか?

ありそうな犯罪のエピソード、でも現実とは思えないけれども、これはあり得る、実話だろうとも思わせる。著者の淡々とした表現の巧みさに、引き込まれる一冊でした。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.12
(4pt)

素晴らしい読み物

賞をたくさんとっているようですが、この作品が文学として優れているのかどうかについては、私は首をかしげます。ただ、そういうのを除くと読み物としては、とてもおもしろいです。短編のどれもがとてもリアルで、新鮮で、さすがに弁護士が書いた作品という気がします。実際に、ベースには実話があるのではないでしょうか。それを上手く組み合わせたり、アレンジしたりして、作品として仕上げている? とにかくリアルな肌触りのする短編ばかりなので、そんな気がしました。
私のお気に入りは、「正当防衛」です。謎の男の正体がわかってくると、そのプロフェッショナルぶりに感動すらおぼえます。他にもいくつかの作品は、余韻がいつまでも残りました。読んでみる価値あり、と思いますよ。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.11
(5pt)

密度の濃い短編集。

すごいすごい。この密度の濃さ。
大昔に、ロアルド・ダールやダンセイニの短編を読んで、
なにか狐につままれたような不思議な気分になったことを思い出します。

海外文学には、時として、こういう濃密な短編集が出現しますね。
ひとつひとつは短いのに、強烈な印象を残します。

「神の視点」であるかのような語り口。
実際の設定では、すべて語り手の弁護士の回想のような形をとっているのですが、
乾いた、まったく無駄のないその語り(描写)は特筆すべきものでしょう。

短いのに、ひとりの人間の一生を覗いてしまったかのような読後感。

一編一編が短いので、暇なときに少しずつ読む、という楽しみ方もできます。
年をとると、重厚な長編を読み通すのがつらい時があるので(笑)
これはありがたいですね。

個人的には、「正当防衛」の不気味さ、「エチオピアの男」の読後感のよさが
印象に残っています。

買って損のない短編集です。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.10
(4pt)

不条理の中の条理

犯罪をめぐる11の物語からなる短編集。
淡々とした筆致で、描写も必要最低限。
コンパクトにまとまっており、それでいて読みやすく、
短編小説のお手本のような作品群だ。

ただ、いわゆるミステリーではないため、
その辺を期待して読むと肩透かしを食うかもしれない。
どちらかというと純文学に近いテイストで
ボルヘスやカフカの短編群を思い出した。
(もちろん、『犯罪』の方がより現実に即したモチーフを扱っているが。)

どの作品も甲乙つけがたいが、
個人的には『タナタ氏の茶碗』『緑』『棘』が良かった。
不条理の中の条理を、作者が真摯に丹念に描いている。
全体を通してみても、冷徹な視線であるにも関わらず、
彼ら「犯罪者」を見守る視線はどことなく暖かい。
罪を犯すことの本質を問うているようだ。

また、巻頭と巻末に掲げられた警句は、一考の価値があるだろう。
読者それぞれの回答があるだろうが、
この警句こそが作者が仕掛けたミステリーなのかもしれない。
いずれにせよ、次作が楽しみな作家だ。
個人的には長編を読んでみたい。
犯罪 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 犯罪 (創元推理文庫)より
4488186025
No.9
(5pt)

密度の濃い短編集。

すごいすごい。この密度の濃さ。
大昔に、ロアルド・ダールやダンセイニの短編を読んで、
なにか狐につままれたような不思議な気分になったことを思い出します。

海外文学には、時として、こういう濃密な短編集が出現しますね。
ひとつひとつは短いのに、強烈な印象を残します。

「神の視点」であるかのような語り口。
実際の設定では、すべて語り手の弁護士の回想のような形をとっているのですが、
乾いた、まったく無駄のないその語り(描写)は特筆すべきものでしょう。

短いのに、ひとりの人間の一生を覗いてしまったかのような読後感。

一編一編が短いので、暇なときに少しずつ読む、という楽しみ方もできます。
年をとると、重厚な長編を読み通すのがつらい時があるので(笑)
これはありがたいですね。

個人的には、「正当防衛」の不気味さ、「エチオピアの男」の読後感のよさが
印象に残っています。

買って損のない短編集です。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.8
(4pt)

不条理の中の条理

犯罪をめぐる11の物語からなる短編集。
淡々とした筆致で、描写も必要最低限。
コンパクトにまとまっており、それでいて読みやすく、
短編小説のお手本のような作品群だ。

ただ、いわゆるミステリーではないため、
その辺を期待して読むと肩透かしを食うかもしれない。
どちらかというと純文学に近いテイストで
ボルヘスやカフカの短編群を思い出した。
(もちろん、『犯罪』の方がより現実に即したモチーフを扱っているが。)

どの作品も甲乙つけがたいが、
個人的には『タナタ氏の茶碗』『緑』『棘』が良かった。
不条理の中の条理を、作者が真摯に丹念に描いている。
全体を通してみても、冷徹な視線であるにも関わらず、
彼ら「犯罪者」を見守る視線はどことなく暖かい。
罪を犯すことの本質を問うているようだ。

また、巻頭と巻末に掲げられた警句は、一考の価値があるだろう。
読者それぞれの回答があるだろうが、
この警句こそが作者が仕掛けたミステリーなのかもしれない。
いずれにせよ、次作が楽しみな作家だ。
個人的には長編を読んでみたい。
犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368
No.7
(4pt)

全部で12編?

本編を読み終わると、最後にフランス語で<これはリンゴではない>との一節が残される。
本篇11編すべてに<リンゴ>が登場するのに気づいていたので、何かの謎掛けだと思うのだが...
<リンゴ>は時に、物語りのキーポイントだったり、犯罪の傍観者だったり、羊の目だったり
相当深い示唆含みだと勝手に思うのだが、結局よく分からん。
さて、本書に対する賞賛は他レビューに詳しいのでここからは(最後の一節の謎が解けない事に対する悔し紛れの)
私の本書に対する”妄想”レビューなのだが、本篇11編の内、ドイツ人犯罪は5編、不法合法を含めた移民の犯罪編は5、
どちらか不明が1編(正当防衛)。登場する移民もトルコ、レバノン、ギリシャ、ベトナム、パレスチナ、東欧、そして(たぶん)日本
(タナタなどという苗字は聞いたことがないのだが...)と多種多様、現代ドイツの犯罪に含有される犯罪傾向を
ある程度表した数構成ではないかと邪推している。問題はドイツ人の犯罪編に関しては、そこはかな人間の哀しみを
醸し出した話が殆どなのだが、移民の犯罪はどこか<ずる賢く><凄惨残忍さ>がそれとなく強調されている気
がするのは私だけか...
おりしもドイツだけではなくフランス、イタリア、オーストリア等では、このところ極右=外国人労働者排除 の台頭著しいニュース
が伝わっており、<これはリンゴではない>の謎解きが<樽の中の腐ったリンゴ>でないことを祈るのだが...
蛇足だが、作者の祖父パルドウールは、戦前ウイーンのユダヤ人追放に関与し、戦後逃げ回ったが、観念して出頭、
死刑を求刑されたが、<フランス人>弁護士の尽力で、死刑を回避出来、禁固20年に減刑されている。
(ただし刑期の短縮は一切なし)妻とは獄中で離婚しており、孫の作者が、祖父と同じ苗字を名乗ると言うのは
尊敬の念と考えていいのか? あくまで妄想なので聞き流してください。


犯罪 Amazon書評・レビュー: 犯罪より
4488013368