虐殺器官

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虐殺器官の評価:

4.03/5点 レビュー 369件。 B ランク

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平均点4.03pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全747件 641〜660 33/38ページ
No.107
(4pt)

終着点の凄さ!

9.11後、先進国ではトレーサビリティと絶え間ない認証によるセキュリティレベルの上昇をもってテロと戦い、発展途上国ではもっと盛んな内戦やテロリズム(核も、もちろん)が横行する近未来。米軍の諜報機関でもあり、暗殺機関でもある部隊、情報軍の特殊検索群i分遣隊の一員であるシェパード大尉の目線で繰る広げられる【世界】の残滓。残虐な描写を含みながら、現実と向き合うことで生まれる様々な葛藤、生と死、アメリカンウェイオブライフ、神、肉親から残されること、言語学、文学・・・どの問題にもそれぞれの答えを出しながら進むことで、シェパード大尉の物語が、あなたの物語になる不思議な作品です。

構成的には、きっとどこかで読んだ物語と違いはないのですが、そのディティールや死生観に、独特の強さがあり、様々な事柄を扱いながらも、その到達点はいままで読んだどのSFよりも現実的で突き抜けている稀有な作品でした。

言語学者ジョン・ポールの思惑とシェパード大尉の物語なのですが、読ませるチカラ溢れるリーダビリティを少しも犠牲にしないで、これだけの描写やディティールにこだわれるその技術の高さ、そして結末とエピローグの突き抜け方は、経験の無いレベルでした。

トレーサビリティと安全の関係の盲点(と書きましたけれど、トレーサビリティを操作するのは人なわけで、偽の情報を入れてしまえば偽装表示と全く同じで、ただ今まで以上にコストがかかるだけですよね)、先進国と発展途上国との欺瞞、良心という機能について、脳死判定を受け入れるということ、自由と平和の対価、ジョージ・オーウェル、カウンセラーと倫理的ノイズ、愛国心の浅い歴史、見たいものしか見ない人々、そしてある地平(それはたくさんの死や苦痛によって支えられている!!)を越えてしまったところにある決断が最後に待っています。

あくまで1人称で語られるシェパード大尉の物語が、ジョン・ポールの物語が、知らぬ間にあなたの物語になるチカラを持った作品です。エピローグ後の【世界】の萌芽を、実はすでに日本に生きている私には感じられます。

作者の伊藤さんは既に亡くなられてしまっているので、これが本当に残念。とてもお若かったのに、残念。

戦争、テロリズム、愛国心、言語学、良心、トレーサビリティ、そんな単語が気になる方にオススメ致します。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.106
(5pt)

とても切実な小説

タイトルの形容が正しいかは、わかりませんが、とてつもない衝撃的な小説だと思います。 いちおう軍事SFというジャンルに収まっていますが、伊坂幸太郎や宮部みゆき、小島秀夫など、あらゆるエンターテイメントを発信する方々から絶賛されていることが、この小説が今まで、あらゆるメディアから一線を画していることの証明となっています。 虐殺を引き起こすジョン・ポール、それに連なる民族紛争。ドミノ・ピザの普遍性とバドワイザーに象徴される、資本主義社会。テクノロジーの進歩と主人公のナイーブさ。そして、情報管理と自由。 これらすべてが丁寧に、繊細に、切実に描かれたひとつの世界。これが「虐殺器官」という小説であり、僕たちの世界そのものなのかもしれません。 知ろうと思えば、すべてを知れる。靴紐について、編まれている糸について。でも鯨や、イルカから作った人口筋肉については誰も知らない。目を瞑っているから。知りたくないから。 それでも世界は回っているし、成り立っている。目を開いてみればわかりますよね? 結末はとてつもないです。でも、彼はそれを自分で選択したのでしょうか。虐殺器官は誰にでも備わっています。もし、彼の虐殺の器官が作動していたら。そう考えると、また違った印象を持てるかもしれません。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.105
(5pt)

とても切実な小説

タイトルの形容が正しいかは、わかりませんが、とてつもない衝撃的な小説だと思います。 いちおう軍事SFというジャンルに収まっていますが、伊坂幸太郎や宮部みゆき、小島秀夫など、あらゆるエンターテイメントを発信する方々から絶賛されていることが、この小説が今まで、あらゆるメディアから一線を画していることの証明となっています。 虐殺を引き起こすジョン・ポール、それに連なる民族紛争。ドミノ・ピザの普遍性とバドワイザーに象徴される、資本主義社会。テクノロジーの進歩と主人公のナイーブさ。そして、情報管理と自由。 これらすべてが丁寧に、繊細に、切実に描かれたひとつの世界。これが「虐殺器官」という小説であり、僕たちの世界そのものなのかもしれません。 知ろうと思えば、すべてを知れる。靴紐について、編まれている糸について。でも鯨や、イルカから作った人口筋肉については誰も知らない。目を瞑っているから。知りたくないから。 それでも世界は回っているし、成り立っている。目を開いてみればわかりますよね? 結末はとてつもないです。でも、彼はそれを自分で選択したのでしょうか。虐殺器官は誰にでも備わっています。もし、彼の虐殺の器官が作動していたら。そう考えると、また違った印象を持てるかもしれません。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.104
(2pt)

アニメっぽいと思ったけど

近未来SFでした。そういう前知識もなく読み始めたので、最初ちょっと戸惑いました(笑)
まあ、近未来SFと気づいてからも、「何となくアニメっぽいなあ」と思いましたが、どうやらそれは私の知識の不足であって、むしろ「ゲームっぽい」らしいです。
私の読後感は、☆が少ないほかのレビュアーのみなさんとおおむね同じなので、繰り返しません。「あとがき」に、この作品を小松左京賞の選外としたときの小松左京氏の選評の一部が載っていますが、この作品のいい点も足りない点も、そこに言い尽くされていると思います。いい点に賛同すれば☆5つとなり、足りない点が気になれば☆2つとなるといったところでしょうか。

ひとつだけ、気になった点をあげます。「感情の孫引き」になってはいないかという点です。
作家は、自分の中にほんのぽっちりある感情をいわば起点として、そこからイマジネーションをふくらませます。よく言われるたとえですが、人を殺したことがなくても、「あんなやつ、死ねばいい」と一瞬でも思ったことがあれば、それを起点に作品を作ることができます。
しかしこの作品の主人公のような人生の場合、ほんとうはどう感じるのか、どうやって人生と折り合っているのか。想像を絶するといってしまってはミもフタもないのですが、実際のところそうではないでしょうか。
そういう人生を送った人に取材する、あるいは取材したノンフィクションを利用するということも難しいでしょう。そうそう本音を語ってはくれなさそうですから。
で、どうするかというと、過去のフィクションを参考にする。そのこと自体は、いいのです。どんな作家だって、大なり小なりほかの作品に影響を受けているのですから。
ただ、自分の中のイマジネーションの起点をしっかり持っているのかどうかです。それがないと、フィクションからフィクションを作る=感情の孫引きになってしまいます。
「アニメっぽい」と感じたのは、たぶん私が作者のイメジネーションの起点を感じられなかったからだと思います。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.103
(2pt)

アニメっぽいと思ったけど

近未来SFでした。そういう前知識もなく読み始めたので、最初ちょっと戸惑いました(笑)
まあ、近未来SFと気づいてからも、「何となくアニメっぽいなあ」と思いましたが、どうやらそれは私の知識の不足であって、むしろ「ゲームっぽい」らしいです。
私の読後感は、☆が少ないほかのレビュアーのみなさんとおおむね同じなので、繰り返しません。「あとがき」に、この作品を小松左京賞の選外としたときの小松左京氏の選評の一部が載っていますが、この作品のいい点も足りない点も、そこに言い尽くされていると思います。いい点に賛同すれば☆5つとなり、足りない点が気になれば☆2つとなるといったところでしょうか。

ひとつだけ、気になった点をあげます。「感情の孫引き」になってはいないかという点です。
作家は、自分の中にほんのぽっちりある感情をいわば起点として、そこからイマジネーションをふくらませます。よく言われるたとえですが、人を殺したことがなくても、「あんなやつ、死ねばいい」と一瞬でも思ったことがあれば、それを起点に作品を作ることができます。
しかしこの作品の主人公のような人生の場合、ほんとうはどう感じるのか、どうやって人生と折り合っているのか。想像を絶するといってしまってはミもフタもないのですが、実際のところそうではないでしょうか。
そういう人生を送った人に取材する、あるいは取材したノンフィクションを利用するということも難しいでしょう。そうそう本音を語ってはくれなさそうですから。
で、どうするかというと、過去のフィクションを参考にする。そのこと自体は、いいのです。どんな作家だって、大なり小なりほかの作品に影響を受けているのですから。
ただ、自分の中のイマジネーションの起点をしっかり持っているのかどうかです。それがないと、フィクションからフィクションを作る=感情の孫引きになってしまいます。
「アニメっぽい」と感じたのは、たぶん私が作者のイメジネーションの起点を感じられなかったからだと思います。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.102
(5pt)

物語というより哲学として惹かれた

お話としてのオチは皮肉がきいていて良いと思うんですけれど、正直複線を回収された時に頭の中に起こる「!」という反応は起こりませんでした。長々続いたのにこれで終わりなのか…という感じでした。と言っても大変な事が起こってるのですけど!
ですがそんなものを軽く凌駕するくらいに、世界設定、作中の人々が語る思想・哲学には光るものがあるかと思います。本来ならば小難しい理屈であるはずのものも、表現がうまいのですんなりと入ってきます。
この小説は必ずしも最後に「なるほど!」と納得するするものでなく、途中途中で「なるほど!」「なるほど!」の連続があるものであると感じました。
この小説を読み、作者の他の作品にも興味がわいてきました。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.101
(5pt)

物語というより哲学として惹かれた

お話としてのオチは皮肉がきいていて良いと思うんですけれど、正直複線を回収された時に頭の中に起こる「!」という反応は起こりませんでした。長々続いたのにこれで終わりなのか…という感じでした。と言っても大変な事が起こってるのですけど!
ですがそんなものを軽く凌駕するくらいに、世界設定、作中の人々が語る思想・哲学には光るものがあるかと思います。本来ならば小難しい理屈であるはずのものも、表現がうまいのですんなりと入ってきます。
この小説は必ずしも最後に「なるほど!」と納得するするものでなく、途中途中で「なるほど!」「なるほど!」の連続があるものであると感じました。
この小説を読み、作者の他の作品にも興味がわいてきました。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.100
(1pt)

世界観重視?物語不在のハリボテ小説

誰も言わないので書きますが、オチがハーラン・エリスンの有名短編にあまりにもそっくりです。しかもあちらのほうが鮮烈です。

個人の趣味にも依るとは思いますが、400ページもの長編でありながらどこかで見たようなオチ、では、私の感じたようなむなしさを味わう方も少なくないかと思います。
なぜ、10ページしかない短編に及ばない本作がこれほどの高評価なのでしょうか。客層がSFファンとかぶっていないのか、メタルギアファンが多いのか。それとも日本人の若者が書いたということに意味があって、そもそもハーランみたいな外人の大作家と比べちゃいけないのか?単に「器官」としたところがサイバネティックでカッコいいのか?キャラ萌えなのか?ジョン・ポールって魅力的か?細部には凝ってるようだがそんなにリアルか?イルカの肉で作りましたって小手先以上の意味はあるのか?
まったくもって釈然としません。

もしあなたがストーリーを度外視して世界観なるもの(っていうか教養主義。コレ自体も古い)を純粋に楽しめる方でなければ、絶対にお勧めはしません。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.99
(1pt)

世界観重視?物語不在のハリボテ小説

誰も言わないので書きますが、オチがハーラン・エリスンの有名短編にあまりにもそっくりです。しかもあちらのほうが鮮烈です。

個人の趣味にも依るとは思いますが、400ページもの長編でありながらどこかで見たようなオチ、では、私の感じたようなむなしさを味わう方も少なくないかと思います。
なぜ、10ページしかない短編に及ばない本作がこれほどの高評価なのでしょうか。客層がSFファンとかぶっていないのか、メタルギアファンが多いのか。それとも日本人の若者が書いたということに意味があって、そもそもハーランみたいな外人の大作家と比べちゃいけないのか?単に「器官」としたところがサイバネティックでカッコいいのか?キャラ萌えなのか?ジョン・ポールって魅力的か?細部には凝ってるようだがそんなにリアルか?イルカの肉で作りましたって小手先以上の意味はあるのか?
まったくもって釈然としません。

もしあなたがストーリーを度外視して世界観なるもの(っていうか教養主義。コレ自体も古い)を純粋に楽しめる方でなければ、絶対にお勧めはしません。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.98
(5pt)

フィクションの力を思い知る

文庫になったことだしAmazonでも評判よさげだから読んでみっか、てな感じで気軽に読み始めたら、
これは凄いです。
ドストエフスキーに挫折した人も是非読むべき。実存主義はここにある。
フィクションの力を思い知らされた。

良心を科学的にマスキングされた兵士が、良心を抑制し他者への残虐性を高める"文法"を発見した学者の暗殺を請け負うという皮肉。
ジャン・ポールがなぜ世界を転々とし虐殺を起こし続けるのか、この理由に私は打ちのめされた。
利己的であることと、利他的であること。
人はその両方を共存させている。この恐ろしさから目をそらせない。

この作品は2007年の小松左京賞の満場一致で最有力候補作として残ったが、当の小松氏の一言でその受賞を逃したと聞く。「虐殺の言葉」の描写がいまひとつであるという、全く的外れとしかいいようのない一言で。
本書を読んだ者はあとがきにあるこのエピソードに、怒りさえおぼえるだろう。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.97
(5pt)

フィクションの力を思い知る

文庫になったことだしAmazonでも評判よさげだから読んでみっか、てな感じで気軽に読み始めたら、
これは凄いです。
ドストエフスキーに挫折した人も是非読むべき。実存主義はここにある。
フィクションの力を思い知らされた。

良心を科学的にマスキングされた兵士が、良心を抑制し他者への残虐性を高める"文法"を発見した学者の暗殺を請け負うという皮肉。
ジャン・ポールがなぜ世界を転々とし虐殺を起こし続けるのか、この理由に私は打ちのめされた。
利己的であることと、利他的であること。
人はその両方を共存させている。この恐ろしさから目をそらせない。

この作品は2007年の小松左京賞の満場一致で最有力候補作として残ったが、当の小松氏の一言でその受賞を逃したと聞く。「虐殺の言葉」の描写がいまひとつであるという、全く的外れとしかいいようのない一言で。
本書を読んだ者はあとがきにあるこのエピソードに、怒りさえおぼえるだろう。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.96
(4pt)

「赦し」という文法

主人公クラヴィス・シェパードも、物語の主軸であるジョン・ポールも
行動の源となっているものは、一貫して「赦しを請う」ためである。
トラウマや後悔などの罪に対する罰を自分自身に科し、免罪符を受け取ろうともがいている。
内戦や虐殺を行ってしまう人々も、同じ文脈に乗っているように読み取れる。
「〜のために」というスローガン的言い回し。
「愛のために」「星条旗のために」「みんなのために」「祖国のために」
と、唱えることで身勝手で迷惑な侵略も干渉も虐殺もそして自分の罪も赦される…。

物語の中で象徴的な虐殺は、イルカと鯨だ。
人間の勝手な文法で虐殺を感じさせないネーミングにて利用されている。

繰り返されるメッセージ「人々は見たいものしか見ない」
突き詰めた痛覚のマスキング技術が滑稽に描かれている。
「情報を発信するのは容易だが、注目を集めるのはより難しくなっている」
見たくないものを見せつけるために著者は、グロテスクな場面描写を多く取り入れていると思う。
「罪を背負うこと」「自分を罰すること」赦しを得ることが
どれほど身勝手で迷惑で混乱を招く行為なのか、
最後の一頁、
勝手に一人で気持ちが穏やかになって満足している主人公に醜悪なおぞましさを感じさせられた。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.95
(4pt)

「赦し」という文法

主人公クラヴィス・シェパードも、物語の主軸であるジョン・ポールも
行動の源となっているものは、一貫して「赦しを請う」ためである。
トラウマや後悔などの罪に対する罰を自分自身に科し、免罪符を受け取ろうともがいている。
内戦や虐殺を行ってしまう人々も、同じ文脈に乗っているように読み取れる。
「〜のために」というスローガン的言い回し。
「愛のために」「星条旗のために」「みんなのために」「祖国のために」
と、唱えることで身勝手で迷惑な侵略も干渉も虐殺もそして自分の罪も赦される…。

物語の中で象徴的な虐殺は、イルカと鯨だ。
人間の勝手な文法で虐殺を感じさせないネーミングにて利用されている。

繰り返されるメッセージ「人々は見たいものしか見ない」
突き詰めた痛覚のマスキング技術が滑稽に描かれている。
「情報を発信するのは容易だが、注目を集めるのはより難しくなっている」
見たくないものを見せつけるために著者は、グロテスクな場面描写を多く取り入れていると思う。
「罪を背負うこと」「自分を罰すること」赦しを得ることが
どれほど身勝手で迷惑で混乱を招く行為なのか、
最後の一頁、
勝手に一人で気持ちが穏やかになって満足している主人公に醜悪なおぞましさを感じさせられた。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.94
(5pt)

読了直後、言葉が出ないほどの衝動を受けた。作者の夭折が惜しまれる傑作。

米軍大尉クラヴィス・シェパードはある男の暗殺を命じられていた。インドやアフリカといった内戦地域で大規模虐殺の種子を蒔いている米国人ジョン・ポールだ。当該地域の人々に憎悪と殺戮の念を植えつける上でポールが利用するのは、人間が持つ“虐殺器官”であった…。

 
 緻密に構築した近未来の世界を舞台に著者が描くのは、人間社会を大きく突き動かしていく力を持った言語の姿です。
 作者はサピア=ウォーフの法則や、チョムスキーの生成変形文法を模したかのような「脳に刻まれた言語フォーマットのなかに隠された混沌を示す文法」などの言語学風言辞を駆使しながら、人類を戦争へと駆り立てる駆動力を言語の中に見出そうとしています。
 思えばオーウェルの「1984年 」もニュースピークなる綿密に操作された言語が近未来の人間の思考の筋肉を弛緩させていく様をグロテスクに描いていましたし、事実ナチスドイツがいかに言語を緊縛しながら国民を戦争に駆り立てていったかについてはヴィクトール クレムペラーが「第三帝国の言語「LTI」―ある言語学者のノート」で明らかにしています。
 私は「虐殺器官」を、オーウェル的な言語と戦争の系譜を新しい形で受け継いだ小説として大変興味深く読みました。

 しかしこうした戦争を生む力を孕む言語はまた一方で、だからこそ戦争を抑止する力もあわせ持つはず。そんな希望に満ちた信念が作者・伊藤計劃の脳裏にはあったと私は感じるのです。

 「文明は、良心は、殺したり犯したり盗んだり裏切ったりする本能と争いながらも、それでもより他愛的に、より利他的になるよう進んでいるのだろう」(382頁)。

 シェパードの胸に灯るこの希望を支えるのが言葉であり、畏敬の念をもってその言葉と対峙することが出来るとき人は真に平和を実現できるのではないか。
 テロの時代に生きる私たちにとって、この小説が提示する理念に心震える思いがしたのです。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.93
(5pt)

読了直後、言葉が出ないほどの衝動を受けた。作者の夭折が惜しまれる傑作。

米軍大尉クラヴィス・シェパードはある男の暗殺を命じられていた。インドやアフリカといった内戦地域で大規模虐殺の種子を蒔いている米国人ジョン・ポールだ。当該地域の人々に憎悪と殺戮の念を植えつける上でポールが利用するのは、人間が持つ“虐殺器官”であった…。

 
 緻密に構築した近未来の世界を舞台に著者が描くのは、人間社会を大きく突き動かしていく力を持った言語の姿です。
 作者はサピア=ウォーフの法則や、チョムスキーの生成変形文法を模したかのような「脳に刻まれた言語フォーマットのなかに隠された混沌を示す文法」などの言語学風言辞を駆使しながら、人類を戦争へと駆り立てる駆動力を言語の中に見出そうとしています。
 思えばオーウェルの「1984年 」もニュースピークなる綿密に操作された言語が近未来の人間の思考の筋肉を弛緩させていく様をグロテスクに描いていましたし、事実ナチスドイツがいかに言語を緊縛しながら国民を戦争に駆り立てていったかについてはヴィクトール クレムペラーが「第三帝国の言語「LTI」―ある言語学者のノート」で明らかにしています。
 私は「虐殺器官」を、オーウェル的な言語と戦争の系譜を新しい形で受け継いだ小説として大変興味深く読みました。

 しかしこうした戦争を生む力を孕む言語はまた一方で、だからこそ戦争を抑止する力もあわせ持つはず。そんな希望に満ちた信念が作者・伊藤計劃の脳裏にはあったと私は感じるのです。

 「文明は、良心は、殺したり犯したり盗んだり裏切ったりする本能と争いながらも、それでもより他愛的に、より利他的になるよう進んでいるのだろう」(382頁)。

 シェパードの胸に灯るこの希望を支えるのが言葉であり、畏敬の念をもってその言葉と対峙することが出来るとき人は真に平和を実現できるのではないか。
 テロの時代に生きる私たちにとって、この小説が提示する理念に心震える思いがしたのです。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.92
(5pt)

傑作

SF初心者の私ですが、この書には震えました。圧倒的な筆力と現実感のある非現実。細部まで書き込まれた物語は。仮想現実を越えて、読者である私達に迫ってくる。その圧迫感が読者を物語の中に誘い、そして吸い込んでいく。まるで映画を観ているような読書感。名作中の名作です。
9・11以降の世界観の総括的な書である。その中では仮想現実と現実との対比(本作にはボードリャールの記載あり)や生物と感覚、言語という現代の課題が複層的に絡み合って、進んでいく。

こんな作品どうやったら書けるの?どんな思考回路なの?っていう驚愕の作品。でも作者はもうこの世にいない。この作品が作者の墓碑銘になっている。この世界にこれだけのものを残したのだから。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.91
(5pt)

傑作

SF初心者の私ですが、この書には震えました。圧倒的な筆力と現実感のある非現実。細部まで書き込まれた物語は。仮想現実を越えて、読者である私達に迫ってくる。その圧迫感が読者を物語の中に誘い、そして吸い込んでいく。まるで映画を観ているような読書感。名作中の名作です。
9・11以降の世界観の総括的な書である。その中では仮想現実と現実との対比(本作にはボードリャールの記載あり)や生物と感覚、言語という現代の課題が複層的に絡み合って、進んでいく。

こんな作品どうやったら書けるの?どんな思考回路なの?っていう驚愕の作品。でも作者はもうこの世にいない。この作品が作者の墓碑銘になっている。この世界にこれだけのものを残したのだから。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.90
(5pt)

まだ読んでないなんて…うらやましいです

正直これはびっくりするくらいおもしろかったです。
大層なネーミング。筆者の夭折。読む前からこんだけ
ハードルあげといて面白いのはすごい!!

すごい、すごいと印象論になってしまうけど、内容は
メタルギアソリッドみたいで、藤原豆腐店の車が出てくるし、
「1984」みたいだし。世界観はネットみたい。

っとまったくまとまらないレビューですが
筆者はこれらのものを巧みにまとめあげています。

「スラムダンク」以来ある意味忘れたい作品ですw
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.89
(5pt)

まだ読んでないなんて…うらやましいです

正直これはびっくりするくらいおもしろかったです。
大層なネーミング。筆者の夭折。読む前からこんだけ
ハードルあげといて面白いのはすごい!!

すごい、すごいと印象論になってしまうけど、内容は
メタルギアソリッドみたいで、藤原豆腐店の車が出てくるし、
「1984」みたいだし。世界観はネットみたい。

っとまったくまとまらないレビューですが
筆者はこれらのものを巧みにまとめあげています。

「スラムダンク」以来ある意味忘れたい作品ですw
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.88
(5pt)

『神は妄想である』

このSFに☆を五つあげなかったら,他の何に今☆があげられるというのだろう。

主人公はクラヴィス・シェパード。アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊の大尉。
ときはおそらく2020年代。シェパードは,アメリカの特殊な上層部の命を受けて
第三世界で内戦と虐殺を起こしている男を暗殺する使命を帯びている。

その男がどうやって内戦を起こすかが、この小説の第一アイデアなのだが、
書評でその内容が少しでもわかるように触れるのは重大なルール違反である。

ただし、なぜそれで虐殺が起こせるかの書き込みは確かに足りないし,動機も弱い。
が、それを補って余りある疾走感。

まるで翻訳物のような文体,だが翻訳ではないので読みやすい。アメリカ人の作家が、
読者サービスで出すように日本の名を出すこころにくさ。

ぼくは、この作品の中で侵入鞘(イントルード・ポッド)が射出される瞬間の描写が好きである。
ぼくは、この作品の中で,母の延命装置を外す承諾をしそれを原罪のように悔いる主人公の心理描写が嫌いである。

ちなみに、ぼくが、たまたまそうなっただけだがイーグルトンの『宗教とは何か』と、ドーキンスの『神は妄想である』
を読んでから『虐殺器官』を読んだ。そうすると、と飛びます。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311