虐殺器官

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評判

虐殺器官の評価:

4.03/5点 レビュー 369件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.03pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全747件 701〜720 36/38ページ
No.47
(5pt)

佐藤亜紀氏が絶賛するのも納得の傑作

まずは、「良心的知識人」であるチョムスキーの学問的業績(=変形生成文法)をパロって見せた作家としての悪意に、痛快なまでの志の高さを感じました。
それに、一行一行の背後に込められた知識の蓄積と、こうした一行一行を結び付ける思考の強度が、生半可じゃありません。はっきり言って、凄すぎる!(そこは、佐藤亜紀氏の作品にも通底してますね)
小説を書き始めた地点からして、そんじょそこらの小説とはモノが違うのは、!
「虐殺の言語」そのものに関しては輪郭を描き出すことに徹して、適用例についてはあの有名な「ゴキブリを…」くらいに控えたあたりに、
この語り口にふさわしい小説を構築していこうという、伊藤氏の作家としての巧さがうかがえます。
仮に、伊藤氏が「虐殺の言語」の具体例に満ち満ちた作品を描くとしたら、あまりにも喜劇的であるがゆえにますます悲劇の度合いが深まるというような小説になったのでは?
などと想像せずにいられませんが、遅れてきた読者としてはこうした感傷にふけるのは控えるべきなのでしょう。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.46
(4pt)

作者と同時代にコンタクトできなかった悔い

文庫になってから読むと言うセコイ習慣を変えなければならないなぁ、と切実に感じたのは、伊藤計劃という作家と同時代に接触する機会を得られなかった悔いが大きかったから。書店に平積みされた『虐殺器官』を手にとるまで、伊藤計劃を知らなかった。
決してハリウッドでは映画化できない内容だろうけど、ハリウッド映画になったら凄いだろうなぁ、と思えるストーリー展開。かつて日本SFに無かったようなスケール感とディテールのリアリティ。『虐殺器官』は、とてつもなく重たいテーマを内在しているのにも拘らず、軽快なエンタテインメント作品に仕上がってる。
この作品を書き上げて2年ほどで作者がこの世を去ったことは、漸く文庫のあとがきで知った。
彼はネット上に様々な痕跡を残していた。同時代に彼を知っていたら、きっとボクはコンタクトしただろうし、彼からのリアクションも期待できたかも知れない。ブログやmixiで新作のスクリプトをこそっと教えてもらえたかも知れない。
ミッションを成し遂げた主人公が、亡くなった母親のライフグラフ(ネット上に残された本人の痕跡)にアクセスしたときの気持ちに、この小説の読後感は類似している。虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.45
(4pt)

作者と同時代にコンタクトできなかった悔い

文庫になってから読むと言うセコイ習慣を変えなければならないなぁ、と切実に感じたのは、伊藤計劃という作家と同時代に接触する機会を得られなかった悔いが大きかったから。書店に平積みされた『虐殺器官』を手にとるまで、伊藤計劃を知らなかった。
決してハリウッドでは映画化できない内容だろうけど、ハリウッド映画になったら凄いだろうなぁ、と思えるストーリー展開。かつて日本SFに無かったようなスケール感とディテールのリアリティ。『虐殺器官』は、とてつもなく重たいテーマを内在しているのにも拘らず、軽快なエンタテインメント作品に仕上がってる。
この作品を書き上げて2年ほどで作者がこの世を去ったことは、漸く文庫のあとがきで知った。
彼はネット上に様々な痕跡を残していた。同時代に彼を知っていたら、きっとボクはコンタクトしただろうし、彼からのリアクションも期待できたかも知れない。ブログやmixiで新作のスクリプトをこそっと教えてもらえたかも知れない。
ミッションを成し遂げた主人公が、亡くなった母親のライフグラフ(ネット上に残された本人の痕跡)にアクセスしたときの気持ちに、この小説の読後感は類似している。虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.44
(5pt)

身もフタも無い

「私たちの楽しい生活の為に、妙な事考える貧乏人は死んでくれないかなあ」という先進国的エゴが身も蓋もなく暴かれた作品と読んだ。"私"がへらへら笑い薄っぺらい人生とやらを餓えも暴力にも怯えず生きる為に、力弱く言葉無い弱い存在(この作品では人工筋肉の素材にする為に養殖されるイルカにクジラ、安い労働力として働かされる子供、銃を持たされ否応もなく戦わされる子供達etc)から利益だけを徹底的に搾取し、暴力と虐殺を押し付ける世界の仕組み。そんな事を漠然と感じた。
 そして人は国の為、主義主張の為、仕事だから、愛する人を守る為等々なんのかんのと理由を付けて、虐殺を行う引き起こす事が出来るのだ。虐殺を誘発する文脈。確かルワンダでの虐殺は初めラジオの放送で誘発されたものではなかったろうか?旧ユーゴ内紛の時の戦意高揚のビデオも見た事がある。そんな風にして少しずつ、都合の悪い存在は死んでもいいという空気が作られていくのだろう。
 今、瞬間に幼い子供達が戦力と性を搾取され、何もわからぬまま死んでいるのだろう。その屍骸の上に私の生活は確実にある訳だが、昨日とかわらずへらへらと生きていくしかないだろう。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.43
(5pt)

身もフタも無い

「私たちの楽しい生活の為に、妙な事考える貧乏人は死んでくれないかなあ」という先進国的エゴが身も蓋もなく暴かれた作品と読んだ。"私"がへらへら笑い薄っぺらい人生とやらを餓えも暴力にも怯えず生きる為に、力弱く言葉無い弱い存在(この作品では人工筋肉の素材にする為に養殖されるイルカにクジラ、安い労働力として働かされる子供、銃を持たされ否応もなく戦わされる子供達etc)から利益だけを徹底的に搾取し、暴力と虐殺を押し付ける世界の仕組み。そんな事を漠然と感じた。
 そして人は国の為、主義主張の為、仕事だから、愛する人を守る為等々なんのかんのと理由を付けて、虐殺を行う引き起こす事が出来るのだ。虐殺を誘発する文脈。確かルワンダでの虐殺は初めラジオの放送で誘発されたものではなかったろうか?旧ユーゴ内紛の時の戦意高揚のビデオも見た事がある。そんな風にして少しずつ、都合の悪い存在は死んでもいいという空気が作られていくのだろう。
 今、瞬間に幼い子供達が戦力と性を搾取され、何もわからぬまま死んでいるのだろう。その屍骸の上に私の生活は確実にある訳だが、昨日とかわらずへらへらと生きていくしかないだろう。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.42
(5pt)

台詞の,言葉のひとつひとつが読んでいくたびに情景になる

高野秀行氏が絶賛していたので買ってみた。
帯には「伊坂幸太郎,宮部みゆき,小島秀夫」が絶賛していたりする。
SF?普段あまり積極的に読むことは無いジャンルだけれど,そこまで書かれると・・・

知のカタマリのような本だ。近未来の先進国によるテロ対策の現場を描いているのだけれど,その内容がすごい。そのリアルさ,本当らしさというのか,まるで今まさにこの現場に放り込まれたら,信じてしまいそうな架空の世界である。
架空を描く。その方法は様々あるだろうけれど,「まるで見てきたかのように描かれる」と,読者はその読む手を止められない。繊細さと鋭さを持ったお話が,著者の計算されたゆったりとした語り口で描かれる。身震いしそうなほどの冷たさを持った本書は,その引き込み方には熱さを持っている。

「伊藤計劃」 プロジェクト伊藤と名づけられた著者は,もうこの世には居ないのだけれど,膨大な知識を,その緻密な計算のもとに詰め込んだ傑作。
「ゼロ年代最高のフィクション」とか,ややもすれば敬遠してしまいそうな宣伝文句だけれど,この10年での掘り出し物であることは間違いない。

「若者は絶対的で純粋な自由というものがあると思い込んでいる場合が多い。若者はそうた偽りの自由を通過し,謳歌する必要があるんです。大人になって様々な決断を迫られる状況になったとき,みずから選ぶ自由がより高度な自由だと,リアルに感じてもらうためにはね」

台詞の,言葉のひとつひとつが読んでいくたびに情景になる。物語でも言葉が重要視されるけれど,そのためにもこれほどまでの緻密さが必要だったのかもしれない。

文庫で読んだ。ハヤカワの独特なつくりなのか,この本だけなのか,ページの端がやたらと狭い。また,第1部を読み終えるまでは,少し戸惑いを覚えるかもしれない。でも,そんなことを忘れさせてくれる至極の一冊。是非。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.41
(5pt)

台詞の,言葉のひとつひとつが読んでいくたびに情景になる

高野秀行氏が絶賛していたので買ってみた。
帯には「伊坂幸太郎,宮部みゆき,小島秀夫」が絶賛していたりする。
SF?普段あまり積極的に読むことは無いジャンルだけれど,そこまで書かれると・・・

知のカタマリのような本だ。近未来の先進国によるテロ対策の現場を描いているのだけれど,その内容がすごい。そのリアルさ,本当らしさというのか,まるで今まさにこの現場に放り込まれたら,信じてしまいそうな架空の世界である。
架空を描く。その方法は様々あるだろうけれど,「まるで見てきたかのように描かれる」と,読者はその読む手を止められない。繊細さと鋭さを持ったお話が,著者の計算されたゆったりとした語り口で描かれる。身震いしそうなほどの冷たさを持った本書は,その引き込み方には熱さを持っている。

「伊藤計劃」 プロジェクト伊藤と名づけられた著者は,もうこの世には居ないのだけれど,膨大な知識を,その緻密な計算のもとに詰め込んだ傑作。
「ゼロ年代最高のフィクション」とか,ややもすれば敬遠してしまいそうな宣伝文句だけれど,この10年での掘り出し物であることは間違いない。

「若者は絶対的で純粋な自由というものがあると思い込んでいる場合が多い。若者はそうた偽りの自由を通過し,謳歌する必要があるんです。大人になって様々な決断を迫られる状況になったとき,みずから選ぶ自由がより高度な自由だと,リアルに感じてもらうためにはね」

台詞の,言葉のひとつひとつが読んでいくたびに情景になる。物語でも言葉が重要視されるけれど,そのためにもこれほどまでの緻密さが必要だったのかもしれない。

文庫で読んだ。ハヤカワの独特なつくりなのか,この本だけなのか,ページの端がやたらと狭い。また,第1部を読み終えるまでは,少し戸惑いを覚えるかもしれない。でも,そんなことを忘れさせてくれる至極の一冊。是非。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.40
(5pt)

忙しかったが、読まずにはいられなかった。

圧倒的です。
9・11以降のテロのとの戦い後、後進諸国で急激に増加する内戦、
そして大量虐殺。暗殺という手段で介入する某国。
そして、大量虐殺の陰に浮かび上がるひとりの男。

冒頭、地獄を思わせる世界から、物語が始まります。

私は社会人になってからは、すこし小説から離れていました。
特にSFは、学生時代を通しても、ほとんど読んだことがありません。

今回、この文庫を偶然書店で目にし、はじめて著者を知りました。
黒い装丁、伊坂幸太郎氏・小島秀夫氏・宮部みゆき氏の推薦帯が
目を引き、その場ではあらすじをながめたものの、買うことはなく
書店をあとにしました。
仕事も忙しいし、ちょっと分量が多いかな、とか考えていました。
でも、少し気になったのでアマゾンでレビューをチェックしたものの、
著者が亡くなられたとのことで、多少評価が上乗せされているのかなと、
失礼ながら勘繰っていました。

最終的には気になって買ったのですが、5つ星評価が妥当な傑作でした。
著者が亡くなられているのが本当に惜しまれる。
そして、闘病中にこれらの作品を残されていることは、本当にすごい。

私はこのあと、他の著書も間違いなく買います。
文庫化は待ちません。待てません。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.39
(5pt)

忙しかったが、読まずにはいられなかった。

圧倒的です。
9・11以降のテロのとの戦い後、後進諸国で急激に増加する内戦、
そして大量虐殺。暗殺という手段で介入する某国。
そして、大量虐殺の陰に浮かび上がるひとりの男。

冒頭、地獄を思わせる世界から、物語が始まります。

私は社会人になってからは、すこし小説から離れていました。
特にSFは、学生時代を通しても、ほとんど読んだことがありません。

今回、この文庫を偶然書店で目にし、はじめて著者を知りました。
黒い装丁、伊坂幸太郎氏・小島秀夫氏・宮部みゆき氏の推薦帯が
目を引き、その場ではあらすじをながめたものの、買うことはなく
書店をあとにしました。
仕事も忙しいし、ちょっと分量が多いかな、とか考えていました。
でも、少し気になったのでアマゾンでレビューをチェックしたものの、
著者が亡くなられたとのことで、多少評価が上乗せされているのかなと、
失礼ながら勘繰っていました。

最終的には気になって買ったのですが、5つ星評価が妥当な傑作でした。
著者が亡くなられているのが本当に惜しまれる。
そして、闘病中にこれらの作品を残されていることは、本当にすごい。

私はこのあと、他の著書も間違いなく買います。
文庫化は待ちません。待てません。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.38
(5pt)

あまりにも惜しまれる

テロをしめだすために世界を覆った個人認証システムをかかいくぐり続けながら
国を渡り歩いて虐殺を引き起こす謎の男。母の死に負い目をおう主人公がそれを追います。
物語はアフリカ、東欧を経てやがて神話的な混沌へと突き進みます。
作中では虐殺の現場がヨーロッパにまで広がり、日本以外でも核が使用されているのですが
ブラックウォーターに雇われている、かつての虐殺者たちのギャラがボクたちの
税金で払われているという現実を考えると、この未来にはボクたちとは無関係ではない
ある種の説得力があるように感じました。突きつけられる終幕を重く受け止めました。
かたわらに横たわっているのに目に見えない「何か」、それに名前を付けて
あぶりだして見せる。それがSFの醍醐味だとボクは思います。
この作品は見事に現代のIFを打ち抜いて見せました。
これがデビュー作だとは!!!
重いストーリーにユーモアでアクセントをまぶし
思索的な会話の中で宗教や哲学を行き来しながらテーマをあぶりだす。
手際のよさに舌を巻きました。厚みのある登場人物たちも、すごくよかった。
否応なしに次回作への期待が膨らむのに、この作家がもう鬼籍の人だなんて
涙が止まらない。
もったいなさすぎる!!!
できるだけたくさんの人が、この小説を読んで
この作家の名前を心に刻んでくれますように。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.37
(5pt)

あまりにも惜しまれる

テロをしめだすために世界を覆った個人認証システムをかかいくぐり続けながら
国を渡り歩いて虐殺を引き起こす謎の男。母の死に負い目をおう主人公がそれを追います。
物語はアフリカ、東欧を経てやがて神話的な混沌へと突き進みます。
作中では虐殺の現場がヨーロッパにまで広がり、日本以外でも核が使用されているのですが
ブラックウォーターに雇われている、かつての虐殺者たちのギャラがボクたちの
税金で払われているという現実を考えると、この未来にはボクたちとは無関係ではない
ある種の説得力があるように感じました。突きつけられる終幕を重く受け止めました。
かたわらに横たわっているのに目に見えない「何か」、それに名前を付けて
あぶりだして見せる。それがSFの醍醐味だとボクは思います。
この作品は見事に現代のIFを打ち抜いて見せました。
これがデビュー作だとは!!!
重いストーリーにユーモアでアクセントをまぶし
思索的な会話の中で宗教や哲学を行き来しながらテーマをあぶりだす。
手際のよさに舌を巻きました。厚みのある登場人物たちも、すごくよかった。
否応なしに次回作への期待が膨らむのに、この作家がもう鬼籍の人だなんて
涙が止まらない。
もったいなさすぎる!!!
できるだけたくさんの人が、この小説を読んで
この作家の名前を心に刻んでくれますように。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.36
(5pt)

奇才が幻視する黙示録―

本書は、2009年に早逝した著者による、

近未来を舞台にしたSF小説です。


舞台はインド・パキスタン国境で核爆発が起き、テロや紛争が頻発する近未来


東欧、アフリカ、そしてかつてインド・パキスタンがあった土地

アメリカ諜報機関の一員として世界各地を転戦しながら、

テロや暴動を影で扇動する首謀者を追う主人公でしたが、

極限を超えた任務での精神的緊張と

彼自身の内的葛藤が相俟って、やがて世界を大きく変えることになります。


虐殺を意図的に発生させることができる「虐殺の文法」

月光の流れる中、自問するかつての独裁者―など

各話、各場面ともに、著者の鋭い問題意識と美意識に溢れており、

とても印象的なのですが


脳に特殊な施術を受け、痛みを感じることなく肉片になるまで戦う兵士の姿には

おぞましさとともに、形容しがたい美しさを感じました


早熟の鬼才が幻視した破滅への預言


SFや政治小説ファンに限らずオススメしたい著作です。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.35
(5pt)

奇才が幻視する黙示録―

本書は、2009年に早逝した著者による、

近未来を舞台にしたSF小説です。


舞台はインド・パキスタン国境で核爆発が起き、テロや紛争が頻発する近未来


東欧、アフリカ、そしてかつてインド・パキスタンがあった土地

アメリカ諜報機関の一員として世界各地を転戦しながら、

テロや暴動を影で扇動する首謀者を追う主人公でしたが、

極限を超えた任務での精神的緊張と

彼自身の内的葛藤が相俟って、やがて世界を大きく変えることになります。


虐殺を意図的に発生させることができる「虐殺の文法」

月光の流れる中、自問するかつての独裁者―など

各話、各場面ともに、著者の鋭い問題意識と美意識に溢れており、

とても印象的なのですが


脳に特殊な施術を受け、痛みを感じることなく肉片になるまで戦う兵士の姿には

おぞましさとともに、形容しがたい美しさを感じました


早熟の鬼才が幻視した破滅への預言


SFや政治小説ファンに限らずオススメしたい著作です。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.34
(5pt)

本当に強い

日本のSF、しかも若手作家の作品が妙に読みたくなって本屋に行くと
真っ黒で物騒なタイトル、読めない作者名、帯に連なる名前。
かなり異彩を放ってたので手に取りましたが、正直、あらすじ読んだ感じでは
そんなに興味がわかなかったんですが、作者の経歴を見て気が変わりました。

作者が亡くなった頃、僕も同じ病気で闘病生活を送っていました。
だからどうしても読みたくなりました。

リアリティーが凄い。戦場の現実を実際には知らないのだけど、
今まで目を背けてきた、見ようとしてこなかったリアルがここにはあると感じる。

また、未来なら何でもあり的なテクノロジーの未来ではなく、
単純に先の無い暗い未来でもなく、今この現実の延長線を思わせる近未来のリアリティー。
登場するSFツールの裏付け設定も細かい。

虐殺と暗殺を扱っているので、あらすじだけを聞くとそういう部分にだけ目がいきがち
になりそうだけど、様々なテーマが描かれている。社会派の印象も強いです。
僕は特に「良心」に関するところに興味を持ちました。
かなり色々と考えさせてくれます。SFというジャンルだけで終わらせてしまうのはもったいないです。

あと、佐藤亜紀さんの評価も高いようです。『天使』『雲雀』が大好きなので
何かすごくうれしいです。

作者はこれ以降も闘病しながら執筆を続けてられています。本当に強い。頭が下がります。
他の作品も読みます。

しかし、あの豆腐屋が出てくるなんて。ユーモアも結構あるんです。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.33
(5pt)

本当に強い

日本のSF、しかも若手作家の作品が妙に読みたくなって本屋に行くと
真っ黒で物騒なタイトル、読めない作者名、帯に連なる名前。
かなり異彩を放ってたので手に取りましたが、正直、あらすじ読んだ感じでは
そんなに興味がわかなかったんですが、作者の経歴を見て気が変わりました。

作者が亡くなった頃、僕も同じ病気で闘病生活を送っていました。
だからどうしても読みたくなりました。

リアリティーが凄い。戦場の現実を実際には知らないのだけど、
今まで目を背けてきた、見ようとしてこなかったリアルがここにはあると感じる。

また、未来なら何でもあり的なテクノロジーの未来ではなく、
単純に先の無い暗い未来でもなく、今この現実の延長線を思わせる近未来のリアリティー。
登場するSFツールの裏付け設定も細かい。

虐殺と暗殺を扱っているので、あらすじだけを聞くとそういう部分にだけ目がいきがち
になりそうだけど、様々なテーマが描かれている。社会派の印象も強いです。
僕は特に「良心」に関するところに興味を持ちました。
かなり色々と考えさせてくれます。SFというジャンルだけで終わらせてしまうのはもったいないです。

あと、佐藤亜紀さんの評価も高いようです。『天使』『雲雀』が大好きなので
何かすごくうれしいです。

作者はこれ以降も闘病しながら執筆を続けてられています。本当に強い。頭が下がります。
他の作品も読みます。

しかし、あの豆腐屋が出てくるなんて。ユーモアも結構あるんです。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.32
(5pt)

ゼロ年代最高の小説と言ってもいい。

もちろん、この作品は単行本の時にも読んではいるが、文庫化されたので改めて読んでみた。
最初読んだときは、「死」の臭いが濃厚に漂いながら、不快感が少なく、SFとしてだけでなく、小説としてもエンターテイメントの要素も十分ある非常に面白い傑作だと思ったが、そのときは著者の闘病生活については全く知らなかった。
そして、今回、その闘病生活の末、著者が亡くなったことを知った上で読み返すと、また違う印象を抱いた。
『ハーモニー』もそうだけど、著者が小説において、「死」、そしてその裏返しの「生」を執拗に(しかし、決して湿った感じではなく)描いてきた背景には、当然、彼の闘病生活があったのだろう。彼の心情を簡単に想像して、断定するつもりはさらさらないが、そういった状況で、ここまで知的に、そしてある意味人間的に死と正面から向かい合い、そしてそれを非常に優れた小説として描いた彼の優秀さ、凄さを痛感する。

しかし、そういった背景抜きでも、また何度読んでもこの小説の凄さは語りつくせない。ゼロ年代ベストSFというだけでなく、海外のSFを含めても、いや、ゼロ年代に私が読んだ小説の中でも、最も優れた作品だった。

なぜ、9・11事件以降の世界をこれほどまでにリアルに描いた小説が、日本のSF小説家の処女作として生まれたのか。
そして、2010年代に入って、彼はどんな作品を書いていったのだろうか。
さらには、海外の読者がこの本をどう読むのかも知りたい。

大森望氏のあとがきで、著者の母の言葉も印象的。心をうつあとがきだった。

なんだか、興奮して脈略のない文章になってしまった。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.31
(5pt)

ゼロ年代最高の小説と言ってもいい。

もちろん、この作品は単行本の時にも読んではいるが、文庫化されたので改めて読んでみた。
最初読んだときは、「死」の臭いが濃厚に漂いながら、不快感が少なく、SFとしてだけでなく、小説としてもエンターテイメントの要素も十分ある非常に面白い傑作だと思ったが、そのときは著者の闘病生活については全く知らなかった。
そして、今回、その闘病生活の末、著者が亡くなったことを知った上で読み返すと、また違う印象を抱いた。
『ハーモニー』もそうだけど、著者が小説において、「死」、そしてその裏返しの「生」を執拗に(しかし、決して湿った感じではなく)描いてきた背景には、当然、彼の闘病生活があったのだろう。彼の心情を簡単に想像して、断定するつもりはさらさらないが、そういった状況で、ここまで知的に、そしてある意味人間的に死と正面から向かい合い、そしてそれを非常に優れた小説として描いた彼の優秀さ、凄さを痛感する。

しかし、そういった背景抜きでも、また何度読んでもこの小説の凄さは語りつくせない。ゼロ年代ベストSFというだけでなく、海外のSFを含めても、いや、ゼロ年代に私が読んだ小説の中でも、最も優れた作品だった。

なぜ、9・11事件以降の世界をこれほどまでにリアルに描いた小説が、日本のSF小説家の処女作として生まれたのか。
そして、2010年代に入って、彼はどんな作品を書いていったのだろうか。
さらには、海外の読者がこの本をどう読むのかも知りたい。

大森望氏のあとがきで、著者の母の言葉も印象的。心をうつあとがきだった。

なんだか、興奮して脈略のない文章になってしまった。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.30
(5pt)

過大評価と思ったけど・・・

著者の早い死が惜しまれているため、導入部にみられる私小説もどきの勿体つけた語り口に、過大評価されているだけではと思いながら読み始めました。
しかし読み進めると、徐々に世界の秘密が明らかになるプロセス、意外な動機、さらにその先に末二重底の決着のつけ方など、非凡な才能を見せてくれます。
特に自己憐憫な内省描写に逃げずに、きちんと決着をつける終わらせ方に好感が持てます。
もう少し文書がこなれればと思いますが、叶わぬことと思えば、やはり作者の早すぎる死が惜しまれます。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.29
(5pt)

過大評価と思ったけど・・・

著者の早い死が惜しまれているため、導入部にみられる私小説もどきの勿体つけた語り口に、過大評価されているだけではと思いながら読み始めました。
しかし読み進めると、徐々に世界の秘密が明らかになるプロセス、意外な動機、さらにその先に末二重底の決着のつけ方など、非凡な才能を見せてくれます。
特に自己憐憫な内省描写に逃げずに、きちんと決着をつける終わらせ方に好感が持てます。
もう少し文書がこなれればと思いますが、叶わぬことと思えば、やはり作者の早すぎる死が惜しまれます。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.28
(5pt)

筆力のレベルが余りにも違い過ぎる。

佐藤亜紀が絶賛していたので読んでみたが、想像を遥かに凌ぐ傑作だった。何よりもこれほどの知識と技術を兼ね備えた作家が日本に存在していたことに驚嘆した。テロを掃討した先進国と虐殺の急増した後進国という近未来が舞台だが、それは現代社会の延長線上にあるものとしてのリアリティを獲得している。むしろ、本書は現代世界に生きる我々に肉迫したものですらあるのだ。ところで読者によっては、主人公の未熟な陰鬱さ、某漫画のパロディ、エピローグなどに対する賛否もあるらしいが、評価を下げるには至らない。それどころか、本書の魅力の1つとして、読後、「彼自身が侵されていたのではないか」という疑念が涌いてくることも挙げられよう。その筆力の凄まじさは宮部みゆき、伊坂幸太郎などの激賞にも覗える。余りにも稀有な才能を失ったこと、著者の夭折が惜しまれる。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311