■スポンサードリンク
悪人
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
悪人の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.01pt | ||||||||
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全301件 81~100 5/16ページ
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| Kindle版ではタイトルが「悪人:上」となっていますが、この書籍内に最終章まで含まれています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| これはアウトレイジ [DVD]じゃないけれど全員「悪人」ですわ。 でも読んでいるだけで各登場人物の逃げ場の無さ、押し潰されそうな気持ちは痛いほど理解できた。 閉鎖された田舎で、地域の全介護を背負わされたかのような存在となり、金髪にしても変身できないし、家にも居場所がなく、 車だけが唯一の居場所、ドライブしても逃げられない。 車は唯一のプライドであり、自分がどうやっても手に入れられないもので差を付けられれば非常に屈辱だろう。 安月給のOLで、援助交際でもしなければ広告で煽られてるものなんて何一つ買えない。金持ちと結婚でもしない限り抜け出せない。 チャンスだと思っていたのに、自分は交際するレベルですらないと相手の眼中にない屈辱。 毎日が職場との往復の販売員。もう若くもなく、時間がどんどん過ぎていく。殺人犯との逃避行を非現実的なボニーアンドクライドのごとく酔ってる。 高級車を乗り回し、奔放に過ごしているように見えて、伝統あるということは同時に重荷でもある旅館を継ぐことは決めさせられているボンボン。選択の自由はない。 若き日の理容師の父親が竹の子族に方言むき出しでケンカを売ったのに、標準語で軽くいなされたというシーンも印象的。 地方と東京の格差。全く相手にされていない。 皆が皆、心のなかに貯めていた鬱屈が爆発したかのような「悪」を最後に一人で背負い、そしてまた表面的に平穏に始まる変わらない日々。 厚い本だけど、一気に読める圧巻の感想でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 先に映画を見ていました。 原作が連載小説であることは知っており、この度Kindle版を見つけ購入。 「悪人:上」とあり、「下」にKindle版リクエストを出しましたが、とりあえず読んだ所、これ一冊で完結していますね(下巻も含まれている)。 あんまり感動しない質なのですが、このお話にはホロッときます。 切なくて、ロマンチックなお話です。 悪人とは法を犯した者のことをいうのだとすれば、この小説において誰が悪人であるかは明白です。 また、悪人とは人の心を弄び、人の頭を踏みつけることを何とも思わない者のことをいうのだとすれば、この小説において誰が悪人であるかは明白です。 両者は必ずしも重なりあうことがないというのは、誰しも心得ているはずです。 法で裁くことが出来ない悪を目の当たりにして、多少なりとも無力感と悲しみを感じるのですが 一方でそのような悪の仕打ちに耐え、何かを信じ守ってひたむきに勁く生き抜く姿も描かれていて、救われるような気持ちになります。 悲しさと美しさが入り交じる、なんとも切ないストーリーです。 小説と映画の一番の違いは、祐一とその母親の関係についてのエピソードの有無でしょう。 映画を先に見るのがオススメです。 小説のほうがプロットがはっきりしているのですが、祐一が母親のために敢えてとりはじめた行動は、若干非リアルな気がします。 罪悪感の何たるかを理解してはじめて思いつく行動だし、理解していても実際なかなか取れる行動ではありません。 相当のオトナです。 衝動的に事件を起こしてしまった祐一と比べると、どこかチグハグな気もします。 そういう意味では、映画のほうが観る側に解釈の余地を残す出来だと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 寓話として読める物語。生きるだけでも大変なのに人を救おうとしたらどうなるか。現代日本社会に紛れ込んだ聖者の受難劇。あっさり読めて読後感は重い。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| この本が困ってしまうのは 「悪人は誰だ?」と考えさせられるからだ。 犯罪者は誰だ?と聞かれたら答えは単純明快で 殺人を犯した人がいる。 売春をしていた人もいる。 女性に暴行し峠に置き去りにした人も、 老人を恐喝したした人もいる。 自首することを止めた人も犯人隠匿罪という犯罪になるんじゃなかっただろうか。 だけどこの中で一番悪意が無かったのは、一番重い罪の殺人犯だ。 殺してしまった瞬間の狂気は別にして、殺人犯の彼は周囲の人に対して悪意などなかった。 むしろ犯罪に問われない、あるいはバレずにいた他の人たちの方が よほど悪意のある人間だ。 この悪人という本を読んで思い出したのは 三島由紀夫の不道徳教育講座という本の「たくさんの悪徳を持て」という項だ。 99%道徳的、1%不道徳的、これが一番危険な爆発状態である 無難な社会人は70%道徳的、30%不道徳的 中には豪胆な政治家のように1%道徳的、99%不道徳的でも犯罪者どころか 立派に「国民の選良」として通っている人もいる。 といった内容のもの。 この「悪人」に出てくる殺人犯は純粋で優し過ぎて 周りの悪意に耐えられず、殺人を犯すほどの狂気を爆発させてしまったのだな、と思った。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
毎日毎日同じことの繰り返しで、ただ流されて生きているより、 それが罪であったり、自分の将来を危うくさせることであったとしても、 生きていることを感じられるなら、その方が有意義な生き方なんじゃないかって… 若い頃に考えていたことを思い出しました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| やや中だるみ感はありましたが、最後に一気に話がまとまり、読後は色んな思いや余韻が強烈に残りました。色んなメッセージが詰まっていますが、1番感じ取ったのは「『世界中の全員が敵になったとしても私だけは永遠にあなたの味方でいる』という使い古されたこの大切な感情が現代社会において軽んじられている」ということでした。それを色んな登場人物の感情の揺れ等であらゆる角度から巧みに表現をされていたように思います。 その観点から本のタイトル「悪人」とは?祐一は殺人者で世間からみれば悪人だが、「あなたは私が守る」と言った光代から見れば世間が敵=悪人、さらに無根拠に世間を先導するマスコミなんかは極悪人。でも世間的には光代も悪人から善人に代わる。佳男から見れば世間で許されている増尾が第一悪党。じゃあ佳乃は?祐一の母は?警察に通報したばあさんは? 結局人の善悪なんて表裏一体で、悪人だけど善人の人もいるし、善人ぶった悪人もいる。どこかで歯車が狂って極悪人になる可能性は誰にもあり、ある主観で見れば今も全員が誰かの悪人なのでしょう。 そんな善悪の議論をすることよりも、自分の大切な物を命がけで自分の人生を掛けて守る強さを持つこと、悪人にならないことよりも大切なものを守ろうとすることが本当の正義なのではないか。そう感じさせてくれました。(殺人を肯定する訳ではありませんが。) 佳男の「あんた、大切な人はおるね?」の下りは心に刺さりました。 光代が最後につぶやいたセリフは心が震え涙がでました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 単純な私は、読めば読むほど引き込まれました。 記憶力が弱い私は登場人物が増えていくことに戸惑いましたが、それぞれの人物像がうまく描写され、まるで映像を見るように想像できました。 出会い系で出会った女を殺し、出会い系で出会った女と逃げる、こう書いてしまうとそれだけの小説?という感じですが、心理描写もうまく引き込まれました。 例えば、増尾が佳乃を暗闇の峠に置き去りにする場面でも、こういう女っていそう、そしてこういう女にムカつく男もいそう、なんかわかるような…と。 祐一は老夫婦と暮らし、唯一の趣味の車も年寄りの送迎に使い、不器用で真っ直ぐで…。 あまり何も考えていないような印象でしたが、そうではなかった。 ラストでは、悪人を装い愛する人を救おうとするという点で、東野圭吾の「容疑者Xの献身」を思い出しました。 しかし、この小説のラストは悲しすぎました。 その愛する人が、装った「悪人」を真に受けてしまうなんて。 そして確かにあった「愛」を、「舞い上がっていた」だけだと思い込んでしまうなんて。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 全く予備知識なしに本作を手に採ったのだが、読み応えのある作品だった。実際に起こった事件をモデルにして、小説として再構成したかと思う程のリアリティを持って読む者に迫って来る。作者の出身地が関係しているためか、特に物語の舞台となる長崎・佐賀周辺の地理・風物の描写の木目細やかさはハンパではなく、読んでいて眼前に情景が浮かび上がって来るようである。 また、登場人物達の生い立ちや人生観に関する洞察も深い。主人公やそれに関わる2人の女性だけではなく、殆ど全ての登場人物の造形に工夫が凝らされているのには感心した。男女間の愛憎、家族関係、生きて行く上での孤独感や希望、そして老人相手の詐欺商法まで、まさに現代社会のある縮図を切り取った様な感がある。その意味で、本作は事件(殺人, 逃避行)に纏わる人々の悲哀を描いた物というよりは、そうした社会の縮図を描くために事件の形を借りた物という印象を受けた。 題名の「悪人」から受ける印象とは裏腹に、静謐感に溢れた筆致も特徴的。上述した印象と重なるが、小説というよりは優れたドキュメンタリーを読んでいるかの様な感覚さえ覚えた。その骨格に対する肉付けの重厚味とそれを支える多角的視点の構成の巧みさとが本作の持ち味だと思う。作中の各章に付けられている表現を借りれば、「作者は何を描きたかったのか ?」という問いに充分に応えた力作だと思った。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| ★5つをつけたいがためだけにレビューを投稿しています。 読み終えてしまった今、とても残念な気持ちです。毎晩これを読むのが 楽しみだったのに、その楽しみがなくなってしまったから。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 欲望や偏見等が溢れる現代社会で、純粋に生きていく事の難しさを感じさせてくれます。主人公祐一は、祖父母に育てられ貧しい家庭でそだった今時珍しい純粋で何にでも真っ直ぐな性格を持つ。そんな祐一や育ての親の祖母、房江が、世間の荒波に巻き込まれていく様子、その状況を克服しようとする様は、健気であり勇気を与えてくれる。本当の意味での悪人とは何だろうか。世間のそれとは実際は違う事を考えさせる。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 枚数が多い作品なので、とにかく作りが丁寧で、読みはじめてすぐに好印象を受けた。前半(上巻)はフーダニット小説としても読めて、祐一が本当に殺人犯なのか? という展開を見せる。対比すれば後半はホワイダニット構成で、複数視点で主人公やその周辺家族の置かれた状況が描かれる。特に秀逸なのは息子(祐一)が自分(母親)に金をせびると愚痴る母親のインタビュー描写で、この時点では母親に対する接し方がわからない(甘えている)祐一とそれが理解できない母親との対比が鮮やかなのだが、後に別の視点で同じ行為が語られて意味が変わってくる。その辺りのずらし方が面白い。全体を要約すれば複数の(場合によっては意識されない)悪意が悪人(この場合は殺人犯)を作り上げる話となるのだが、吉田修一にしては珍しく主人公が自己を語っているにもかかわらず、その本当の胸中がわからないところがカズオ・イシグロ風ともいえる。ラストの光代の訴えが耳に残る。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| すさまじいドライブ感。寝食を忘れて読み耽った本は久しぶりだ。興奮した。 人間の言うことは、何もかもが嘘であり、本当でもあるのだろう、と僕はこの本を読んで思う。虚は実であり、実は虚であるのだ、と。真相は“薮の中”ではなく“玉虫色”であり、もしかしたら人間の存在そのものが玉虫色なのかもしれない。 だが、現代社会の機構がそれを許さない。善か悪か、白か黒か、勝か負か、正か邪か、賢か愚か、有か無か……明快な二元論によって成り立っている(ことになっている)のが近代的な文明社会であり、それこそが人類の救済措置になる、と、そんなコンセンサスがある。しかし、果たしてそうだろうか。ならば、僕はなぜこんなにも切ないのだろう? この物語は閉じてはいない、いや、終わってもいなければ、始まってさえいないのではないか、とも思う。切なさのスパイラルの中で、僕はラスト近くでどうしても涙を堪えられなかった。“負け組”の姿が、そこではなんと力強く美しかったことか! 全編にあふれる福岡、佐賀、長崎の九州弁が心に響く。方言がいい、と思わせてくれる小説にめぐり会えることは、滅多にない。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 原作より先に、映画を鑑賞。映画も、痛く、切なく、それでいて、殺人までいかないにしても、今でも街のどこかで同じようなことが起きているのかもしれないリアリティを感じ、最高な作品でした。原作を後に読みましたが、映画同様、涙が止まらず、素晴らしい作品だと思いました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| この作品は、殺人事件が描かれているけれど ミステリーやサスペンスというより 寂しさ、悲しさ、欲、見栄などの 人の心が、よく描かれている芥川賞作家さんらしい作品だと思う。 とはいうものの、著者の吉田修一さんの描いた作品としては 今までとは少し系統が違う感じに感じられる。 冒頭の被害者「佳乃」の視点の部分では 見栄、欲といったものや、身勝手さなど 読んでいる人に、被害者であるものの「嫌な女」という印象を与え その先の加害者「祐一」視点では 寂しく、同情も沸き 悲しいぐらいの優しさも感じさせられる。 だからこそ、事件の起こりに やるせない悲しさがあり 「本当の悪人は?」 と考えながら読み進めてしまう。 だが、それだけでは無い。 最後にガツンとやられる。 この部分を、最初は 大きな優しさや、愛なんだと思い あまりに切なくて涙した。 けれど、余韻に浸ったしばらくのちに 本当に祐一は悪人では無いのだろうか?と疑問が出て いまだに答えが出ていない。 殺人という行為を除いてみても 「何か」 あるような気がして引っかかってしまう。 もちろん、殺人が「悪」であるのは当たり前のことで 被害者、佳乃が嫌な人間で 加害者の祐一が、同情すべき境遇だからといって それが和らぐものでは無い。 それとは別に、光代とのからみで 「悪人」なのではと、色々と考えさせられる・・・ それだけ、この作品は深く グッとくるものだった。 映画版だけを見た方は、小説の最後の部分だけでも読んだら より「ガツン」とやられると思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 題材は安っぽい2時間サスペンスにありがちな事件を あつかってるんだけど・・・ それを見事に文学にまで昇華させた作品と思う。 秀逸。 この作家の力量に感動した。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 主人公の不器用な生き方、人には見えない優しさに心が揺さぶられました。 母の心に「憎しみ」を刻ませることで、彼女を救おうとする姿、 光代を救うために、自ら「悪」を演じる姿、 彼の献身とも言えるその愛情に、涙が止まりませんでした。 彼は本当に『悪』なのか? 正義とはなんなのだろうか? 主人公の悲しく、切ない生き方に心が締め付けられる、けれど読んだあと不思議な余韻を残す、そんな作品だと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 好みの作品でした。 ネタバレになると良くないので詳しくは書けませんが、人を愛するだけでなく、人からの愛に気付ける人になりたいと思いました。 終わりは切なかったけれど、切ないからこそ余韻が残ります。 ただ、出会い系に嫌悪感を持っている方は感情移入しにくいと思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 本当の悪人とは,誰なのか,という問いが本書のテーマである。 読み終わったとき,清水以上に,石橋,増尾や悪徳商法の堤下が悪人だと思うだろう。 しかし,この小説の構造から離れて冷静に考えれば,真の悪人は,殺人を犯した清水であることに間違いはないだろう。著者は,殺人を犯した人間には,時には同情すべき点があって,その殺人者以上に,悪人がいると主張したいのだろうか。もしも,この小説の読後に,殺人犯清水は,本当の悪人ではなく,他に「真の悪人」がいると思ってしまうのは,それだけ殺人というものが,我々の世界からかけ離れたところにあるからだ。殺された石橋佳乃は,確かに憎たらしい女性だったのかもしれない。けれども,彼女には,家族がいたはずだ。そして,殺人犯清水にも家族がいる。清水は,自分の思い通りにならない世界になんらかの抵抗をしたかったかもしれない。ただし,それは,矮小な人間の自分勝手の考えと行動にすぎなかった。その殺人によって,家族は崩壊してしまった。それこそ,清水の犯した殺人がもたらした「悪」ではないのだろうか。 けれども,本書は,純粋に小説と読めば,おもしろい作品だと思う。救いがない物語といえば,そうかもしれないが,一度,「悪」というものを考える良いきっかけになる小説だと思う。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 果たしてどんな「悪」が描かれているのか? 隷書体で書かれたタイトル名が強烈さを暗示。 先入観を逆手にとって、読者を引き込む。 しかし、・・・読前イメージとは全く違う内容が 明らかになる。 地方都市の閉塞感から生まれる孤独と絶望。 どうにもならない境遇と鎖に繋がれた現実。 真面目に生き続けることの美徳と背反。 対岸の火事だと考える人間の身勝手さ。 現代の恋愛市場における病巣。 不器用で普遍的な血縁愛と皮肉。 素朴で素直でありながら、それ故生まれる 優しすぎる登場人物の犯罪。 現代の地方都市の現実や若者が抱える恋愛事情、幸福感に ついて、なんとなくイメージは湧いてはいたけど、 それを的確に、凄みある人物描写で書きあげた秀作。 すべての登場人物のキャラが立っていて、重く切ない 心情が強烈にスパークし、科白の重厚感も白眉だ。 「生まれて初めて人の匂いがした」 「欲しゅうもない金、せびるの、つらかぁ」 「ばあさんが悪かわけじゃなか」 「そうやってずっと、人のこと、笑って生きていけばよか」 「これまで必死に生きてきたとぞ」 「どっちも被害者にはなれんたい」 「どんなに俺が言い張っても、誰も信じてくれんような気がしました」 表面的で非現実的な設定で、ムリヤリ盛り上げようとする、 最近の似非ベストセラーに対するアンチテーゼか? 善悪と合法・違法の狭間で、読者に「悪」というモノの 指標を考えさせる命題提示も素晴らしい。 「心の裕福さ」の価値と、それだけで生きていけるのか を考えさせられる。 概して、フィクションでありながら、現実世界の 心闇ともがきながら葛藤する人物の機微を うまく表現した至高作品であった。 映画をご覧になって、光代と祐一の心の繋がり方に 疑問を持った方は、ぜひ小説を読んでください。 映画では時間的制約で感じられなかった、二人の 孤独と、かけがえのない存在としての宿命に、 納得できると思います。 祐一が出所した際、光代が迎えに行く場面を想像すると、 今作の切なさ、人間の業といったモノが味わえると思います。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!






