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悪人



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【この小説が収録されている参考書籍】
悪人
悪人(上) (朝日文庫)
悪人(下) (朝日文庫)

悪人の評価: 4.01/5点 レビュー 407件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.01pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全301件 201~220 11/16ページ
No.101:
(4pt)

悪人とは誰か、罪とは何か

主人公清水祐一は、出会い系サイトで知り合った石橋佳乃を殺し、同じく出会い系で知り合った馬込光代と恋をし、共に逃走する道を選ぶ。 彼らが共通して抱くのは、孤独という感情。自分が何か伝えたいとき、伝える相手がいない。買いたいものも行きたいところも会いたい人もいない。その人の幸せな様子を思うだけで。自分までうれしくなってくるような人などいない。そんな状況ならば、単に出会い系で知り合った異性であれ好きになるのだろうし、それを恋と呼んでも良いと思う。そんな孤独な状況に身を置かざるを得ず、「罪人」となってしまった主人公に、強い同情の念を覚える。 また、表題にもなっている「悪人」とは、一体誰のことを指すのか。上で主人公を「罪人」と表現したのは、私が彼を「悪人」と思えないからだ。辞書を引けば、「罪人」とは、罪を犯した人のこと。「悪人」とは、心の良くないもののことらしい。 犯罪は当然悪いことだと考えれば、「罪人」はイコール「悪人」である。しかしこの小説内で何故犯罪が起きたかと聞かれたら、読者はその原因を一体誰に、或いは何に帰すると考えるだろうか? 事件の報道でおなじみの、犯人の身内や友人が語る「あんなことする人には思えなかった」というあの台詞も、「罪」と「悪」が同義でないことを示しているのではないだろうか。 罪とは何か、悪とは何か。哀れむべくは何か、憎むべきは何か。そんな作者の苦悩が伝わってきた気がした。できれば作者なりの哲学をバァンと示して欲しかったのと、もっと一人ひとりの登場人物を厚く描いて欲しかったという願望から、☆3つ。この物足りなさも、作者の魅力のひとつなのかもしれないけれど。ファンの方にはごめんなさい。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.100:
(4pt)

一気に読める面白さ

土木作業員の若者が保険外交員の女性を殺害した容疑で逮捕されたところから物語は始まる。そこにいきつくまでの事件になんらかの形で絡んだ人々の人間性を丁寧に描いていく。上巻はその殺人まで除所に時間が近づいていく行く過程で、いったい何が起こったのか?本当にこの土木作業員が犯人なのか?悪人は誰か?と疑問とその回答への欲求が膨らんでいきぐいぐい物語に引き込まれていく。この上巻は下巻に比べサスペンス感が強いが、単なるサスペンスではなく、登場人物それぞれの人間性が読み手の心に侵入して来悲しく痛い。とにかく読んで損はしない一冊。
悪人(上) (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:悪人(上) (朝日文庫)より
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No.99:
(5pt)

とにかく面白い!

内容紹介からの一文。なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう。この小説の登場人物、祐一は光代に。僕はこの小説に。ドエライ本を読んだ感がある。ミステリー要素があるのに、犯人当てを、ハナから放棄したのも事実だ。もっと根強いものを読みたかったからである。舞台は九州、殆ど知らない土地の名前が出てくる。会話文の方言も、馴染がない。バラバラに描かれている人物造詣が、直径数キロ範囲にいそうな人物ばかりである。退屈な印象を受けた。これでもかと言わんばかりの視点移動もあり、感情移入できんのかいなと心配にもなった。衝撃を受けたのは、保険外交官の女が殺害されてからだった。それを取り巻く関係者たちの、うっ屈した日常に暗雲がたちこめてくる。殺害されてから日、デートの約束をしていた金持ち大学生は失踪する。明らかになっていく捜査、揺れ動く心達。時間を忘れて読んだ。前半部分で感じた退屈な印象、心配は跡形もなくなった。それに陰影に富んだ文章が際立ってくる。著者の作品を読んだ中、トータル的に式で表すとこんな感じ。『悪人』>『パレード』>『パークライフ』で、間違いなく、今年読んだ中で一番の小説です。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.98:
(5pt)

「正しかことばしなさいよ」

どちらかというと本はゆったり読み進める私が2日で読み終えた本です。高校で教師に「これは良いよ」と勧められ、最近になり文庫化もしたので購入しました。これはあまり物語の核心ではないのですが、序盤の女友達同士ならではの陰湿な距離感のリアルさに驚きました。被害者の石橋佳乃は、どこにでもいるような、出会い好きで見栄っ張りの田舎娘に描かれています。それ故殺されたあと、「ふしだら」「売女」などと言われ世間では同情もされず、私も最後まで被害者にあまり心が傾きませんでした。ですがかえってそれが、被害者が清純な娘でなかったことが、この物語の独特な暗さをより演出しているように思います。清水祐一は幼いころ母親に置き去りにされ祖父母と暮らしている、不器用で物静かな車好きの青年。いい人だな、と思えばそうでなかったりもして、掴みどころのない普通の若者です。出会い系サイト、古びた理容店、土木作業員、病気の祖父、ヘルス、健康食品詐欺‥この小説に華やかな世界は一切なく(金持ちな大学生の増尾さえ)、代わりに現代人のじめじめした人間臭さや卑しさ、そして愛が押し寄せるように感じられました。物語のなかでも、とりわけ祖母・房江の言葉はずしりと来ました。祐一が主人公の珠代を守るためについた優しい嘘に、胸が熱くなりました。祐一との逃亡生活を終えた珠代の虚無感も、全てが終わった瞬間の儚さを表現していて良いです。一瞬も気休めのない、ずっしりとした小説です。読んでみてください。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.97:
(5pt)

吉田修一恐るべし!

保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか?幸せになりたかった。ただ、それだけを願っていた。                                                             この作品はどんなジャンルにもおさまりきらないものすごい作品だと思います。登場人物すべての心情描写がみごとなくらい丁寧に描かれていて本当にすばらしい。ぜひともおすすめの作品です!  
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No.96:
(5pt)

「悪人」とは・・・

「悪人」とは、「悪」をなした人。犯罪者。 では、「悪」とは何か? 保険外交員の女性の殺人及び死体遺棄事件が、この本の舞台です。 そこに登場するのは、被害者である石橋佳乃、殺人を犯した清水祐一、その前に佳乃を車から蹴落とし峠に置き去りにした増尾圭吾、逃亡する祐一に最後までついてゆく馬込光代、その他それぞれの親族、友人はじめ多くの関係者がいます。 そして、彼らのそれぞれの視点から様々な意見が語られます。 祐一は、本当に「悪人」だったのか? 彼には、人々から「優しい」と言う評価が聞こえてきます。 そして、作者はその生い立ちから、「寂しさ」を抱えた人間として描き出します。 同様の「寂しさ」を持って描かれるのが光代です。 では、「寂しさ」だけでこの事件は説明つくのでしょうか。 もっと言えば、「寂しさ」が「悪」を生み出したのかと言うことです。 これも違うでしょう。 それぞれの登場人物が、「善」「悪」両面を持っており、それぞれがこの犯人に影響を及ぼしています。 いろんな要素が相俟って、「悪」が生まれ、事件は起きます。 この本で語られるのは、法的な「悪人」と倫理的な「悪人」の両方です。 それほど「悪」と言う言葉の意味は難しいと言うことでしょう。
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No.95:
(5pt)

これがあの『パークライフ』の?

いやー、信じられない。これがあの「パークライフ」という薄っぺらな小説を書いた吉田修一?「悪人」の評判は知っていたが、あの「パークライフ」を書いた奴だろと放っていたのだが、文庫化されたのを機に購入。まるで別人が書いた小説。「パークライフ」を読んで、どうせすぐ消える作家と思った不明を恥じるほかない。
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No.94:
(4pt)

構成は素晴らしい

少々、演劇的なところがあって、場面展開がめまぐるしく変わるので、そういうのを嫌いな人には合わないかもしれません。ただ読み慣れてくると、次はあの場面が来るといいと思うと、そのシーンに移ります。悪人というタイトルから、悪人は誰なんだと考えながら読んで、いざ読み終わると、いったい誰が真の悪人なのか判らなくなります。『こいつが悪人だ』と思っても、冷静になって考えれば、誰しもの中に潜在的に潜んでる部分がたまたま出ただけだとも思いますしね。誰もが悪いと思う反面、それは因果応報だしなと。個人的には、クライマックスには釈然としない部分があり、この星数になりました。クライマックスより前の部分は、どんでん返しの連続した物語で次から次へとページをだったんですが、最後は文章の裏を読者に想像させる…読者に委ね過ぎると感じたので終わり方は釈然としませんでした。誤解を招くといけないので付け加えますが、物語の展開、人間の心理描写は素晴らしいと思いました。他の方も仰ってるように、私も2日間で読み終えました。
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No.93:
(4pt)

4人、みんな悪人!

誰が一番悪い、こいつが一番悪人だって決めつめられないもどかしさに悶え苦しむミステリー。当初は、圭吾と裕一を巻き込んだ佳乃の独りよがりな三角関係演出劇と思いきや、光代が出てくる辺りから俄然、ドラマは変な方向に進んでしまう。エセ三角関係の段階では、これまた独りよがりなお坊ちゃま、西南学院大学生・圭吾の理不尽な行動に「人間としてあかんやろ」「そりゃ、ないで」と非難することができよう。彼の非常識な行動に憤慨することには、誰しもが抵抗がないはずだ。なぜ、釈放されてしまうのか、傷害罪がつくんじゃないか、裁判ではどうなるんだ? 作者は、実母の愛情が受けられなかった裕一の歪んだ性格にこの殺人事件の原因を求めているような気がしないでもない。実際最終章では、そう読める・・・・・。 被害者の両親の心情、加害者の祖母の心情、その他脇役陣の個性溢れる描き方が秀逸で、こりゃ映画化されても面白いものになりそう。
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No.92:
(5pt)

本心と時間差

この本の評価が低い人は、ラスト10ページの重要性を全く認識していない人ということになるだろう。人間が「悪」になることは、実はとても簡単なことであるし、それが倫理や道徳と反するにしろ、真にそいつが「自由」であるというところに「悪」に対する甘美な憧れの現れがある。そして、「自由」とは時間に対しても自由ということである。ただ今を生きるしかない我々にとって、「自由」でありさえすれば、もしかしたら、人は、何をしてもかまわないのかもしれない。人は未来を見据えたときに、はじめて自由ではなくなるのかもしれない。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.91:
(4pt)

面白いが、少々タイトル負けのような・・・

現代の若者の心の闇をとても上手く描き出した群像劇。携帯の出会い系サイトで出会った女を殺してしまった男、その男に本気で惚れて一緒に逃走する女。そして被害女性が惚れていたろくでもない男。それぞれの関わり合いから起きる悲劇、そして彼らのリアルな心情にどんどん引き込まれてあっという間に読破してしまった。殺される女性の浅はかさも手に取るように分かるし、殺す男の不甲斐なさや弱さにも読み進むうちにどんどん引き込まれる。人は誰でも心に弱い部分を持っているのだろうけど、そこを互いに触発し合う相手と出会った時、それは大きな負のエネルギーに変わり、一気に誤った方向へと転がり落ちてゆくんだな・・・といいう怖さを感じた。しかし、この犯人の男が、私にはどうしても「悪人」とは感じられず、どこでその「悪」の部分が出てくるんだろう?と期待して読み進んだので、最後には正直「なぁんだぁ・・・」とちょっとガッカリしてしまった。悪い部分よりも弱い部分のほうが際立っていたように思う。面白いけど何かちょっと足りないような、タイトル負けしてるような、そんな印象が残った。あと、九州の田舎が舞台になっているので、方言が沢山出て来ます。大分生まれの私にとっては馴染みのあるもので懐かしささえ感じるが、知らない方にとってはちょっと読みにくいと思う。が、吉田さんの文章は読み手をぐいぐい引き込んでゆく巧みなテクニックで、読み始めたらすぐに物語の世界へ入っていくことが出来る。個人的には「パレード」の方が後に残るものがあるので好みだが、しかし「今夜、何か面白いものが読みたい」という時、一晩のお供にお勧めの作品。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.90:
(5pt)

結局誰が悪人か

切ないですねー。事件の真相が明らかになるに連れて主人公は悪人とは程遠い人物に思えてなりません。例のあの人が真の悪人に他ならないのに・・・。終始博多弁で話す主人公はお年寄り思いで朴訥としていてとても憎むべき悪人ではないので結末はとってもやりきれないです。小説とはいえ最後は心が痛くなりました。かなり厚い本ですがなんなく読めました。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.89:
(5pt)

そもそも、悪人とはなんぞや

本の厚さは読むうちに忘れた。見知った地名、見知った景色。そして、人々の姿は等身大。女が男に殺された。よくある事件のひとつとして小さく報道されて終わりになるかもしれない。男女それぞれの家庭や職場の生活、周囲の人々を描くことで、小さな事件の当事者にとっての大きさを思い知らされる。これが新聞に掲載されていたのか。読み終えて、その意義を考えさせられた。法で裁く悪は、法で規定されているものに過ぎない。その意味では悪人とは犯罪者であるが、心情を踏まえた上で語られる悪を規定するのは倫理である。裁判官制度が導入された今、もしもこの事件を裁く側に回るとしたら。自分の基準を問われている気がした。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.88:
(5pt)

誰が悪人で誰が悪人じゃないか

久々に真ん中ストレートに刺さった本。 まだまだ進化する作家さんだと期待してるけど、現時点では 最高傑作だと思う。 被害者の父と、加害者の祖母(母代わり)、立場は真逆なのに 2人の辛さや悲しみがリンクしていました。 描写が秀逸で、登場人物や舞台となった地方都市が自分の中で リアルに浮かび上がってくる。 追い詰められ、切羽詰った2人の逃避行はせつな過ぎて痛い。 わたしにとって特別な映画「モンスター」と通じるものがあります。 両作品とも、誰が「モンスター」で「悪人」なのか分からない、 もしかしたら誰もが「モンスター」であり「悪人」なのかも知れない・・・ と思わせるタイトルも含めて。 心をえぐられる本です。
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No.87:
(4pt)

悪人は感じぬ“人の匂い”

「雪の中、増尾の足にしがみついとったお父さんの姿を見て、うまく言葉にはできんとですけど、生まれて初めて人の匂いがしたっていうか、それまで人の匂いなんて気にしたこともなかったけど、あのとき、なぜかはっきりと佳乃さんのお父さんの匂いがして」(P388)主要人物の一人である増尾の友人・鶴田がそう述懐する場面がある。鶴田は将来映画監督を目指すほどの映画好きで、「人間が泣いたり、悲しんだり、怒ったり、憎んだりする姿は、腐るほど」見てきた。だが、現代の若者らしく、生々しくリアルな関係性の中に身を置いた経験は皆無と見える。そんな彼が、佳乃の父の姿を見て「生まれて初めて人の匂いがした」。この発見は鶴田にとって、そして小説にとっても重要だと思った。人の匂いがするかどうか、人の匂いを嗅ぎ取れるかどうかが、“悪人”かどうかを測るひとつの指標とはいえないか。それは重大な事件を起こしたかどうかという物理的な問題よりもはるかに重要で本質的な問題のように思われる。増尾は無論、悪人だろう。祐一はどうか。僕はぎりぎり踏み止まっていると考えるが、果たしてどうか。ここが小説の勘所ではないか。うん、面白かった。
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No.86:
(5pt)

戦後、自由になった日本人の「業」

著者の小説ははじめて読みましたが、その読みやすさと五感を感じる確かな文章力に、まず、驚かされました。420頁の長編にもかかわらず、登場人物から出来事まで、ほとんど無駄がない構成もすばらしい、としか表現できません。おかげで三晩連続、夜更かししてしまいました。(昼間は読書できないため。) 今日の日本を地方(九州)から切り取って見せたような内容でありながら、高齢者のフラッシュバックなどからも感じられるのは戦後、日本が豊かになり、戦争によって「命」の心配をしなくてもよくなった日本人が得た【自由】が、世代を重ねるごとに【業】となり、結果的には殺人犯となる話が自分には戦後に始まった自由であるがための【業】と歪んだ豊かさによる【業】を感じました。被爆地でもある長崎、そして、終戦後、朝鮮半島などからの引き揚げ船が多く入港した福岡市(博多)、その間にある峠が舞台となっていることに偶然性はないのかもしれないけれど、読み終わると関連性が浮かんでくるような気がします。殺人という普通ではない出来事の話でもあるのに、最後までフツーな展開が著者の非凡さと、読み手を広く想定した創作能力の高さなのでしょう。私はこの小説に、自由になりすぎた日本人の不自由な息苦しさを感じました。 ひとつだけ勘弁して欲しかったのは、登場人物の一人が某映画字幕翻訳家と同姓同名だったこと。これから著者による他の本も読みたいと考えていますが、清水俊二、高瀬鎮夫、岡枝慎二、野中重雄といった登場人物が出てきませんように。(笑)
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No.85:
(5pt)

圧しつぶされそうな今日の日本を描く

新聞連載小説ですが、連載しながらストーリーを考えて最後に辻褄合わせをした本ではありません。最初はバラバラに見える事柄が次第につながって最後に主題に行き着く見事な構成になっており、連載開始時に結末までの緻密な構想が立てられていたことがよく分かります。作者は題名に「悪人」と謎かけをして読者に「誰が悪人だったのか?」と考えさせる仕掛けになっています。答はあえて書かれていませんが、ヒントは被害者の父親がある若者に言った次の言葉です。「アンタ、大切な人はおるね?」、「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気分になっとる。・・・本当はそれじゃ駄目とよ」。結局悪人として逃避行していた男は大切な人を見つけて、自ら彼女を拉致したと名乗り出ます。少しだけ悪人であっても、大切な人を守ろうとする人間はもはや悪人ではないというのが作者の視点だと思います。 毎日何千人という人が失職してホームレスが増えている、年収200万円で一家を支えている人達が大勢いる、当然そこにはいろいろな犯罪も生まれ、それに巻き込まれる人も増えている、そのような現在の日本の状況をこの小説は象徴的に書いています。圧し潰されそうになって、もがきながら不器用に生きている人々への作者の温かい気持ちが伝わってきます。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.84:
(5pt)

人間臭さがいい。

久しぶりに泣けた作品。年齢を重ねたから感じる事なのか、登場人物皆がとても人間臭くていい。登場人物皆悪人なのか、そうさせる環境で生きて来たのか・・・綺麗事の多い小説の中で人間味のある人々の心にふと足を止めてみたい作品。「生まれて初めて人の匂いがしたっていうか・・」と始まる少年の言葉が今の世の中に重なるような気がした。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
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No.83:
(5pt)

リアリティー

分厚い一冊ですけれど、読むほどに入り込めます。瑣末なやりとり、感情を細かく細かく描いていて、何とも生々しいですね。自分が役に移りこんでしまうような感覚さえ覚えます。「悪人」という言葉そのものについて、読み終えたあと随分考えてしまいました。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X
No.82:
(4pt)

良作品です

人は愛なしには生きていけない。心の底に沈殿する愛の渇望に突き動かされて出会い系サイトで知り合った男と女が、運命のイタズラによってその歯車を少しずつ狂わせていく。 ワイドショーがセンセーショナルに報じる殺人事件の舞台裏で進行する家族たちの苦悩や葛藤が丹念に描かれ、作品の陰影をより深いものにしている。
悪人Amazon書評・レビュー:悪人より
402250272X

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