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悪の教典



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悪の教典

悪の教典の評価: 3.40/5点 レビュー 492件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.40pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全258件 161~180 9/13ページ
No.98:
(5pt)

ハスミン無双

痛快娯楽スプラッタとしてサイコパスの大立ち回りを楽しむことが主旨の本作に、多少の粗や抜け漏れが疵瑕たり得るものかよ! ハスミンというキャラクターには是非「和製ハンニバル・レクター」として成長してほしい。 四部作構成として執筆が予定されており、続く 「鴉たちの饒舌」 「ハスミン・ライジング」 「レッド・ドラゴンによろしく」 にも期待が高まる(嘘)。
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4163295208
No.97:
(4pt)

正直、読み疲れますが・・・

いよいよ、蓮見が生徒に手をかける下巻。
学校を密室化し、物語は一気に最後まで進む。
蓮見はどうなるのか?生き残ることのできる生徒はいるのか?

殺害シーンの連続の正直疲れるが、
結末読みたさに一気に読了。
いい意味、悪い意味の両方で、確かにすごい内容の小説だった。
ミステリー小説ファンであれば、必読の1冊であろう。
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4163295208
No.96:
(5pt)

人気教師

誰よりも信頼されて、豊富な知識を持ち教える力も高い。という理想的な教師。

しかし、本当な姿は誰よりも冷たく、いや、共感する感情がない悪魔だったのである。

持ち前の知識や人身掌握術で生徒の信頼を得る一方で、己の理想郷の障害になりそうなものは消すことに躊躇しないという面もみれて、対比があって良かった。

下巻に向けて気になる所で終了。
非常に面白いです。
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4163293809
No.95:
(5pt)

殺戮開始!

理想郷のために障害の除去を進める中で致命的なミスをしてしまう。 そのミスを見てしまった生徒を自殺に見せかけて、殺害をしてしまうと実行するが、それがバレそうになる。 この前、隠すのは無理と考えた結果、他の教師の犯行と見せかけて、クラス全員を殺害を決意する。 そして、文化祭に向けた泊り込みの準備の夜、殺戮を開始する。 生徒は生き残れるのか?最後まで、ドキドキです。 そして決着の果てに何が残るのか? 最高に面白かったです。 最高傑作です、
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4163295208
No.94:
(4pt)

面白かった

面白かったし、商品が届くのも早か
った
...☆4つかなぁ〜(笑)
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4163293809
No.93:
(4pt)

面白かった

面白かったし、商品が届くのも早かった
...☆4つかなぁ〜(笑)
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4163295208
No.92:
(4pt)

上下巻を読んでの感想です。

映画のCMで存在を知り、読んでみました。面白かったです。共感性の欠如とIQの高さが現代社会のシステムでは全て裏目に出ていてよく出来ているなと思います。ハスミンは序盤から異常な行動が見受けられ(ハンバーグやカラス撃退に灯油ペットボトル)、プロットも時間をかけて練られたんだろうと感心しました。普通の人は問題の解決に対話や暴力を用いますが、ハスミンはそこにナチュラルに殺害が含まれており、リスクとリターンが見合えば躊躇することなく実行する所が魅力的でもあり嫌悪感を抱く所でもあります。計画が失敗に終わったとたん次の計画を即座に実行する抜け目の無さもハスミンの異常さや知能の高さを際立たせていると思います。
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4163293809
No.91:
(4pt)

「鉄塔小説」を思い出した・・・

内容の空虚さ云々より、省略することなく丹念に一人一人を
淡々と「料理」する過程、心の動きを描写することに専念し
ています。
特異な主人公の主観からの描写が多いため、非常に感情的な
修飾を廃した、「客観的」「即物的」描写が際立っていますが、
それが物語全体の通奏低音を奏でています。
即物的に淡々と始末し客観描写していく文を追っていると、
ふと、延々とひとつづつ鉄塔をたどっていく「鉄塔武蔵野線」
を思い出しました。

普通の物語ならばたぶん隠喩的に導入されるであろう
二羽のカラスも、なぜか即物的に描写されるだけで、
あまりアイテムとしては効かせてない。意識的にか?
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4163293809
No.90:
(5pt)

学園の人気者であるボクの先生はサイコパス(精神異常殺人者)教師だった!

本書は、『黒い家』で知られるホラー作家・貴志祐介氏が『別冊文藝春秋』(2008年7月号〜2010年7月号)に連載され、11月10日より映画化(監督:三池崇史、主演:伊藤英明)公開されるサイコホラー小説である。

 不良生徒やモンスターペアレント、集団カンニングに淫行教師などの問題を抱える東京都町田市の晨光学院町田高校に勤める蓮実聖司(32歳)。彼は有能で職員の信頼も厚く、校内一の人気教師だが、裏では自分に都合の悪い人間を次々と殺害していくサイコパスだった…。

 私自身、著者の名前は存じていたが作品自体は『黒い家』を映画を観た程度だったのでこの度の映画化で話題作となっている事や内容に興味を持ち、初めて貴志作品を手にした次第である。
 貴志作品の愛読者にとっては物足りなさを感じるようだが、初めて読む私には十分面白く、続き(展開)が気になって一気に読めました。
 特に上巻である本書では、主人公・蓮実の冷酷なまでの物事の考え方や行動力、そして物語途中で回想される過去の殺戮(時には肉親や恩師をも手にかける)について読んでいてゾクゾクし、私の乏しい読書体験で申し訳ないが、大藪春彦著『野獣死すべし』の伊達邦彦、手塚治虫著『MW(ムウ) 』の結城美知夫、浦沢直樹著『Monster』のヨハン・リーベルトを重ねながら「蓮実聖司」という人物の行動を追っていた(上記に挙げたキャラクターたちも蓮実同様怖い男たちだが、回想での蓮実という男の人間性が明らかにされていく展開が最もゾクゾクした)。

 また蓮実以外にも生徒と不適切な関係を持つ養護教諭・田浦潤子、生徒想いで正義漢のある最年少の熱血数学教師・真田俊平、空手の達人で自他ともに厳格である体育科教師・園田勲、粗暴で低劣な人格を持つセクハラの常習犯でもある体育科教師・柴原哲朗、無気力で物静かだが得体の知れない本性を隠し持つベテラン数学教師・釣井正信、偏狭なまでにジェンダー教育に熱心でヒステリックな言動が目立つ国語教師・堂島智津子、芸術家らしい神経質そうな容貌だが黒い噂が取り沙汰される美術教師・久米剛毅、管理教育の権化で責任回避と隠蔽に長けている教頭・酒井宏樹、日和見の事なかれ主義者だがある教師から弱味を握られている校長・灘森正男…などなど 

 この上巻では、それぞれ何かしら問題を抱えた一癖もふた癖もある個性的な教師(やまたその生徒)たちの人物像もよく描かれており、物語の展開と相まって大変面白く読めました。これだけ多くの人物が登場するにも関わらず、混乱する事なくサクサクと読めたのは先に書いた人物設定がきちんとされているからだろう。こういうところを『外事警察』の麻生幾氏にも見習って欲しいと思う。
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809
No.89:
(4pt)

知人に勧められて読みました。正解!

上巻では、主人公の蓮見聖司、ハスミンの思い通りに物事がはこび、いいぞ!と思っていたのに、下巻の展開は許せない感じです。最後までうまく行って、タイトル通りになるべきではなかったのでは。

下手なミステリーみたいに結局、ここで犯人は詰めが甘く証拠を残してしまったのだよ。という落ちはどうなんでしょう。徹底的に最後まで突っ走るべきだったでしょう。こんなに簡単にばれたら、今までどうしてバレずに来たか知りたい。

そうしないと、ハスミン、前任校でも、今度の学校でも、卒業生を出すまで行かず、教員として中途半端なままだよ。いくら、授業が上手、生徒の心をつかんでいる、学級経営がうまく行っているといっても、1年もたたずに投げ出すなんて残念。知的レベルは高いはずなのに、この年まできて、まだ邪魔者は消すだけしか出来ず、こんな展開になるなんて。残念。

もっとも、作者としては、この展開にどうしても、もって行きたかったのでしょう。日本の学校が舞台ではどうしても無理があるなあ。

しかし、ここで終わってほしくないなあ。パワーアップしたハスミン、続編を待ってます。
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4163295208
No.88:
(5pt)

【ネタバレ注意!】これでいい!これ「が」いい!

読後、「あれ…?」と正直思ったが、蓮実という人物の経歴から
その結末(?)に至る筋道が私なりに納得できた。
きっと賛否両論だとは思うが、IQが高いサイコパス@「蓮実」故の
破綻ぶりは逆に私にはしっくり来た。
これこそが貴志祐介が作った「蓮実教諭」なのだろう。

人間としてあるものが欠落した人物が起こした凶悪極まる事件は日本でも
多く見られる。切断した母の首を警察署に持参した少年、また熾烈な
マインドコントロールにより身内の殺し合いを実行させるゲームマスター
を気取ったサイコ人間等々…

実際の凶悪犯は、ワイドショーで試みられる「犯罪をなぜ犯したか」
という分析を試みられても、ほとんどが推測の域を出ない。
専門家をしても無理なのかもしれない…と思ってしまうこともしばしばある。
言い換えれば、報道の如何によって一種のエンターテインメント化してしまう。

犯罪者本人に至っては、きっとその行動こそが適切だったはずだから必然的に起きた
事件であったものに対し、私たちが持っている社会通念や良識が犯罪者を糾弾する。
良識、共感このあたりまえの構造、思考を持たない人は確かに存在する。
しかし、蓮実のようなな犯罪を遂行する思考回路はきっと私たちには
理解不能であろう。犯罪者本人が自分の真実に基づいて理路整然と語ったと
しても。

でも私たちはどうしてその犯行に及んだのか知りたがり糾弾する反面、人間の
本質を画一的にしか考えない傾向がある。
その最たるものが、無意識(…といっていいのか)に性善説を信じている、
ということにつながるのではないのだろうか。さらに、
犯罪を犯す人間や巻き込まれた被害者は別の世界の住人だと
感じていることにも本書に気付かされた。

精神医学的な観点から理論的に犯罪者の心理描写をしつつも、
私たちが認識している「人間」ならでは思考回路では理解不可解な人間は
嫌悪の対象でもあり、野次馬的興味の対象でもある。

そしてたぶん状況により犯罪者自身ですら分析不可能な行動を見せつけ、そして
惜しげもなく完全無欠のかのようなサイコ・キラーでさえもあっさり
破綻に導く貴志祐介の手法に私はつい、のめりこんでしまう。
これを「ベタ」と言っていいのか。

出来過ぎたものほど胡散臭いことはない…というものを証明している
かのうように感じてしまう。だから私にとっては面白い作品だった。

と、同時に勝手にこの作品を解釈を書かずにいられない私はつくづく
ハスミンにあっさり殺害される凡人だと
自覚せざるを得ないのが、なんだか悔しくはある(笑)
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809
No.87:
(4pt)

クライム好きにはオススメ

クライムサスペンス好きにはオススメの、サイコパスの王道が主人公です。 サイコとサイコパスを混同したようなただの殺人鬼作品が多い中で、キッチリと絵に描いたようなサイコパスを知る事が出来ます。 サイコパスまたは、シリアルキラーとは?などで検索したら出てくる説明に、キッチリ符号します。悪の教典のサイコパスはIQが高く面白いです。 サイコパスが追い詰められるとどういう決断を下すかが映画でも全面に出たクラス一掃です。 海外ドラマのデクスターを好きな方なら読み出したら止まらないかと思います。デクスターも状況を掌握する為に走り回りますが、こちらは更に冷酷非情で爬虫類のような性格ながら容姿端麗で人気者というサイコパスです。 私は昼に読み始めてから止まらず、日付が変わる頃には上下を読破しました。 快楽殺人鬼のような気色悪い物では無いのでクライムの中でも不快の類ではないですが、日本人らしい終わり方だなと思います。欲を言えば、もっとサイコパスらしい結末が良かった。 あと、英語教諭という事でやたらと出てくる英単語と英文(和訳は記載無し)が若干ウザいですが、サイコパスの思考回路を知るには分かりやすく面白いです。
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809
No.86:
(5pt)

?も!もちゃんとある!!!

2011年度は「水魑の如き沈むもの」も「ふたりの距離の概算」も「謎解きはディナーのあとで」も「ツナグ」もあったのに「このミステリーがすごい!」の1位は本作です。作品紹介には「学校内の諸問題をリアルに描きながら、最悪の教師による殺戮劇がノンストップで描かれる」とあり1位にしている読書のプロのコメントも「超利己的な殺人鬼のワルっぷりに戦慄」とか「血みどろコメディが素晴らしい」とかで作者も「描きたかったのは学校」と語っているしそんなの本格ミステリーではないとパスしていました。11月10日に映画が公開されるので見る前に読もうと読んでみました。?(謎)も!(驚)もちゃんとありました!!!前半はちまちました小細工の積み重ねでまったり進みます。クライマックスとなるのは全12章中の9章10章のPM6:25〜PM10:20の攻防で「同じことを成功させた人間は、未だかつていないだろう」と本人も心の中でつぶやいている「究極のリセットは成功するか???」の謎は自分の知るかぎり本格ミステリー史上最大の普通の倒叙ミステリーの40倍のチャレンジです。力との対決は?技との対決は?知との対決は?PM10:14のラスト「どこかで、何か、致命的な失策をしたような気がしてならない」ってわー???なんだろー???これが本格ミステリーマニアの一番うれしいフレーズです。普通に皆殺しを成功させておわってしまったらただのバイオレンス小説です。?と!があってこその本格ミステリーです。11章での「ギャフン!!!」さらにもう一発「ギャフン!!!」12章での反撃の「ダッフンダ!!!」。?も!もこんなにあるのに「このミステリーがすごい!」ではなぜこのことを誰も指摘しないのでしょう???本格ミステリーに一番大切なことは純文学ではないのですから「人間が描けているかどうか」なんてことではなく「より大きな?と!があるか」です。本作には十分にあります!!!
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4163295208
No.85:
(5pt)

ちゃんとサイコパスを理解していないと恐怖が理解できないでしょ

このミス1位、週間文春ミステリー1位、山田風太郎賞、直木賞候補、など話題をさらった作品ですので、なんとなくご存知の方も多いかも・・・

アウトラインは、優れた知能をもち容姿端麗、生徒にも人気があり、保護者や同僚からも高く評価されている高校教師が主人公。しかし主人公は他人への共感能力が全く欠如したサイコパスであり、過去にも多くの事件を起こしているが頭脳明晰な主人公は罪に問われたこともない。そして、今の職場の高校でも次々と悲惨な事件を起こしていく・・・
というものですが、アマゾンのレヴューは上下ともに☆3つ平均と、受賞歴を考えると評価は割れている印象です。

なぜかなーと思って、他人のレヴューを覗き見ていると、サイコパスに対する理解が人によってまちまちだから起きているような気がします。
この本はサイコパスがどのようなものなのかしっかり理解していないと、なんの恐怖も感じず、頭のよいという設定の主人公がなぜあんな無差別殺人を場当たり的にしたのか、理解できないという不可解な状況に陥るのだと思います。
斯く言う私も初読時には同じ状況でした。
多くの賞を取ったことにもそれなりの意味があり、評価されるべき点が多くあったといえるのですが、作者の意図やサイコパスの意味を理解して読むのは正直なかなか難しいと思います。そういった意味で☆の評価が若干下がるのは否めないのですが、よく理解して再読すると、評価が変わり、私の場合は文句なく☆5つです。

サイコパスを理解したうえで、
サイコパスが学校という性善説にたったシステムに存在する恐怖、
サイコパスが窮地に立つときに、通常の人間ならば最も抵抗感のあるハードルの高い行動を何の感情も持たず、逆にもっとも合理的であると考えて突き進んでいく恐怖
これをを感じるのがこの小説の醍醐味かなあと。

一読してイマイチだと感じた人こそ、背景をよく理解して再読をしたら恐怖もわかると思います。
そして映画を見に行くつもりという人も同じくサイコパスとは何ぞやを一応理解しておくと一層たのしめると思います。
悪の教典Amazon書評・レビュー:悪の教典より
4163809805
No.84:
(4pt)

怪物外科医

ミステリー小説を読むのはじつに10年ぶりである。なぜ本書を読む気になったかというと、ピカレスクロマンとはいえサイコパスが主人公の作品とはどのようなものかしりたかったからだ。

主人公の蓮実聖司は感情移入や同情ができるキャラクターではない。が、一線を越える部分は別として、そこへ至る過程についてはさほど違和感なく理解できるように書かれており、
たいへん丁寧で緻密なストーリーである。連載ものだったせいかいくらか冗長に感じる面もあるのだが、じりじりとリニアに恐怖を増幅させていく手腕には感嘆する。

上巻の中に「外科手術的攻撃」という言葉がでてくるのだが、そこで思いだしたのが、ナチスで「死の天使」と呼ばれたヨーゼフ・メンゲレである。

メンゲレはアウシュヴィッツで恐るべき人体実験を山のようにおこなっていたが、背が高くハンサムで親切な人物であったそうである。ユダヤ人の子供たちと仲良く遊びながら、その後
その子たちを残酷な実験で犠牲にするといった異常者だ。一方クラシックのアリアを好み、人体実験の合間に口ずさんでいたと証言されている。

まるで蓮実聖司である。

蓮実はさしずめ学校という人体を使って、縦横無尽に実験をおこなう怪物外科医といった感じだが、実際の世界にもそのような人物(どころかメンゲレはもっとひどいが)がいたという現実を
考えた場合、本書には小説とはいえ気楽に読めない空気を感じる。その空気が読むにしたがって確実に濃く重くなってくるのだ。

下巻についてだが、「木の葉は森に隠せ」のたった一言で、クールなスリラーからホットなサスペンス&アクションに大転換させる手腕にまずは感心した。

ただクライマックスが、ハリウッド映画のスリラーもののラストでよくあるようなドタバタにならないか心配があった。で、実際そうなったのだが、ただのドタバタではない。けっこうリアルなのだ。
へたをするとスリルよりも独自の地味さと嫌悪感で、おもしろく感じない人もいるかもしれない。

ここで思いだすのが、33名が死亡した米バージニア工科大学の銃乱射事件。この事件で生き残った生徒の証言では、射殺された人たちはみなまったく騒がず黙って撃たれて死んでいった
のだという。犯人を刺激したくないからだ。よくあるドラマのように、銃をむけられてギャーギャーいうなど現実にはないということらしい。

本書での生徒たちも犯人に言葉こそ発するものの、ほとんどがつまらないほど静かに、そして大量に死んでいく。派手な内容ながらリアルさを感じてしまう所以である。

映画化されるものはもっと娯楽性を考えたものになるのだろうが、どう処理するのか楽しみである。

言葉狩りの問題が本書内に触れられているが、クレイジーを意味する「キ●●●」という言葉の必要以上のふせかたに、作者のこの問題への不満があらわれているようだ。けなし言葉なら
他の表現でもいいからである。自主規制されている大量の差別用語・不快用語にかぎらず、いろんな意味で現代のマスコミでは表現の自由がはっきり死んでいるため、本書の映画作品を
監督する三池崇史も解説で、表現者として感じるその不自由さを、いかにも不自由そうな表現でまわりくどくぶちまけている。

とはいえこの監督、これほどの異常人物を自由の権化のように慕い、憎むのでなく愛してしまってるようなのだが、いったい大丈夫か?

それと本書はいじめが主題ではないが、学園ものであることを考えると、ラスト近くにある「他人の痛みを想像できない人間は、本質的には、蓮実と何ら変わらない」という一文は、いじめを
する者へのメッセージだと私は感じている。

作品の重苦しい雰囲気を中和する最終章の清涼感(というか脱力感)はけっこう気にいった。
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809
No.83:
(4pt)

一気に読んだけどちょっと微妙です

今、悪の教典読み終わったところで感想です。上巻は意外と淡々としていて、これ面白くなるのかなあと思いながらちょっと我慢して読みましたが、下巻はわああああっという感じで止まりませんでした。一旦読者を引き付けると離さない所は、さすが貴志祐介と思いました。これからはちょっとネタバレです。ハスミンが何もかもコントロールしてて、生徒さんの反撃をまったく許さなかったという所がちょっと一方的すぎてつまらなかったです。蓼沼くんがもっと頑張ってくれるかと期待しすぎちゃいました。もしハスミンが再び帰ってくることがあったら、私的にはぜひ彼に対峙するすごいキャラの登場を期待します。
悪の教典 下Amazon書評・レビュー:悪の教典 下より
4163295208
No.82:
(4pt)

一気に読みたくなる

「クリムゾンの迷宮」や「黒い家」は面白かったが、「硝子のハンマー」以来、著者からは遠ざかっていた。

著者の得意分野である人間の負の側面を扱った小説。
やはり面白い。

が、スクールカウンセラーについての実態をちゃんと調べていないようだ。
スクールカウンセラーが学校で生徒個人に対してTATやロールシャッハなどを行うことはまずありえない。
どちらも2〜3時間はかかる代物だ。スクールカウンセラーの時給は東京都で\5,500。
とても割に合わない。
また、TATを使用する心理士自体がもはや過去の遺物となりつつある。
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809
No.81:
(4pt)

祝 映画化

まさか『悪の教典』が映画化されるとは驚き。 『新世界より』もアニメ放送開始で絶好調の貴志祐介ワールド この勢いでファンになった方々、『黒い家』と『クリムゾンの迷宮』『天使の囀り』も読みましょう。 やっぱ貴志祐介は恐いわ。 まだ『悪の教典』は可愛いほう。
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809
No.80:
(4pt)

感情がないわけじゃない

感情がないのに嫉妬心や復讐心って 感情あるやないかーい ってレビューに書いてる人いますけど
共感能力が欠けてるだけで 感情がないわけではない
喜怒哀楽はあるって本文に出てきてる
それだけ言いたかった
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809
No.79:
(4pt)

これはけしてホラーではない

まず、最初に言えるのは、これをホラーと思って読むと恐怖のかけらも感じられず肩すかしを味わうという事です。

この作品は、そもそもホラーとして書かれておらず、その点で同じ作者の作品である「黒い家」と比較する意味もありません。「黒い家」の場合、身近な日常に潜む非日常の恐怖、見た目は同じ人間でありながら全く異質な存在である「サイコパスの恐怖」をこれ以上ない筆致で描き切っており、更に言えば、サイコパスである犯人は誰かという点においてまでも、しっかりミスリードが引かれており、とにかく恐怖と意外性という点に徹底しています。

しかし、この作品では犯人もその心情も最初からほぼフルオープンになっており、ほんのいくつかの主人公の過去が明らかになるだけで犯人の意外さや、犯罪の異常さによって恐怖心を煽ったり、異常な事件が連続する中で「誰が犯人なのか」を推理想像する内容でもありません。

これはまずテーマのひとつとして「私たちの常識や尺度では測れない、見た目は同じ人間でありながら異質な存在との戦い」があり、それゆえにこの作品の主人公蓮見聖司は完全なサイコパスでありながら、同じサイコパスを描いた黒い家の菰田幸子とは全く異なるキャラクターで描かれています。

菰田幸子が周囲との協調すら全く意に介さないのに対し、この蓮実聖司は完全に世の中に溶け込もうとし半ばそれに成功しています。それゆえにこの男の脅威がより深刻であることを物語っており、ほぼ完全体に近いその存在をどうやって打ち倒すのかがテーマなのです。

その存在に近い例として、ジョジョの奇妙な冒険第四部の吉良吉影が一番近いでしょうか?見た目は同じなのに全く相いれない異質な存在として「寄生獣」の田宮 良子などもイメージ的に近いものがありますが、読んでいてその二人のキャラクターが浮かんできてなりませんでした。

私たちの身近にひっそりと身を潜め、徹底した擬態で周囲を欺きつつ静かに自らの王国を作り上げようとする、まるで感情のない昆虫のような合理性だけの存在。計算されつくした行動を身上とし、ひとたびその王国づくりを阻害すると判断されたものは家族であろうが恋人であろうが一切の例外なく冷徹に排除していく悪そのものの存在。そんな風に「どうやっても抗えない。どうやってもその存在を消すことが出来ない」絶対悪に抗うべく、か弱き存在が戦いを挑む流れが非常に面白く読めました。また、けして共感できない存在なのに何か惹かれてしまう… そういう意味では前述のジョジョの奇妙な冒険に出てくるディオを彷彿させるようにも思います。

また、あえてサイコパスである主人公の心情がことさらに描かれますが、そのひとつひとつが自分自身の心の中で、日常的に浮かんでは消え、浮かんでは消えている様々な憎しみ、殺意、怒りであり、本当に薄氷のような良心がそれを止めているんだと再認識させられました。自分の中にいる蓮見聖司に気づかされ、うすら寒い恐怖に捕らわれますが、それもまた作者のテーマのひとつであり狙いなのだと思いました。

以上の点に加え、上下巻という長い話にもかかわらず、一気に読まずにいられない不思議なパワーと面白さを内包していて非常に楽しめました。続編を匂わせる終わり方なのでぜひ続きが読みたい作品です。
悪の教典 上Amazon書評・レビュー:悪の教典 上より
4163293809

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