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白墨人形



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【この小説が収録されている参考書籍】
白墨人形
白墨人形 (文春文庫 チ 13-1)

白墨人形の評価: 7.00/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

白墨人形の感想

 
 1986年、まだ少年だった僕たちは月並みな日々を送っていた。 友人達とやんちゃもしたし、喧嘩もした。 甘酸っぱい恋に憧れることもあった。 大人たちの難しい話は無視したし、友達の体に付いた痣の意味もまだ分からなかったけど、それなりに平穏な日々を送っていたはずだった、あの時までは。 事件の始まりはいつだったのか、僕が移動遊園地で凄惨な事故を目撃した時なのか、友達の兄貴が溺死した時? それともチョークの落書きで伝言を始めた時?
 2016年、42歳になった僕に投げられた言葉。 誰もが間違っていたし、誰もが秘密を抱えていたあの事件の真相を明らかにする時が来たのか。 「あの事件の真犯人を知っている。」

 スティーヴン・キング推薦という強力な後ろ盾を以て日本でも刊行された本作。 スタンドバイミーを彷彿とさせるようなティーンエージャーを中心とした物語。 彼らは年相応に未熟であって、それ故に事件の大きさも方向性も変わってゆく。
 点と点が結ばれて隠された線を探偵役が見つけ出すようなかっこいい物語ではない。 色々な事件が起き、過去でも未来でも、殺人も起きたしそうじゃない事件も起きていた。 それらのほとんど線は2016年に回収される。 振り返れば些細なことだが当時の未熟な少年たちと大人たちの蟠りの前では有耶無耶になった。 
 <本物の友達じゃないから。子供のころから知っているっていうだけ。> そう、確かに彼らは親友ではなかった。 秘密を共有するには身分が違い過ぎた。 ただ近所に住んでいるだけでは明かせない事実あった。 もし彼らが強固な絆で結ばれた親友同士で合ったら事件はこんなにも複雑に残酷にはならなかったのかもしれない。 でも小学生時代の友人関係なんてそんなもんだと思う。
 複雑な人間関係、身分違いの個性的な人物たちを多彩に書き分け最終ページに恐るべき秘密を隠してみせた本作。 キング氏のサスペンスな作風が好きなら一読の価値ありです。

りーり
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No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

スタンドバイミー的なミステリで面白い

1986年と2016年が交互に描かれる。2016年は大人になった主人公の視点で語られて、1986年はその主人公が12歳のころの出来事が語られる。小さな町に暮らす仲間たち。
何でも話し合い、時には感情のままにぶつかり合ったりする仲間たち。そんな彼らたちの毎日と冒険。トラブルと悲惨な事故。こういったところが情感豊かな筆致で
描かれていて否が応でもスタンドバイミーを思い出す。それぞれの家族とその生活。きれいごとだけではない生活の様子も丁寧に描かれていて物語に入りやすい。
大人になった主人公もそのまま育った町で教師の職に就いている。とはいっても明るく爽やかでしっかりとした人物とはなっていない。40歳を過ぎても独身で
古い家に一人暮らし。酒を飲み過ぎる時もあり決してカッコいい男ではない。それはやはり少年時代の事を引きずっているせいでもあると描かれている。
そんな彼のところに届いた一通の手紙。それがすべての始まりだった。そして一人の旧友が合いに現れあの時の真犯人を知っていると告げる。
その旧友もそのあと死体となって発見される。登場人物すべてが生き生きと描かれ物語世界を作り上げている。ちょっと掘り出し物と思わせるミステリだ。
最後のオチは罰の意味もあってそう書いたのだろうが物語を締めくくるエピソードとしては最良だろう。一気読みに近い感じで読み終えたので面白くなかったとは言えない。

ニコラス刑事
25MT9OHA
No.1:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

「スティーブン・キング強力推薦!」は嘘じゃない

イギリスの女性作家のデビュー作。スティーブン・キングの「スタンド・バイ・ミー」のほろ苦さを持つミステリーである。
1986年、イギリス南部の田舎町に暮らす12歳の少年エディは、4人の仲間たちと森で遊んでいて少女のバラバラ死体を発見する。被害者の少女は、夏休みに移動遊園地で事故にあったときにエディが助けた美少女だった。そのときエディと一緒に助けたのは、新任教師のハローラン先生だった。アルビノで白墨のように真っ白なハローラン先生に教わってエディたちは、白墨人形の絵を使った秘密の伝言ごっこに興じていた。
遊園地での事故から少女の殺害までの間に町では、中絶手術を行うエディの母の診療所に対する反対運動が起き、仲間のひとりの兄が川で溺死し、警官の娘の妊娠騒ぎがあり、大人の社会が反目と対立を深めるに連れて、仲が良かった5人の間にも亀裂が入り、いつしかバラバラになって少年時代が終わってしまった。
それから30年後の2016年、地元の町で教師になっていたエディの元に白墨人形の絵とチョークが送られてきたことから、エディは少女殺害事件の真相を探り始めることになった。
1986年と2016年を行き来しながら薄皮をはぐように事件の真相が明らかにされて行くのだが、シーンが変わるたびに新たな発見があり、関係者の隠したい、忘れたい過去を突きつけてくる残酷さに、読者は戦慄する。そして最後の最後、読者は思いがけない衝撃に襲われることになる。
スティーブン・キング読者にはもちろん、ホラー要素が少ないので広く一般のミステリーファンにもオススメできる、良質なエンターテイメント作品である。

iisan
927253Y1

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