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八月の博物館



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【この小説が収録されている参考書籍】
八月の博物館
八月の博物館 (角川文庫)
八月の博物館

八月の博物館の評価: 5.50/10点 レビュー 2件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.50pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

作者の苦悩が伝わってくる難解小説

分厚い小説でした。何しろ600ページを超える長篇です。そのため満足感が相当得られました。ページ数を確認せずAmazonで注文したので、こんなにも重厚な本だとは思いませんでした。
本作はSF要素を孕んだ奇書だといえます。あらすじとしては、主人公である少年が、学校帰りに、いつも通らない道に寄り、不思議な博物館を訪れます。そこはミュージアム・ミュージアムと紹介されるとおり、世界各地、しかも時を超えて昔のミュージアムの作品を見られるという、魅力的な場所です。そこで出会った少女と冒険をします。一方、古代エジプトの考古学者のパートも並行して描かれます。
そのエジプトの蘊蓄が凄まじかったのが、私に難解に感じさせた一つです。聞き馴染みのないカタカナ語が並べられ、元々エジプトの地理やら歴史やら知識がないと、頭に入って来づらいです。作中、二度ほど藤子不二雄先生の「恐竜の話を描くんだったら、恐竜博士になるくらい恐竜について勉強しなさい」という名言が引用されており、それを忠実に守っているのだとわかります。
そして、もう一つのパートは、とある作家の執筆風景です。物語の前半では執筆パートは少なめですが、後半になると執筆パートが増えていきます。
この物語を奇書だと表現したのは、これらのパートの構造です。あまり語るとネタバレになりますし、読み終えて消化不良の私自身、まだ物語の仕組みがイマイチ理解できていません。ただ、作者が、物語の創作そのものに苦悩して書き上げたのだろうことは伝わってきました。研究者というバックグラウンドがあるだけに、頭の構造が凡人には伝わりづらい難点がありました。

ただ、作中の主人公の夏休みの風景は昔懐かしさを思わせる美点があります。推理小説を読んだり、友人と雑誌を作って推理小説の共作をしたり、充実した夏休みを過ごしていて羨ましかったです。私の小学生時代の夏休みなどボケっとしていたので、もう少し遊んでおけば良かったと、しみじみ思いました。
どうして博物館に不思議な力があるか、科学的に説明もされていてプラス評価にもなります。

タイトルから子供向けのファンタジー作品だと侮るなかれ、読解困難な難解小説です。ラノベ過ぎるのも良くないですが、読者を置いてけぼりにするような設定も考えものだと思いました。
設定はおもしろいのに巧く活かせなかった惜しい小説という印象です。複雑な小説や、古代エジプトについて造詣の深い方はぜひ。

蛇足ですが、文中に、国語の問題について、筆者が何を主張したいかわかるわけないという意見に、大きく賛同しました。
蛇足ついでに、河出文庫から新しく発売された本作を読んだのですが、482ページに、亨(主人公の名前)は"美学"の両手を振り払ったとあり気になりました。"美学の両手"なんて表現があるのだろうかと疑問に感じ調べても出てきません。ひょっとしてこれは、"美宇"という少女の名前ではないか、誤植ではないでしょうか。

bamboo
NU17PFML

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