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キング・オブ・クール



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【この小説が収録されている参考書籍】
キング・オブ・クール (角川文庫)

キング・オブ・クールの評価: 7.00/10点 レビュー 2件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

むしろ原文で読みたい

『野蛮なやつら』が還ってきた!
前作で華々しい最期を遂げた彼らの続編はその事件の前日譚。流石に前作に見られたあの鬼気迫る短文と固有名詞の乱れうちのような文体は鳴りを潜めているが、それでも彼ら3人を語るオフビートテイストな、ちょっと特異な文章と短い章で刻んでいくストーリー運びは健在。ちなみに第1章が一行で始まるのもまた同じだ。

その第1章が前作では「ざけんな!」であったのに対し、今回が「あたしとしてよ」だったのには思わずニヤリとしてしまった。
日本語では解らないが、これは前作が“Fuck you!”であり、今回が“Fuck me.”と対語になっているのだ。もうこの1章から一気に彼らの世界に引き戻されてしまった。

今回は二つの軸で物語が展開する。1つは現代の(物語の世界では2005年)ベンとチョンとOの物語が、もう1つは1967年、フラワー・ムーヴメント華やかな時代でのサーファー、ドクが相棒のジョン・マカリスターと共にスタンとダイアン夫妻を交えラグーナに後に“連合”と呼ばれることになる一大麻薬コネクションを作っていくオフビートなビルドゥングス・ロマンが繰り広げられる。

この2つの時代を行き来する物語の仕掛けが解ってくるのは物語の半ばを過ぎてから。ドク、ジョン・マカリスター、スタンとダイアン夫妻、そしてトレーラー生活からその類稀なる美貌でのし上がってきたキムたちが実はベンとチョンとOに密接に関わってくるのが見えてくる。

いわゆる一般市場では市場競争が原則であり、他社の製品よりもシェアを拡大するために品質の追及を行うのが通常だが、麻薬市場は自分たちのシェアを拡大するために常に裏切りと買収、そして自分の地位を脅かす者の排除と非常にネガティヴだ。

これが麻薬が非合法の品物であることに起因しているのならば、オランダのように合法化すればこのような警察と麻薬カルテルとの永遠のイタチごっこは、同業者たちの殺戮の連鎖はもしかしたら終わるのかもしれない。

さてウィンズロウ読者には嬉しいサーヴィスが。
なんとボビーZとフランキー・マシーンが客演するのだ。ボビーZはまだ伝説を作る前の姿でドクの“連合”の一員として、フランキーはドクが組もうとしたメキシコ・マフィアの用心棒として、そしてジョンにドクを殺す方法を教える教師として。

しかし最近のウィンズロウは麻薬をテーマにした作品が多い。しかもそれらは常に血みどろの惨劇になる。また麻薬は関係ないかと思われた作品でも麻薬が絡むことで昏い翳を落とす。『犬の力』を構想中に得た麻薬業界の知識と麻薬捜査の現状の虚しさが作者に怒りを与え、もはやライフワークの感がある。

ファンの1人としてはあまり麻薬に固執せずに物語のアクセントとしてこれからも面白い物語を紡いでほしいと願うのだが。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

南カリフォルニア40年史

「野蛮なやつら」の三人、が主役だが、今回は彼ら三人の家族史と南カリフォルニアのヒッピーから現代に至る反体制的気質および大麻から始まる麻薬戦争の歴史が絡む、40年の物語になっている。
ベンとチョンが運営している大麻製造販売組織が商売敵から妨害を受け、反撃に出たところ、麻薬取締機関をも巻き込んだ、組織の存亡をかけたトラブルにまで発展してしまう。ストーリーのメインはベンとチョンによる戦いだが、その背景にはベン、チョン、Oの家族の歴史が隠されていた。
ヒッピー文化に陰りが見え始めた1960年代後半からの40年、南カリフォルニアでは、反体制の象徴だった大麻はLSD、コカインへと変化し、それを扱う者もヒッピー崩れやサーファーから犯罪集団、メキシコのカルテルと組んだ国際麻薬密売組織へと変化して行く。その過程で、かつてのヒッピーやサーファーがどのような変貌をとげてベン、チョン、Oにつながって行くのかが読みどころ。ボビーZ、フランキー・マシーンなど、ウィンズロウの他の作品の登場人物が友情出演で顔を見せるのも、ウィンズロウ・ファンには楽しめるポイントだろう。

iisan
927253Y1

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