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栄光なき凱旋



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栄光なき凱旋の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

祖国とは血なのか、地なのか

2年半にわたる週刊誌連載を加筆改稿した、単行本上下で1200ページを越える超大作。太平洋戦争の開始をハワイとロスで迎えた日系人青年たちの苦悩と生き方をダイナミックな構成で描いた社会派の大河ドラマである。
ロスのリトルトーキョーに住む日系二世で、同じ女性を愛してしまった二人の青年。片や比較的恵まれた環境にあり優等生の好青年として知られたヘンリー、それとは対照的に環境に恵まれず社会をすねた生き方を貫いていたジロー。その微妙な関係は、日本による真珠湾攻撃をきっかけに後戻りできない亀裂を抱えることになった。ある事情で殺人を犯したジローは、日本語能力の高さを買われて米国陸軍情報部に語学兵としてリクルートされてロスを離れ、太平洋戦線に送られる。アメリカ政府による日系人強制収容に遭遇したヘンリーは、日系人の権利・立場を主張するため兵役に志願し、陸軍に入隊する。
一方、奇襲を受けたハワイでは、大学生活を満喫していた日系二世のマットが父親とともにスパイ容疑で拘束され、マットはすぐに釈放されたものの父親は拘束され続けた。自分はアメリカ人であることを証明したいという思いに駆られたマットは、父の釈放の助けになれればとの願いもあり、同級生たちと日系人部隊に加わることにした。
この三人を中心に、祖先の国・日本と戦火を交えるアメリカ軍に加わった日系人たちの苦悩と戦場での活躍が描かれて行く。自分が背負うべき祖国とは父母の国・日本なのか、生まれ育ち国籍があるアメリカなのか、永遠に正解が見つからない難問が若い日系人を苛み、疲弊させて行く。そして終戦。圧倒的な勝利を収めたアメリカで勝ったといえるのは国家なのか、国民なのか。国民の中に日系人は含まれるのか。
非常に重いテーマを真摯に、しかも高度にエンターテイメントとして仕上げている作者の力量に感嘆した。週刊誌の連載故にやや冗漫な説明が重なるところがあるのだが、そんな些細なことは忘れさせる力強い作品である。
国家と国民の関係に少しでも関心があれば、ぜひ読むことをオススメする。

iisan
927253Y1

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