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バトル・ロワイアル



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バトル・ロワイアルの評価: 7.00/10点 レビュー 8件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1~4 1/1ページ
No.4:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

世紀末が生んだ時代の仇花

当時角川ホラー大賞に応募し、最終候補まで残るものの、審査員の不評を買い、落選したところを太田出版にて出版され、大いに話題になり、映画化もされた曰くつきの作品、とここまでの事情を知らない人はあまりいないだろう。
その後映画はパート2も作られ、そのノヴェライズは杉江松恋氏の手によってなされた。つまり本書の作者高見広春氏による作品はこの作品のみなのだ。

そんな曰くつきの作品の内容は総勢42人の殺戮ゲーム。そんな群衆劇の中で中心となるのは七原秋也と中川典子の2人。
秋也はリトルリーグで天才ショートとして名を馳せたが、ロックにのめり込んで野球を辞めた、いわゆるクラスでもモテる子。中川典子は彼に想いを寄せる女の子。

そして彼ら2人を中心に三村信史、川田章吾、桐山和雄、相馬光子、杉村弘樹らが中核として物語を彩る。

三村信史は七原が唯一一目置いている男。プレイボーイだが世の中の仕組みを知り、秋也の目を開いてくれる。

川田章吾はクラスの誰とも接しないが体中に傷のある謎めいた男。しかしプログラムで秋也と典子と関わるうちに彼が以前の学校でプログラムに参加し、生き残った男だと知る。そのゲームで彼は親と恋人を失い、この国のシステムをぶっ壊そうと企んでいる。

桐山和雄は頭もよく、スポーツ万能で喧嘩も強く、しかも町の名士の息子で全てを手に入れた男。しかし彼の心はいつも空っぽで満たされない空気に満ちており、自らこのゲームに乗り、容赦なくクラスメートを殺していく。

相馬光子もまた幼少時のトラウマから心を失った女。妖精かと見紛う美貌の持ち主で人の弱さにつけ込んで相手を油断させ、次々とクラスメートを殺していく。それは彼女にとって奪われるよりも奪う側の人間になるために必要な行為だった。

杉村弘樹は秋也が認める男の中の一人。彼は一人の女子を探すため、ひたすら島内を駆け巡る。それは自分の想いを伝えるために。

とまあ、キャラクターそれぞれは個性があるものの、正直云って非常に稚拙だ。本当に素人が書いた文章で、話、設定ともに実にマンガ的。いや文字で書いた漫画を読まされているような気になる。

特に42名の中学生に個性を持たせるために“天才ショートストップ”や“第三の男”なる綽名を付けたり、感情の欠落した人間を設定したり、苦心しているのが解る。
まあこれは法月綸太郎の『密閉教室』の時もそうだったからどうしてもこういったクラス全員を対象にした物語と云うのは一種戯画的にキャラクター設定をせざるを得ないのだろう。

42人の男女入り混じっての孤島での殺し合い。そのゲームに参加する者の動機、殺意は様々だ。
さっきまで友達だったクラスのみんなを信じ、合流して政府の手下を撃退しようと企む者。
誰もかれも信じられなくなって終始怯えている者。
みんなを信じ、殺し合いを止めようと呼びかける者。
一人になるならいっそのことと愛に殉じる者。
自分がやらなければ殺されると恐怖心から殺戮に走る者。
現状を打破しようとシステム自体を壊そうとする者。
そして殺戮に自分のアイデンティティを見出し、修羅道に堕ちる者。

そして中学生が無人島で殺し合うという実に荒唐無稽な話を成立するために作者は日本ではなく大東亜共和国という戦前の軍国主義国家を髣髴とさせる国を設定している。この共和国では準鎖国政策を取って欧米の物の輸入を制限しており、逆に中国をかつての満州のように固有の領土としている。

そしてこの作品の主題である「中学生が無人島で殺戮のゲームを繰り広げる」のはプログラムと呼ばれる、全国の中学3年生のうち無作為に選ばれる50学級によって行われる共和国の専守防衛陸軍が防衛上の必要から行っている戦闘シミュレーションと云う設定。防衛上の必要という、どんな必要性なのか理解不能の設定によって成り立っている。

つまりこのような抑圧された国家の統治下で無理やり殺戮を強いられる中学生たちが国に対して叛乱を起こすまでの人間讃歌というのが本書のテーマなのだが、中学生が無人島でクラスメートを殺し合うというあまりに煽情的な内容が先走り過ぎている感は否めない。この小説にはそのアクの強さがどうしても先に立ってしまう。

本書のように複数の人が限定された場所で殺し合いをするという小説は他にもある。例えば稲見一良氏の『ソー・ザップ』などがその典型だが、味わいは全く違う。『ソー・ザップ』には最強の名を賭けて戦う男の矜持や美学が盛り込まれていた。
しかし本書では単なるゲームとしての殺し合いとしか捉えられない。それはやはり中学生が殺し合うという設定と国が率先して教育の一環として行っているという胸のムカつくような荒唐無稽さにあるのだろう。

恐らく作者自身もそれには自覚的で「やるならとことんB級で」といった気概も感じられる。それに乗れるか乗れないかで本書の感想や物語への没入度は全く異なるだろう。

奇しくも子供が物語に関わる作品を連続して読むことになった。
父親の若き日にタイムスリップした息子が将来の道へと導く『時生』、わが子を虐待せずにいられない刑事が失踪した息子を死に物狂いで追いかける『楽園の眠り』、そして中学生が殺し合う本書。
どんどん親子の絆が弱くなり、また人一人の命が軽くなっていき、娯楽と呼ぶにはあまりに心が荒んでしまう物語になっているのが偶然にしては怖すぎる。

ちょっとここいらで純粋に愉しめる小説に当たりたいものだ。
しかし話題先行型だが本書のような作品が100万部も売れたとは、刊行された1999年とはまさに世紀末だったのだなぁ。いや世紀末だからこそこのような退廃的な作品が受けたのかもしれない。
まさに時代の仇花として象徴的な作品だ。


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Tetchy
WHOKS60S
No.3:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

バトル・ロワイアルの感想

「中学生がクラスメイトと殺し合いをする」
この過激な設定に興味、関心を示す人は意外と多いのではないかと思います。
確か残虐な事件の低年齢化が問題となった時代だったかな、とかその時代背景なども考えつつ読み始めたのですが、悪人として描かれているのは完全に大人の方ですね。

「悲惨な状況下におかれて人間はどう生きるか」
が主眼になるのかと思いきや、まず(作者にその方面に知識がないのか)サバイバル的な要素は皆無。
食料も薬も、見つけたもの勝ちではあるが、調達しようと思えばできるのである。

「自分も同じ状況になればどうするか」と多分殆どの読者が考えるでしょう。
そんな中、「逃げる」か「受け入れる」しか選択しない登場人物たち。
ここでいう「逃げる」とは、殺されないように逃げ惑う事であり、「この理不尽なゲームから何とか脱出を図ろうとする者」が殆ど現れないのである。
事務局を狙おうとしたのもわずか一人だけ。しかも中盤で死んでしまうし。
頭を使おうとする生徒が少ないと感じたのだが、人間追いつめられると考えることをしなくなるというのだろうか。
ちょっと有り得ない。
また、物語を進行させるという意味で必要なのも分かるのだが、ターミネータみたいな奴が一人混じってるし・・・

登場人物はクラスメート42名。
その全ての登場人物について、その死亡時の状況が描かれており「知らない間に死んでいました」という人物がいない。
そりゃこれだけページ食うわ、である。
オタクがいたり、オカマがいたり、とそれなりにキャラを描こうとしているのだが、キャラに合った思考を元にゲームに挑むという事をしていない。
これはキャラであってキャラでない。

こういうのが好きな人も多分いるだろう。だからこそ映画化もされた訳で・・・
ただ読み物としてはどうなのだろう。
何か残るだろうか。

と、ここまでボロカスに言ってきたが、正直結構楽しんで読めたかな・・・と。
ただ映画は見る気しないなぁ。
こんなの2時間や3時間でまともに表現できるわけがない。

梁山泊
MTNH2G0O
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

バトル・ロワイアルの感想

物語の設定にマッチした独特の文体が大きな魅力です。
また、キャラクター全員のいかにも人間的な人物像の書き方がこのジャンル特有の安っぽさ、安直さを和らげます。
著者は、他の作品も読んでみたい作家の一人です。

判子
9NSL6FZ2
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

バトル・ロワイアルの感想


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きらきら
TBM75Q0U

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