うらぶれた漁師町浦粕に住みついた“私"の眼を通して、独特の狡猾さ、愉快さ、質朴さをもつ住人たちの生活ぶりを巧みな筆で捉える。

長崎で最新の医学を学び、江戸に戻った保本登は、突然小石川養生所に呼び出され、見習い勤務を命ぜられた。

生誕100年。いま、この時代だから、山本周五郎の世界。

居酒屋でいつも黙って一升桝で飲んでいる浪人、松村信兵衛の胸のすく活躍と人情味あふれる子育ての物語『人情裏長屋』。

攻撃を受けた時は、すぐに援軍を送るゆえ使を送れ―主君伊達政宗から白石城の留守を任された浜田治部介と五十一騎。

賄賂政治の横行した天明飢饉の時代を背景に、強力な政治経済改革を断行する老中田沼意次と、反対派松平定信の権力闘争を描く歴史長編。

安宿で妻と暮らす浪人の伊兵衛は、学問から武芸まで器用にこなす。

着任から解任まで一度も奉行所に出仕せずに、奇抜な方法で藩の汚職政治を摘発してゆく町奉行の活躍ぶりを描いた痛快作『町奉行日記』。

映画『椿三十郎』の原作「日日平安」を収録。 その他の収録作品。

長年対面しつづけた宗教的課題を取り上げ、“現代の聖書”として世に問うべく構想を練りながらも絶筆となった現代小説

生れついての放蕩がやまずに勘当され、“やぶからし"と自嘲するような前夫のもとに、幸せな家庭や子供を捨ててはしる女心のひだの裏側を抉った表題作。

旗本の次男、中藤冲也が余技として作る端唄は、独得のふしまわしで江戸市中のみならず遠国でももてはやされた。

平凡な郊外の町に、災いは舞い降りた。熱に浮かされ、痙攣を起こしながら倒れる住民が続出、日本脳炎と診断された。

自分の出生の秘密を知った大炊介が、狂態を装って藩の衆望を故意にうらぎらねばならなかった悲劇を描く表題作。

御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。

幼い恋心で男との約束を交わしたおせんは、過酷な運命に翻弄される。

藩の名刀を奪い、役人を斬って薩摩藩に逃げ込んだ侍を上意討ちにする命をおびた矢作次郎八と岡田久馬。

宵節句の宴で七重は隣家の出三郎の袂に艶書を入れる。

岡っ引上がりの半七老人が、若い新聞記者を相手に昔話を語る。

乳呑み児をかかえた家来と出奔した妹を斬るために遠国まで追っていった兄は、みじめな境遇におちながらも小さな幸福にすがって生きる妹一家と出会う。

何者かによって父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』。

城代家老の“御意討ち”を命じられた新八郎は、直に不正を糺すが、逆に率直な説明を受け、初めて真実を知る。

人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。

藩中きっての臆病者と評判をたてられた若侍が、それを逆用し奇想天外な方法で誰も引受け手のなかった上意討ちを果すまでを描いた『ひとごろし』、“無償の奉仕”という晩年最大の命題をテーマに著者の人間肯定がみごとに定着した『裏の木戸はあいている』をはじめ、戦前の作品

娼家に働く女の一途なまごころに、虐げられた不信の心が打負かされる姿を感動的に描いた人間讃歌「つゆのひぬま」等9編を収める。

江戸の大火ですべてを失いながら、みなしご達の面倒まで引き受けて再建に奮闘してゆく大工の若棟梁の心意気がさわやかな感動を呼ぶ表題作、藩政改革に奔走する夫のために藩からの弾圧を受けつつも、真実の人間性に目を見ひらいてゆく健気な女の生き方を描く『花筵』、人間はど

人の温もり、生きる誇りを描く山本周五郎の名作短編をオリジナル編集。

倒幕に揺れ動く幕末、若者たちは国の為に何をすべきかを模索していた。

枯野の襖絵に点睛を加えるために、初めて会った芸妓に野原で扇を落させる流れ絵師。

家のために働きつめ、挙句死んでしまった、たった一人の父。その晩、母は別の男との逢瀬を楽しんでいた。

身分のちがいを理由に大名の姫から絶縁された旗本、五橋数馬は奇抜な方法で出世を試みる。

妹に対して道ならぬ行為をはたらき、それを悔いてグレていった兄の心の軌跡と、思いがけぬ結末を描く『あんちゃん』。

十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は実は殺人―。警視庁に入った一本のタレ込みで事件が息を吹き返す。

時代小説の名手、山本周五郎が描いた時代小説。人間は条件に左右されてはならない。

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。

華麗なる財閥一族の没落を描く、山本周五郎の隠れた名作 日本屈指の財閥・御池家の御曹司に生まれた康彦は、出生に関する秘密を抱え、不遇な青春時代を過ごしていた。

武家の法度である喧嘩の助太刀のたのみを、夫にとりつがなかった妻の行為をめぐり、夫婦の絆とは何かを問いかける表題作など9編。

江戸中期の尊王論者、山県大弐と出会ったことから藩の内紛にまきこまれた二人の青年武士の、友情の破綻と和解までを描いた初期の中編「夜明けの辻」。

散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ 細川ガラシャ玉子の辞世の句 本能寺の変のあと、明智光秀の娘・玉子は、嫁ぎ先の細川家で匿われキリスト教に帰依、洗礼名ガラシャを得た。

一九二〇年創刊の「新青年」は、江戸川乱歩をはじめ数多くの作家を輩出した名雑誌であり、初代編集長の森下雨村は日本の探偵小説の生みの親と称される。

どんな激戦に臨んでもいつも生きて還ってくるために、臆病者とさえ誤解されながら、なおも生きつづける兵庫源八郎。

顔も見知らぬ許婚同士が、十数年の愛情をつらぬきとおし、藩の奸物を討って結ばれるまでを描いた『朝顔草紙』。

ふとした不始末からごろつき侍にゆすられる身となった与之助が、思いを寄せていた娘から身を引き、ごろつきを斬って切腹するまでの心の様を描いた表題作。

警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。

死刑判決を免れた殺人犯たちの家族が、次々に殺される事件が起きた―。

側室一派の謀略により廃嫡され、幼時より国許で幽閉同然の身となっていた 大吉田藩の正嫡順二郎は美々しくも無力な若君に育つ。

東京からの訳あり転校生・水里あかね。

幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた“武道もの"の典型「松風の門」、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く“下町

孤高の検事の気概と執念を描いた、心ふるわすリーガル・ミステリー! 検事・佐方貞人は、亡くなった実業家の書斎から高級腕時計を盗んだ罪で起訴された男の裁判を担当していた。

武田家再興ー百三十余年にわたる悲願に翻弄される甲州甘利郷のみどう一族。

葉村の働く書店で“鉄道ミステリフェア”の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。