領主館の花嫁たち
- 怪異 (278)
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2年前に出版された本の早々の文庫化で、ブランドの最後の作品なので、読み進むにつれて、ストーリーの内容よりも、これでブランドとお別れ、というセンチメンタル感が強くなってくる。ミステリーではなく、型どおりに進行するゴジック小説なので、ブランドお得意の、超意外な結末にはならないが、まずまず面白く読める。幽霊がコミカルで、あんまり怖そうでないのは、わざとそうしていると思うが、これだと、簡単に退治できそうにも思えてしまう。花嫁たちが、とりつかれるのは、お友達が欲しかったからだろうか。なお、単行本のほうには4点ほどレビュー(どれも★★★★★)が載っているが、どれもいいレビューと思う。 | ||||
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幽霊屋敷ものでは最後まで本当に怪異が起こったのかどうかさえわかりづらい作品もあるため、読む前はこれもその類かもしくは怪異にみせかけた推理ものかなと思っていましたが、これ、出ます。めっちゃ思いっきり出ます。 しかし代々の住人たちをさんざん苦しめてきた邪悪な存在にもかかわらず、意外に人間くさい。変な話作中でそのキャラクターが他のどの登場人物より生き生きと振る舞っているように見えるほどに。それが逆に怖くもあるのですが。 なので正統派ゴシックホラーな構成かつ全体的には悲惨で暗く重い話でありながら、読み終わる頃には彼等と別れるのが少々寂しくなってしまいました。どうしようもなく愚かだったり短慮だったりする人間の登場人物も、本質的には悪人ではない人物ばかりなのでどんな愚かな選択をしても憎むことができません。 最初から最後まで、読み始めたら一気でした。読後感では『嵐が丘』にいちばん近いかも。 | ||||
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クリスチアナ・ブランドの遺作『領主館の花嫁たち』は、愛を失い憎しみに囚われた人々の叫びが描かれている。 舞台は、1840年の英国 400年の歴史をもつアバタールの荘園屋敷。領主ヒルボーン家の美しい双子の姉妹 クリスティーンとリネスの家庭教師として、アリス・ティターマン=テティが赴任してくるところから物語は始まる。 ヒルボーン家は不幸な死につきまとわれた家系だ。250年前に起きた悲劇から、領主の妻たちは、代々精神に異常をきたしてこの世を去っていた。テティが赴任した頃も、領主エドワードの妻が狂気のうちに亡くなっており、エドワード自身も激しく衰弱している。この呪われた血脈の謎が本作品の中核なのだが、ブランドは、少しづつタネ明かしをし、新たな謎を重ねながらストーリーに厚みをもたせていく。 テティは、その凛とした立ち居振る舞いで、赴任早々からヒルボーン家の人々や使用人たちに一目置かれるようになる。しかし、ひとりヒルボーン家の領地管理人でエドワードの義理の弟ジェームスは、テティにこう告げる。 「いつかあなたはぼくらを裏切るだろう。そして、一人残らず破滅させることになるはずだ」 と。 もうこれだけで、拙速に先が読みたくなってしまうが、ここは我慢だ。プラモデルを組み立てるように、じっくりと作品の世界を味わった方が良い。ディケンズやブロンテ姉妹の作品が好きなら、ブランドの描くヴィクトリア朝の醸し出す雰囲気を堪能することができるだろう。ばらまかれた謎を丹念に拾い集めていくと、終盤での感慨は一入なはずだ。 ヒルボーン家の人々は、何ものかによってアバタール屋敷につなぎ止められている。見えざる冷たい手に触れられ、魂を揺さぶられる彼らには、陰鬱な未来しか待っていない。余命いくばくもないエドワードは、血脈を断絶するために、テティにひとつ提案を持ちかけるのだった ・・・ とつづく。 このエドワードの申し出が、複雑に絡み合った愛憎劇を形成する端緒となる。テティの、愛を失い変節していく様が痛々しくもありながら、憎しみにかられた理不尽な振る舞いに怒りを覚えることもしばしばだ。やがて、アバタール屋敷の愛と憎しみの罠は、長じたクリスティーンとリネスに触手を伸ばしていく。ヒルボーン家の人々は、はたしてこの罠から抜け出すことができるのだろうか。 本作品は、英国らしいゴーストストーリーの体裁をとりながら、人の奥底に潜む憎しみの発露を描いている。ゴーストストーリーとしては恐ろしくもなんともないが、見返りを求める愛があっけなく憎しみに陥る人間の性(さが)に寒々としてしまう。物語が終わった後に一抹の寂しさが残るのは、決して解決することのない愛と憎しみの二面性をあらためて思い知らされたからかもしれない。 | ||||
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18世紀、ある領主館に招かれた家庭教師の女性がそこの双子の姉妹と奇怪な体験をし・・・というお話。 解説にある通り、19世紀頃に書かれた、ゴースト・ストーリーかゴシック・ロマン風の小説。推理小説的な部分は殆どありません。そのかわりに古き佳き19世紀風の小説の雰囲気が横溢したなかなかの佳品に仕上がっております。解説によると「ジェイン・エア」を意識したのではないかと指摘されておりますが、私はそこにジェイン・オースティンやヘンリー・ジェイムズを付け加えたいと思います。これも解説に指摘されていますが、老境に至った著者が自分も欧米の文学の流れの中で正統な嫡子であることを世間に印象づけたかったので書いたのではないかと思いました。その意味では成功しているとも思いました。ミステリ的要素のないブランドの小説など読めるかという方もいるとは思いますし、私も若干肩すかしを喰ったような印象を抱きましたが、そういう余計な情報を抜きにして正統大衆小説として読めばかなり面白い作品だと思いました。ゴシック・ロマン風ですが、あまりゴスゴスしてないところも個人的にはいいと思います。 なので、ブランドの「疑惑の霧」や「はなれわざ」が好きな人より「ねじの回転」や「高慢と偏見」や「緋文字」が好きな人におススメしておきます。なかなかの佳作。機会があったら是非ご一読を。 | ||||
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原題The Brides of Aberdar (原著1982年刊行) クリスティー、セイヤーズと並ぶ英国女流ミステリの巨匠ブランドの遺作長編。 『ねじの回転』や『レベッカ』を想起させる不穏な謎をはらんだ舘を舞台にゴシック小説の定法を踏まえながら、ブランドらしい変転するプロットが読者を眩惑する。 『緑は危険』や『ジェゼベルの死』といった代表作に見られる皮肉で辛辣なユーモアは影を潜め、あくまで偉大な英国小説の伝統に寄り添うように回帰した堂々たる作品。 壮絶なクライマックスの後に訪れる静謐な余韻、それは巨匠最後の作品と思えば一際感慨深い。 | ||||
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