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Tetchy さんのレビュー一覧

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レビュー数170

全170件 101~120 6/9ページ

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No.70:
(5pt)

最後の1編だけで十分です。

ホームズの出てこないドイルのミステリーという事でかなり期待していた。
というのも『緋色の研究』、『恐怖の谷』で私が大いに愉しんだのはメインの謎解き部分よりも犯行の背景となった1部丸々割いて語られるエピソードに他ならない。という意味でも今回は期待していたのだが、なんとまあ、よくもこれだけの駄作を集めて出版しようとしたものだと、商魂逞しいというか、阿漕な商売するなぁとまでもいうか、下らない作品の多い事。

「甲虫採集家」などはまだしも「漆器の箱」、「悪夢の部屋」などは三流コントのネタに過ぎず、特に前者は物語のプロットにさえなっていない。惜しいのは「ユダヤの胸牌」。最後にもう一つ捻りがあれば現代にも通ずる物になっていた筈だ。
率直に云えば、昨日まで本書に対する評価は1ツ星だったのだが、最後の「五十年後」で4つ星を増やした。ネタはよくあるものだが私自身がこういう“悠久の時”ネタに非常に弱いのだ。展開や結末が解ってても胸にグッと来る。だから本音を云えば、本書はこれ1つだけあれば十分なのだ。
ドイル傑作集 1 ミステリー編 (新潮文庫 (ト-3-11))
No.69:
(4pt)

最後のフィラメントの輝き

正式なシャーロック・ホームズシリーズとしては本書が最後になるだろうと思うのだが、それを意識せずとも晩年のホームズの活躍が多く散りばめられてシリーズの締め括りを暗示した内容であった。
しかもあまり云いたくはないのだが、明らかにドイルはネタ切れの感があり、前に発表された短編群とアイデアが似たようなものが多い。
代表的な例を挙げれば「三人ガリデブ」がそうだろう。これはほとんどまんま「赤毛連盟」である。
しかし、カーを髣髴させる機械的なトリックが印象深い「ソア橋」が入っているのも本書であるから、苦心していたとはいえ、ヴァラエティに富んだ短編集であることは間違いない。
特に最後に「覆面の下宿人」のような話を持ってくる辺り、心憎い演出ではないか。
シャーロック・ホームズの事件簿 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)
No.68:
(4pt)

天藤作品にしては珍しい凡作

未婚の母と若い学者のカップルが男の結婚話からついカッとなり、押し倒した時に箪笥に頭をぶつけ、死んでしまうといったお昼のサスペンスのようなシチュエーションから始まり、女性の所属する陰妻グループの面々が架空の犯人をでっちあげた所、なんとその証言そっくりの人物が現れてしまうという、天藤ならではのユニークな設定であるが、読後はなんだか消化不足というのが印象だ。

事件は3つの面から語られる。
まずは陰妻グループの視点。
それから架空の犯人そっくりの男の、真相を探る会社仲間たちの視点。
最後に殺された学者の婚約者と同僚の視点。

通常ならばこれが色々と絡まりあい、丁々発止の駆け引きなどが予想されるのだが、期待していたほどではなく、意外とあっさりと真相へと収束するのである。
そして最後はなんとも煮え切らない結末。作者が途中で何となく持て余したような感じがする。数々の作品があればこのような凡作もあるわけで、天藤には次回に期待。
死の内幕―天藤真推理小説全集〈3〉 (創元推理文庫)
天藤真死の内幕 についてのレビュー
No.67:
(4pt)

大人になってしまった自分を痛感しました。

本書はモリアーティ教授との闘いでライヘンバッハの滝から落ちたホームズがかの有名なエピソードを基に復活する短編集で少年の頃にワクワクして読んだ「踊る人形」も含まれている。しかし「踊る人形」は今読んでみるとポーの「黄金虫」の亜流だとしか読めなかった。

ここまでくるとホームズ物も当初の斬新さが薄れ、凡百のミステリと変わらなくなってきているように感じた。「犯人は二人」のように義侠心からホームズとワトスンが窃盗を働くユニークな一編があるものの、やはり全体としては小粒。ネタも途中で解る物も多かった。
こんな冷めた感慨しか持たない自らを鑑み、大人になるというのはいかに残酷かを痛感した。
シャーロック・ホームズの帰還 (河出文庫)
No.66:
(4pt)

思い出は美しいままにしておくべきだった。

初めて読んだのは確か小学4年生の時だったように思う。当時の教室に学級文庫が置かれており、その中の『呪いの魔犬』というのが同書の児童版だった。その記憶は曖昧ながらも当時胸をワクワクさせながら読んだ憶えがある。また魔犬の火を吹くトリックの正体が燐だったのもいまだに覚えていた。

が、やはり大人になった現在では本作を愉しめるほど純粋では最早なく、内容的に陳腐な印象を受けたのは否めない。ただ、私が推理小説に再び没頭することのきっかけとなった島田荘司氏のミステリに対する姿勢~冒頭の幻想的な謎を結末で論理的に解明する~の原点であるとの認識を新たにし、この作品の影響を多大に受けていることが判り、興味深かった。
ただ古典に関してはどうしても没入できない。やはり現代とは違う特殊な文体故か。次はこうありたくないものだ。

バスカヴィル家の犬 (創元推理文庫)
No.65:
(4pt)

コンピュータが主人公だからって…。

人工知能を持ち、自我に目覚めたコンピューターが己の計画から失敗までの顚末を語るという、一風変わった一人称で進められた本書はコンピューターが主人公ということもあって非常に理屈っぽく辟易した。余りにコンピューターの感情をデフォルメしたような悪ノリは食傷気味である。
また監禁物という事で今まで読んだクーンツの作品の中で最も登場人物の少ない作品だった。スーザンの顔が見えてこなかったのは致命的だったな。
デモン・シード 完全版 (創元SF文庫)
ディーン・R・クーンツデモン・シード についてのレビュー
No.64:
(4pt)

泡坂ミステリにしては実にオーソドックス

トリッキーな、または大胆な発想で読者を悦ばせることが多い泡坂作品の中ではオーソドックスなタイプ。味付としては人気俳優を登場人物に配し、その特色豊かな芸能界をスパイスとしている。

▼以下、ネタバレ感想
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花嫁のさけび (河出文庫 あ)
泡坂妻夫花嫁のさけび についてのレビュー
No.63:
(4pt)

作者が飽きているのが見え見えです。

『シャーロック・ホームズの冒険』が初の短編集ということもあるせいか、「まだらの紐」、「赤毛連盟」といった名作群を設えているのに対し、ここではその流れで冒頭に収められている「白銀号事件」がそのエッセンスを受け継ぐのみであって残りは特に可もなく不可もない。これはドイルがシャーロック・ホームズシリーズに嫌気がさしていた証左であろう。
そしてもはや本格物ではない「最後の事件」でホームズを葬り去ろうとしたのだが…。内容はともかく、本作はそんな作者の苦悩が窺われて興味深い。
シャーロック・ホームズの思い出 (河出文庫)
No.62: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

ホームズのトンデモ推理に思わず苦笑。

酸いも甘いも嗅ぎ分けた大人になった現在、ホームズ譚を読むと論理の飛躍性に苦笑を禁じえない。瞬時の観察でもうそれが唯一無二の絶対心理だとの賜る推理はもう穴だらけで必然性が全く感じられず、全て偶然性に寄りかかっている感じが強い。
が、ともあれストーリーの構築としては先の『緋色の研究』もそうだったが、過去の遠大なるエピソードを真相に絡ませるのは○。
ただこうしてみるとホームズと御手洗が非常にダブって見えるよなぁ。
四つの署名 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)
アーサー・コナン・ドイル四つの署名 についてのレビュー
No.61:
(4pt)

もはや悟りの境地

ここに寄せられた短編群は最早推理小説とかいう括りを超越して何か悟りきった感がある。一種別の意味で一筋縄でいかないといったような。
「ダッキーニ抄」は御伽噺だが、その他についてもほとんどそのようなテイストを秘めている。
特に表題作の「夢の密室」はどういう必然性があるのか、全く思いもつかないのだ。これは「雨女」の時にも感じたことで何処となく後期の星新一の作風を想起させる。
う~ん、この雰囲気がツボにはまるか、まだ判らない。
夢の密室 (光文社文庫)
泡坂妻夫夢の密室 についてのレビュー
No.60:
(4pt)

ある悟り。

今回、本作品を読んでカー作品の賛否の分かれ目という物を発見した。
カーの作品はまず、字が多い。つまり登場人物間の問答場面が長いのだ。ここで読者は苦痛を強いられる。従って場面転換も少なく、余り躍動感はない。
私にとって全ての作品がそうなのだが、では何処で賛否が分かれるかというと、やはり最後の真相、ここでどれだけ驚かされるか、カタルシスが得られるかに他ならない。果たして本作はどうだったのか?
それは上の☆の評価の通りである。
雷鳴の中でも (ハヤカワ・ミステリ文庫 カ 2-4)
ジョン・ディクスン・カー雷鳴の中でも についてのレビュー
No.59:
(6pt)

変な題名。

全体の印象として中途半端な感じがした。小瀬川杜夫と吉敷とのエピソードは吉敷が事件に関わるためのファクターとして付加したようなテクニックを露呈しているし、森岡輝子と小瀬川陽子の電話のエピソード、輝子の行程のエピソードは十分読み応えがあって面白いが、それからがいけない。
唐突に訪れる捕物劇は、およそ刑事小説とは思えないほど、あっけらかんとした物。通常一千枚ベースで作られる御手洗物で使われるテーマをかなり省略したような感じだ。本作は正に量産物の典型だろう。
幽体離脱殺人事件 (光文社文庫)
島田荘司幽体離脱殺人事件 についてのレビュー
No.58:
(6pt)

ちょっと合わなかったなぁ。

タイムリミットが無かった分、消極的な印象が。プロットが政治濃かったのもあまり楽しめなかった一因かと。
氷舞―新宿鮫〈6〉 (光文社文庫)
大沢在昌氷舞 新宿鮫VI についてのレビュー
No.57:
(6pt)

ちょっと無理しすぎでは?

錯綜するプロットの中、題名の「蛹」は最もウェートが低かったのでは?
鮫シリーズの中では消化不良の感が強いなぁ、これは。
炎蛹―新宿鮫〈5〉 (光文社文庫)
大沢在昌炎蛹 新宿鮫V についてのレビュー
No.56:
(4pt)

読み手として未熟でした。

結局の所、ハードボイルドについて云えば、そのストーリーもしくはプロットの妙もさる事ながら、その纏う雰囲気、文体にのれるかのれないかによる所が大きい。
心情の判らないサム・スペード物に比べれば今回のコンチネンタル・オプ物は主人公の内面に当たる所があり、今までのハメット作品の中ではのれた部類に入るのだが、正直云ってやはり物足りない。
コンチネンタル探偵社がオプを中心にチームワークで事件に当たるのは(私の中で)今までになくフレッシュな感覚があるのだが、その分登場人物が多過ぎて訳判んなくなってしまった。う~ん。
コンチネンタル・オプの事件簿 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
No.55:
(4pt)

読み手である自分の知識の無さが悔しい。

この評価は単に面白くなかったという訳ではない。あくまで自分の好みと合わなかったまでの事である。
というのも余りにも本格的過ぎて、出てくる名詞が十分理解できなかったことが大きい。また物語の焦点となる写楽への言及がなかなか始まらなかったこともやきもきさせられた。
ともあれ、写楽を通じて江戸風俗を蘇らせる事も作者の意図する所であるだろうし、作者の趣味をそこここに万遍無く導入させたかったのであろう。しかし、この作品をああいった形で結ぶのは素晴らしい。
写楽百面相 (創元推理文庫)
泡坂妻夫写楽百面相 についてのレビュー
No.54:
(4pt)

意外な感じがします。

またもややってしまった…。この睡魔をどうにかしてくれ!
前半は特に眠気もなく、快調だったのだが、後半の4日間はもうほとんど脳が寝ていた。従って物語が流れるままを追う、何ともつまらない読書になってしまった。

さて本書はハメットには珍しくフーダニットをメインとした謎解きのミステリであり、探偵もニックのノラの明るい夫婦が務める軽妙な仕上りになっている。所謂ハメットらしさが一番希薄なのだが、あのハメットがこんなのも書いていたのを知るには絶好の一作ではなかろうか。
影なき男 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ダシール・ハメット影なき男 についてのレビュー
No.53:
(5pt)

ちょっとだけマシかな。

内容はよくあるダメな男(この場合は少年だが)が自分の身に降りかかった災難を打破するために一念発起し、新たな自分に生まれ変わるといった常道を踏襲しており目新しさは特にない。
強いて云うならば今までのクーンツ作品感じてきた「何故こういう事になったのか」という理由が曖昧だったのに対し、今回は明瞭だった事(ロイの性格の事ね)。また、ロイからのコリンの逃亡劇も迫真物だった。
闇の囁き (光文社文庫)
ディーン・R・クーンツ闇の囁き についてのレビュー
No.52:
(5pt)

すみません。

本当に運が悪い。仕事の忙しさに押し潰されてボロボロの読書だった。会社のパソコンが壊れたのも大きな原因だし、御蔭で何が何やらさっぱり理解できなかった。
名作の誉れの高い本書をこういう形で読了してしまうとは、一生の汚点である。表面を撫でただけのような浅薄さが残っているだけで何ともいえない喪失感がある。
仕事がプライヴェートにまで波及してきてしまった。全くあってはならない事だ。内容についての感想よりも以上が正直な感想だ。
血の収穫 (創元推理文庫 130-1)
ダシール・ハメット血の収穫(赤い収穫) についてのレビュー
No.51:
(4pt)

非常にご都合主義なストーリー展開。

状況を盛り立てる為のホラー性は無論だが、御都合のいいストーリー展開にも辟易である。
ただこの作品、続編がありそうな気配もあるが、どうだろうか?

▼以下、ネタバレ感想
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闇の眼 (光文社文庫)
ディーン・R・クーンツ闇の眼 についてのレビュー