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マリオネットK さんのレビュー一覧
マリオネットKさんのページへレビュー数80件
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乱歩御代の短編の中でも有名かつミステリ色の強い一作。
まず「屋根裏の殺人鬼」とか「屋根裏の犯罪」などではなく「散歩者」というタイトルにセンスを感じますね。 とにかく何をやってもつまらない、人生を退屈している男がとうとう見つけた楽しみ……という犯人目線の倒叙ミステリです。 やってることは本当に酷いんですが、なぜか感情移入してしまう犯人でした。 明智小五郎も登場しますが、後の私立探偵として有名な完全無欠のヒーロー的なキャラクターではなく、『D坂の殺人事件』同様、正義感ではなく単純に好奇心から事件の真相を探る変わった男という位置づけです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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誰が彼もが腹に一物持っている資産家一族という、ミステリ定番の誰が殺されてもおかしくなさそうな一家が、女主人の誕生パーティに他人の人生を弄ぶ悪趣味な余興をするという、さらに自分たちで殺されそうな状況を作り出し、所謂「死亡フラグの乱立」をしながら中々誰も死なない…
ちょっとあらすじを説明するのは難しいですが、一言で表すと三谷幸喜氏あたりが脚本を書いていそうなドタバタブラックコメディ調のミステリーです。 この短いページでこれだけの登場人物が登場する話を見事に纏めてしまえるのはさすが赤川氏です。 とにかく登場人物がクズばかりですが、中でもやはり話の中心になる女主人の老婆がいいキャラしていて、性格の悪さもここまで来ると清清しくて逆に好感が持てるというレベルでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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有名なゴシックホラーの短編。
主人公が自らの犯した犯罪からその罪の露見までの独白するという形式はある意味「倒叙ミステリ」の走りとも言えるのでしょうか? 猫に心理的にも物理的にも追い詰められる形になる主人公の恐怖に感情移入すべき小説なのかもしれませんが、正直完全に主人公の因果応報(というかそもそもキチガイ)なので、猫は怖いというより可哀想だし、ラストはむしろ「よくやった」って感じですね。 |
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登場人物がどいつもこいつも頭に思い浮かんだことを全部口に出しているようなイカれた奴らで、面白いんですが、古い作品とはいえちょっと文章が読みにくすぎます。
それほど長い話ではないし、ストーリーそのものは難しくなかったのでなんとか読めましたが、これでもっとページが多かったり複雑な内容だったりしたら、途中で挫折してしまったかもしれません。 改めて古い作家でも文章が読みやすい江戸川乱歩や横溝正史は凄いというか、ありがたいな、と感じました。 よく指摘される登場人物の多さに関しては、所謂読者目線での「容疑者」になる主要人物と、単にその場で出てくるだけのようなチョイ役は割りとはっきりしていたので、ここについては自分は特に気になりませんでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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有栖川氏のクローズドサークル作品と言えば『双頭の悪魔』や『孤島パズル』など江神二郎が探偵役の『学生アリスシリーズ』が有名ですが、これは火村英生が探偵役の『作家アリスシリーズ』の中では珍しいクローズドサークル作品です。
本来日本に生息しない大鴉の群れが舞う孤島といういかにもな舞台設定ですが、昭和から平成に移り変わろうとしている時代が舞台の『学生アリスシリーズ』とは異なり、こちらは紛れも無い21世紀の時代設定なので、携帯電話もインターネットも存在する世界観です。 それらは結果的に使用不能になり外界から孤立した状況にはなるのですが、単にクローズドサークルという設定には邪魔なものを排除したというわけではなく、話に後々それが絡むことになるのが、作者のまさに現代ならではのクローズドサークルを書こう、という意気込みが伝わってきた作品でした。 他にもホリ○モンがモデルのキャラが登場したり、ES細胞によるクローン技術が話の一つのテーマになっていたりと、作品発表当時(2006年)にホットだった内容を題材にしている作品なのですが、10年以上が経過した今はすでに少し時代を感じてしまいます。 最初から良い意味で古臭い『学生アリスシリーズ』の作品の方がやはり何十年も先まで読み継がれる作品になりそうだと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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巨大海橋(明石海峡大橋がモデルか)を支える巨大なブロック内に造られた「バルブ」と呼ばれるシェルター。
有事の際のその中での生活を想定した、テストシミュレーションのような形で実際にバルブ内で一定期間を過ごすこととなった、プロジェクトメンバーの男女たち。 しかし、突如システムが「緊急事態」を警告し、彼らは本当にバルブ内から脱出不可能となってしまう。 そしてその完全密閉された空間の中で殺人事件が発生し、一人、また一人と殺されていく…… というタイトルどおり、典型的な『そして誰もいなくなった』的なクローズドサークルミステリーです。 さらにこの作品の特徴として、盲目の天才科学者の弟で、多忙を極める彼の替え玉を普段から務めている弟と、そんな彼の世話係のような関係の女性の、やはり替え玉のような形で参加した容姿の酷似した妹という、ともに正体を偽った二人の男女を主役として、彼らの一人称が交互に語られる形で物語が進行して行きます。 クローズドサークル定番の閉ざされた空間の中での連続殺人というシチュエーションだけで私は興奮してしまうのですが、タイトルの通りこのままこの二人だけになってしまうのか?その場合どんな結末が待っているのか?と、先と結末が気になる作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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良くも悪くも王道な推理小説だと思いました。
特別目新しい要素はないものの、一つ一つがまさに方程式のように綺麗にまとまった、傑作ではないけど良作という作品という感想です。 トリックの解明には比喩ではなく題名どおり「方程式」が用いられますが特別な専門知識がいるといった内容ではありません。 血に弱い刑事の叶と、まるで少女のように天真爛漫な彼の妻・深雪の明日香井夫妻のキャラは、どこか『三毛猫ホームズシリーズ』の片山兄妹を思い起こさせました。 探偵役となるのはその叶の双子の兄の響で、犯人側ではなく探偵側が双子の入れ替わりトリック(?)を使うというのが面白く、綾辻氏の作品の中では珍しくユーモアミステリ要素も含まれているかなと感じました。 読みやすさも抜群なので、初心者におすすめだと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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数学の地位向上のために洗脳教材を使い全国民を人質に取った数学教授テロリストに、警察から協力を仰がれた天才数学女子中学生が挑むという、荒唐無稽な設定のユーモア数学ミステリー。
漫画版も出ている作品ですが、文庫の表紙の絵の方が渚が可愛くて好みですね。 作者の青柳氏は「数学が好き」なだけでバリバリ理系な人ではないようで、内容はあくまで中学生でも判るレベルの純粋な「数学の楽しさ」を教えてくれるような作品だと思いました。 数学をはじめとした、学校教育はもっと柔軟に楽しくあればいいのにという皮肉にもなっている気がします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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テレビドラマ化もした人気シリーズの第一作。連作短編となっている一冊です。
探偵役の湯川は天才物理学者で、作中のトリックもまるで物理・化学の実験のような形で解明されるという、作者の東野圭吾氏の工学部出身の経験が見事に活かされた作品となっています。 ただ正直な所、推理小説でそういった作者の専門知識をトリックとして見せられても、読んでいる方としては「なんか知らないけど科学っぽいことで爆発させたり燃やしたりしたんだね」と感じるだけで、あまり面白いとは感じないです。 物理の知識はトリックに関係ない続編の『容疑者Xの献身』の方がシリーズ最高評価を得ているのがそれを裏付けている気がします。 これはかのアガサ・クリスティ女史が自身の薬学の知識を活かしたミステリを書こうとしたけれど、結果的に彼女の名作と称えられている作品はそういった知識とは無縁のものになっている形に似ていると思いました。 『容疑者Xの献身』がポワロシリーズの『アクロイド殺し』や『オリエント急行』だとしたら、この作品は『スタイルズ荘』の位置づけでしょうか。 |
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所謂「斜陽族」と言われた没落貴族の一族を題材にした他、舞台となる時代に現実でも起こった毒殺事件である「帝銀事件」をモデルにした事件を絡めるなど、当時の戦後の混乱期の日本を表している、当時を生きた作家でないと書けない作品であると同時に、他の金田一耕助シリーズとは少し趣の異なる雰囲気のお話ですね。
主な舞台は信州ですが、手がかりを求めて耕助たちが淡路島に向かうなど、日本のトラベルミステリーの先駆け的な側面も持っていると思います。 しかしその列車内の様子などで、当時の貧しく混乱した日本では国内の旅行ですら一苦労というのが伝わってきました。 この作品よりさらに前の時代が舞台でも、ポワロやクイーンは列車や飛行機で優雅に旅行しているのを考えると、当時の日本と欧米の差って凄かったんだなぁ……と思わされずにはいられなくなる作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「カラクリ屋敷でわらべ歌殺人?そういうの大好きだよ!」という気持ちで児童書でもかまわず、いい年齢して買って読んでみた結果、うれしい誤算と言いますか、想像以上に本格的かつ難解なミステリでした。
ただ大人が読んでも面白いというよりは、逆に本来の対象年齢を置いてけぼりにしているというか、これむしろ児童書でやる必要あるの?という疑問が沸く作品でした。 作品の随所の小ネタも明らかに大人のミステリマニアを楽しませようとしているとしか思えません(おかげで私は楽しめましたけどね) ちなみに上記の感想はこの本のメインとなっている二部の部分の感想で その前後に実質独立した短編のような形になっている一部と三部は普通に良質な子供向けのミステリだと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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マザーグースの歌詞になぞらえた殺人という推理小説の定番ジャンル「見立て殺人」の始祖とも言える作品ですね。
後世の無数の作品、あの『そして誰もいなくなった』にも影響を与えていると考えると、その功績は極めて大きいでしょう。 本当にマザーグースって本来子供のためのものなはずなのに、不気味で残酷で、そこになまじユーモラスさが混じるのが余計に怖くて、もう最初から「見立て殺人のためにある」ような題材だなぁと思ってしまいます。 日本の推理小説ではこういった見立て殺人をするには、別に血なまぐささを連想しないものを無理やり当てはめるか、あるいは『悪魔の手鞠唄』はじめオリジナルの不気味な唄を作者が創作しなくてはなりませんが、もし既存の幼少期からなじんでいるものが見立て殺人に使われたらさぞ物語に入り込めるんだろうなぁ、と向こうの人たちがうらやましくなりました。 名前や身体的特徴がたまたまマザーグースの歌詞と一致しているだけの人物を殺すという、まさにサイコキラーとしか言えない犯人ですが、容疑者は数学者や物理学者、チェスの名手などまさに知的水準はトップレベルの人間たちが揃い、狂っていながらこの上なく知的な犯人と探偵の対決を堪能できる名作だと感じました。 ただ、この作品に限った話ではないのですが、私の場合古典でしかも翻訳物となると、時代と言語(文化?)の2つの壁を感じて、読んでいても淡々とあらすじをなぞっているような退屈さが否めないんですよね。 この作品の場合も、読んでみて名作と呼ばれる所以は理解できました。話もよく出来てると思います。 しかし、じゃあ実際読んでいる時に面白かったかと言うと、最近の国内のボロクソに貶した感想を書いているようなB級ミステリの方が楽しんで読んでいるという事実があります。 この作品をもし私が「当時」の「英語圏」の人間として読んでいたら、多分「なんてハイレベルで面白い小説なんだ」と大絶賛していたはずと思うんですけどね。 |
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クイーンリスペクトの有栖川氏らしい、非常にロジカルで、推理小説から推理小説たる要素以外はとことん排した作りといった感じの短編集です。
表題作の『スイス時計の謎』はそれなりにガッツリと文章量があるので「中編」と言った方がいいかもしれません。 ある意味非常に地味で、面白くない話なんですが、犯人となる人物を絞り込むに至るその徹底的なロジックの流れは彼の作品が好きな人にはたまらないかなと思います。 表題作以外にも、「ダイイングメッセージもの」「首のない死体もの」「倒叙密室トリックもの」と本格推理におなじみのテーマの短編が揃っており、地味ながら本格好きには楽しめる一冊ですね。 |
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多分私が人生で一番最初に読んだ長編本格推理小説だったのではないかなと思います(まぁ長編と言うには少し短いかもしれませんが)
「あれ?今回の少年探偵団シリーズはちょっと違うぞ?」といつも以上に不気味な内容と大人っぽい雰囲気にドキドキしたのを覚えています。 20数年ぶりに読み返した際、ストーリーの大筋は大体覚えていたのですが、大人になってから読むことで新たに気づいた面や、粗もありました。 子供の頃はわからなかったのですが、明智小五郎と美青年一郎の関係がいやに耽美的というか、その手の趣味の人にはたまらなそうな雰囲気ですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ミステリの女王アガサ・クリスティの処女長編にして、世界的名探偵エルキュール・ポワロの初登場作品。
デビュー作&100年近く前の作品ということを踏まえればよく出来ていると思いますが、やはり『オリエント急行殺人事件』『アクロイド殺し』『ABC殺人事件』などの、後のポワロ登場作品の傑作に比べると人気、知名度で劣るのもやむなしといった感じでした。 クリスティ女史は薬剤師資格を取得するほど薬学の知識があったので、それをミステリに活かしたいと考えていたというのは有名な話ですが、このデビュー作はまさにその知識が遺憾なく発揮されています。 ただ、はっきり言って読者側からすればそんな専門知識披露されたトリックとか使われても全然面白くないんですよね。 実際上で挙げた作品や『そして誰もいなくなった』などクリスティ女史の作品の中でも特に評価の高い作品は薬学知識とは特に無関係なのが当時から世論を反映してます。 というわけで特別面白い作品ではないとは思いますが、ポワロの初登場作品ということで、ミステリファンならとりあえず押さえておくべき一冊ではないかなと思います。 (特にポワロ最後の事件『カーテン』を読む前には必読です) ▼以下、ネタバレ感想 |
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推理小説を若い子(特に女の子)も好んで読むようなジュブナイル小説風にしたジャンルの走りとも言える作品で、まさに大ベストセラー作家赤川次郎を象徴するような代表作中の代表作と言える作品だと思います。
ミステリ作品としての質も決して低くはないと思うのですが、ただあまりにも時代を感じるため、そこが今読み返すとちょっと辛いというか、いろいろと気恥ずかしいものがありました。 (奇しくも同年に発表された同じく赤川次郎氏の代表作の『マリオネットの罠』は今読んでも全然そんなことを感じないんですけどね) 逆に言えば当時はさぞかし流行の最先端を走ってたような作品だったんだろうなぁと思います。 さらに数十年経って、完全に「古典」の域に入った時の世間の評価が気になる作品ですね。 |
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昭和30年代のまだどこか男も女も戦争の影を残した時代に、婚姻直後に出張先の北陸地方で突然姿を消した夫の行方を捜す主人公の女性。
しかし夫の失踪事件は、やがてその関係者達が次々と殺害されていく連続殺人事件へと発展していく。 まず感じたのが松本御代の文章は本当に今読んでも非常に読みやすく違和感がないですね。 現代の作家が当時の事を良く調べて昭和30年代の日本が舞台の小説を書いたと言っても通じるほどだと思いました。 日本の社会派ミステリの先駆け的存在であると同時に、その完成度は今見ても非常に高く、日本のミステリ史、文学史上の価値もきわめて高い作品だと思います。 ただ、単純に自分の好みか、面白かったかで言うと、正直言ってあまり面白くなかったです。 個人的には良くも悪くも極めて「優等生的」な作品という感想で、毒やエンターテイメント性を感じなかったというのもありますが、結局自分は典型的な本格ミステリ好きで、推理小説に推理小説以上のものを求めていないと言いますか、社会派ミステリは根本的に合わないんだなと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「黒鳥亭殺人事件」
「壷中庵殺人事件」 「月宮殿殺人事件」 「雪華楼殺人事件」 「紅雨荘殺人事件」 「絶叫城殺人事件」 以上の六編のいずれも独特の特色を持った館や廃墟などで起きた殺人事件を扱う『作家アリスシリーズ』の短編集です。 このタイトルラインナップを見ただけで、所謂「館もの」が好きな人はゾクゾクするでしょうか、どれもあくまで短編なので、そこまで大掛かりなトリックやインパクトのある建物が出てくるわけではありません。ある意味全部名前負けです(苦笑) あと、表題にもなっている最後の「絶叫城」だけは、実際に作中でその城が舞台の殺人事件が起こるわけではなく、絶叫城というタイトルのホラーゲームに見立てた連続殺人事件が街中で起こるというストーリーです。 個人的に建物に惹かれたのは「月宮殿」ミステリとして出来がいいと思うのは「紅雨荘」ですね。 ※作品ごと個別にも登録されているみたいなので、気が向いたら個々の感想も書こうかなと思います。 |
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ホームズの長編の中では唯一二部構成が取られておらず、実質的にシリーズ一の大作と呼べる作品でしょう。
先代当主がその地の伝説に残る巨大な魔犬に襲われたかのような不審な死を遂げたバスカヴィル家。 この名家の後を継いだ甥のヘンリー卿にも謎の警告文が届き、ホームズとワトソンは調査の依頼を受ける…… 火を吐く巨大な魔犬の伝承、屋敷周辺の危険な底なし沼地帯、一癖も二癖もありそうな近隣住人たち、何かを隠している使用人夫婦、付近に潜伏した逃亡中の死刑囚、さらにそれとは別にワトソン達を観察するがごとく潜む怪人物の影(先代を殺した犯人か?)…… いくつもの不安と危険要素を孕んだ状況で、頼りのホームズは別の事件の調査のためロンドンを離れられず、しばしワトソン君一人で調査を進めなければならないというスリル満点のシチュエーション。 推理小説としては今読むと物足りないのは否めない所はありますが、数々の不穏な謎と危険が渦巻く、終始息をつかせぬ展開が魅力の作品と感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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