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マリオネットK さんのレビュー一覧

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レビュー数147

全147件 81~100 5/8ページ

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No.67: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

このシェルターに残れるのは二人までです

巨大海橋(明石海峡大橋がモデルか)を支える巨大なブロック内に造られた「バルブ」と呼ばれるシェルター。
有事の際のその中での生活を想定した、テストシミュレーションのような形で実際にバルブ内で一定期間を過ごすこととなった、プロジェクトメンバーの男女たち。
しかし、突如システムが「緊急事態」を警告し、彼らは本当にバルブ内から脱出不可能となってしまう。
そしてその完全密閉された空間の中で殺人事件が発生し、一人、また一人と殺されていく……

というタイトルどおり、典型的な『そして誰もいなくなった』的なクローズドサークルミステリーです。

さらにこの作品の特徴として、盲目の天才科学者の弟で、多忙を極める彼の替え玉を普段から務めている弟と、そんな彼の世話係のような関係の女性の、やはり替え玉のような形で参加した容姿の酷似した妹という、ともに正体を偽った二人の男女を主役として、彼らの一人称が交互に語られる形で物語が進行して行きます。

クローズドサークル定番の閉ざされた空間の中での連続殺人というシチュエーションだけで私は興奮してしまうのですが、タイトルの通りこのままこの二人だけになってしまうのか?その場合どんな結末が待っているのか?と、先と結末が気になる作品でした。




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そして二人だけになった Until Death Do Us Part (講談社文庫)
森博嗣そして二人だけになった についてのレビュー
No.66:
(5pt)

絶対こいつらと一緒には閉じ込められたくない!

「お前たちが殺した」
4人の男女が閉じ込めたシェルターに残された不穏な言葉。
彼らは3ヶ月前崖から転落し死体で見つかった女性と関わりを持つ若者たちで、事故死と判断された娘の死に疑いを持った彼女の母親によって薬で眠らされ、核シェルターに監禁されたのだった。
協力してシェルターからの脱出を試みる一方で、否応なしに3ヶ月前の事件に再び向き合わされることになった彼らは、互いに疑心暗鬼の中で「誰が殺したのか?」を再検討していく。

といった内容の少し変則的なクローズドサークル作品です。

コンパクトな分量で綺麗にまとまっているとは思いましたが、評価の高さから期待していたほどの面白さは感じられませんでした。

登場人物が殺された女も含め、好きになれない性格の人間ばかりで読んでいて嫌になります。
個人的に、クズやキチガイばかり出てくる話はむしろ面白くて好きなんですけど、この話の登場人物の場合、みんな悪人とまではいかないけど一番中途半端で嫌な気分にさせるネチっこく性格の悪いキャラで、延々と繰り返される「あんたがやったんだろ」→「自分じゃない」のやり取りだけで少しうんざりしてきました。

しかし結局この作品が私にとって一番好みでなかった点は、シェルターという脱出不可能な状況で起こる連続殺人、という典型的なクローズドサークルものを期待してしまったので、過去の一件の死の謎を再検討するだけで、シェルター内で新たな事件が起こるわけではないという構成に肩透かしを食らってしまったというのが大きいかもしれません。
そういうお約束が読みたければいくらでも他にあるだろ、なんですが、結局私はそういうお約束なミステリが好きなんですよね。



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そして扉が閉ざされた 新装版 (講談社文庫)
岡嶋二人そして扉が閉ざされた についてのレビュー
No.65: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

オーソドックスで安心して読める作品

良くも悪くも王道な推理小説だと思いました。
特別目新しい要素はないものの、一つ一つがまさに方程式のように綺麗にまとまった、傑作ではないけど良作という作品という感想です。
トリックの解明には比喩ではなく題名どおり「方程式」が用いられますが特別な専門知識がいるといった内容ではありません。

血に弱い刑事の叶と、まるで少女のように天真爛漫な彼の妻・深雪の明日香井夫妻のキャラは、どこか『三毛猫ホームズシリーズ』の片山兄妹を思い起こさせました。
探偵役となるのはその叶の双子の兄の響で、犯人側ではなく探偵側が双子の入れ替わりトリック(?)を使うというのが面白く、綾辻氏の作品の中では珍しくユーモアミステリ要素も含まれているかなと感じました。

読みやすさも抜群なので、初心者におすすめだと思います。

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殺人方程式 〈切断された死体の問題〉
綾辻行人殺人方程式 についてのレビュー
No.64:
(4pt)

ミステリの黄金パターンの一つを作った偉大な作品なのは間違いないですが

お互い憎しみ合う、奇人悪人揃いの一家による骨肉の争いが、遺産がらみでとうとう殺人事件にまで発展するという、ミステリの黄金パターンの草分け的存在のお話ではないでしょうか。
クイーンの『Yの悲劇』も乱歩の『暗黒星』も横溝の『犬神家』もこの作品に影響を受けているのは間違いない偉大な作品だと思います。

ただ今読むと犯人はすぐに見当がつくし、トリックも大したものではないし、その割には無駄に長くてクドくて正直読んでいて寝てしまいそうになる退屈さでした。
この随所に盛り込まれる衒学趣味は好きな人はそこが好きなんでしょうけど、個人的には事件や謎解きと関係ない脱線をしているだけで、こんなことしてるから無駄に長くなるんだよ……と思わずにはいられませんでした。
同シリーズでもこれの次作の『僧正殺人事件』の方は事件そのものが見立て殺人とどこか詩的な題材だったり、容疑者たちが学者などであることで、あまりそういった傾向にも違和感を感じず読めたのですが、そのへんは今作までの反省も活かした所だったんでしょうかね。

『Yの悲劇』を先に読んでいたので、この作品の方が発表は先とはわかっていても、向こうの作品の劣化版みたいな感想を抱いてしまうのが否めませんでした。
では後世の、影響を受けた作品より先に読んでおくべき作品かと言えば、読みやすいドイルやクリスティの作品と違って長くてクドいので、初心者が読んだら途中で脱落してミステリそのものが嫌いになりかねないな……という感想です。


グリーン家殺人事件【新訳版】 (創元推理文庫)
ヴァン・ダイングリーン家殺人事件 についてのレビュー
No.63:
(6pt)

学校教育への皮肉の面も見える作品

数学の地位向上のために洗脳教材を使い全国民を人質に取った数学教授テロリストに、警察から協力を仰がれた天才数学女子中学生が挑むという、荒唐無稽な設定のユーモア数学ミステリー。
漫画版も出ている作品ですが、文庫の表紙の絵の方が渚が可愛くて好みですね。

作者の青柳氏は「数学が好き」なだけでバリバリ理系な人ではないようで、内容はあくまで中学生でも判るレベルの純粋な「数学の楽しさ」を教えてくれるような作品だと思いました。
数学をはじめとした、学校教育はもっと柔軟に楽しくあればいいのにという皮肉にもなっている気がします。



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浜村渚の計算ノ-ト (講談社文庫)
青柳碧人浜村渚の計算ノート についてのレビュー
No.62: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

これぞまさに「物理」トリック!?

テレビドラマ化もした人気シリーズの第一作。連作短編となっている一冊です。
探偵役の湯川は天才物理学者で、作中のトリックもまるで物理・化学の実験のような形で解明されるという、作者の東野圭吾氏の工学部出身の経験が見事に活かされた作品となっています。

ただ正直な所、推理小説でそういった作者の専門知識をトリックとして見せられても、読んでいる方としては「なんか知らないけど科学っぽいことで爆発させたり燃やしたりしたんだね」と感じるだけで、あまり面白いとは感じないです。
物理の知識はトリックに関係ない続編の『容疑者Xの献身』の方がシリーズ最高評価を得ているのがそれを裏付けている気がします。

これはかのアガサ・クリスティ女史が自身の薬学の知識を活かしたミステリを書こうとしたけれど、結果的に彼女の名作と称えられている作品はそういった知識とは無縁のものになっている形に似ていると思いました。
『容疑者Xの献身』がポワロシリーズの『アクロイド殺し』や『オリエント急行』だとしたら、この作品は『スタイルズ荘』の位置づけでしょうか。
探偵ガリレオ (文春文庫)
東野圭吾探偵ガリレオ についてのレビュー
No.61:
(6pt)

終戦直後の日本がよく伝わる作品

所謂「斜陽族」と言われた没落貴族の一族を題材にした他、舞台となる時代に現実でも起こった毒殺事件である「帝銀事件」をモデルにした事件を絡めるなど、当時の戦後の混乱期の日本を表している、当時を生きた作家でないと書けない作品であると同時に、他の金田一耕助シリーズとは少し趣の異なる雰囲気のお話ですね。

主な舞台は信州ですが、手がかりを求めて耕助たちが淡路島に向かうなど、日本のトラベルミステリーの先駆け的な側面も持っていると思います。
しかしその列車内の様子などで、当時の貧しく混乱した日本では国内の旅行ですら一苦労というのが伝わってきました。

この作品よりさらに前の時代が舞台でも、ポワロやクイーンは列車や飛行機で優雅に旅行しているのを考えると、当時の日本と欧米の差って凄かったんだなぁ……と思わされずにはいられなくなる作品でした。

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悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫―金田一耕助ファイル)
横溝正史悪魔が来りて笛を吹く についてのレビュー
No.60:
(6pt)

何かを失う代わりに何かを得る……そんな感じのお話たちです

他の乙一氏の作品に比べるとホラーやグロ描写は控えめな、ミステリというよりはSF短編集といった感じの作品です。
『星新一ショートショート』とか『世にも奇妙な物語』に近いような作風ですね。
タイトルの通り、何かを失った代わりに何かを得たような、悲しいけれど後ろ向きではない、泣かせる系の話が多いです。

以下、個別感想です

▼以下、ネタバレ感想
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失はれる物語 (角川文庫)
乙一失はれる物語 についてのレビュー
No.59:
(5pt)

最初から映像化ありきの作品

金田一少年の事件簿ノベライズシリーズの第五弾は漫画版も含め初の海外を舞台とした事件。
殺人容疑をかけられた男とともに金田一一が上海の街で逃避行を繰り広げるなど、これまでのシリーズに比べ派手なアクションが多く見られる作品。
その理由はこの話は実写映画の原作として書かれたものであり、最初から実写栄えを意識してシナリオが書かれているからと思われます。
しかし、それならばこのシリーズの場合正直「漫画でやった方がいいのでは?」と思わなくもないです。
ストーリーは大掛かりで派手だけれど、肝心の謎解き部分は「消える凶器」トリックほぼ一本であり、むしろ今までのシリーズよりも小粒な印象が否めないですね。

私は堂本剛主演の映画版も見ましたが、映像化作品は大抵原作の小説の方が面白く感じるのだけれど、この作品は映画の方が面白かったです。
それはやはりノベルスゆえの良さを意識するよりも最初から映像化あり気で作られた話だからでしょうかね。
そう言った意味ではノベルス版の最高傑作『電脳山荘殺人事件』と対極にある作品と言えるかもしれません。


小説 金田一少年の事件簿(5) (講談社漫画文庫)
天樹征丸上海魚人伝説殺人事件 についてのレビュー
No.58:
(6pt)

児童書としては失格では

「カラクリ屋敷でわらべ歌殺人?そういうの大好きだよ!」という気持ちで児童書でもかまわず、いい年齢して買って読んでみた結果、うれしい誤算と言いますか、想像以上に本格的かつ難解なミステリでした。
ただ大人が読んでも面白いというよりは、逆に本来の対象年齢を置いてけぼりにしているというか、これむしろ児童書でやる必要あるの?という疑問が沸く作品でした。
作品の随所の小ネタも明らかに大人のミステリマニアを楽しませようとしているとしか思えません(おかげで私は楽しめましたけどね)

ちなみに上記の感想はこの本のメインとなっている二部の部分の感想で
その前後に実質独立した短編のような形になっている一部と三部は普通に良質な子供向けのミステリだと思いました。


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機巧館のかぞえ唄 名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社文庫)
はやみねかおる機巧館のかぞえ唄 についてのレビュー
No.57: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

見立て殺人の元祖と言える作品は、知性と狂気のゲーム

マザーグースの歌詞になぞらえた殺人という推理小説の定番ジャンル「見立て殺人」の始祖とも言える作品ですね。
後世の無数の作品、あの『そして誰もいなくなった』にも影響を与えていると考えると、その功績は極めて大きいでしょう。

本当にマザーグースって本来子供のためのものなはずなのに、不気味で残酷で、そこになまじユーモラスさが混じるのが余計に怖くて、もう最初から「見立て殺人のためにある」ような題材だなぁと思ってしまいます。
日本の推理小説ではこういった見立て殺人をするには、別に血なまぐささを連想しないものを無理やり当てはめるか、あるいは『悪魔の手鞠唄』はじめオリジナルの不気味な唄を作者が創作しなくてはなりませんが、もし既存の幼少期からなじんでいるものが見立て殺人に使われたらさぞ物語に入り込めるんだろうなぁ、と向こうの人たちがうらやましくなりました。

名前や身体的特徴がたまたまマザーグースの歌詞と一致しているだけの人物を殺すという、まさにサイコキラーとしか言えない犯人ですが、容疑者は数学者や物理学者、チェスの名手などまさに知的水準はトップレベルの人間たちが揃い、狂っていながらこの上なく知的な犯人と探偵の対決を堪能できる名作だと感じました。

ただ、この作品に限った話ではないのですが、私の場合古典でしかも翻訳物となると、時代と言語(文化?)の2つの壁を感じて、読んでいても淡々とあらすじをなぞっているような退屈さが否めないんですよね。
この作品の場合も、読んでみて名作と呼ばれる所以は理解できました。話もよく出来てると思います。
しかし、じゃあ実際読んでいる時に面白かったかと言うと、最近の国内のボロクソに貶した感想を書いているようなB級ミステリの方が楽しんで読んでいるという事実があります。

この作品をもし私が「当時」の「英語圏」の人間として読んでいたら、多分「なんてハイレベルで面白い小説なんだ」と大絶賛していたはずと思うんですけどね。
僧正殺人事件 (創元推理文庫)
ヴァン・ダイン僧正殺人事件 についてのレビュー
No.56: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

二作目のジンクスの典型のような凡作

日本ミステリ界に衝撃を与えた『すべてがFになる』の続編となるシリーズ第二作目ですが、はっきり言って凡作ですね。

舞台のインパクト、事件のインパクト、トリックのインパクト、犯人のインパクト。全てが大幅にスケールダウンしています。
話そのものが淡々としていて面白いと感じられず、もう途中から興味はただ一点「どんな密室トリックなんだ?」という部分だけになりましたが、それも前作の密室トリックに比べれば至って「普通」でした。

そのくせ犀川の「周囲が馬鹿ばっかで浮いてしまう天才の自分は可哀想」的な態度や、萌絵の「財力やコネを使って殺人事件に娯楽気分で首を突っ込む我侭お嬢様」という主人公コンビの好きになれないキャラだけは前作から健在、むしろパワーアップしているのがなんとも。

本来は前作よりこちらの方が先に出来ていた話らしいですが、それってようは編集側に続編を急かされ、プロットを練る時間も無く、作者自身満足の行く出来じゃなかったのでボツにしたネタを仕方なく引っ張ってきたような形じゃないのかと思ってしまいましたね。

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
森博嗣冷たい密室と博士たち についてのレビュー
No.55:
(5pt)

非常に性的な作品ですね

表紙やタイトルの印象や、薄くて字も大きめだったことから、最初てっきり十代向けのジュブナイル小説かな?なんて勘違いしてしまいましたが、とんでもない。
お子様お断りの非常に性的な内容でした。それも普通のエロではなく、百合や薔薇や近親などのややアブノーマルなネタで全編埋まっています…もっとも大半は主人公のイマジネーションの中でのモノですが。(というわけでそういうのが苦手な人は要注意なのですが、不思議とあまり下品な印象はうけません)
その主人公がバイセクシャルを公言している百合官能小説などを得意とする作家の、森奈津子さんがモデルのキャラで、そんな彼女がレズビアンの女性にいつの間にか迫られた上に薬で眠らされて、気がつくと南の孤島に放置され、そして殺人事件が…という中々突拍子もないシチュエーションです。
さらに、男女数人が集められてというお決まりのクローズドサークルシチュエーションではなく、その島にいるのは「主人公一人だけ」で、他の人物はいません。
そこまでのあらすじだと、それでどうやって殺人事件やらにハッテンするんだよと思われますが、それは読んでみてのお楽しみということで…
文量的には一時間程度で読める「中編」といった小説です。



なつこ、孤島に囚われ。 (祥伝社文庫)
西澤保彦なつこ、孤島に囚われ。 についてのレビュー
No.54: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

短気は損気?

8の字の形をした特殊な設計の屋敷で、その屋敷を利用した殺人トリックを思いついたという犯人の独白から始まる作品。
その時点で「おー、そういうの大好きだよ!」と期待したのですが、非常にイライラしながら読むことになる話でした。

▼以下、ネタバレ感想
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8の殺人 (講談社文庫)
我孫子武丸8の殺人 についてのレビュー
No.53:
(5pt)

人狼側からの視点で描いた、リアル人狼ゲームシリーズ第2弾

毎日投票で疑わしき者を「吊るして」殺し、人狼は毎夜村人を一人ずつ殺害するリアル人狼ゲームを行わされる、デスゲームシリーズの第2弾。
前作との直接のつながりはないですが、話の理解の面や前回のオチに関わってくる内容も含まれることも踏まえ、前作を読んでから読むのを推奨します。

前作の主人公は村人側の視点で、毎夜人狼に殺される恐怖に怯え、メンバーの中の誰が人狼なのか疑心暗鬼に陥る、推理小説で言えば「フーダニット」だったのに対し
今作は人狼側の視点で、いかに自分は人狼と疑われ殺されることなく、村人側を皆殺しに出来るかという、推理小説で言えば「倒叙もの」になるのでしょうか?

前作より人数と「役職」が増え、ルールがやや複雑化しているけれど、相変わらず典型的なデスゲームのノリであまり気負わず読める作風です。

しかし高校生だけいきなり10人以上集められても非常に覚えにくい。
折角挿絵付きの本なのだから、どうでもいい場面の挿絵を入れるより、まず参加者全員の顔と名前を一致させる絵でも入れてくださいよって感じです。




▼以下、ネタバレ感想
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人狼ゲーム BEAST SIDE (竹書房文庫)
川上亮人狼ゲーム BEAST SIDE についてのレビュー
No.52: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

悪い方の綾辻さんが出てる作品ですね

中学生ぐらいの時読んだはずなんですが、内容をほぼ失念していたので再読しました。
……あらためて読んでみて、まぁ内容を忘れたのもやむなしかなっていう微妙な出来の話でした。
悪い意味で綾辻氏らしさが出ている感じの作品ですね。
ミステリとしてもホラーとしても中途半端で、正直駄作の部類に入ると思います。

▼以下、ネタバレ感想
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緋色の囁き 〈新装改訂版〉 (講談社文庫)
綾辻行人緋色の囁き についてのレビュー
No.51:
(6pt)

非常にこの作者らしい短編集

クイーンリスペクトの有栖川氏らしい、非常にロジカルで、推理小説から推理小説たる要素以外はとことん排した作りといった感じの短編集です。

表題作の『スイス時計の謎』はそれなりにガッツリと文章量があるので「中編」と言った方がいいかもしれません。
ある意味非常に地味で、面白くない話なんですが、犯人となる人物を絞り込むに至るその徹底的なロジックの流れは彼の作品が好きな人にはたまらないかなと思います。

表題作以外にも、「ダイイングメッセージもの」「首のない死体もの」「倒叙密室トリックもの」と本格推理におなじみのテーマの短編が揃っており、地味ながら本格好きには楽しめる一冊ですね。
スイス時計の謎 (講談社文庫)
有栖川有栖スイス時計の謎 についてのレビュー
No.50:
(6pt)

子供の頃読んで~大人になってから読んで

多分私が人生で一番最初に読んだ長編本格推理小説だったのではないかなと思います(まぁ長編と言うには少し短いかもしれませんが)
「あれ?今回の少年探偵団シリーズはちょっと違うぞ?」といつも以上に不気味な内容と大人っぽい雰囲気にドキドキしたのを覚えています。

20数年ぶりに読み返した際、ストーリーの大筋は大体覚えていたのですが、大人になってから読むことで新たに気づいた面や、粗もありました。

子供の頃はわからなかったのですが、明智小五郎と美青年一郎の関係がいやに耽美的というか、その手の趣味の人にはたまらなそうな雰囲気ですね。

▼以下、ネタバレ感想
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白髪鬼・暗黒星 (江戸川乱歩全集)
江戸川乱歩暗黒星 についてのレビュー
No.49:
(6pt)

クリスティ&ポワロのデビュー作

ミステリの女王アガサ・クリスティの処女長編にして、世界的名探偵エルキュール・ポワロの初登場作品。

デビュー作&100年近く前の作品ということを踏まえればよく出来ていると思いますが、やはり『オリエント急行殺人事件』『アクロイド殺し』『ABC殺人事件』などの、後のポワロ登場作品の傑作に比べると人気、知名度で劣るのもやむなしといった感じでした。

クリスティ女史は薬剤師資格を取得するほど薬学の知識があったので、それをミステリに活かしたいと考えていたというのは有名な話ですが、このデビュー作はまさにその知識が遺憾なく発揮されています。
ただ、はっきり言って読者側からすればそんな専門知識披露されたトリックとか使われても全然面白くないんですよね。
実際上で挙げた作品や『そして誰もいなくなった』などクリスティ女史の作品の中でも特に評価の高い作品は薬学知識とは特に無関係なのが当時から世論を反映してます。

というわけで特別面白い作品ではないとは思いますが、ポワロの初登場作品ということで、ミステリファンならとりあえず押さえておくべき一冊ではないかなと思います。
(特にポワロ最後の事件『カーテン』を読む前には必読です)

▼以下、ネタバレ感想
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スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
No.48:
(6pt)

ナウなヤングにバカウケって感じの小説

推理小説を若い子(特に女の子)も好んで読むようなジュブナイル小説風にしたジャンルの走りとも言える作品で、まさに大ベストセラー作家赤川次郎を象徴するような代表作中の代表作と言える作品だと思います。

ミステリ作品としての質も決して低くはないと思うのですが、ただあまりにも時代を感じるため、そこが今読み返すとちょっと辛いというか、いろいろと気恥ずかしいものがありました。
(奇しくも同年に発表された同じく赤川次郎氏の代表作の『マリオネットの罠』は今読んでも全然そんなことを感じないんですけどね)
逆に言えば当時はさぞかし流行の最先端を走ってたような作品だったんだろうなぁと思います。
さらに数十年経って、完全に「古典」の域に入った時の世間の評価が気になる作品ですね。
死者の学園祭―赤川次郎ミステリーコレクション〈1〉
赤川次郎死者の学園祭 についてのレビュー