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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数738件
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帯やあらすじにある、"衝撃"とか"読後、恋がしたくなる"の過剰なPRは期待とのギャップで悩ましい所でありますが、作品自体は綺麗にまとまった青春ミステリで良かったです。ティーンエイジャーを狙った強い宣伝文句にあるような驚きや派手さはないので、宣伝は見ないか気にしない事にして読めると良いかもです。
恋愛小説やミステリの要素はあれど、個人的に思った本書の雰囲気は救済や更生の物語。マイナスからプラスに転じる場面に立ち会える作品に感じました。そして気分が悪くなるような点はなく、若者向けの丁度よいバランスで描かれている点が好みでした。 読後に思う意外な点は、社会的テーマが結構散りばめられており、これらはよくあるミステリだと重く描かれる内容なのですが、本書はそう感じさせてなかった所です。 主人公は誘拐犯の父を持つ息子。 その父の事件の影響もあり、重い過去を引きずりながら日陰者として暮らす日々。その彼が夜中の墓地でとある少女と出会った所から歯車が動き出す。という流れです。 巧くまとまっていると感じる大事な点は、タイトル『"だから"僕は君をさらう』の"だから"の理由が納得できる点。ミステリの衝撃というものとは違うので期待し過ぎないで欲しい点ではありますが、理由はちゃんと共感でき、そしてそれが主人公の優しさや決断する成長に結びつき、周りの知人友人達との絆が感じられる為、読後感は良いものでした。 気になった悩ましい点は主人公の年齢設定が29歳な所。歳の差や、年齢に対しての思考や雰囲気が幼いのが引っかかるので、もっと主人公が若ければより納得できそうな気持が芽生えます。が、この年齢設定は物語を構築する上でこうなるというのは理解できるので、人物配置含めてかなり考えた結果だと感じました。だから著者はこういう設定している。と感じる点が多く、時間をかけて構築された思い入れの強さも感じた作品でした。 ミステリでの誘拐作品は色々ありますが、重くなく、恋愛もので良い雰囲気の他の作品が思いつかないので、そういう点でも新鮮で楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者の作風を変えた一冊。
著者の作品と言えば鬼畜系のグロ系。世の中そんな印象になっていましたが、本書はその要素を無くして本格ミステリの仕掛けや謎解きに重き置いた一冊となっていました。著者のイメージを変える勝負作品とも感じます。 物語は昭和の殺人鬼vs名探偵もの。 タイトルは映画『死霊のはらわた』のオマージュ。若者達が悪霊を甦らせてしまうという映画同様、本書は実在した昭和の殺人鬼の魂が現代に甦り、人に乗り移り事件を犯すというもの。津山事件や阿部定事件といった小説お馴染みの有名所を題材に、それに模した事件と悪霊が乗り移った犯人を暴き倒すという物語。 過去の事件をオリジナルな解釈と仕掛けを施したミステリとなっているのが面白い。 江戸や戦国時代などの大昔にせず、昭和の事件を取り扱っている点についても、雰囲気も然ることながらミステリとして巧く活用していたのが見事でした。持ち味であると設定付けされているグロや鬼畜がなくても本格ミステリとして面白い作品が描けると感じました。昭和の事件を模した見立て殺人の部類ですが、描き方、物語の設定が現代的で良かったです。 作品単体は良かったのですが個人的な好みの点数は少し低めで。読書前の著者本の期待値とも違い、横溝時代の古い昭和の作品を読んでいる気分にもなり、読書中は古く重めであまり楽しめなかったのが正直な所でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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表題作を含む4つの短編集。
・透明人間の倒叙ものである『透明人間は密室に潜む』 ・アイドルオタク達の裁判員制度『六人の熱狂する日本人』 ・聴覚が優れた特殊能力を用いた犯人当て『盗聴された殺人』 ・船上の脱出ゲーム『第13号客室からの脱出』 特に2話目はアイドルオタクならではの気づきを用いた推理劇が新鮮でした。 3話目の探偵コンビとなる上司と部下の関係も良くてシリーズで読みたい程。 作品の雰囲気については、過去に『紅蓮館の殺人』を読んでいますが、その印象とは違いキャラクター達が元気で勢いがあるように感じました。言い換えると筆が乗っているというか読んでいて面白い。本書も手に取るまで表紙の雰囲気から重そうだなと感じていたのですが、読んでみたらサクサクと楽しい読書でした。著者からミステリが好きなんだなという気持ちがとても感じる作品で楽しかったです。 |
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堂シリーズ5作目。シリーズ全7作のうち後半へ向けての転換と整理作品。
本書はミステリというより、登場人物達の物語が主要で、まとめに入りました。 その為、登場人物達の設定や扱いが良い意味でも悪い意味でも整理されていると感じます。 堂に関するトリックが魅力的なシリーズ作品ですが、今回は設定の説明不足と既視感あるもので残念な結果でした。 あまり世の中の感想で見かけないのですが、この仕掛けと設定や舞台は某漫画で行われたものそのままですね。 漫画と小説の読者層の違い、両方の知名度からか、あまり気づかれなかったのかな。時期も同じ2000年代。集英社ヤングジャンプの騙し合いギャンブラー系の某漫画です。オマージュではなく劣化コピーに感じるのが残念。 という事もあり、本書は色々と残念に感じました。 残り2冊で物語がどう変わるのか期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者の"悪夢シリーズ"となっていますがシリーズ内作品はどこから読んでも大丈夫です。
ただ本書はデビュー作の『悪夢のエレベーター』のラストからそのまま時系列が続いている話なので、本書を読む場合は『悪夢のエレベーター』を読まなければ意味がわかりません。 さて1作目のデビュー作を繋げた作品となる本書。正直な感想としては蛇足でした。 登場するキャラクター達、皆が不幸になっていくので正直楽しみ所が感じられなかったです。気分は奈落というコンセプトならその通りですが、読まなければ良かったという気持ちがいっぱいです。 作品を刊行していくにあたり、ネタに困ったので1作目を題材に続きを書こうという軽い気持ちを感じてしまいます。話の展開が煮詰まっていなくて、場当たり的なドタバタ展開。前後の話に脈絡がなく思いついたエピソードをとりあえず書いて繋げましたという構成。それが持ち味でブラックコメディと言えばそうなのかもしれませんが、、、好みに合わなかったという事で。 |
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不治の病、難病ものジャンルの恋愛小説+少しミステリ。かなり惹き込まれ感動しました。
この手のジャンルや設定はよくあるゆえ、文章・表現力など作家の力が試されますね。読んでいて情景や人物の心情がとても丁寧に描かれています。名文章や名言を所々に感じる作品であり小説の良さを感じる読書でもありました。 ミステリを期待して手に取ると違うものになりますので、恋愛小説を主な期待として読むと良いです。 男女の内面にある心模様、すれ違い、もどかしい気持ちなど、読んでいて楽しかったり心苦しくなったりと青春模様も堪能しました。 本書は下調べせずに前知識が無い方がよいです。表紙とタイトルが目に留まり、あらすじに"恋愛ミステリ"と書かれていたので衝動買いした次第。結果良かった。 他作で個人的に好きな恋愛ミステリがあるのですが、出版日を見ると本書の方が早かった。このアイディアは本書の方が先だったんだと再び味わえたのも良かったです。 世界で一番美しい言葉。ここは完璧な演出で心を持ってかれました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ロボット掃除機への転生もの。
設定は面白い。あらすじは事故にあった警察官が目を覚ましたらロボット掃除機になっていたという始まり。SF転生ものであるが、対象がロボット掃除機という現代のアイテムが活用されている点が新しいです。IOTとなる掃除機に組み込まれたwifi通信でネットからの情報を送受信したり、ロボットアームを用いるなど現代要素が満載になっていました。そして目を覚ましたすぐ隣の部屋に死体があったというミステリの流れが興味をそそられました。 特殊設定ミステリの期待が高まりましたが、実際の所本書はミステリというより冒険小説。転生先から30km離れた姪の元へ向う事がメインストーリー。走行速度は時速1.8km。充電どうなる?その道中での出会いとプチ事件が絡んでいく流れです。 読書中の正直な感想として、「早川」主催の「アガサ・クリスティー賞」というワードに期待し過ぎてしまったかもです。本格的、大人向けというより、ライトミステリの部類。個人的にはティーンエイジャー向けのレーベル出版ならもっと評価が上がると思った次第。というのは扱うミステリ要素は軽めですし、社会問題も扱われますがテーマに深みはなくTVで見知れる内容なので、早川の濃い内容(勝手な早川イメージ)を求めて読んでしまうと、物足りなくなってしまった次第。 あえて冒険小説として見たとすると札幌小樽の30kmの景色があまり感じられませんでした。ロボット掃除機の苦労は微笑ましいのですがせっかく地名を出すなら空気感や情景も感じたかった。主人公と姪の料理などのエピソードも微笑ましく読めますが、本筋とはあまり結び付かず。デビュー作なので色々書きたい事を書いたという印象を受けた作品でした。 他思う所は登場する人やエピソードの温かさや優しさの表現が印象に残りました。悪意な内容だとしても優しい雰囲気を醸し出しています。著者の持ち味なのかなと。それゆえ殺伐さを求めないティーンエイジャー向けな作品で読んでみたいと思った次第。アイディアと雰囲気はよいので次の作品はどうなるのだろうと気になる所です。 |
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エレベーターの室内だけで起きるドラマなので演劇や小規模撮影の映像化向きな作品。
著者デビュー作であり、その後の著者の特徴となる群像劇作品の初々しさを感じる内容でした。冗長に感じたのは、第一章で進められた物語が第二章にて別の視点で描かれる様子。ほとんど同じ内容であり、会話内容も繰り返す為、違った視点の面白さより退屈が勝りました。好みは別として、最後まで意外な展開を用意して読者を楽しませようとする脚本作りを感じた作品でした。 |
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日本ホラー小説大賞読者賞。
科学が発達した現代において、ホラー小説の怖さや面白さをどのように表現するか気になる所。受賞作品なのと本屋で目に留まったので手に取りました。本書は現代要素のスマホ、アプリと、『リング』をリスペクトしたと感じる「呪いの本」を用いた現代と旧世代のハイブリットを感じる作品でした。 呪いの本に触れると、顔をくり貫く「どんぶりさん」に襲われる。 「どんぶりさん」という名称の語感の良さ、顔をくり貫く気持ち悪さ、スマホに着信通知されるタイムリミット感など、設定はとても良かったです。が、文章や会話文が軽いのが難点。若者口語体なのでオドロオドロしさや緊張感が感じられません。せっかくの「どんぶりさん」の不気味さに対しての緊張感がないので行動や場面がギャグやジョークのようにも感じてしまった次第。 ホラー特有の得体の知れない何かが人外の言葉で喋るという不気味な表現をアプリ通知の文字化けで現していますが、雰囲気が軽いので不気味に見えない。送信者が文字コードをミスったバグかなーとかそんな風に思ってしまった時点で作品にのめり込めていない気持ちになりました。 |
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安定の面白さでした。☆7(+好み1)
シリーズ作品ですが1作目以降はどこから読んでも問題ありません。 今作は長編作品ですがサクッと一気に読める。気軽に楽しめるミステリとして良かったです。 ミステリの謎については早々に見えてくるので謎解き重視の方には好みに合わないと思いますが、人間模様のドラマを楽しみたい方には丁度良い作品です。本年には予想通りドラマ化したので正にそれ向きの作品となっています。 本シリーズの幅が広がったと感じる所は、閻魔娘の沙羅が地上で活動するようになった事。事件が起こる前に閻魔の娘として死期を感じる者の近くで活動した所がシリーズ内での変化でした。 沙羅の活動がより見えてくるのは好みの問題であり、この流れだと、伊坂幸太郎と知念実希人それぞれの死神がそばにいるという『死神シリーズ』と似たような印象を受けました。どれも好きなシリーズなので同系統が読めるのはそれはそれで楽しみです。 印象に残った所として、沙羅が堕落した人間に対して述べる説法について。 ダメ人間の反面教師と閻魔からの人間の志のメッセージの対比や例が巧く、自己啓発のように読者の心に響かせる面を感じました。ミステリやドラマだけではない魅力も含まれたとても良い作品でした。 |
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シリーズ2作目ですが、本書単体で楽しめる作品。
前作では物足りなかった著者成分を十分に感じられた作品でした。 前作同様に物語は2つのパートが交互に描かれます。 1つ目は、廃屋で監禁された男女6名の惨殺シーン含む事件模様。 2つ目は、事件後に訪れた探偵パートの調査。 著者の持ち味である惨殺、微グロ、狂人の描写が活かされている内容。それ系が苦手な方には好まれない内容です。 B級スプラッター映画の中に探偵やミステリ要素を混ぜ込んだ内容であり、それが過激的な要素なだけでなく、真相がこの世界だから納得できる内容になっているのが見事。個人的にプラス点でした。 一方、純粋なミステリを好む方、グロが苦手な方には非常に評判が悪くなる作品です。良い意味でのB級・インディーズに属する少し尖がった所に魅力を感じる方向けの作品。個人的にこの著者の持ち味と本格ミステリっぽさを混ぜ込んだ作風は好みで、今後の作品も楽しみにする次第。 ちなみに帯の推薦が綾辻行人ですが、館ではなく『殺人鬼』の綾辻行人が推薦、と言えば内容がなんとなく伝わる事でしょうw ▼以下、ネタバレ感想 |
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物語は2つのパートが章ごとに交互に描かれます。
1つ目は、無人島での廃墟探索ツアーで死んだ彼女を想う男性パート。島の外視点。 2つ目は、無人島での廃墟探索ツアーの様子。島の中での視点。 廃墟探索ツアーの面々はSNSで知り合った者達。お互いをハンドルネームで呼び合う。その島で事件が起きます。 さて、ピンと来る方、大いにいると思います。個人的に『十角館』を思い浮かびました。同じ講談社ですしね。そういった本格ミステリの設定を感じながらの読書は楽しかったです。 ただ、なんというか薄味さを感じました。コテコテではなく、ライトミステリです。 また、菅原和也作品はアングラや微グロ、刺激的な表現が多かった印象ですが、本書の講談社タイガからの作品は大分マイルドになっていますね。持ち味の良さがあまりなく特徴が見え辛い平凡な作品になっている印象でした。 表紙・タイトル・あらすじが、中身の雰囲気と合っていないのも残念。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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締め切りに間に合わせる為に、作品を無理矢理終わらせて商品にしたような結末がひどい。初稿のような継ぎ接ぎ展開。
辛口で述べますが、作品が未完成で煮詰まっていないと感じます。390ページの本で、300ページ頃から突然の様変わりで何もなく終わり非常に残念でした。 物語は、快楽殺人鬼の人形作家の話。性機能障害をもつ主人公は自分の作品である人形とそっくりな人の死体となら交われる。女性を狙う犯罪シーンと人形作家の犯罪心理が描かれていく流れ。エロさもグロさもなく、話の展開の意味も見いだせず、ただ女性を殺すいろんなパターンを考えてみました、というようなアイディア帳を読まされた気分でした。刺激も見所が無くて面白くない。 人形作家の心理についても徐々に読者を魅了するような展開ではなく、急に興ざめするような流れで、読者は置いてけぼり気分。 正直まったく面白くない作品でした。 良かった所は、人形を窯で焼く所と火葬のシーンをシンクロさせた表現。死体と人形、どちらも動かない人の形をしたものに対しての狂人の考え方。ここらへんは楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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気軽に楽しめた群像劇でした。
同著者の『悪夢の観覧車』も群像劇でしたが、このシリーズはそういう系統でしょうか?好みなので他の作品も読んでみたくなりました。 あらすじは、女子高生が交通事故に遭遇し、轢かれて瀕死のサンタクロースから身代金を託される所から始まる。 誘拐犯からの指示、意図しないアクシデント、主人公と読者は同じ目線であり、何が起きているか翻弄される物語は先が気になる面白さでした。章を変える毎に視点が変わり徐々に全貌が分る構成も面白い。コンパクトな群像劇ながらミステリ仕掛けの真相もあり気軽に楽しむのに良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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B級サスペンスですが、分かりやすい展開と読みやすい文章でサクッと楽しめた作品でした。
あらすじは、40代男性、仕事は順調だが家庭に悩みを抱える主人公。気分転換に少しハメを外そうと六本木のクラブへ足を運びナンパしようにも上手くいかず、、、そこに人生のコーディネーターと称する男が現れ、事件に巻き込まれる。という流れ。 読者ターゲットはサラリーマン男性。分かりやすい設定と問題。読者層の非日常が巧く並べられていると思いました。どんな展開になるかは読んでからのお楽しみですが、深く考えないでシンプルにサスペンスを楽しめた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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堂シリーズ4作目。シリーズ全7作の内、中間にあたる本書は予め著者が構想していた転換となる作品というだけあって、驚かされる一面がありました。この先どうなっていくのだろうと、主要メンバーが固まってきた本シリーズの今後が楽しみです。
孤島を舞台に30m四方の立方体の堂で事件が発生。 堂の構造から密室ものミステリを予想していたのですが、本書は瞬間移動ものでした。一時行方不明となった人物が巨大空間の中に被害者として現れる。どうやって移動されたのか?が謎となります。館ものの大トリックとしては島田荘司っぽい壮大さで好みです。ただ、物語やその事件の背景の魅力が弱すぎて、残念な印象でした。トリックは素晴らしいです。シリーズとしての仕掛けも相まって、名作に成りそびれた勿体なさが残りました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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異世界転生×本格ミステリ 第2弾。
2作目も相変わらず面白かったです。 1作目のような登場人物・舞台紹介の必要がない為、本書は本筋に集中した物語が楽しめました。 舞台は「帰らずの地下迷宮」。ダンジョンもの。 ファンタジー小説としてダンジョン内を進む冒険ものとして楽しめました。さらにミステリとして、ファンタジー特有の一方通行の壁の中の室内で起きる密室・消失事件、毒殺もの、疑心暗鬼、と多くのガジェットを盛り込んだ作品。読者への挑戦までのワクワク感は見事ですし、解答編もそうきたか!と物語の作り方の巧さに驚きました。 ファンタジーだから作れるダンジョンものの新しさ。 そのダンジョンという特性を十二分に活用しミステリへ昇華した素晴らしい作品だと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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共有された夢の中での殺人という特殊ミステリ。
表紙が古臭いですが2020年の作品。 極秘人体実験プロジェクト・インソムニア。夢を共有するチップを頭に埋め込まれた被験者達の生活実験。今の状況は夢なのか現実なのか。夢の中で死体となった人物が、現実世界でも死んだらしい。何が起きているのか。という流れ。 読んでみると、岡嶋二人『クラインの壺』と川原礫『ソードアート・オンライン』が思い浮かぶ内容でした。おそらくこの2つが好きで著者なりにアレンジした作品かと思うほどでした。映画『パプリカ』もそうかな。虚構と現実の曖昧さ、仮想現実世界での死は現実の死となる。というニュアンスや仕掛けがそのままで、個人的にとても既視感があった内容でした。 その感性で読んでしまうと、仮想現実ではなく「夢」という設定に対しての意味に期待をしていましたが、特に意味づけを感じられなかった為、二番煎じ感が否めない作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学園ラブコメミステリ ☆7+1(好み)
タイトルと表紙の雰囲気からTheラノベを感じさせますが、中身は謎解きありの学園ミステリ。殺伐さがない各事件の内容と、読後感が非常に良い作品でした。 まずミステリとして面白いのは2話目の『史上最薄殺人事件』。 絶版となって入手不可能になってしまったミステリのシリーズ最終巻。その謎をカバー情報から解き明かすもの。あらすじ・登場人物の設定の情報を元に、ミステリの作法を用いて推理する話。ノックスの十戒や安楽椅子探偵というワードもでておりミステリ好きの読者の心をくすぐります。 キャラクターものとしても男主人公+双子姉妹の三角関係的なトリオも良い感じ。ラノベとラブコメの定石然り、3人で謎を解く探偵仲間の雰囲気がとても読んでいて楽しかったです。 ミステリの謎解きだけに注目すると物足りないですが、ライトに楽しむミステリとしては非常によい作品。 個人的な評価ポイントとして、死なないミステリで、可愛い双子姉妹の学園ラブコメ、事件の真相が悪意なく救済となっている点が好みでした。続編も期待。 |
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これは好みが分れそう。
あらすじは、連絡が取れない叔父の状況を確認する為、勤め先に訪れると極秘プロジェクトの任務中だった事がわかり、詳しく調べていくとこの会社は日常では触れる事がない非現実的な闇会社であった。ここで何が起きているのか?という流れ。 ミステリの傾向として、閉鎖的な村、宗教もの系統の限定的空間で条件を付与する特殊設定ミステリです。 推理の過程やサスペンスを楽しむものではなく、明かされる真相をどう感じるかが好みの別れ所。前半の会社の異常な体制、会長の存在と社員の意識、これらは丁寧に描かれておりとても惹き込まれました。舞台の状況作りはとても面白く描かれています。一方、事件が起こり状況を把握する流れは退屈でした。麻雀の話然り、何か繋がりがあったとしても、脇道に逸れる内容が多く感じてしまい無駄を感じました。 終盤の真相は確かに面白いのですが、この作品の系統は既視感を感じてしまい、驚きを得られませんでした。仕掛けは面白いけど読み物としては好みに合わず。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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