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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数155件
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シリーズ3作目。今回も面白かった。 ☆7(+1好み補正)
本シリーズは1作目から順番に読むことを推奨します。 本書は『生者の言伝』と『覗き窓の死角』の2編からなる中編集。どちらも倒叙ミステリです。 『生者の言伝』は倒叙ミステリドラマの古畑任三郎の一話目『死者からの伝言』のタイトルオマージュ。 犯行が行われた洋館に豪雨で立ち往生した翡翠と真が訪れるという始まり。この導入は古畑任三郎と合わせてありますが中身は別物。 倒叙の作風は行き当たりバッタリな犯人の慌てふためく様が楽しめるユーモアミステリ調。ユーモア&ドタバタのまま終わるかと思いきや、しっかり手がかりを得て推理して真相に到達する様が見事でした。明かされていない問題の癖の解答についてはネタバレで後述。 『覗き窓の死角』 「翡翠ちゃんかわいい」と言ってる場合じゃなく感じる程、城塚翡翠の内面を掘り下げた物語でした。 ※これも次回以降に向けて読者をミスリードさせたキャラ作り……と言われたらショックですが(汗) 倒叙ミステリなので犯人は明確なのですが、どのような犯行だったのかは伏せられているのが面白い。提出されている手がかりを元にロジカルに推理した結果、犯行方法が明らかになるのが見事でした。倒叙ミステリというより本格的な倒叙推理小説であり、推理をする楽しさが堪能できました。 どちらもミステリとしての楽しさは然ることながら、キャラクターの良さ、翡翠と真のユーモアあるやり取りの緩急が面白く読んでいて楽しい読書でした。続編も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日本推理作家協会賞受賞の短編『#拡散希望』を含む短編集。
ネットやSNSなど、現代要素を活用したミステリでとても面白かったです。 短編集として5つの物語がありますが、個人的に全て面白く読めました。 人に薦める時の懸念点としては、真相がわかりやすくて結末が見えすぎる事です。人によっては驚きがなくて物足りないという感想になると思いますが、個人的には良い方向で感じてまして、現代的な内容を扱った本書はミステリ初心者や本をあまり読まない人にとても刺さる内容だと思いました。 タイトルに組み込まれているハッシュタグ然り、若者を対象としたSNSでバズリ易い本であるとも感じます。最近の若い読者はネタバレを許容する傾向があり、先に真相を知って安心してから物語を楽しむ層が一定数いる為、そういう層にも好まれる本という姿を感じました。 『惨者面談』『ヤリモク』『パンドラ』の3作品は結末が読めやすいのでそこにどう導くのかを楽しみました。 『三角奸計』はリモート会議をネタとしたミステリ。これは現代的な仕掛けで面白い。 『#拡散希望』は第74回日本推理作家協会賞の短編賞受賞作品であり、その名に恥じない見事な真相の短編でした。この仕掛けは過去の作品や映画にもありますが、現代要素が効いていて見事な伏線回収と個性を生み出した作品でした。 本書は良い意味で現代要素を取り入れたミステリとなりますが、悪い意味では賞味期限があります。 SNSやアプリやネットの状況が50年後には変わったものになるからです。ただでさえITの状況は1年で移り変わりが早い為、本書で使われている内容がすぐに古臭くなってしまう事でしょう。 未来における名作として名を残すのは難しいかもしれません。ただ、2020年代の今のネタを取り入れた短編ミステリとしては丁度良いですし、巧く考えられた作品集ですので早めに読書推奨な作品です。 |
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これは面白かったです。
2022年度の江戸川乱歩賞受賞作品。 地球に小惑星が衝突し滅びる定めとなった終末もの。主人公はそんな世界の中で自動車教習所に通い運転を学んでいる。という始まり。 世界崩壊を舞台になんで教習所?というチグハグさがまず印象的でした。 江戸川乱歩賞は昨年『老虎残夢』の特殊設定ミステリが受賞した事から、今年も特殊設定ミステリを採用しエンタメ系の流行に乗る変わり種かと思った次第です。 ですが先に伝えておきますと、中身は災害小説としての日常や社会的テーマも絡めた堅実な本格ミステリでした。 災害小説における死体が道端に転がっているなどの非現実的要素が日常化されており、生きる希望を失った者、最後まで生き抜こうとする人々のドラマを感じる物語。教習中の車に乗り不慣れな運転で街を移動する様はロードノベルのような味わいも感じられました。主人公は著者と同じ23歳の女性。社会に出たての者の不安や、弟の面倒を見る姉としてしっかりしなくてはいけない気張った心境など主人公の等身大が描かれているのが印象的でした。 総じて文章が大変読み易く情景が浮かびやすいのでドラマや映画を見ているような気分にも感じた次第です。 ミステリとしては大きなインパクトがある訳ではないのですが、作り方が巧いと感じる所が多くてそれでこうなっているのか~と印象に残る所がしばしばありました。 終末ものと自動車教習の組み合わせは最初不思議でしたが、読み終わってみれば納得。 結末&読後感も良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ホラーとミステリの見事な融合。かなり好みの作品でした。
『横溝正史ミステリ&ホラー大賞・読者賞』の名にピッタリの作品です。 舞台は音信不通となってしまった知人の状況を探る為に訪れた村。 知人は23年に一度行われる『ナキメサマ』の儀式の巫女に選ばれた為、儀式開催の日までは誰とも会えないという事で、暫く村に滞在する事に。 滞在して間もなく異様な人影に遭遇したり、さらには無残な死体が発見されて……この村で何が起きているのか?という流れ。 田舎・集落を舞台にしたホラー作品ですが、よくあるホラーと違うのは怪異というものの存在の解釈です。 他作家を例に説明すると、三津田信三や京極夏彦の作品群ではそれが存在しているかどうかを曖昧にしたり、科学的、現実的に解明を試みたりします。本書の場合は現実には存在しない怪異というものが実在すると前提条件として決めており、その怪異はどんな特性なのか理論的に考えている様が新鮮でした。その為ホラー小説としての雰囲気や恐怖感を楽しみつつ、ミステリとしてのロジックや驚きまでも味わえる為、2度美味しく飽きさせない面白さでした。 賞の応募作なので出し惜しみせずやり切っている表現も好感。後半なんて正にそうで、ホラーとしての演出、後味、そしてそれがミステリとして機能させた着地など、物語の内容としては好みが分かれそうですが個人的には大好物でした。今後のシリーズ展開に期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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とても素晴らしい作品でした。
まず著者名が伏せられていたら米澤穂信と気づかないぐらい、文体まで時代小説に変えているのに驚きます。文章作りにまで拘る、これぞ作家の作品という意気込みを感じました。 物語は、史実に基づき"黒田官兵衛"が幽閉されていた期間、有岡城での出来事をミステリ仕立てで描かれた作品です。 第一章『雪夜灯籠』では、捕らえていた人質が雪に囲まれた納戸で殺されたという雪密室。何故どのように行われたのか不明。このままでは城内で混乱が起きる。有岡城の当主、荒木村重が苦肉の策として幽閉した黒田官兵衛に助言を仰ぐという流れは安楽椅子探偵もの。牢獄の中の名探偵役いう構造は『羊たちの沈黙』のレクター博士を想起させました。 その後も短編作品のように各章ミステリ物語が展開します。 どれもこの時代ならではの武士や民の心情を活かした構造に驚かされた作品集でした。 そして最終章は、史実上謎とされる『そもそも何故、荒木村重が織田信長を裏切ったのか』、そして『黒田官兵衛が殺されず幽閉されていた時に何が起きていたのか』。それらの1つの解法として物語が見えてくるのが見事。ミステリ的な演出や戦国時代の背景など複雑に絡まった物語は本当に圧巻でした。そして一言では説明できない重く深みある物語なのが凄い。 読み終えて絶賛ではありますが、実は初読30ページ程で挫折しそうになったのも本音です。 私は歴史や時代ものが超苦手。人物や当時の土地勘がさっぱりで、最初のページから頭に入らずでした。 同じような人への参考です。 なのでひとまず"黒田官兵衛"で検索して出てくるページをざっと下調べ。 史実となる有岡城での幽閉とその後を先に把握しました。 再び本書を開くと史実通りの展開から始まるのですんなり世界に入り込めました。そのうち文体にも慣れて没入です。本当に序盤は苦手な人は苦手だと思うので、歴史が苦手な方はちょっとだけで十分なので下調べ推奨です。 読後はこの時代の歴史に興味が沸き、wikiを巡回。 苦手な歴史もこういう作品に出合えると興味が沸きます。素晴らしい作品でした。 |
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著者の着眼点とそれを投げかけるメッセージ性に驚かされた作品でした。
テーマの内容から中高生に刺さる話であり、大人が読んでも学生の頃を回想し何かを感じてしまう事でしょう。雰囲気の部類としては気分が晴れるものではないので、イヤミスに近しい内容でずっしりとさせます。 前情報は少ない方がよい為、あらすじの範囲内で簡単に紹介しますと、本書の分類としては今でいう所の特殊設定ミステリ。 “他人を自殺させる力”の存在を感じさせる事で、非現実的な舞台とした新たなルール設定の場において、誰がどのような方法で、何故行われているのかの謎をミステリとしての求心力としています。 ただ個人的には本書はミステリとして読むよりも、ミステリを活用した暗黒面の青春小説という印象の方が強い。主人公や犯人の動機に共感はしたくないんだけど、なんか分かってしまう。そのバランスの描き方やテーマの選出が著者の凄い所だと感じます。 著者の作品を読むのは本書で2冊目なのですが、どちらも伏線や仕掛けは楽しむもの以上に伝えたいテーマを印象付ける作用で使われており強く心に響いた作品でした。他の本も読んでみたくなりました。 |
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勝手に感じる著者の持ち味が十分に堪能できた作品でした。
内容はあらすじ通りの凌辱・暴力・官能作品なのでそれらが苦手な人には不向き。というか著者の作品はこれらを扱う作風です。で、何が魅力かというと、それをどう表現して読ませるか、文章で読者を惹き込む小説としての作品が面白いのです。本作は映画化もされており、そちらは痛さエロさの映像での魅力作品。それとは違い、本書は主人公女性を中心に異常な場を覗き見るような、体現する魅力を感じる作品となっていました。惹きこまれて止め時が見つからず一気読みでした。 小説として意味があり、読まないと伝えづらい内容なので、ちょっと視点を変えて印象に残った箇所の感想です。 文章作りで『一行空け』が多くみられた作品でした。 一区切りとなる文章が数ページ単位の章区切りではなく、1-2ページ内で細かく一行空けをして場面や視点がコロコロ変わる印象を受けました。また、同じシチュエーションを二者から描いている所もありました。勝手な想像ですが、全体像の物語が先に決まっており、思いついたシーンからバラバラに文章化して枚数を重ねたような作り方に感じました。一見すると読書のブツ切り感で集中力が途切れそうなのですが、本作はそれが効果的に使われています。また後述。 対義する要素が多く散りばめられていると感じました。 拉致監禁され生き残った少女の過去と現在。加害者と被害者。現在の仕事における医師としての表、M嬢としての裏。不妊治療として医者と患者。内面と外面。やさしさと暴力。生者と死者。という具合で所々に対義するものが散りばめらているのを感じました。 それらを一行空けの多い場面転換により、色々なシチュエーションで読ませ、バラバラに断片的に得る情報の繋がりの面白さがあり、結果として読者を惹き付けるプラスの構造に感じた次第です。読書序盤は文章がよく途切れるなと思っていたのが、終盤はこの先どうなるのかハラハラドキドキに代わった次第。 ラストの締め方も巧いです。 あらすじ通り物語の内容としては万人薦めるものではないのですが、小説のフィクションだからこその、怖いもの見たさで異常な世界を覗き見る欲望の作品としては著者作品は癖になる次第です。新しい刺激を受けた作品でした。 |
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前作必読。必読理由は前作がとても名作でありそれを楽しんでもらいたいからです。シリーズ2作目の本書は前作のネタバレが含む為、せっかくならシリーズ最初から読んでもらいたいです。
本書は倒叙ミステリを題材とした3作品が収録。 犯人視点のミステリ。犯人を追い詰める探偵役が前作同様の城塚翡翠。キャラクターがもう出来上がってますね。華やかさ、外見、性格、口癖、とても個性的で魅力ある探偵でかなり好みです。映像映えもするので、そのうちドラマや映画になりそうだと感じました。 キャラクターも然ることながら、話の内容はしっかりとした本格ミステリ。決してキャラだけの本ではなく謎解きがとても面白いのが魅力でした。本文に作者の想いが書かれていましたが、ミステリの評価はどれだけ驚かせたかという分かりやすい指針になりやすい傾向があります。地味でもちゃんとロジカルな推理を描いてこそ推理小説・ミステリなんだという気持ちが感じられる内容でした。 オマージュ・パロディとして古畑任三郎を演じる城塚翡翠も面白い。倒叙ミステリにも分類が色々ありますが、正に古畑任三郎構成で、探偵が犯人を追い詰める系の内容です。何が手がかりになったのか、どう追い詰めるのか、推理要素1つとっても複数の手がかりが散りばめられていたのが見事でした。また、それだけでは終わらせない著者の仕掛けもナイスで、短編集だから軽めの作品かなと思いきやしっかりとした仕掛けにヤラれました。 カクテルで"サンドリオン"とか、自身の作品(デビュー作のタイトル)を小ネタで挟んでいるのも気づくと楽しい。女子高生ネタは今回自粛してましたね。※気づかなかっただけかも。百合に行ったのかな。。。 などなど楽しい読書でした。シリーズ化で続編希望です。 |
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戦時中にタイムトラベルしてしまう戦争×恋愛小説。ミステリではありませんでしたがとてもよい作品でした。
中学2年生の女子生徒。思春期・反抗期。学校では不良模様。母親とケンカをして家を飛び出した先で、意図せず戦時中にタイムトラベルしてしまったという流れ。 戦時中を描いた作品で、私が直ぐに思い浮かぶのは『はだしのゲン』『火垂るの墓』という70-90年代の昔から名前が挙がる作品があります。そういう名作と並ぶかは分かりませんが、現代の思春期の子たちに受け入れやすい戦争もの作品としてとても良い内容であり、2000年以降の戦争ものとして名が挙がるような作品に感じました。 思春期の悩みや不安を持った主人公が戦時中にタイムトラベルする様子は現代作品っぽいですし、現代を知っているからこそ、戦時中の不便さ・辛さをよりよく痛感する主人公の心境がとても感じられます。戦時中にタイムトラベルして混乱している時に助けてもらった少し年上の男性への恋心。ただし彼は特攻隊員であったという、その意味を感じる展開など、戦時話と恋愛小説を巧く絡めて描かれており惹きこまれます。 とても読み易く鬱屈する内容ではない為、戦争ものを中高生が触れる1冊としてオススメです。 |
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『紅蓮館の殺人』に続くシリーズ2作目。1作目は読んでおいた方が良いです。
前作では名探偵の苦悩が描かれ、すっきりしない読書模様でしたが、本作はその逆境からの成長を感じる前向きな展開。その名探偵復活にふさわしいミステリ要素が豊富な館ものの本格ミステリです。 圧巻となるのが幾重にも重なる事件模様。600ページのボリュームの本書ですが数冊分の仕掛けを盛り込み、ロジカルに解き明かす展開には驚かされました。館で起こる連続殺人。所々に海外古典のオマージュを感じ気づけた所は純粋に楽しい。そして巧く現代的に扱われているのが見事で、コテコテの本格ミステリを現代風に楽しめた作品でした。 前作が好みに合わなかった人でも本格ミステリが好きなら本書はとても楽しめる作品です。むしろ1作目を読んでいるなら本作は外せない一作です。おすすめです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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猟奇殺人犯の名前があなたと同じだったら……?
現代的な問題を内包した社会派のミステリ。 読書前は全員が同姓同名という題材のネタ的な作品かと思っていました。キャラの書き分け小説?ぐらいの印象。 が、読んでみたら速攻で考えを改めます。現実的で起こり得る社会的テーマを持つ考えさせられる作品でした。 未成年による児童殺傷事件。世間を賑わせる事になった猟奇殺人が発生。警察やメディアは未成年事件である事から犯人の名前は非公開。この時点では他人事のように犯人の名前を公開しろ!と世の中が騒ぎ立てます。ここら辺の導入は神戸の事件を思い出させました。当時と違うのは現代のインターネット社会により、SNSによる情報の拡散、特定班、不確かな情報と思い込み、炎上……。という感じで、いざ公開された犯罪者の名前が自分と同じだったという展開。名前が同じである事による悪い方向への運命の転換が描かれていきました。 本書はこの問題をある種のシミュレーションのような感覚で読みました。 どういう被害が発生するのか。SNSによる誹謗中傷の攻撃者やその活動のきっかけとなる情報源、でも実はその情報そのものが思い込みであり真実とは異なる可能性も秘めている。拡散していく分かりやすいステレオタイプの表面と、真相となる裏側の話。ここら辺が現代的な社会的テーマで問題喚起を打ち出しつつ、ミステリとしても楽しめるようになっているのが見事でした。 ちょっと思うのが表紙が地味すぎというかエネルギーがないというか、書店や新刊情報で見てても印象に残っていませんでした。 たまたまネットの感想が流れてきて目に留まって読んだ次第。 現代的な社会派ミステリとしてオススメなのでもうちょっと広まって欲しいなと感じます。良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学園ラブコメミステリ。☆7(+1好み)
版元レーベルの兼ね合いでタイトルと表紙が超ラノベテイストなので、ミステリ読者には敬遠されそうですが中身はちゃんと謎解きしている学園ラブコメミステリです。 シリーズ2作目で変にキャラものや別ジャンルになる事なく、1作目から順当に学園内の日常を舞台にしたミステリをしているのが好感でした。扱われる謎も現代寄りで新鮮。同級生からの相談で、ネット上の知り合い調査やSNSの文脈などを元に人物を推測するというものが扱われます。"学園ミステリ"というジャンルは昔からありますが、時代設定が現代的になっています。 本書は謎解きに重みがあるのではなく、謎解きを軸にそれに関わる同級生や先生たちとの交流を描く青春小説にも感じられました。山田姉妹と主人公の掛け合いも良く、学園内の悩み事を好奇心だけでなく、無下にはできない優しさが感じられるのが良いです。1作目以上に皆との接点が増えていき充実した学校生活を感じられる展開でした。さらに巧いのが3話目に至ってはその学園生活の姿に対比する形での物語が扱われている事。この年代の負のテーマがあり、雰囲気を壊す事なく巧く扱われている事が印象的でした。 前作同様に謎を解く事で人の救済となっている点が大変好み。 キャラクターの明るい雰囲気や会話の流れが優しくポジティブなので読んでいて嫌な気持ちにならないのが良い。作者の性格なのかな。このシリーズは好みで続編希望です。 余談。 本書は去年の発売時期11月ごろに購入しましたが表紙が水着だったので気分的に夏まで寝かせました。読んでみたらリアルな季節は関係なくて物語内が1巻の高校生活新学期から始まり、そのまま時間軸が夏という事でした。イラストは明るく可愛く作品にマッチしていて好み。1作目の表紙はミステリ読みにも伝わるシャーロックでしたが、本書の水着は振り切っていきなり攻めたなと笑えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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土砂崩れで避難した洋館を舞台に行われる人狼・デスゲームもの。☆7(+1好み)
毎夜、仲間に化けている人狼を見極め投票をする。見事狼を当てられれば助かるが外せば喰われるという人狼をモチーフにした作品。 児童書ミステリなので子供が読んでも平気。誰が狼なのか疑心暗鬼や謎解きの様子をシンプルに楽しめた作品でした。 ある程度デスゲーム作品や人狼もの作品に触れている場合、捻った考え方を持つと思われるので想像の範囲で真相が見えてしまうかもしれません。ただ本書のレーベルの小中学生をターゲットに考えると巧いバランスで仕掛けてきていると感じます。子供思考での誰が狼なんだと仲間を疑い悩む展開が良かったです。 個人的にデスゲーム作品は好きで、本書は読み易くちゃんと仕掛けがある内容だったのでシリーズを追っかけようと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ストーカーが主人公のホラー作品でありますが、ラブストーリーとも思える不思議な体験が得られた作品。
学生時代に出合った女性をふと思い出した主人公。彼女の現在を興信所を使って調べ、家に侵入しつつ盗聴・盗撮などストーカー行為をする日々。ただそこで見知った現在の女性の暮らしはDV夫によって奴隷となっている姿だったという流れ。 最初の数ページは主人公のストーカー行為に気持ち悪さを感じましたが、それ以上にDV夫の異常な暴力の姿に嫌悪感を抱きました。著者の作品の持ち味として凌辱シーンとなる暴力と性描写が描かれますが、本作は単なる小説の娯楽要素ではなく、DV夫の狂人を描き、圧倒的な悪の表現と手が出せない恐怖を植え付ける効果として描かれ読ませます。 よくあるストーカー作品はストーカーをする者が敵位置にいるのですが、本作はどちらかというと応援したくなるようなヒーロー側の立ち位置。不幸なヒロインの女性、それを盗聴・盗撮して見る事しかできない主人公。陰の者の思考や行動がよく表されており、それぞれの登場人物がどうなっていくのか中盤からは先が気になる一気読みでした。 現実的には好む内容ではないのですが、1つの作品として異常者の恋愛作品として楽しめました。 著者作品の傾向で暴力と性描写が多いのでこれらが苦手な人にはオススメできませんが、 その点を踏まえた上で異常な恋愛作品を求める方にはオススメです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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AI探偵シリーズだからこそ可能となる奇想の仕掛けに驚きました。
本格ミステリが大好きな気持ちが伝わる要素やセリフが多く散りばめられており読んでいて楽しい作品でした。☆7+1(好み補正)。 注意点として本作は単体では楽しめないです。 シリーズを順番に読んで作品の性質を把握した上で、著者が仕掛ける普通とは違ったミステリが味わえる作品となります。 シリーズの好みとしては、1作目は好みで2作目が思ったのと違う方向性で敬遠していたのですが、3作目の本書は前作の苦手意識が杞憂に終わり、ミステリのお約束をお約束としてそのまま扱う面白さや、AI探偵&主人公の掛け合いなど読んでいて楽しい作品となりました。 "四元館"という"館もの"作品の中で斬新さを打ち出す仕掛け。AI探偵シリーズという特性だからこそ納得できるバランスが見事でした。どんなにぶっとんでいても、そこに辿り着くまでの事前説明や要素がちゃんと小出しで盛り込んでいる丁寧さを感じます。 真相解明の終盤の展開と演出はかなり巧かったです。 犯罪AIがコーディネートする事件という設定もよく、今後の事件に期待が持てます。 主人公&相以と以相の物語としても今回は面白く楽しめました。次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者初読み。物凄く惹き込まれた作品でした。
作品単体が凄いのか、著者の他の作品もこのクオリティなのか未知ですが、場や人物の情景が頭に浮かぶ素晴らしい地の文でした。あらすじから感じる内容は、苦手意識を感じる古めかしく難しそうな内容だったのですが、読んでみたらスルスル頭に入り、先が気になる一気読みの面白さでした。 物語は孤児の主人公が古くからの伝統風習を重んじる名家の養子になる所から始まります。読みやすいと感じるのが、主人公と読者の状況不明の感覚がシンクロした構成である事。名家に入り、そこで出会う人物、風習、仕来り、役目、といった情報と理解が、主人公を通して徐々に把握していく為、複雑な背景でも楽しむ事ができました。 ミステリというよりオリジナルの物語を楽しむ事に趣があります。ただ、あの時何が起きたのか、町で何が起きているのかが見えてくる終盤はミステリの解決編の様で楽しめました。一同が集まり一風変わった展開での解決編だったなという印象も得られました。 少し余談ですが、島田荘司・御手洗シリーズの龍臥亭事件ぐらいまでの初期の頃のワクワク感を思い出しました。ミステリより物語に夢中になっていたら最後何かが明かされる感覚。毛色は違うのですが、個人的にそんな感覚を思い出すほど惹き込まれた次第です。 扱う内容の雰囲気は地道で重苦しいものなのですが、読書中はそうは感じさせず綺麗に描かれている物語。素晴らしい作品でした。他の作品も手に取ってみようと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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個人的にかなり惹き込まれた作品でした。とても面白かったです。
物語は特殊設定もの。 世の中に『天使』という存在が突如現れた世界。人間の罪を監視し、2人以上殺したものは地獄に引き摺り込まれる。 連続殺人という行為があり得ない世界の中、孤島の館にて事件が発生していく。 特殊なルールによるミステリとして期待されがちですが、個人的にはミステリとして楽しむというより世界観の方が楽しめました。天使自体の存在、天使が降臨した事により変わった世の中、犯罪が減り探偵の存在意義の変化。世界観がとても丁寧に描かれていたのでSFやファンタジーものとして惹き込まれた次第です。 現実的な要素で代弁すると世界が変わる"災害もの"としても捉えられます。震災・隕石での崩壊と違い、天使という切り口で世界の変容の新しい物語を作り、そこにしっかりと本格ミステリを絡めているのが見事でした。 登場人物達も分かりやすく特徴があり読んでいて面白い。キャラの雰囲気は明るく魅力的なのに対して世界は悲壮感に包まれている対比を感じました。主人公の探偵としての悩み、過去の仲間達との良い思い出と苦悩。色々な感情も心に響きました。 タイトルから感じますが、ミステリや事件要素ではなく、探偵とは何かに趣がある内容。 物語としてとても面白い作品でした。 |
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『ワトソン力』というネーミングセンス、設定勝ちな1作。(☆7+好み補正)
目立たず平凡な和戸宋志。彼は周囲の人達の推理力を飛躍的に向上させる能力を持つ。 ゲーム用語で言うと味方に推理力のバフを与えるエンチャンターの人物。本人以外が名探偵になるという設定。これが非常に面白い。 著者の過去作品のイメージは事件と解決のみを主軸とした問題集のようなパズル小説の印象でした。本書もその傾向は変わらずなのですが、登場人物皆を名探偵の如く推理させる事により、従来の解法1つだけにとどまらず、1つの事件・問題に対して豊富な謎解きシーンが楽しめる作品集に仕上がっており、読んでいて楽しかったです。 映像・ドラマ化も面白そうです。誰もが名探偵役になれる設定って斬新ではないでしょうか。俳優さん皆が主役みたいな名探偵役が出来るわけです。そういう点でもこの『ワトソン力』という設定はかなり発明な印象で驚かされました。 トリックや真相はパズル小説の様で現実的ではない感じではありますが、今回はそんな事は気にせずユーモアある雰囲気とミステリの楽しさを味わえた一冊でした。おすすめです。 |
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帯やあらすじにある、"衝撃"とか"読後、恋がしたくなる"の過剰なPRは期待とのギャップで悩ましい所でありますが、作品自体は綺麗にまとまった青春ミステリで良かったです。ティーンエイジャーを狙った強い宣伝文句にあるような驚きや派手さはないので、宣伝は見ないか気にしない事にして読めると良いかもです。
恋愛小説やミステリの要素はあれど、個人的に思った本書の雰囲気は救済や更生の物語。マイナスからプラスに転じる場面に立ち会える作品に感じました。そして気分が悪くなるような点はなく、若者向けの丁度よいバランスで描かれている点が好みでした。 読後に思う意外な点は、社会的テーマが結構散りばめられており、これらはよくあるミステリだと重く描かれる内容なのですが、本書はそう感じさせてなかった所です。 主人公は誘拐犯の父を持つ息子。 その父の事件の影響もあり、重い過去を引きずりながら日陰者として暮らす日々。その彼が夜中の墓地でとある少女と出会った所から歯車が動き出す。という流れです。 巧くまとまっていると感じる大事な点は、タイトル『"だから"僕は君をさらう』の"だから"の理由が納得できる点。ミステリの衝撃というものとは違うので期待し過ぎないで欲しい点ではありますが、理由はちゃんと共感でき、そしてそれが主人公の優しさや決断する成長に結びつき、周りの知人友人達との絆が感じられる為、読後感は良いものでした。 気になった悩ましい点は主人公の年齢設定が29歳な所。歳の差や、年齢に対しての思考や雰囲気が幼いのが引っかかるので、もっと主人公が若ければより納得できそうな気持が芽生えます。が、この年齢設定は物語を構築する上でこうなるというのは理解できるので、人物配置含めてかなり考えた結果だと感じました。だから著者はこういう設定している。と感じる点が多く、時間をかけて構築された思い入れの強さも感じた作品でした。 ミステリでの誘拐作品は色々ありますが、重くなく、恋愛もので良い雰囲気の他の作品が思いつかないので、そういう点でも新鮮で楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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不治の病、難病ものジャンルの恋愛小説+少しミステリ。かなり惹き込まれ感動しました。
この手のジャンルや設定はよくあるゆえ、文章・表現力など作家の力が試されますね。読んでいて情景や人物の心情がとても丁寧に描かれています。名文章や名言を所々に感じる作品であり小説の良さを感じる読書でもありました。 ミステリを期待して手に取ると違うものになりますので、恋愛小説を主な期待として読むと良いです。 男女の内面にある心模様、すれ違い、もどかしい気持ちなど、読んでいて楽しかったり心苦しくなったりと青春模様も堪能しました。 本書は下調べせずに前知識が無い方がよいです。表紙とタイトルが目に留まり、あらすじに"恋愛ミステリ"と書かれていたので衝動買いした次第。結果良かった。 他作で個人的に好きな恋愛ミステリがあるのですが、出版日を見ると本書の方が早かった。このアイディアは本書の方が先だったんだと再び味わえたのも良かったです。 世界で一番美しい言葉。ここは完璧な演出で心を持ってかれました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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