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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数147件
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戦時中にタイムトラベルしてしまう戦争×恋愛小説。ミステリではありませんでしたがとてもよい作品でした。
中学2年生の女子生徒。思春期・反抗期。学校では不良模様。母親とケンカをして家を飛び出した先で、意図せず戦時中にタイムトラベルしてしまったという流れ。 戦時中を描いた作品で、私が直ぐに思い浮かぶのは『はだしのゲン』『火垂るの墓』という70-90年代の昔から名前が挙がる作品があります。そういう名作と並ぶかは分かりませんが、現代の思春期の子たちに受け入れやすい戦争もの作品としてとても良い内容であり、2000年以降の戦争ものとして名が挙がるような作品に感じました。 思春期の悩みや不安を持った主人公が戦時中にタイムトラベルする様子は現代作品っぽいですし、現代を知っているからこそ、戦時中の不便さ・辛さをよりよく痛感する主人公の心境がとても感じられます。戦時中にタイムトラベルして混乱している時に助けてもらった少し年上の男性への恋心。ただし彼は特攻隊員であったという、その意味を感じる展開など、戦時話と恋愛小説を巧く絡めて描かれており惹きこまれます。 とても読み易く鬱屈する内容ではない為、戦争ものを中高生が触れる1冊としてオススメです。 |
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『紅蓮館の殺人』に続くシリーズ2作目。1作目は読んでおいた方が良いです。
前作では名探偵の苦悩が描かれ、すっきりしない読書模様でしたが、本作はその逆境からの成長を感じる前向きな展開。その名探偵復活にふさわしいミステリ要素が豊富な館ものの本格ミステリです。 圧巻となるのが幾重にも重なる事件模様。600ページのボリュームの本書ですが数冊分の仕掛けを盛り込み、ロジカルに解き明かす展開には驚かされました。館で起こる連続殺人。所々に海外古典のオマージュを感じ気づけた所は純粋に楽しい。そして巧く現代的に扱われているのが見事で、コテコテの本格ミステリを現代風に楽しめた作品でした。 前作が好みに合わなかった人でも本格ミステリが好きなら本書はとても楽しめる作品です。むしろ1作目を読んでいるなら本作は外せない一作です。おすすめです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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猟奇殺人犯の名前があなたと同じだったら……?
現代的な問題を内包した社会派のミステリ。 読書前は全員が同姓同名という題材のネタ的な作品かと思っていました。キャラの書き分け小説?ぐらいの印象。 が、読んでみたら速攻で考えを改めます。現実的で起こり得る社会的テーマを持つ考えさせられる作品でした。 未成年による児童殺傷事件。世間を賑わせる事になった猟奇殺人が発生。警察やメディアは未成年事件である事から犯人の名前は非公開。この時点では他人事のように犯人の名前を公開しろ!と世の中が騒ぎ立てます。ここら辺の導入は神戸の事件を思い出させました。当時と違うのは現代のインターネット社会により、SNSによる情報の拡散、特定班、不確かな情報と思い込み、炎上……。という感じで、いざ公開された犯罪者の名前が自分と同じだったという展開。名前が同じである事による悪い方向への運命の転換が描かれていきました。 本書はこの問題をある種のシミュレーションのような感覚で読みました。 どういう被害が発生するのか。SNSによる誹謗中傷の攻撃者やその活動のきっかけとなる情報源、でも実はその情報そのものが思い込みであり真実とは異なる可能性も秘めている。拡散していく分かりやすいステレオタイプの表面と、真相となる裏側の話。ここら辺が現代的な社会的テーマで問題喚起を打ち出しつつ、ミステリとしても楽しめるようになっているのが見事でした。 ちょっと思うのが表紙が地味すぎというかエネルギーがないというか、書店や新刊情報で見てても印象に残っていませんでした。 たまたまネットの感想が流れてきて目に留まって読んだ次第。 現代的な社会派ミステリとしてオススメなのでもうちょっと広まって欲しいなと感じます。良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学園ラブコメミステリ。☆7(+1好み)
版元レーベルの兼ね合いでタイトルと表紙が超ラノベテイストなので、ミステリ読者には敬遠されそうですが中身はちゃんと謎解きしている学園ラブコメミステリです。 シリーズ2作目で変にキャラものや別ジャンルになる事なく、1作目から順当に学園内の日常を舞台にしたミステリをしているのが好感でした。扱われる謎も現代寄りで新鮮。同級生からの相談で、ネット上の知り合い調査やSNSの文脈などを元に人物を推測するというものが扱われます。"学園ミステリ"というジャンルは昔からありますが、時代設定が現代的になっています。 本書は謎解きに重みがあるのではなく、謎解きを軸にそれに関わる同級生や先生たちとの交流を描く青春小説にも感じられました。山田姉妹と主人公の掛け合いも良く、学園内の悩み事を好奇心だけでなく、無下にはできない優しさが感じられるのが良いです。1作目以上に皆との接点が増えていき充実した学校生活を感じられる展開でした。さらに巧いのが3話目に至ってはその学園生活の姿に対比する形での物語が扱われている事。この年代の負のテーマがあり、雰囲気を壊す事なく巧く扱われている事が印象的でした。 前作同様に謎を解く事で人の救済となっている点が大変好み。 キャラクターの明るい雰囲気や会話の流れが優しくポジティブなので読んでいて嫌な気持ちにならないのが良い。作者の性格なのかな。このシリーズは好みで続編希望です。 余談。 本書は去年の発売時期11月ごろに購入しましたが表紙が水着だったので気分的に夏まで寝かせました。読んでみたらリアルな季節は関係なくて物語内が1巻の高校生活新学期から始まり、そのまま時間軸が夏という事でした。イラストは明るく可愛く作品にマッチしていて好み。1作目の表紙はミステリ読みにも伝わるシャーロックでしたが、本書の水着は振り切っていきなり攻めたなと笑えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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土砂崩れで避難した洋館を舞台に行われる人狼・デスゲームもの。☆7(+1好み)
毎夜、仲間に化けている人狼を見極め投票をする。見事狼を当てられれば助かるが外せば喰われるという人狼をモチーフにした作品。 児童書ミステリなので子供が読んでも平気。誰が狼なのか疑心暗鬼や謎解きの様子をシンプルに楽しめた作品でした。 ある程度デスゲーム作品や人狼もの作品に触れている場合、捻った考え方を持つと思われるので想像の範囲で真相が見えてしまうかもしれません。ただ本書のレーベルの小中学生をターゲットに考えると巧いバランスで仕掛けてきていると感じます。子供思考での誰が狼なんだと仲間を疑い悩む展開が良かったです。 個人的にデスゲーム作品は好きで、本書は読み易くちゃんと仕掛けがある内容だったのでシリーズを追っかけようと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ストーカーが主人公のホラー作品でありますが、ラブストーリーとも思える不思議な体験が得られた作品。
学生時代に出合った女性をふと思い出した主人公。彼女の現在を興信所を使って調べ、家に侵入しつつ盗聴・盗撮などストーカー行為をする日々。ただそこで見知った現在の女性の暮らしはDV夫によって奴隷となっている姿だったという流れ。 最初の数ページは主人公のストーカー行為に気持ち悪さを感じましたが、それ以上にDV夫の異常な暴力の姿に嫌悪感を抱きました。著者の作品の持ち味として凌辱シーンとなる暴力と性描写が描かれますが、本作は単なる小説の娯楽要素ではなく、DV夫の狂人を描き、圧倒的な悪の表現と手が出せない恐怖を植え付ける効果として描かれ読ませます。 よくあるストーカー作品はストーカーをする者が敵位置にいるのですが、本作はどちらかというと応援したくなるようなヒーロー側の立ち位置。不幸なヒロインの女性、それを盗聴・盗撮して見る事しかできない主人公。陰の者の思考や行動がよく表されており、それぞれの登場人物がどうなっていくのか中盤からは先が気になる一気読みでした。 現実的には好む内容ではないのですが、1つの作品として異常者の恋愛作品として楽しめました。 著者作品の傾向で暴力と性描写が多いのでこれらが苦手な人にはオススメできませんが、 その点を踏まえた上で異常な恋愛作品を求める方にはオススメです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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AI探偵シリーズだからこそ可能となる奇想の仕掛けに驚きました。
本格ミステリが大好きな気持ちが伝わる要素やセリフが多く散りばめられており読んでいて楽しい作品でした。☆7+1(好み補正)。 注意点として本作は単体では楽しめないです。 シリーズを順番に読んで作品の性質を把握した上で、著者が仕掛ける普通とは違ったミステリが味わえる作品となります。 シリーズの好みとしては、1作目は好みで2作目が思ったのと違う方向性で敬遠していたのですが、3作目の本書は前作の苦手意識が杞憂に終わり、ミステリのお約束をお約束としてそのまま扱う面白さや、AI探偵&主人公の掛け合いなど読んでいて楽しい作品となりました。 "四元館"という"館もの"作品の中で斬新さを打ち出す仕掛け。AI探偵シリーズという特性だからこそ納得できるバランスが見事でした。どんなにぶっとんでいても、そこに辿り着くまでの事前説明や要素がちゃんと小出しで盛り込んでいる丁寧さを感じます。 真相解明の終盤の展開と演出はかなり巧かったです。 犯罪AIがコーディネートする事件という設定もよく、今後の事件に期待が持てます。 主人公&相以と以相の物語としても今回は面白く楽しめました。次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者初読み。物凄く惹き込まれた作品でした。
作品単体が凄いのか、著者の他の作品もこのクオリティなのか未知ですが、場や人物の情景が頭に浮かぶ素晴らしい地の文でした。あらすじから感じる内容は、苦手意識を感じる古めかしく難しそうな内容だったのですが、読んでみたらスルスル頭に入り、先が気になる一気読みの面白さでした。 物語は孤児の主人公が古くからの伝統風習を重んじる名家の養子になる所から始まります。読みやすいと感じるのが、主人公と読者の状況不明の感覚がシンクロした構成である事。名家に入り、そこで出会う人物、風習、仕来り、役目、といった情報と理解が、主人公を通して徐々に把握していく為、複雑な背景でも楽しむ事ができました。 ミステリというよりオリジナルの物語を楽しむ事に趣があります。ただ、あの時何が起きたのか、町で何が起きているのかが見えてくる終盤はミステリの解決編の様で楽しめました。一同が集まり一風変わった展開での解決編だったなという印象も得られました。 少し余談ですが、島田荘司・御手洗シリーズの龍臥亭事件ぐらいまでの初期の頃のワクワク感を思い出しました。ミステリより物語に夢中になっていたら最後何かが明かされる感覚。毛色は違うのですが、個人的にそんな感覚を思い出すほど惹き込まれた次第です。 扱う内容の雰囲気は地道で重苦しいものなのですが、読書中はそうは感じさせず綺麗に描かれている物語。素晴らしい作品でした。他の作品も手に取ってみようと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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個人的にかなり惹き込まれた作品でした。とても面白かったです。
物語は特殊設定もの。 世の中に『天使』という存在が突如現れた世界。人間の罪を監視し、2人以上殺したものは地獄に引き摺り込まれる。 連続殺人という行為があり得ない世界の中、孤島の館にて事件が発生していく。 特殊なルールによるミステリとして期待されがちですが、個人的にはミステリとして楽しむというより世界観の方が楽しめました。天使自体の存在、天使が降臨した事により変わった世の中、犯罪が減り探偵の存在意義の変化。世界観がとても丁寧に描かれていたのでSFやファンタジーものとして惹き込まれた次第です。 現実的な要素で代弁すると世界が変わる"災害もの"としても捉えられます。震災・隕石での崩壊と違い、天使という切り口で世界の変容の新しい物語を作り、そこにしっかりと本格ミステリを絡めているのが見事でした。 登場人物達も分かりやすく特徴があり読んでいて面白い。キャラの雰囲気は明るく魅力的なのに対して世界は悲壮感に包まれている対比を感じました。主人公の探偵としての悩み、過去の仲間達との良い思い出と苦悩。色々な感情も心に響きました。 タイトルから感じますが、ミステリや事件要素ではなく、探偵とは何かに趣がある内容。 物語としてとても面白い作品でした。 |
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『ワトソン力』というネーミングセンス、設定勝ちな1作。(☆7+好み補正)
目立たず平凡な和戸宋志。彼は周囲の人達の推理力を飛躍的に向上させる能力を持つ。 ゲーム用語で言うと味方に推理力のバフを与えるエンチャンターの人物。本人以外が名探偵になるという設定。これが非常に面白い。 著者の過去作品のイメージは事件と解決のみを主軸とした問題集のようなパズル小説の印象でした。本書もその傾向は変わらずなのですが、登場人物皆を名探偵の如く推理させる事により、従来の解法1つだけにとどまらず、1つの事件・問題に対して豊富な謎解きシーンが楽しめる作品集に仕上がっており、読んでいて楽しかったです。 映像・ドラマ化も面白そうです。誰もが名探偵役になれる設定って斬新ではないでしょうか。俳優さん皆が主役みたいな名探偵役が出来るわけです。そういう点でもこの『ワトソン力』という設定はかなり発明な印象で驚かされました。 トリックや真相はパズル小説の様で現実的ではない感じではありますが、今回はそんな事は気にせずユーモアある雰囲気とミステリの楽しさを味わえた一冊でした。おすすめです。 |
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帯やあらすじにある、"衝撃"とか"読後、恋がしたくなる"の過剰なPRは期待とのギャップで悩ましい所でありますが、作品自体は綺麗にまとまった青春ミステリで良かったです。ティーンエイジャーを狙った強い宣伝文句にあるような驚きや派手さはないので、宣伝は見ないか気にしない事にして読めると良いかもです。
恋愛小説やミステリの要素はあれど、個人的に思った本書の雰囲気は救済や更生の物語。マイナスからプラスに転じる場面に立ち会える作品に感じました。そして気分が悪くなるような点はなく、若者向けの丁度よいバランスで描かれている点が好みでした。 読後に思う意外な点は、社会的テーマが結構散りばめられており、これらはよくあるミステリだと重く描かれる内容なのですが、本書はそう感じさせてなかった所です。 主人公は誘拐犯の父を持つ息子。 その父の事件の影響もあり、重い過去を引きずりながら日陰者として暮らす日々。その彼が夜中の墓地でとある少女と出会った所から歯車が動き出す。という流れです。 巧くまとまっていると感じる大事な点は、タイトル『"だから"僕は君をさらう』の"だから"の理由が納得できる点。ミステリの衝撃というものとは違うので期待し過ぎないで欲しい点ではありますが、理由はちゃんと共感でき、そしてそれが主人公の優しさや決断する成長に結びつき、周りの知人友人達との絆が感じられる為、読後感は良いものでした。 気になった悩ましい点は主人公の年齢設定が29歳な所。歳の差や、年齢に対しての思考や雰囲気が幼いのが引っかかるので、もっと主人公が若ければより納得できそうな気持が芽生えます。が、この年齢設定は物語を構築する上でこうなるというのは理解できるので、人物配置含めてかなり考えた結果だと感じました。だから著者はこういう設定している。と感じる点が多く、時間をかけて構築された思い入れの強さも感じた作品でした。 ミステリでの誘拐作品は色々ありますが、重くなく、恋愛もので良い雰囲気の他の作品が思いつかないので、そういう点でも新鮮で楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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不治の病、難病ものジャンルの恋愛小説+少しミステリ。かなり惹き込まれ感動しました。
この手のジャンルや設定はよくあるゆえ、文章・表現力など作家の力が試されますね。読んでいて情景や人物の心情がとても丁寧に描かれています。名文章や名言を所々に感じる作品であり小説の良さを感じる読書でもありました。 ミステリを期待して手に取ると違うものになりますので、恋愛小説を主な期待として読むと良いです。 男女の内面にある心模様、すれ違い、もどかしい気持ちなど、読んでいて楽しかったり心苦しくなったりと青春模様も堪能しました。 本書は下調べせずに前知識が無い方がよいです。表紙とタイトルが目に留まり、あらすじに"恋愛ミステリ"と書かれていたので衝動買いした次第。結果良かった。 他作で個人的に好きな恋愛ミステリがあるのですが、出版日を見ると本書の方が早かった。このアイディアは本書の方が先だったんだと再び味わえたのも良かったです。 世界で一番美しい言葉。ここは完璧な演出で心を持ってかれました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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安定の面白さでした。☆7(+好み1)
シリーズ作品ですが1作目以降はどこから読んでも問題ありません。 今作は長編作品ですがサクッと一気に読める。気軽に楽しめるミステリとして良かったです。 ミステリの謎については早々に見えてくるので謎解き重視の方には好みに合わないと思いますが、人間模様のドラマを楽しみたい方には丁度良い作品です。本年には予想通りドラマ化したので正にそれ向きの作品となっています。 本シリーズの幅が広がったと感じる所は、閻魔娘の沙羅が地上で活動するようになった事。事件が起こる前に閻魔の娘として死期を感じる者の近くで活動した所がシリーズ内での変化でした。 沙羅の活動がより見えてくるのは好みの問題であり、この流れだと、伊坂幸太郎と知念実希人それぞれの死神がそばにいるという『死神シリーズ』と似たような印象を受けました。どれも好きなシリーズなので同系統が読めるのはそれはそれで楽しみです。 印象に残った所として、沙羅が堕落した人間に対して述べる説法について。 ダメ人間の反面教師と閻魔からの人間の志のメッセージの対比や例が巧く、自己啓発のように読者の心に響かせる面を感じました。ミステリやドラマだけではない魅力も含まれたとても良い作品でした。 |
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異世界転生×本格ミステリ 第2弾。
2作目も相変わらず面白かったです。 1作目のような登場人物・舞台紹介の必要がない為、本書は本筋に集中した物語が楽しめました。 舞台は「帰らずの地下迷宮」。ダンジョンもの。 ファンタジー小説としてダンジョン内を進む冒険ものとして楽しめました。さらにミステリとして、ファンタジー特有の一方通行の壁の中の室内で起きる密室・消失事件、毒殺もの、疑心暗鬼、と多くのガジェットを盛り込んだ作品。読者への挑戦までのワクワク感は見事ですし、解答編もそうきたか!と物語の作り方の巧さに驚きました。 ファンタジーだから作れるダンジョンものの新しさ。 そのダンジョンという特性を十二分に活用しミステリへ昇華した素晴らしい作品だと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学園ラブコメミステリ ☆7+1(好み)
タイトルと表紙の雰囲気からTheラノベを感じさせますが、中身は謎解きありの学園ミステリ。殺伐さがない各事件の内容と、読後感が非常に良い作品でした。 まずミステリとして面白いのは2話目の『史上最薄殺人事件』。 絶版となって入手不可能になってしまったミステリのシリーズ最終巻。その謎をカバー情報から解き明かすもの。あらすじ・登場人物の設定の情報を元に、ミステリの作法を用いて推理する話。ノックスの十戒や安楽椅子探偵というワードもでておりミステリ好きの読者の心をくすぐります。 キャラクターものとしても男主人公+双子姉妹の三角関係的なトリオも良い感じ。ラノベとラブコメの定石然り、3人で謎を解く探偵仲間の雰囲気がとても読んでいて楽しかったです。 ミステリの謎解きだけに注目すると物足りないですが、ライトに楽しむミステリとしては非常によい作品。 個人的な評価ポイントとして、死なないミステリで、可愛い双子姉妹の学園ラブコメ、事件の真相が悪意なく救済となっている点が好みでした。続編も期待。 |
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数年ぶりに東野圭吾作品を読書。
著者作品はドラマや映画化している有名どころ。これらは敢えて読まないでもいいかな。という心理が勝手に働いて未読でした。久々に読むと流石に巧すぎるという気持ち。やはり有名作品はそれなりに面白いという事を改めました。 事件の描き方、着目する視点が凄い。 ミステリの殺人事件自体を検証するのではなく、事件が起こった町の人々が主点。日本橋という小舞台の中で生きる人々。各々に接点はなくとも同じ町で暮らしていれば何かしら繋がりがでてくる。この繋がりが見えた所はミステリの謎が解けたような晴れやかさを感じました。 各章の登場人物達のエピソードには陰鬱さはなく、日常の謎と人情味を感じるエピローグで構成されており、読んでて悪い気分はしません。万人向けのミステリとして質の高さを感じました。 敢えて難をいうと、尖がったものがないので、面白いけど心に残ったり揺さぶったりするものがない印象でした。これは個人の好みの話。作品の質はとても高く久々の加賀シリーズとしても面白かった。 |
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『仕事とは何か?』をテーマに含む、野﨑まど流のSFエンターテインメント作品。
著者の作品傾向の中では『know』や『2』に近く、おふざけ要素もないSF作品となっています。『know』では知るとは何か?を扱いましたが、本書は『仕事』について哲学をも用いて感じる作品となります。『know』は少しラノベ表現がありましたが、本書のタイタンは近未来SFとした少し硬派寄りな雰囲気の作品です。 物語の舞台は人工知能が発達しあらゆるものがオートメーション化され、人類に仕事という概念がない世界。 この世界観の中で、人工知能に何が起きたのか?何が起きるのかとミステリのホワイダニット作品のような求心力で読ませます。近未来のシミュレーションや冒険ものを感じる飽きない場面転換もよく、仕事に対して帰結する解答もなるほどと思わせた所が見事でした。近年の流行りネタとなる人工知能やタイタンという存在要素も巧く活用している点が好感触。著者の作品がどんどん面白く進化していて、今後も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ最終巻。 北山猛邦の本格ミステリがとても活きており、シリーズ完結編として綺麗にまとまった内容でした。
本書はシリーズを途中で投げてしまった人でも楽しめる配慮を感じます。 1巻⇒2巻⇒3巻⇒7巻 と読んでも大丈夫。 ※シリーズを追わなくなったとしても名作2巻以降だと思われる為。 結末に向けてのおさらいとして、登場人物、探偵図書館、宿敵の犯罪被害者救済委員会の説明、行われるデスゲームの概要を改めて解説しています。また舞台は1巻のシリウス天文台で行われる館ものミステリでありシリーズ読者はワクワクの設定です。 ダンガンロンパのトンデモ設定の中だからできる本格ミステリとして、著者の特性が活きているのが楽しかったです。 霧切響子の過去の物語。五月雨結との関係。儚くも綺麗にまとまりました。 キャラクターデザインとしての霧切の三つ編みにとても深みを感じます。キャラクターへより良いエピソードを盛り込んだスピンオフ作品として満足の作品でした。 シリーズを振り返ると、1巻,2巻がミステリ成分強めで世界観とミステリのやりたい事をやった作品。3巻からはキャラや世界観の説明が混じってミステリとしてもキャラものとしても薄くなってしまった印象。6巻が終盤へ向けて面白さ。最終巻が原点回帰的なミステリと大団円。という印象。 シリーズが終わり寂しく感じますが、著者の新たな本格ミステリを楽しみにしています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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今の時代に読んでも気軽に楽しめるライトミステリ。
本書はドイツの古城を舞台としたユーモアある館ものミステリです。 シリーズ作品ですが本書から読んでも問題ありません。 やはり携帯電話のない時代のミステリは好みです。 古城の入り口となる橋が崩落し外部との連絡が途絶えた舞台。各人何かしらの目的を感じる怪しい関係者達。その中で発生する殺人事件。中世の処刑具まで現れて雰囲気は抜群でした。 シリーズ名にもなっている猫のバランスがいいですね。マスコット的な動き。皆が悩んだ所で示される猫からのヒント。こんな所に手がかりが!と、猫が見つけてくれる。雰囲気が壊れないヒントの出し方が巧いです。仕掛けや犯人や舞台の構成などしっかりミステリをしていて楽しめました。 |
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書店に大量に並べてあり、『隠れた名作ミステリ』という帯に釣られて読書。結果満足。
1980年出版なので40年前の作品。掘り起こし作品としての仕掛け販売で流行中みたいですね。 書簡体小説という手紙の文章で作られた短編集です。 手紙という性質上、第三者となる読者が得られる情報は断片的です。文章から人物・境遇・物語、手紙をやりとりしている人の間柄が好意なのか敵対なのかなど、徐々に見えてくる構造が面白い。短編集として、手紙を用いた多様な文芸を味わえます。そして意外な結末を感じる瞬間はミステリのどんでん返しの味わいを感じました。 現代のSNSやメールは直ぐに相手に文章が送れる為、短文を複数回やり取りする性質があります。 40年前の本書が今取り上げられて面白いと感じるのは、そういった現代的なやり取りとは違い、時間の掛かる手紙のやりとり、文章のフォーマット、書き方、相手に伝える文章など、手紙そのものが改めて新鮮に見えたからだと思いました。 おすすめです。 |
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