■スポンサードリンク
egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数359件
閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
漫画『DEATH NOTE』のノベライズ。物語の時代設定は漫画より過去で、南空ナオミがLと知り合うきっかけになった事件です。
漫画を途中まででも読んでおり、ミステリ小説が好きな方には、お薦めの小説です。原作の設定や読者イメージを効果的に使ったミステリに仕上がっていました。スピンオフ作品としては十分なクオリティで楽しかったです。 多少原作を知っている前提なので、キャラ紹介や死神の能力などはあっさりとした説明になっており、余分なページを削っています。全ページ数は180Pぐらいで無駄がないと感じます。 私自身、連載中の漫画を読んでいたぶりの読書なので、南空ナオミって誰だっけ?程度の記憶だったのですが、そのぐらいが寧ろキャラの性格に影響を受けず、丁度よい読書だと思います。 物語は既に起きた3つの猟奇事件について、FBI南空ナオミがLから連絡を受け捜査に乗り出します。 密室状態の事件現場、藁人形の見立て、異なる殺害方法、被害者のミッシングリンク。事件は既に起きている為、小説の中身は推理と謎解きが大半を占めています。異常思考での事件な為、読者はついていけない展開なのですが、Lの超思考だから追いつけるのかも。と変に納得できる推理の展開が見事です。 見立てまで行い、明らかに他殺なのに何故密室にするのか?この扱いも個人的には逸品だと思います。 全貌がわかった時、この原作だからできる特有の内容を感じられ凄いと思いました。 賛否両論な世の中の評価も、 △:原作好き+小説読まない層 △:原作知らない+小説読む層 ○:原作知っている+小説読む層 という風に感じます。 合う場合は埋もれた作品だと思います。たまたま見つけて読んだ次第ですが、予想以上に満足でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
んー…これは評価が分かれそうな小説ですね。
特殊な舞台での本格ミステリ。幾人による推理合戦や一筋縄ではいかない結末が非常に面白い。ただ、粗がとても目立ち、共感できない所が多々あります。細かい事を気にせずミステリの謎を楽しむのか、世界観を含めて楽しむのかで好みに影響するかと思います。 物語は、新型ウイルスの影響で肉が食べられなくなった後、自身のクローンを食用肉として認可された世界。食用クローンとして、人間を飼育して加工する施設で働くものを視点としたミステリです。 ドロドロした内容はないのですが、人を飼育したり加工したり食したりという雰囲気に気持ち悪さを感じる人は避けた方がよいでしょう。 個人的には特殊な世界観で、ぶっ壊れた刺激も好むので面白く読めました。登場人物達も倫理観が程よくずれているのもよいです。毎日食用人間の首を切断する加工部の人間と、こっそり育てられた食用人間のチャー坊。どちらも人間であるので牛や豚と違って言葉を話すんですよね。『てめぇは食べるために作られたんだ』といった会話が中々強烈です。 人々の会話は非常に面白い反面、世界観が舞台装置の記号・設定になってしまていると感じました。 人間を加工する部署がある。廃棄物処理センターがある。施設の入り口はここにある。という感じで舞台は説明調なのです。人間が飼育されているので、生生しい声が聞こえたり、匂いがどうだとか、その場の雰囲気がありそうなのですが、五感による空気感が感じられなかったのが残念です。 この工場は人間を加工しており、世界が注目するかなり特殊な工場だと思うのですが、セキュリティが甘々です。人が簡単に侵入できそうだったり、不審者がどうだとか、社員は自由に徘徊するなど、現実的に考えたらいろいろ納得できない所が生まれてしまい、齟齬が生じている気持ちになります。首だけ切り落として出荷って、毛や皮膚や内臓はそのままなの?冷凍じゃなくて常温?とか。細かい場が描かれず、謎解きの為に必要な設定だけが並べられていると思った次第です。 逆に言えば、描かれている事は謎解きの為に散りばめられた伏線だったり、推理合戦の材料だったりするわけなので、冒頭に書いたミステリの謎で楽しむのか、雰囲気も考慮して楽しんでいるかで作品の評価が変わると思う次第なのです。 細かい所はネタバレで。タイトルと表紙の気持ち悪さは好み。 文章は読みやすく強烈な設定が楽しめるので、今後の作品に期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
1957年の古典作品。永らく絶版で幻の名作となりましたが、創元推理文庫創刊50周年での復刊希望リクエストの読者投票で選ばれたのを機に新訳で復刊。その2009年の新訳版を読みました。
冒頭に記載されているのでネタバレではないですが、本書は『信頼できない語り手』の作品です。 叔父の遺産を相続し大金を得た事と、氷に足を滑らせて頭を打って断片的な記憶喪失になってしまったのを機に、仕事を辞めて故郷に移住した主人公。記憶障害の影響か、なんだか物はなくなり、住人に違和感もある、何か事件に巻き込まれているのか?いったい何が起きているんだろう……。という作品。 古い作品の為、現代ミステリでは見慣れた設定を多く感じ、これってもしかして、あれではないか?、これかも?と、読者は想像を巡らせると思いますし、その枠を大きく飛び越える事はないかもしれません。が、技の使われ方や場の雰囲気がうまく、ただの既読感で終わらないのが凄いです。 実は正直な所、新訳本での読書であるのに文章が読み辛く感じてましたし、語り手の曖昧さから内容の把握が困難で、中盤まで面白くなかったです。古い本だからハズレだったかなと思ったのですが、途中である仕掛けが発動して驚くとともに、それだけでは終わらず、その先へ継続するストーリー展開に惹き込まれました。 現代では、新しさを感じないと思う所が残念ですが、ネタの複合や使われ方でこう面白く化けるのかと上手さを感じる作品でした。タイトルも逸品で完成度の高さを感じます。 点数は、既読感の仕方なさと読み辛さの好みでこの点数。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
これは完成度が高い作品。あれこれ言う言葉がなく、読後の余韻が凄かった。
まず作品への没入感が凄かった。これは丁寧な描写と翻訳が巧く、映画を見ているかのように場面をイメージする事ができる要因が大きい。登場人物達も個性的に設定され、混乱する事もない。残酷な要素は読書の刺激を演出している。翻訳物を読んでいるとは思えない感じでスラスラ読めました。 3部構成で作られている本書。構成が実に巧い。部が変わる事に舞台模様がガラリと変わり先が読めない。物語の魅せ方が大変うまくて惹き込まれました。 好みに合わないと言うか個人的なつぶやきとして、 近年の海外ミステリは、女性被害を作品のキャッチによく使われているように感じます。日本と海外の違いだと思いますが、女性を監禁したり暴行したりの描写が海外作品には多く既読感があり、内容自体も然ることながら好みではない。警察についても職権乱用が激しく、特にアルマンは盗人じゃないのかと思える始末です。 さて、本作は先入観なしで読むのが良いです。 あまりにもランキングで紹介された為、販売戦略的なものかと避けていましたが、読んでみたら面白かったので、疑り深いのは良くないと個人的に反省。 海外作品なのに、とても読みやすいのが一番印象に残りました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
読書前後でイメージがまったく変わりましたが、なかなか気持ち良い読後感でした。
裏表紙のあらすじに『失くしたものは、何か。心を穿つ青春ミステリ』として書かれています。 ミステリっぽく、謎・真相は?・階段島と言った単語を前面に出したPRですが、個人的にこれは出版社側の商業戦略だと思いました。中身は自己や相手を思う心模様を描いた青春小説だと感じます。 記憶がなく突然島に現れた人々が、とりあえず普通に生活する階段島。舞台設定の謎は、現実的なミステリ寄りではなく、ファンタジーでとらえると良いです。 過去と外界を削除した箱庭舞台なので、登場人物達の、その後の考え方や人との関わり方に焦点が合わせやすくなり、詩的な情景や哲学的な感情を味わえます。 なので、何でだろう?という謎を追い掛けるミステリ的な読書ではなく、情景や皆の気持ちを感じる青春小説として読むと、より良い読書になると思います。 ネガティブな主人公にポジティブなヒロイン。ちょっと癖やコンプレックスがある人々など、特徴的な登場人物達による作品作りは、わかり易く巧いですね。なるほどと思いました。 成長を描くというと厳密的には違うのですが、不安定な心やそれの解放や共感など、若い世代に合う作品だと思いました。中々良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
伊藤博文、山縣有朋など、実在した歴史上の人物を交えた明治+本格ミステリの第2弾。
作者が杉山潤之助の手記を入手して本書にまとめた件りなど、現実感を演出しているのがとても面白い。 作者言葉より、前作が売れず断裁され痛恨の極みなど書かれてますが、負けずにこのシリーズは続けてほしいですね。 首なし、わらべ唄、見立て殺人など定番のミステリ要素を盛り込み、連続殺人が発生。 読書中はバタバタ死んでも雰囲気が軽いから現実味がなかったですし、屋敷内で何人も殺されて事件を防げない月輪&警察に大丈夫かなぁ、と不安も感じる中、残り40ページぐらいで16の謎が提示されます。 残りページが少ない中、解決編はまとまるのかな?と感じた不安は杞憂に終わり、あっと驚く真相で畳み込むのは見事でした。 後味は悪いですが、頭によぎっていた定番を突き抜けた真相は楽しめました。 時代設定が効果的なのと、事件の構図がガラリと変わる様は前作同様面白い。 今後も期待のシリーズです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
絶妙な構成。狙って作っているのか、勢いで書き上げたらこうなったのか。
文章構造に味がある怪作ミステリ。 本屋の新刊コーナーで表紙と帯を読んで衝動買いした本書でしたが、現代ミステリではなく、実は1945年発表の古い作品である事に驚きます。今でも普通に楽しめます。 語り手による事件の再構成で進むストーリーは時系列がバラバラ。あの時こうだった。そう言えばもっと前はこうだったっけ。と言った具合。 違和感のある構成は叙述トリックでも仕掛けているのか?と思いたくなるのですが、読んで行くうちに、あっこれ、話が整っていないだけかも。。と感じる始末。 ですが、この構成が絶妙な混乱と錯覚を生み出して、スリラー小説がミステリになってしまっているのが面白い。 200P台でサクッと読める古典ミステリ。読後、全体像がわかると、あれもこれもと必要な設定要素である事がわかり、伏線やミスリードが狙って書いているわけではなくて、そういえば普通に書いてあったな……。ほんと普通に、、、構成が奇妙過ぎて見逃した。と、独特の文体にやられました。 話は読みやすく、舞台も小規模の山中の出来事であり、把握しやすいように地図の挿絵が含まれていて丁寧な作りです。 ストーリーや仕掛けではなく、文章に価値がある作品。 好みは人それぞれですが、他にない個性的な一品を感じる意味として手に取るのはアリでしょう。なかなか面白い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
サイロ内の浮遊死体。ビルの屋上での開放的な密室。冒頭の昔話「空を飛ぶ娘」。双子の姉妹。古き良きミステリの要素を感じさせつつも現代的な作品。
中盤までよくある事件の普通の警察小説として読んでいたら、終盤の怒涛のまとめで社会的テーマ性や登場人物達のドラマや事件の真相などが明かされて綺麗にまとまる。着地が巧くて読後素直に凄いと思いました。 シリーズ三作目を最初に読んだからか、登場人物の姫野広海(ひめのひろみ)刑事が男なのか女なのかわからず、何か仕掛けてくるのかと余計な事で悩んでしまいました。シリーズ最初から登場しているんですね。キャラクターがよかったです。 著者本初読書でしたが、島田荘司を思わせる奇想の基点から現実的に落とし込む謎にプラスして、爽やかな刑事達のチームワークが気持ち良い。好みの作風で他の本も気になる作家さんに出会えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
久々に強烈なの来た!面白い。と思ったら、世間の評判がよろしくなくて温度差を感じた1冊(汗)
壊れっぷりが凄く良くて、刺激や毒のある構成が好みでした。 世の中、期待するものと内容の差が激しくてがっかりしている印象なので、どんな本なのか少しガイドします。 ネタバレを避けると要点は下記2つ。 ・超コテコテな孤島のミステリが舞台 ・事件シーンはスプラッター色が強い(グロい) あらすじにある『本格ミステリ』に期待してやってくるものを強烈な刺激で返り討ちにする作品です。 著者の本は本書が初めてなのですが、作品傾向でグロさが1つのウリでもある模様なので、そこが苦手な人は嫌な気持ちになる事でしょう。 グロいのも刺激、そして緊張感の中でミステリがあるなら好みかも。という人にはアリかもしれません。 本書で特徴的な演出の1つは『透明標本』。ネットで物を見てなんとも言えない気持ち。 骨格を染色した標本で、その神秘的というか背徳的な芸術を感じます。 その透明標本の博物館がある孤島が舞台。 見学会に集まった男女9名。 迎えのボートは明日の朝。 閉じ込められた孤島の屋敷内で、首だけ発見された殺人事件が発生する。 誰がどうやって?胴体はどこ?疑心暗鬼にかられる中、偶然メンバーの中に名探偵がいる事がわかり、事件の捜査を名探偵に"させる"。 うん。させるんです。人間臭さや人の醜い所を描きます。「名探偵解いてよ。」と人任せな流れ。後々効いてきます。 館の雰囲気も新鮮。透明標本に覆われ、室内は赤く染めれられている。 この不気味な空気感がとても読みやすく感じるので、嫌なんだけどなんか不思議な雰囲気を描くのは著者の持ち味なのかもしれません。 どういう展開になるのかはネタバレなので言えませんが、 冒頭に書いた通り、本格ミステリを期待した人をホラー色で蹴散らす狂騒っぷり。 でもちゃんと伏線があり、ミステリとして筋が通る話なので、面白く楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
これは好きな部類。90年代の新本格系のミステリを感じました。細かい矛盾は気にせず、閉ざされた空間で、探偵がいて、密室トリック、消失トリックなどの犯罪が行なわれて誰が犯人?という作品が好きなら当たります。この手のコテコテ作品が今の世は減ったので嬉しいです。
ゲームダンガンロンパのスピンオフ作品ですが、ダンガンロンパ自体は知らないでも問題ないです。 ただ前作を読んでないと、登場人物や犯罪者・探偵図書館などの設定が分かり辛い為、前作は読んだ方がよいです。 予め読者へ通知される本事件の主の題材は、『密室トリック』『消失トリック』『現金10億円』。 閉ざされたホテルに集められた10名にそれぞれ1億円づつ配布。 夕方にオークションが開催され、一番現金を積んだ者がその日の探偵権を獲得。 夜は各自部屋に待機しなければならず、犯人と探偵権を持つものが自由に行動できる。 犯人は夜に犯行を遂行する。探偵権を持つ者は殺されない。 デスゲーム作品のペナルティなどルールがある特殊設定、探偵権を得るためのオークションの心理戦、従来のミステリの密室・消失トリックなどなど、かなり面白い要素が豊富でした。 そして、それらがバラバラなエンタメ要素ではなく、上手く関連して事件を構成しているのが見事です。個々は見慣れていても使い方の複合技がとても巧妙です。 ゲームをしているのでより一層ですが、霧切の家庭や意外な一面を見せる素顔も魅力的でした。 ミステリ以外にも霧切&五月雨のペア探偵物語としても面白いですし、犯罪被害者救済委員会や探偵図書館の今後の展開も気になります。 続編が楽しみな作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
読後の率直な感想は、バカバカしい(笑)。そして初期のメフィスト賞を思い出すキワモノ。
新しい刺激としては満足。心が広くミステリを読み慣れている人向け。万人に薦められないけど、理解ある人へは薦めてみたくなるそんな作品。だけど理解ある人が分からない(苦笑)読んだ人いますか?と悶々とする作品。 タイトルからネタ本なんだけど読んだ後はネタを突き抜けた巧妙さがうかがえます。 ミステリとコミカルが上手く合わさっており、読んでいて楽しかった。没ネタになりそうなアイディアを世に出したメフィスト賞にも拍手。新たな刺激に出会えました。 当初は、あんまり気にしていなかった本なのですが、タイトルの特殊性からネットでの話題が目に入る。ネタバレされる前に読んでおこうと思って手に取りました。何も知らずに読めて良かったです。 冒頭に読者への挑戦があり、ちゃんとミステリが読みたい!って人向けに、孤島のクローズド・サークルを用意して密室殺人事件も起きる。 ミステリの中に1発ネタを盛り込んだ奇作ですね。 読み返すと、あれもこれもとネタが巧妙で素晴らしく感じます。 ネタとミステリがちゃんと関連しているのが見事でとても楽しい作品でした。 なんとなく「かまいたちの夜」の裏シナリオのような登場人物達のコミカル+ミステリは個人的にツボです。 好みが非常に分かれると思う作品。 ネットやAmazon書評などネタバレが増えてきているので、ネタ本も楽しめる方は調べず読書が良いと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ゲーム『ダンガンロンパ』のスピンオフ作品ですが、ゲームは知らないでも問題ない独立作品です。というか、ゲームでの要素はまったくありません。では、キャラモノ作品かと思いきや、そうでもなく、"ダンガンロンパ"や"霧切響子"の名称を借りたほぼオリジナル作品と言った感じで、ちゃんとしたミステリとして読めます。キャラクター要素が強いゲームと作家の組み合わせは結構良いと思いました。
まず、舞台設定が面白いです。 『犯罪被害者救済委員会』なる謎の組織が、何らかの事件の被害者に対して復讐をコンサル・サポートする。サポート内容は復讐する場所の提供、出所の分らない凶器やトリック、金銭の提供である。 また舞台には探偵が呼ばれ、犯人は探偵に真相を見破られず、見事切り抜ければ復讐と新たな人生の獲得。探偵に真相が見破られれば、最悪を代償として受ける事になる。ここら辺はデスゲーム系のノリを感じます。 読者には予め、『黒の挑戦』という名目で事件に何が提供されているのかわかるのが面白い。 最初に、天文台を舞台にしたバラバラ殺人と提示されます。誰がどんな方法で事件を起こしたか推理をする楽しみもありました。 トリックが仕掛けられる金田一少年やデスゲーム系の作品が好きなので、個人的には当たり。 ミステリとしてもキャラ小説としても、さらっとした軽い小説で、物語の舞台の紹介が主に置かれた印象ですが、今後も期待できるシリーズとして楽しみになる作品でした。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
なんというか盛りだくさんな物語でした。投げかけているテーマは社会派とも感じられますし、ミステリとしては異常犯罪の犯人の行動に驚かされたり、学園小説・児童文学的にはマドカとサファイアの物語を楽しむと言った具合。
あらすじにファンタジーとありますが、主人公の女子高生マドカと出会ったお化けのサファイア(あだ名)の存在がファンタジーなだけで、中身は現実的なお話です。 著者の読書本はこれで3冊目ですが、現実世界に不思議な設定をほんのちょこっと入れた絶妙な味があります。 街に存在する異常犯罪者のコードネーム『ドッグキラー』『インベイジョン』『ラフレシア』『グレイマン』と言った名前付けが能力が分からないボスを攻略していくようで興味が沸きます。『ドッグキラー』は文字通り盲導犬を次々と殺す犯罪者。その後の犯罪者も名前からどんな異常犯罪が街で行われているのか?それを知った時のヤバいモノに関わってしまったと感じる所が見事です。 『インベンション』の舞台背景や伏線、犯罪内容には唸りました。その後の『ラフレシア』についても舞台背景に驚きます。物語が進むごとに犯罪も凶悪になり、1話ごとに舞台背景や解決を通じて弱者のメッセージを感じたり、ボスの攻略と共に主人公とサファイアの関係が深まり成長していく。そんなゲームのような気分を受けました。 不思議な面白さでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
読後、ついに念願の作品を完成させたんだな……。と感慨深くなりました。
物語の面白さについては正直好みとは違うのですが、歴史に刻まれる仕掛けの1つを作品に残した点で評価です。 著者言葉にある、 『すべての文章、いや、すべての言葉が伏線になっているミステリー』 このコンセプトを実現させる為にどんな方法をどう表現して物語に組み込んだらよいのか。その1つの解答が本書です。 作者初めての方の場合は、読んでもさっぱりかもしれないので、 導入のしやすさ、わかり易さという点で『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』を手に取ると良いと思います。 私は著者の作品は『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』から入った口ですが、その作品以前である5年以上前から、幾度となく作者の言葉で、作中すべてが伏線になっているミステリーが理想でそれを作りたい。という想いを読んできました。著者の写真や、参考文献まで伏線にした病的な作品も生まれていますが、『本』である事自体が絶対的な要素。電子書籍では表現できない、本と言う作品を作るという事の想いはとても感銘を受けたものです。 本書で使われている題材と仕掛けの選び方は見事に調和されていますし、過去作の『五色沼』『不可能楽園』では仕掛けを施す為に読み辛くなってしまった点が、本書では改善され質も上がっています。 ついに完成したんだな……と、感動しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ディーヴァーの作品はボリュームがあって、手に取るのを躊躇してしまうのですが、やはり読むと面白いですね。
事件のテンポはスピーディーだし、緊張感あるわ、最後は驚きの真相の安定感。 シリーズとしてはこの後の作品の評判がさらに良くなる為、ひとまず順番に3作目を読書でした。話が繋がっているので順番は大事です。 本作で思う所としては、探偵役のリンカーン・ライムの凄さがない。 前作までの四肢麻痺なのに圧倒的な知力で他を圧倒する力強さの良さが今回感じられず、苦悩や挫折、弱々しさを感じました。 ストーリー進行も最後はどんでん返しがあるだろうと身構えて読んでしまった為、現在の進行に対するライムの推理が間違っている気にもなり、ライムどうしちゃったんだよ……と思う心境でした。まぁ、今作はライムより、サックスが主人公で輝いてました。 相変わらずオチが読めない真相で凄いですね。 ただ、今作はやられた!と言う一撃ではなくて、複雑で言葉がでない気持ちでした。蜂多すぎです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
いつもの癖で話題本は敬遠してしまっていたのですが……読んでみると面白かった。
主人公は無職男性。昔おばあちゃんに酷く叱られたトラウマにより本が読めない。本を読めていたらどんな人生を歩んでいたのだろうと思う今日このごろ。おばあちゃんが亡くなり、遺品の本を売りに行く為、ビブリア古書堂に訪れる――。 キャラクター作りやその人達の役割が綺麗に繋がるな~という印象でした。 本にめちゃくちゃ詳しい女店長も魅力的で、人見知りと本を語る時のギャップが面白い。また、病院で入院中で行動不可なのに、安楽椅子探偵ばりに聞いた話から、古書のエピソードにちなんだ日常の謎を推理し解決する名推理っぷり。ミステリ要素以外にも本が読めない男性との出会いから、仕事仲間になり、会話も生まれて・・と、男女の青春物語としても綺麗に楽しめました。 太宰治や夏目漱石などの読書経験は、有名どころを国語の教科書レベルで読んだ程度だったので、この手に詳しい人はもっと楽しめる要素があるのかなと思います。まったくの射程外だったので各エピソードについては新鮮で楽しめました。 刺激的な要素はないのですが、たまには落ち着いて楽しむのも良いかも。と思える温かい綺麗な作品でした。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
シリーズ2作目。死体発見現場の虫の生体環境を推理して真相へ近づく流れが前作に劣らず面白い。
貸倉庫で発見された身元不明の腐乱死体。手がかりが皆無で捜査は混迷する。が、現場から見つかった虫の一部から捜査が進展。昆虫学の必要性がとても感じられる点が見所です。 キャラ立ちも楽しく、岩楯刑事&学者の赤堀との関係が今後も気になりますし、新キャラの月縞も個性的で良い味が出ていて、今作では一気に成長も感じさせる物語になっている。 科学捜査で警察小説なのですが、地味ではなく、個性的でとても面白いシリーズだと思います。 前作と比べると、虫の活用具合が前半に集中していて、後半は違う物語になった所は、法医昆虫学をもっと知りたかった私としては少し物足りなさを感じました。が、着地点がまったく予想できない所は凄いので、これはこれで好み。 続編が出てほしいシリーズです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
たまには本屋で話題本を衝動買い。帯に書いてあった『ラストは絶対予測不能』『シャマラン監督映像化』に釣られて購入です。元々は電子書籍で、米Amazonでは5星が700越えなど話題になってる模様。まぁそんなの気にせず『シャマラン監督が興味を持った』ところに自分は意識が向くわけでした。この監督の作品、何故かよく見ちゃうので。。
話は、主人公が目を覚ますと、何故ここにいるのか?と記憶をなくした状態からスタート。なんだか具合も悪いし怪我をしている気がする。そういえば交通事故にあったような記憶がする中、近くに見える街へ足を運ぶ。街の人々と主人公の会話が食い違う。何かおかしい。そして何故か街から出られない・・・。 記憶喪失の主人公で、閉ざされた街が舞台である、状況不明系のストーリーです。 主人公の話や街の人々の対応、どれが真実なのか。それともすべて虚偽なのか?定番の疑惑を考えながら読書なのですが個人的に刺激や魅惑の要素がなく退屈でした。それでも終盤に差し掛かる頃にはやっと真相がまとまっていき、あー…本当にシャマラン監督の作品にありそうで好みそうな内容だった。と思う次第でした。 なんというか、表面は好き勝手自由だとしても、必ず根底にあるのは人を思う愛があるというか、そういう作品。 他レビューが作品の中身には触れられず映画寄りな感想になるのもわかる気がします。内容はネタバレになる為避けられている。文章や表現を味わう文学作品でもない。ただ、映像になった時の姿が目に浮かびやすいからです。悪い意味では既視感がとてもある作品でありますけどね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
これは面白かった。斬新で知的好奇心をくすぐられました。法医昆虫学を扱ったミステリ。
科学捜査系の小説で、焼死体を解剖すると中の内臓は荒らされ、異様なウジの塊が見つかる――。 前半の導入から虫達のウネウネと気持ち悪い雰囲気を醸し出して敬遠されそうですが、この虫が何故こういう成長を遂げているのか?現場の虫の生態系に変化がないか?など、虫を基点に推理を進めていくのが斬新で、気持ち悪いよりも虫から導かれる科学捜査の流れに興味津々で楽しめました。 また、虫の気持ち悪い雰囲気を払拭するかの如く、捜査依頼された昆虫学者が底抜けに明るい性格の女性に設定されているのも良いです。 虫が大好きで生態系を楽しく解説してくれたり、おもむろに網で虫を採集しだすわと、変人ぷりも活き活きしてます。警察が、うげーっこの人は住んでる世界が違う!というやり取りがユーモア溢れて楽しめました。 TVドラマでも楽しめそうだなーと思いましたが、虫の映像がちょっとNGか...。 類似作品が思い浮かばない斬新な小説で面白かった。次作も楽しみ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
横須賀米軍基地の内側と外側が舞台の本格ミステリ。
日本でいながらアメリカの法律が適用される米軍基地の特殊な舞台。 基地の内側で発見された惨殺死体と基地の外側で発見された大量の血痕の関連性の謎から始まる『基地の密室』という問題が新鮮でした。 基地の内側と外側、事件現場はどちらなのか?被害者or犯人はどうやって出入りしたのか? 密室殺人でのテーマが基地の規模で行われている面白さがあり、さらに法律の違いから、基地の内側の米軍と外側の日本警察とで情報共有の制限が生まれ、今ある手がかりで事件を推理するロジカルな面も楽しめます。 本書を読む前は、警察小説のサスペンス的な本なのかと思っていたのですが、上記の密室問題。手がかりを得るための推理考察。最後は関係者を集めての推理披露の解決編。などなど、好きな様式の本格ミステリを味わえました。 また、作品の中に組み込まれているテーマや話題など無駄なく関連していたり、手がかりの散りばめ方が綺麗で読み直すと発見もある。かなり整ってます。 雑誌のランキングからは外れている作品なのですが、見落とされて読まれていないのでは?と思う気がするぐらい、よく出来ている作品だと思います。 好き嫌い分かれそうな要素もありますが、とてもよかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|