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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数370

全370件 221~240 12/19ページ

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No.150: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

図書館の殺人の感想

裏染天馬シリーズ長編第3弾。
いやー面白かったです。ロジカルな推理と犯人が明かされるシーンはお見事でやられました。
好みなのもありますが、シリーズ通して外れが無いのが嬉しい。

学園ミステリとして登場人物が増えてきました。なので人物を把握する上で、本作単体で楽しむのはちょっと難しく、1作目ぐらいは事前に読書してあると良いです。

ロジカルな推理を得意とした本格ミステリでありつつ、学園風のドタバタや笑いも交えているのは楽しいです。今回はクスっとする所が多かったです。序盤、学園内での裏染登場シーンで颯爽と推理を披露するも、女子生徒に「女の子の靴からそこまで考えるなんて変態みたい!」と突っ込まれるのは裏染のキャラクター性がはっきりしているからですね。よい探偵役です。金田一少年系といえばそうですが、アニメネタで現代風にアレンジされているのがいい感じ。

さて、事件は図書館での殺人。そんな所で事件起こさないでよ。とか、科学捜査をすれば直ぐに解決してしまうのでは。。。とか思う所がありますが、そういうのは気にしないで楽しむ作品です。現場の手がかりから論理的に事件の真相を導く様。探偵の奇怪な行動も、あとあと納得と驚きに変わる刺激。こういうのがいいんです。

一見、地味な殺人事件なのですが、推理パートで面白く読ませちゃう作品は凄いなと思います。
裏染の過去もでてきて日常パートも充実してきました。次回作も楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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図書館の殺人 (創元推理文庫)
青崎有吾図書館の殺人 についてのレビュー
No.149:
(7pt)

複製された3つの自分の精神体。犯人はどの自分なのか?

ソウヤー4作目の読書。だんだんと著者のエンターテインメントの傾向が感じられてきました。
本書もSF+ミステリ+男女模様。

男女模様は熟年夫婦の不倫問題という人間臭い話。男性側の辛い気持ちがとても伝わってくる。作品全体を包括していて巧いつくり。

SF要素は、人間の死をスキャンして魂の存在が確立した世界。人の脳味噌をスキャンしてニューラルネットワークを構築する事も複製も可能です。
人間の死とは何なのか。医学的な死、自然死、精神だけがコンピューターに存在する世界が面白く読めました。この手の話は好みですね。

ミステリ要素は、自身の脳をスキャンして生み出された3つの人工知能による事件。1つ目は自身の複製であるオリジナルの精神。2つめはオリジナルから死の概念を消去した不死の精神。3つ目は肉体の概念を消した死後の精神。
この人工知能のどれかが、殺人事件を行うわけで、どの自分が犯人か?という特殊設定が面白い。

これらが巧く混ざり合って、読ませるエンターテインメント作品になっているのは毎度凄い。特殊状況なのでオリジナリティ強い刺激が心地よいです。
ただ、ちょっと点数が低いのは、古い作品特有の既視感の為です。90年代以降、様々なSF作品の発展により人工知能の事件はちょっと見慣れてしまったかなという心境。

人工知能の犯人ものならデビュー作の『ゴールデン・フリース』の方が今読んでも発想が飛んでいて面白いです。
本書は、生(性)や死という人間の存在に趣がある作品として楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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ターミナル・エクスペリメント (ハヤカワSF)
No.148:
(7pt)

幽霊には微笑を、生者には花束をの感想

幽霊を扱ったライトノベル的なミステリ。

心霊現象を全く信じない高校生主人公が、友人の付き添いで廃屋調査に参加した所、自分だけに見える女の子と遭遇する。幽霊に付きまとわれる中、自宅で妹にも見える事がわかる。これを機に兄妹で記憶の無い女の子の幽霊の相談に乗る事にする。

まぁ、軽い学園風のラノベなのですが、現実的な主人公の各種実験がミステリの推理考察的で面白い。
例えば、妹にも見えると分かった際、「同じものが見えているのか?」互いに絵を描いて認識している存在の検証をしたり、幽霊の服装や装飾物から、生まれた時期や家族などを推察したり、この幽霊は脳にどういう影響を与える存在なのかを定義する過程が面白い。

『本格ミステリ・ディケイド300』にて本書を知った次第ですが、学園幽霊ものなのに思考や事象の結びつき方がミステリ模様なので、軽い気持ちで読みながら十分楽しめた物語でした。

結末もハッピーエンドでベタベタ感ありますが、それも好みです。

▼以下、ネタバレ感想
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幽霊には微笑を、生者には花束を (ファミ通文庫)
飛田甲幽霊には微笑を、生者には花束を についてのレビュー
No.147: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

さよならドビュッシーの感想

個人的に「ドビュッシー」の作品は「ゆったり」や「やさしく包み込むような」曲の印象でして、辛く孤独になりたい時に触れるような作品で気持ちが沈みやすい。本書の知名度は把握しながらも中々手に取らなかったのは、そんなドビュッシーに対する個人的な感覚意識からで敬遠していました。
シリーズとして冊数を重ねているのでそろそろ読もうと手に取った次第。読んでみると、力強いドビュッシーの演奏表現にびっくりでした。特にアラベスクは、自分のイメージが壊され違和感を受けつつも、表現の仕方でこんなに熱く描けるのかと新鮮な視点をもらった気持ち。久々に曲を聴き直してみようと読後感じた次第。

音楽を演奏する者、鑑賞する者の思考がとてもよかったです。指運びや姿勢等、小説でここまで雰囲気が伝わってくるのは久々でした。なんというかどれも気持ちが昂るような熱さがありました。スポコンの様。

そんな具合で、ミステリよりも音楽小説として楽しめた作品です。
ミステリ要素については何というか偶然や悲劇の物語でこれは辛いなと思って好みに合わずでした。

食わず嫌いで読んでみたら良かったのでシリーズを追っかけようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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さよならドビュッシー (宝島社文庫)
中山七里さよならドビュッシー についてのレビュー
No.146:
(7pt)

いたいのいたいの、とんでゆけの感想

これで著者全作品読了です。ハマりました。死が絡む男女の不思議な関係は著者独特ですね。

本作は、出来事を「先送り」して一時的になかった事にする能力が現れます。
交通事故の死の瞬間を先送りにした女性が、残りの余命で私を苦しめた人たちを殺そうと復讐する話です。『三日間の幸福』でも余命が決まっている時、残りの時間何をするか?というお話でしたが、本作は悪意に染まった復讐とそれを遂行する男女の関係が著者の不思議な味わいで楽しめました。
鬱屈していて痛くて嫌なんだけど、少し暖かさを見せるといいますか。普段何気ない事がマイナスの場を作る事で感じ取れるような気がする。そんな感覚でした。

本作は残酷で描写がキツイ事柄が描かれていきます。
作風が人生に悲観している主人公の物語なのは相変わらずですが、一番不幸で残酷な描写をしている作品でした。コンセプトの1つが「落とし穴の中で幸せそうにしている人」を描いたとあり、なるほどと思いました。
毎回、事柄を文章にすれば絶望的で不幸なのに、当人は幸せそうに描かれているのが凄い。

重い作品なので他作で作風を知った上で読むとよいです。本作を一番最後に読んでよかったです。
「面白い」というと感覚が違くて、著者の世界観に浸る作品で楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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いたいのいたいの、とんでゆけ (メディアワークス文庫)
三秋縋いたいのいたいの、とんでゆけ についてのレビュー
No.145:
(7pt)

永遠の館の殺人の感想

シリーズ完結。本作はシリーズを読んできた人向けの作品。
連続殺人鬼キーラ―・エックスと何なのか?
その行動の異常性についての背景がしっかりと描かれている作品でした。
またその内容が納得できる範囲であり、かつ個性的な物になっているのが見事でした。

全シリーズを読んでみて、ミステリ単体として楽しめたのが0作目『白銀荘の殺人鬼』。
1,2,3作目は順番に読むのが推奨で、多少気になる点があっても『雪の山荘+連続殺人鬼+α』の楽しさで満足できる楽しいシリーズでした。

本書単品としては、舞台背景がとても面白かったです。
好みは人それぞれで薦め辛いですが個人的に楽しいシリーズでした。

▼以下、ネタバレ感想
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永遠の館の殺人 (光文社文庫)
二階堂黎人永遠の館の殺人 についてのレビュー
No.144:
(7pt)

千年岳の殺人鬼の感想

『雪の舞台+殺人鬼』というワクワクするシチュエーションのシリーズ作品。
シリーズといっても前後に繋がりはないので、どこからでも楽しめます。

今作は、時空間を移動するワームホールが存在するのか?というオカルト要素を盛り込み、複雑なミステリ作品に仕上がっていました。なんというかパズル小説ですね。人間ドラマや動機は置いておいて、雪の山荘で連続殺人が起きて犯人は誰だ?系が好きな人向けです。

難点は、SFなのか、オカルトなのか、本格志向なのか、立ち位置が不明なので思考停止しながらの読書だったことです。なので伝えておきますと、本作は本格思考もの。様々な設定をミステリの部品として拾って読むとよいです。
結末は複雑すぎて、うーん。。とすっきりしないのですが、シチュエーションは最高なので楽しめました。
90~00年代の本格思考のミステリは好みだと再認識です。

▼以下、ネタバレ感想
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千年岳の殺人鬼 (光文社文庫)
二階堂黎人千年岳の殺人鬼 についてのレビュー
No.143: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

名探偵に薔薇をの感想

序盤からの見立て殺人や非現実的な毒薬ならではの推理展開が面白く、コテコテのミステリを楽しみました。完全犯罪可能な毒薬やメルヘン見立てが、演出の為だけではなく、ちゃんと意味がある設定は好きです。

また、事件パートも然ることながら、それを解決する名探偵の苦悩がとても表現されていた作品でした。
真実を明かすことが本当に良い事なのか。これ系の名探偵の悩み本はありますが、全編通して繋がる完成度は高く、哀愁漂う読後感は久々でした。

▼以下、ネタバレ感想
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名探偵に薔薇を (創元推理文庫)
城平京名探偵に薔薇を についてのレビュー
No.142:
(7pt)

恋する殺人オーディションの感想

現代風デスゲーム作品。

日本一のアイドルグループを結成すべく集められたのは日本一の【容姿】【歌唱力】【ダンス】【頭脳】【演技】【性格】に該当する6名。監禁模様が動画サイトでリアルタムに公開。視聴者が購入する投票権によって順位が決められ、最下位には死が待っている。

デスゲームもので狂った非現実作品かと思えばそうとも思えなくて、アイドルが結成される背景や舞台装置など、かなり現実的で違和感がないため、読んでいて惹き込まれました。閉じ込められた女の子達の反応もありそうな行動を起こしていくのでとても良いです。
1000年に一度のアイドルや,2ch,ニコニコ動画など現実の用語を使いながらその雰囲気を脳内補間させているのも個人的にはアリです。現実に起きたら同じような反応になりそうな所が巧い。読者層を考えたエンタメ作品としてよかったです。

頭脳戦の作品ではないので、そこに期待はないのですが、時勢ネタを取り入れた今だから楽しめるデスゲーム作品として読んでいて面白かったです。サクッと読めるライトなミステリでした。

▼以下、ネタバレ感想
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恋する殺人オーディション (メディアワークス文庫)
御影瑛路恋する殺人オーディション についてのレビュー
No.141: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

君が電話をかけていた場所/僕が電話をかけていた場所の感想

『君が/僕が電話をかけていた場所』のタイトル違い2冊が上下巻です。
文章の空気感や不思議なストーリーが良いです。単純に好みの物語でした。

顔の醜い痣のせいで交友関係も築けず人生を悲観している主人公。小学校時代の思い出の中で痣を気にせず接してくれた女の子がいたけれど、痣のコンプレックスのせいで僕なんかと釣り合わないと避けてしまう。そんな主人公が高校生になった時、謎の公衆電話からの女の賭けによって痣を消してもらうが、再開した女の子は顔に痣をおって自殺しようとしていた。という始まり。
『オペラ座の怪人』や『美女と野獣』の男視点の主人公物語といえばイメージしやすいです。逆の立場になった時、さらには新たな困難を知っていく中で恋の結末はどうなるのか。という話かと思いきや、もっと複雑になって先が読めない展開でした。

著者4冊目ですが、今作も女の子が魅力的ですし、頭に浮かぶ情景がとても綺麗。固くなくすんなり入る文章が好みでした。ミステリとしては広義な位置付け。恋愛ゲーム系のストーリーが好きな人には刺さります。ネタバレなく細かい事は言いづらいですが、暗雲立ち込めるテーマの中でこの読後感は気持ち良い作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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君が電話をかけていた場所 (メディアワークス文庫)
No.140:
(8pt)

SFファーストコンタクト+法廷ミステリ

著者本、初読書。
容疑者がエイリアンという変わった法廷ミステリですが、これが新鮮で面白い。

人類が初めて宇宙人と遭遇したファーストコンタクトから始まり、容姿や言語や価値観の違いなど、異星人への興味好奇心が登場人物達同様に夢中にさせます。人類は左右対称の2対に対して、現れた異星人は前後左右の4対からなる生物(表紙の異星人)。前後にも腕や目や内臓が存在するといった設定がしっかりしていて惹き込まれます。

価値観の違いを活用したミステリの経験はありますが、相手が異星人となると精神面と肉体的な物理面が異なるので、何が起きるか予想できません。中盤からは法廷ミステリとなり、1つずつ細かく事実を突き止めて行くのが見ものでした。

終盤のまとめ方も爽快で、SFとしてもミステリとしても二重に楽しめた傑作でした。
他の作品も面白そうなので追っかけてみようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)
No.139: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

戦場のコックたちの感想

なんというか粗がなく完成度が高い作品。点数はジャンル的な好みから。

第二次世界大戦中のアメリカ後方支援部隊の視点で描く日常の謎。
戦争という非日常が舞台なので、戦火の中では当たり前の出来事が盲点的に刺激となりました。
読書前はミステリと料理が絡むのかな?と思ってましたが料理の話は少な目。というか他の戦場の様子の密度が濃いゆえの感覚。ミステリというより青春小説の印象です。
戦争中の悲惨な様子も描かれていますが、陰鬱な気持ちにならなず冒険物として読める文章の爽やかさは良かったです。

日常の謎ジャンルのミステリは刺激が弱くあまり好みではないのが影響して本作もミステリを読んでいる気分ではありませんでした。ここは好みの問題です。ですが終盤のまとめ方は、ミステリ、青春物、戦争の社会的メッセージなどがうまくまとまった瞬間で楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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戦場のコックたち (創元推理文庫)
深緑野分戦場のコックたち についてのレビュー
No.138: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

映画→本書の順序がオススメ

凄い書物に触れてしまいました。内容の密度がとても濃く読み終わるまで1か月要しました。ただ、この期間は難しくて挫折の意味ではなく、数多く現れる内容から興味を持ったものを脱線して調べながらの読書だったためです。それでも正直わからない事だらけで、拾えるものが微々たるものでした。本書の凄まじさは読者が持っている知識に呼応して魅力が増す作品になっている所です。

いきなり本書に触れると返り討ちに合いそうなので、先人に習って以下の手順で自分は触れました。

■個人的なオススメの作品の触れ方
▽映画を見る(ショーン・コネリー主演、ジャン=ジャック・アノー監督)

▽下巻の解説を読む

▽本書を読む。

まず映画の出来がとてもよいです。本書のミステリ部分が強調された作品となっており、難しい知識が必要なく楽しめます。
1327年の修道院で発生した連続怪死事件をバスカヴィルのウィリアムとメルクのアドソの探偵&助手(書記)の2人が体験します。ピンと来ると思いますが、シャーロックホームズの設定を活用しています。ウィリアムの圧倒的な知識と洞察力で、修道士達の発言や行動、黙示録に見立てられたような事件現場や占星術や神学等、見習いアドソ&読者に教える先生のように推理と解説をしていきます。ミステリの面白さを十分に楽しみながら全体像を映像として把握できるので映画はオススメです。
次に下巻の解説を読みました。ストーリーは映画で把握済みなので、ネタバレ気にせず翻訳者の解説にて本書の背景がどういうもので、歴史や書物、著者専門の記号論がどのように扱われているかが感じ取れます。

この手順であれば、登場人物のカタカナ名に悩まされる事も場面混乱も回避でき、最大の魅力であるミステリを模した書物の迷宮を集中して体験できるでしょう。

個人的な感覚ですが、昔に体験した三大奇書の黒死館の衒学やドグラマグラの作中作の面白い意味でのパニック感を、数年経った今、学術的な要素で再体験した気持ちです。難しくて好みが分かれるかもしれないですが、そういう圧倒的なものに触れるのが好きな方にはささる作品です。

拙い知識でどう書いたらよいか悩むのですが、設定の数々である、時代や現場や言語体系やミステリ要素や書物に関する事、どれもこれもが外せずに絡んでいて、こうじゃなきゃ成立しない凄まじいバランスの妙の作品ですね。何かに気付いてもそれが必然になっている事に気づかされる。。。。うーむ、、、すごい。

▼以下、ネタバレ感想
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薔薇の名前〈上〉
ウンベルト・エーコ薔薇の名前 についてのレビュー
No.137: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

盤上の敵の感想

個人的な著者の作品イメージは、ほんわか・あったかな日常の謎なのですが、本作はそのイメージを払拭して、かつ、やりきった感じをうける程、悪意に満ちていました。
なので、冒頭に著者コメントで注意書きがあるように作者買いで安らかな心を得たい方には不向きな作品です。
『盤上の敵』というタイトル通りチェスをモチーフにしており、登場人物やその背景、動機などは作品を作る上での駒と感じました。並べた駒(要素)の巧みさを本格ミステリとして楽しむ方、作品内の悪意の感情に気分を害される方、どの視点で見るかで評価が分かれるかなと思います。今でいう『イヤミス』のカテゴリに該当する作品です。当時はイヤミスなんて言葉は無かったので、より話題になったと思われます。

著者コメントによりイヤミス前程で読めた為、悪意の影響は軽減され、仕掛けの面白さで楽しむ事ができまして終盤は何度も驚かされました。この話を構築する為に悪意は必要な要素として配置されていると読後に感じた次第です。

▼以下、ネタバレ感想
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盤上の敵 新装版 (講談社文庫)
北村薫盤上の敵 についてのレビュー
No.136: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

リプレイの感想

記憶を保持したまま過去に戻れたら……。人生をもう一度やり直したい、あの時別の行動をしていたらと、やり直しは誰もが一度は思う。
競馬や投資で大金持ちになる事や、恋人を変えて別の家庭を築いたり、膨大な知識や経験で作品を残したりと、率直な感想としては羨ましい限りであります。と、同時に43歳の命日に来ると必ず死んでしまい、それまで築きあげたものが無になる虚無感も物凄く伝わって来ました。
小説で物語で読むという行為は他人の人生を経験する事でもあります。現実的な人の夢を繰り返し体験する主人公の姿が1冊に収まっており、読者が読む時期によって作品から感受する点が異なる事でしょう。

作品の難をいうと、60年代のアメリカが舞台という事で、社会的な内容の理解と共感が得づらかったです。また、この手のテーマは読み慣れている事もあり、想像しうる内容に収まっていて大きな驚きなどのドキドキ感がなかったです。作品をしんみり味わう系の物語でした。

あとは身も蓋もないですが、仕事や恋人など、人生がうまくいく為には、まずお金が大事だという事が強調された印象でした。人・物・金・情報・時間という言葉がありますが、人の繋がりや物ではなく、金と行動が大事なように感じました。読む人によって違う心理学要素かも。

▼以下、ネタバレ感想
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リプレイ (新潮文庫)
ケン・グリムウッドリプレイ についてのレビュー
No.135:
(7pt)

KillerX キラー・エックスの感想

雪の山荘もの。シチュエーションは最高です。

同窓会のお知らせが届いた数名が恩師の住まいである深雪荘へ訪れる。久々に再開した恩師は事故で障害となっており、下半身不随の車椅子生活。そして言葉も発せず仮面を着けて過ごす有様だった。天候が荒れる中集まったのはよいが、同窓会の招待状は誰も送っていない事がわかる。何かがおかしいと、疑惑から始まる雪の山荘のクローズド・サークルものです。

思いつくガジェットは満載で、この雰囲気だけでも結構満足でした。
が、あまり評判が良くないのは終盤の真相の釈然としない気持ちでしょうか。雰囲気が真面目なのですが、バカミス作家が描けば失笑トリックな仕掛けが一部あるので、驚いたというよりモヤモヤ晴れない気持ちです。

先生や篤の過剰な行動がちょっとギャグに感じていましたが、2000年ごろはまだオカルトネタが多かったので時代を感じる作品なのかなぁと、思う所があった次第です。
あと2冊、類似本があるので追っかけて読んでみようと思います。こういうコテコテは好み。

▼以下、ネタバレ感想
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Killer X キラー・エックス (光文社文庫)
クイーン兄弟KillerX キラー・エックス についてのレビュー
No.134:
(7pt)

バビロン 1 ―女―の感想

好きな作家さんなので点数は好み補正。
シリーズ化を検討しているらしく、本作に"1"がナンバリングされていますが、本作だけでも楽しめます。

過去作を読んでいるうえで本作に触れた印象は、現実的で少し落ち着いている作品に感じました。
今までは読者が想像しない世界観を変わった方法で描き驚かせてくれたのですが、それが本作ではなかったのです。地道な捜査をコツコツ行う警察小説を読んでいるようで、野﨑まど作品なのかな?という印象です。
違う出版社なので、新レーベルの意向なのかもしれません。

ただ、後半は作者らしさが出ました。取り調べ辺りから、不気味な何かに触れてしまった感じがとても出てきてワクワクしました。

この設定のまま次作がどうなるのか気になる所ではありますが、正直な気持ちとしてこのシリーズ作品を描くなら別の物語を読みたいなと思った次第でした。

▼以下、ネタバレ感想
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バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)
野﨑まどバビロン 1 ―女― についてのレビュー
No.133:
(7pt)

眠りの牢獄の感想

地下に監禁され、出してほしければ過去に起きた事を示せと閉じ込められるパート。ネットで知り合った2人が交換殺人を行うパート。大きくはこの2つが同時進行するお話です。

この2つがどんなミステリ模様となるのかは、なんとなく想像出来てしまいますが、ちゃんと複数のひねりがある本格ものになっており楽しめました。

作中に出てくる作家の言葉より
『ミステリマニアが読めばネタが割れてしまうような分かりやすい伏線の方が、普通の読者にはウケがいいと思うんで、』に始まり、気になる所はわかっていて書いているんだよと伝えられた点は好感でした。

短い小説の中で、巧いストーリーになっているのが見事でした。
終始、どよ~んとした重い空気な所は合わず。

▼以下、ネタバレ感想
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眠りの牢獄 (講談社文庫)
浦賀和宏眠りの牢獄 についてのレビュー
No.132: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

闇に香る嘘の感想

個人的な乱歩賞のイメージ通りの作品。メッセージ性の強い社会派でありながら、あれやこれらが伏線として繋がり、終盤は綺麗に回収されている事に驚きました。

盲目の老人が主人公。白杖を携え街を歩く事、対人との表情の見えない会話、点字の学習、孫に何か残してやれないかといった家族への想いと葛藤が描かれます。そしてテーマはこれだけではなく、盲目作品といえば疑心暗鬼もの。本書も目の前の兄は本当に自分の兄なのだろうか?と疑問が生まれ、生い立ちの回想から戦時の中国残留孤児に関するテーマが追加され、さらなる話へ移っていきます。

テーマが多いのは人それぞれの好みかと思いますが、個人的にはお腹いっぱい。説教ではないけどメッセージが強くて堅い小説を読んだ印象でした。主人公も何だかネガティブで口うるさくて共感できない。老害と呼ばれてしまうぞ。。という思いであまり気乗りしない読書です。小説を読んで情景を想像する事は盲目の老人と同じ印象を得た気持ちでありましたが、1点どうも想像できないのが、主人公や年上の方々がアクティブ過ぎる事。70歳超えてますよね?老人には無理でしょと思うアクションシーンや、あの時よく生きてられたね。という非現実感が好みではなかったです。

とはいえ、終盤は様々なエピソードが綺麗に繋がる幕引きで加点です。
読書中は辛いけど、最後は面白いものだった。と、個人的にいつも思う乱歩賞の作品でした。


あと余談ですが、審査員の作家の方々が、元のタイトル『無縁の常闇に嘘は香る』に難色を示す話が面白かったです。そこまで悪くは感じませんでしたが、出版された本書の『闇に香る嘘』の方が確かに素晴らしいので、審査した作家の指摘と編集の技術を感じました。


▼以下、ネタバレ感想
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闇に香る嘘 (講談社文庫)
下村敦史闇に香る嘘 についてのレビュー
No.131: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

レインツリーの国の感想

個人的な事ですが、昔を思い出しながらの読書体験でした。
ネットで知り合う。となると今では出会い系、SNS、といった単語が返されるのですが、15年以上前の90年代では、パソコン通信やniftyフォーラムとか、ネットができる一部の人がテーマを掲げて交流していました。なんというか誰でもネットが出来たわけではないので、ネットが出来る人同士の不思議な仲間意識があった気がします。
本書のように個人サイトがあり、管理人にメールして交流するというのは自然と行われてました。相手の年齢・性別・容姿などは分からないまま、というより気にせず、ただ興味が近い人同士でメールで交流したものです。オフ会も何度もしました。本書の登場人物の方も、私生活では閉じこもり人と会わないけれど、オフ会だけは出てくる人もいました。

そんな経験があるもので、本書の出会い方やメールでのやり取りは微笑ましいものを感じました。他人のメールのやりとりを覗いているようで、くすぐったかったです。
今の世の中ではこういう出会いはし辛くなっていて、実名制のFacebook等、内面だけでなく、人柄、姿、所属など情報量が増えた条件で出会う事になっているのかなー?とか考えました。なので、本書のやり取りは、個人的には昔を思い出すのですが、現代の子達にはピュアに映るんではないかと感じます。

ところで正直な所、伸の発言や行動に共感できない事が多かったです。。。いろんな恋愛観があるんだなと感じました。結局な所、伸は第一印象重視で、ナルシストな印象でした。たまたま好きな本で繋がった、ひとみの内面から惹かれるわけですが、、出会ってみてうまく行かないだけで怒るシーンがありますが、もう失礼極まりない。もともとこういう性格なのかな。事前に出会っているナナコも最初の印象が悪かっただけで、相談してみるとその子の本質が少し見えて、実はいい子かと考えを改めたりと、性格が悪く感じてしまうのが凄く気になりました。うまくいえませんが、伸との性格の不一致でモヤモヤしてました。

作品テーマの障害を伝える事に対して、恋愛物に創り上げているのはとても巧いなと思いました。ページ数も手ごろで、映画化もされるので、若い世代にも見られる事でしょう。
こういうエンターテイメントの構築はこの作家さん凄くうまいと改めて感じました。
レインツリーの国 (新潮文庫)
有川浩レインツリーの国 についてのレビュー