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iisan さんのレビュー一覧

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レビュー数140

全140件 121~140 7/7ページ

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No.20: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

おい、おい、どこへ行くんだ?

スウェーデン南部の田舎町の警部・ヴァランダーシリーズの第2作。結論から言えば、シリーズの読者には必読だが、単品としてみると「?」、失敗作かも知れない。
ヴァランダーが所属するイースタ警察署管内の海岸に、2体の死体を載せた救命ボートが流れ着いた。ボートに死体があることを告げる匿名電話があり、検視官からはソ連または東欧の人間の可能性が高いと知らされる。果たして、彼らは何者なのか? なぜ殺されたのか? 犯罪捜査はストックホルムの外務省や警視庁を巻き込みながら展開され、やがてバルト海の対岸、ラトヴィアの犯罪組織が絡んでいることが判明し、ラトヴィア警察から刑事が派遣されてくる。結局、捜査はラトヴィア側に引き渡され、ヴァランダーの任務は終ったはずだったが・・・。
途中から、物語はラトヴィアの民主化をめざす勢力と現政権側の壮絶な争いが中心となり、ヴァランダーは冷戦時代の下手なスパイのような役割を担わされることとなる。このあたりからは、もう警察小説ではなくスパイアクションの趣で、ヴァランダー・シリーズの愛読者にはかなり違和感があるのではないだろうか?
結局、ボートの死体の謎はすっきりとは解決されず、警察小説としては破綻している気がした。それでも、シリーズ読者必読というのは、後々、シリーズで重要な登場人物となるヴァランダーの恋人が登場してくること、ヴァランダー本人のキャラクターの理解に欠かせない生活背景が描写されていることにある。
本作を読む前に、第1作「殺人者の顔」を読んでおくことを強くオススメする。
リガの犬たち (創元推理文庫)
ヘニング・マンケルリガの犬たち についてのレビュー
No.19: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

陰うつなカリフォルニア

「このミステリーが〜」の2011年度の1位ということで読み始めたが、ちょっと期待外れだった。
二十年ぶりに故郷に帰ってきた主人公・オーレンが、二十年前に森で行方不明になった弟の死の真相を探るというのがメインストーリーだが、物語の舞台はカリフォルニア州北部の、時間が止っているような小さな町で、最初から最後まで、その小さな町で完結する。これが象徴するように、きわめて閉塞感が強いストーリーで、犯人や犯行状況を解明するより、犯行の動機、事件の関係者の人間関係、心のありようを描写する方に重点が置かれていて、ミステリーとしての魅力は弱い。どちらかといえば、家族とは、愛とは何かを描いた物語と言える。個人的にはあまり好みではないジャンルなので、評価が低くなった。
カリフォルニアが舞台のミステリー系エンターテイメントといえば、青い空、輝く太陽、広大な海が定番だが、この作品では深い森と夜が中心で、どちらかといえば、ミネソタとかニューイングランドとかの片田舎が似合う内容で、こういう陰うつなカリフォルニアもあるのかというのは、新鮮だった。
愛おしい骨 (創元推理文庫)
キャロル・オコンネル愛おしい骨 についてのレビュー
No.18:
(6pt)

ヒップでホップな??

ウィンズロウお得意のモダン・ノワール。舞台は南カリフォルニア、道具立てはドラッグ、主要な登場人物にバハ・カルテル・・・、これはもう、期待するしかないのだが、鬼才が才に走り過ぎたというか、実験的手法が過ぎていてちょっと、いや、かなりがっかりだった。
ストーリーは、大麻の栽培、供給で巨万の富を築いた若者二人組が、カリフォルニアでの大麻利権に手を出してきたバハ・カルテルに脅迫され、必死の反撃を見せるという犯罪アクション。登場人物(敵味方)のキャラクターが興味深く、きっちりと描かれており、ストーリー展開、エピソードも面白く、普通に(従来の手法で)書かれていれば、きっとオススメ度「8」になっていただろう。しかし、「『何作かごとに文体を発明し直す』ことを旨とする」(訳者あとがき)ウィンズドロウが本領発揮。まあ、とにかく、改行が多く、頭韻、脚韻、地口をふんだんに織り込んだ文章はまるでヒップホップ!
好き嫌いが分かれるところだが、正直、好きになれなかった。
しかし、オリヴァー・ストーン監督で映画化されているというので、傑作になること間違いない映画を楽しみにしたい。
野蛮なやつら (角川文庫)
ドン・ウィンズロウ野蛮なやつら についてのレビュー
No.17:
(6pt)

物足りない・・・

スキー場が爆弾犯にジャックされた…。どこに埋められているのかわからない爆弾をネタに、脅迫され、身代金(スキー客全員が人質)を奪われ続けるスキー場を救うために、社員たちが立ち上がる。
事件の枠組み、舞台づくりはなかなか独創的で面白かった。しかし、爆弾犯の動機、犯罪の手段、解決方法(水戸黄門並みのハッピーエンドにはビックリ)などがちょっと不出来。さらに東野作品のキモになる人物設定、キャラクターの描写がいまいち。類型的、表層的で、どうも心情的に応援できなかったのが残念。
スキーやスノボー好きの人には面白いのかもしれないが、スキーに興味がない評者には猫に小判というしかない。
白銀ジャック (実業之日本社文庫)
東野圭吾白銀ジャック についてのレビュー
No.16:
(4pt)

湊かなえは、もういいかな?

ABC放送60周年記念ドラマの原作として書き下ろしの作品。たしかに、2時間ドラマとしては「あり」かもしれないが、小説としては「かなり、がっかり」の出来映えだ。
ストーリーも、キャラクターも、セリフも奥行きが無いというか、平板で、すらすら読めるが驚きも味わい深さもない。
湊かなえは「告白」がピークだったのか?
最近の路線が続く限り、もう彼女の作品を読むことはないだろう。
境遇
湊かなえ境遇 についてのレビュー
No.15:
(6pt)

青春ミステリーかな?

東野圭吾の江戸川乱歩賞受賞第一作というより、今では刑事・加賀恭一郎のデビュー作といった方が通りがいいかも知れない、1986年の作品である。
大学卒業を控えた4年生のグループの内、一人の女子学生がアパートの自室で死んでいるのが発見された。彼女は自殺したのか、殺されたのか? その謎が解き明かされない内に、もう一人の女子学生がお茶会の席で青酸カリによって死亡する。はたしてこれは、連続殺人事件なのか? 仲良しグループのメンバーである加賀とそのガールフレンド・沙都子が、事件の謎を追いかける・・・。
最初の事件は密室、二番目は多くの人の目の前でのできごとという、推理小説としては贅沢な舞台構成。しかもどちらも決定的な証拠が発見されないため、心理的な側面からの犯人探し、動機探しがじっくりと展開されてゆく。最後の謎解きや殺人手段の選択がやや甘いという気がするが、作者のミステリー作家としての力量を認めさせるに十分な作品だと思う。
ただ、青春小説という枠組みのせいか、登場人物がほとんど善人で、少数の悪人も凄みが足りないため、全体に薄っぺらい印象を免れなかったのが残念。
加賀恭一郎ファンにはオススメです。
卒業 (講談社文庫)
東野圭吾卒業―雪月花殺人ゲーム についてのレビュー
No.14: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

ひっかけられるのが好きな人でないと・・・

住宅街で建築中の建て売り住宅で発見された男には、ネット上に疑似家族が居て、しかも娘の名前は実在の娘と同じだったことが判明した。さらに、その三日前に渋谷で女子大生が殺害された事件との関連性を示唆する証拠が発見された。犯人は、動機は、男女間の愛憎によるものか、ネット上の家族ゲームの中に隠されているのか・・・。
作者自身があとがきで「ミステリーとしては大変基本的なルール違反をしている部分があります」とエクスキューズしている通り、本格ミステリーとして読むとがっかりするかもしれない。
ラストシーンで謎が明かされて、「うーん、やられた!」と感心するか、「えーっ、だまされた!」と思うかで評価が分かれるだろう。私は後者だったが。
それでも「6」の評価にしたのは、さすがに宮部みゆきというべきか、ストーリー展開の上手さ、語り口の滑らかさは一流だったから。
R.P.G. (集英社文庫)
宮部みゆきR.P.G. についてのレビュー
No.13:
(5pt)

サイコ・ホラーだけど

最初の内は、筆者得意のサイコものかと期待して読み進めたが、ホラーの部分が恐いというよりグロテスク、不気味で、読後感は良くなかった。
オウム真理教、北九州の一家監禁殺人事件、最近では中島知子騒動などを思い出した。あり得ない、想像できないことを起こしてしまう“洗脳”の恐ろしさという点では、こういうストーリーもありなのかも知れないが、その背景が家の呪縛、家族の血の絆というのが、いまいち説得力に欠ける気がした。
音道貴子シリーズのファンには受け入れられないだろう。
暗鬼 (文春文庫)
乃南アサ暗鬼 についてのレビュー
No.12:
(6pt)

ちょっと残念

ガリレオ(湯川)シリーズの短編集。第1章から第5章までの構成になっているが、それぞれの作品は独立している。どの作品も、ガリレオが謎を解いて行くところがポイントだが、短編だから仕方がないのだろうが、謎解きに終始しているうちに物語が終わった感じで、いまいち物足りなかった。
5本の内では、最後の「撹乱す(みだす)」が一番読み応えがあった。
このシリーズは「容疑者X」から読み始めたので期待値が高すぎるのかも知れないが、どうも残念だな・・・という読後感になってしまった。
ガリレオの苦悩 (文春文庫)
東野圭吾ガリレオの苦悩 についてのレビュー
No.11:
(6pt)

サスペンスではないと思うけど

小学校6年生の夏休み、仲良し3人組の少女たちに、何があったのか?
11年ぶりに再開した3人は昔の付合いを再開させ、「何でも一緒ね、3人で分けようね」と誓い合っていた少女時代と同様に、一人の男を(それぞれが秘密にしたまま)共有するようになる。やがて、3人が秘密にしておこうと誓った、ある出来事が現在の彼女達に深刻な影響を与えるようになり・・・・。まあ、ありがちなお話で、サスペンスといっても2時間ドラマレベルで、半分読み終えた頃から「秘密の約束」と結末が見えてくるのだが、それでも最後まで読み通せたのは、3人のキャラクター設定、描写に負うところが大きい。
スケジュール帳が真っ黒になるほど予定を入れないと落ち着かない亜理子、手を洗わずにはいられない潔癖症で繊細な外見の下にしたたかさを隠した梨紗、がさつで虚言癖と見まがうばかりに見栄を張る恵美、この3人の絡み、言動が非常に生き生きと面白く、そこに本作品の価値があると思った。
水の中のふたつの月 (文春文庫)
乃南アサ水の中のふたつの月 についてのレビュー
No.10: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

時代には勝てないか・・・

大ヒットシリーズ「新宿鮫」の第1作。1990年の作品だけに、いま読むと古くささを感じざるを得なかった。時代の風俗とともにあるタイプのハードボイルドには避けがたい弱点といえようか。
それを除けば、この作品が傑作であることは間違いない。日本の警察小説では避けられない制約を上手くくぐり抜ける設定で(このあたりは、文庫本巻末の北上次郎氏の解説が秀逸)、派手なアクション映画的な盛り上がりを見せる。
劇画的なポリスアクション好きにはおすすめだ。
新宿鮫 (光文社文庫)
大沢在昌新宿鮫 についてのレビュー
No.9:
(6pt)

ポリティカルではあるが

ストーリー紹介には「傑作ポリティカル・サスペンス」とあるが、ポリティカル小説としてはよくできているものの、サスペンスはちょっと物足りなかった。
父親の急死による弔い合戦の選挙に当選した社会党代議士が、政界の波に揉まれながら成長し(成長ではなく、変節かも知れないが・・・)、リクルート事件を契機とする政権交替で重要な役割を果たすようになる。いわゆる55年体制の崩壊過程をていねいに追いかけていて、現代政治史の一面を面白く知ることが出来る。その点では、非常に読み応えがある。
しかし、党本部から押し付けられた第一秘書との運命的な絡み合いという、サスペンスを高めるはずのサブストーリーが、いまひとつ盛り上がらない。代議士、秘書、代議士の妻、人気女性キャスターという主要人物の人間性がもう少し掘り下げられていたら・・と残念だ。
愚か者の盟約 (ハヤカワ文庫JA)
佐々木譲愚か者の盟約 についてのレビュー
No.8: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

どんでん返しではあるけれど

誰が犯人かではなく、動機を追求する心理サスペンス。犯人と刑事の独白、記録が交互に示され、そのたびに真実が覆されていき、最後に驚愕の真実、本当の動機が明らかにされる。大どんでん返しが楽しめる作品といえる。
Amazonではかなり高い評価を受けているが、個人的にはいまいち、しっくりこなかった。嫉妬、虚栄心、いじめなど、人間性の奥底に隠されている「悪意」を追求しながら、犯人も、被害者も、刑事も、もうひとつキャラクターが魅力的ではない。仕掛けに懲り過ぎて、人物像の深堀りまで手が回らなかったのか?
刑事・加賀恭一郎シリーズの第4作ということ(前3作は未読)だが、「新参者」以降の加賀に比べると、主人公の魅力が乏しい。逆に言うと、「新参者」以降の加賀恭一郎シリーズが素晴らし過ぎるのかも知れない。
悪意 (講談社文庫)
東野圭吾悪意 についてのレビュー
No.7: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

構成は複雑、話は平明


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花の鎖 (文春文庫)
湊かなえ花の鎖 についてのレビュー
No.6: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

ミステリーなのか?

もともと重い作品が多いトマス・H・クックだが、これは今まで以上に暗うつな気分にさせられる作品だった。ミステリーというよりは日本の私小説みたいな、徹底的に内向きのお話しで、通常のミステリーを読むようなカタルシスは味わえなかった。
最初から最後までホテルのラウンジでの二人の会話に終始し、現在と過去を行き来するだけの静かな物語。しかも、過去の出来事をいろいろな側面から見直してゆく(そこに、二転三転する真実が見えてくるのではあるが)だけなので、まるで老人のモノローグを聞いているような静けさで、ストーリーが展開されて行く。過去の事件の真実が明らかにされるという意味ではミステリー作品であるが、明かされるのは殺人事件の謎ではなく、その事件を巡る人物達の心模様である。これは果たして、ミステリー作品なのか?
好き嫌いがかなり分かれる作品だろう。
ローラ・フェイとの最後の会話
No.5:
(5pt)

悪女物語?


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ウツボカズラの夢 (双葉文庫)
乃南アサウツボカズラの夢 についてのレビュー
No.4:
(4pt)

う~~ん、残念

日本推理作家協会賞を受賞している作品であり、一般的には高い評価を得ているが、個人的には合わないタイプの作品。日本SF大賞を受賞した「蒲生邸事件」と同じ読後感だった。
物語のキーポイントにサイキック、霊視能力者が登場し、霊能力で物語を展開させていくというところで、興味を持てなくなってしまった。それでも最後まで読み通せたのは、作者のストーリーテリングのうまさだと思う。
龍は眠る (新潮文庫)
宮部みゆき龍は眠る についてのレビュー
No.3:
(6pt)

「俺シリーズ」ファンにはおすすめ

札幌・ススキノを舞台にした名無しの探偵シリーズのファンなら楽しめる、書き下ろし作品。
「著者あとがき」で「非常に苦労した」と書いているが、確かに、シリーズの他の作品に比べて流れが悪いというか、東作品の良さである“軽やかさ”に欠ける印象だった。
ストーリーは、主人公の俺を始め、高田、桐原などおなじみのシリーズの登場人物がデビュー作に登場するまでの成長物語で、話としてのまとまりの無さが気になった。また、登場人物たちがキャラクターが完成していないというか、シリーズ作品の中のキャラクターに通じるものはあるものの、いまひとつ魅力に欠ける印象で物足りなさを感じてしまった。
単発の作品として読むと東直己の評価を誤ってしまうのではないかと、余計な心配をしてしまった。
半端者(はんぱもん)―ススキノ探偵シリーズ (ハヤカワ文庫JA)
東直己半端者 についてのレビュー
No.2: 6人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

読ませる作品ではあるが

ガリレオシリーズの最新作。良くできた作品ではあるが、「容疑者X」ほどの面白さはなかった。
ミステリーとしては犯人のキャラクター、犯罪の動機、事件解明のプロセスなどに「ちょっと甘いかな」と思う部分があった。現在の事件も、その背景となる過去の事件も、いまひとつ説得力が無く、わくわくどきどき感は味わえなかった。
それでも最後までちゃんと読ませるのは、「加賀刑事シリーズ」に通じる人情話としてのレベルが高く、読者がそれぞれの立場から感情移入できそうなキャラクターが登場しているからだろう。
真夏の方程式 (文春文庫)
東野圭吾真夏の方程式 についてのレビュー
No.1:
(4pt)

読みやすい。読みやす過ぎる?

江戸川乱歩賞に何度も挑戦してきた作者の受賞作ということで、「ツボを押さえている」感と「こなれた文章」感はあったが、インパクト、カタルシスは無かった。
Amazonの書評にも「普通」とか「読みやすい」とか「2時間ドラマみたい」という評価が散見されるが、まさに同じような感想を持った。下手ではないし、つまらなくはないのだが、オススメではなかった。
再会
横関大再会 についてのレビュー