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八日目の蝉



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【この小説が収録されている参考書籍】
八日目の蝉
八日目の蝉 (中公文庫)

八日目の蝉の評価: 4.06/5点 レビュー 425件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.06pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全325件 241~260 13/17ページ
No.85:
(5pt)

嘘から出たまこと

久々に泣けました。小説の醍醐味を味わえる作品です。
物語は二章構成になっていて、
第一章は、母”希和子”視点の逃亡劇。
第二章は、娘”薫”視点(逃亡劇終焉後より時間経過し、大学生となっている)
      の所謂自分探しの物語。

多くの読者は、第一章に強烈な印象を持ったのではないでしょうか。私もそうです。
逃亡者・誘拐犯である、希和子の執念と焦燥に、ハラハラドキドキ。
ぐんぐん惹きこまれていく感覚がありました。
彼女を応援したくなるのはもちろんの事ですが、
このままでは済むはずない、という彼女の不安感にだんだんシンクロしていきます。
希和子は周囲の人々に、嘘を突き通します。さほど下手な嘘でないだけに、リアルです。
しかし、やはり綱渡りの連続で、読者は緊張状態に引きずり込まれます。
対して、娘への愛情だけは全く正直。
確かに誘拐当初は、自己暗示をかけ、”自分は母親だ!”と思い込ませています。
(その愚かさが、彼女を応援したくなる理由になるんですが)
しかし、薫が大きくなるにつれ、その嘘が嘘でなくなっていきます。

逃亡生活への不安感と、子供への愛情、
この2つの感情の同時進行がこの本の面白い所なのだと思います。


第一章の基本軸は、誘拐からの逃亡劇、そして母子の絆です。
子供は誘拐して得たものであり、自己暗示から母となった希和子ですが、
その子供、薫が大きくなるにつれて、血の繋がりは問題でなくなります。
希和子が愛情を与え、薫はそれに成長という形で答えてくれます。
これを繰り返し、また繰り返し、濃密な依存関係、というより共存関係が生まれるからです。
自ら”がらんどう”と称していた希和子にとって、
薫が心を繋ぎとめる唯一の存在になっていったことがよく分かります。

第二章は長めのエピローグモノローグという印象。
産みの親元に戻った少女が自分の過去に立ち向かうベタな内容です。
しかし前半のネタバラしなんかを挟み込むことで、
飽きずに読み進めることができると思います。
最後に著者は、切なく、美しい奇跡を用意してくれています。
このじわじわ迫るラストの感動は、素晴らしかった!!
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.84:
(4pt)

子供を持つ母親は

本当に現実でありえそうなストーリー展開。


子供を持つ母親の心境がリアルに描かれていると思う、たとえそれが歪んだ愛情であっても。



なので一気に飲み込まれ読み通してしまった。


ただもう少しオチをつけてほしかったかなと。なので星4つ
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.83:
(4pt)

引き込まれる

主人公のやっていることは許されない行為だが、読み出すと話に引き込まれて止まらなくなります。角田さんは女の気持ちを描くのがすごく上手くて、感動します。臨場感たっぷりです。
八日目の蝉Amazon書評・レビュー:八日目の蝉より
4120038165
No.82:
(5pt)

良い悪いでは表現しきれない、強い人間の感情が綴られています。必読です。

角田光代氏の著作は「対岸の彼女」」等知っていましたが、読んだことはありませんでした。
今回、「八日目の蝉」が映画化されることを知って、読んでみることにしました。
全体の構成は大きく二つに分かれています。
前半は、主人公の野々宮希和子が秋山丈博・恵津子夫妻の娘を誘拐し、東京から名古屋、奈良、小豆島へと逃亡する様子が、希和子の目線で書き綴られています。
希和子は誘拐した娘に薫という名前を付け、薫との生活のみを望んで必死になっている様が描かれており、希和子の薫への深い愛情が強く感じられます。
でも、結局、小豆島にて警察に見つかり、逮捕されてしまいます。
後半は、希和子から秋山夫妻に返された娘の恵理菜(希和子により薫と名付けられた娘)の現在の生活を恵理菜の目線で語った様子、恵理菜が秋山夫妻に返された後の子供の頃の生活を恵理菜の目線で語った様子、希和子の事件に関する経緯を第三者的な視線で語った部分、そして、現在の希和子の様子を少しだけ書き綴っています。
恵理菜は、秋山夫妻の元に返されてから、希和子により誘拐された娘としてマスコミに取り上げられ、周りの人間達から疎遠にされてしまい、また、秋山夫妻からも愛されず、鬱屈した人生を歩み、それもこれも、自分を誘拐した希和子が悪いのだと考え、自分を納得させるしかありませんでした。
この事件は、希和子が秋山丈博と不倫し、妊娠しましたが、丈博に懇願されて中絶したこと、その直後に秋山夫妻に子供ができたことから始まりました。恵理菜は、そんな希和子を否定しながらも、自分も岸田という妻帯者の男と不倫し、妊娠してしまいます。初めは中絶するつもりでしたが、自分ではない新たな魂が生まれたことから、自分にはその子を産む義務があると考えるようになりました。
不倫をテーマに、親子愛、人間愛を書き綴った本書は、単に「不倫は悪い」とか「誘拐は悪い」だけでは語りきれない、様々な人々の深い感情を表現しており、強く引き込まれるものでした。私には、犯罪者となってしまったものの、薫を守る為だけに必死に生きようとし、また逮捕され刑期を終えた希和子を責める気にはなれません。また、恵理菜もまた希和子と同様に不倫相手の子供を身ごもり、自分一人で育てようとしていることを否定する気にもなれません。希和子も恵理菜も強く生きていってほしいと思ます。
私は、初め「八日目の蝉」というタイトルの意味が分かりませんでした。でも、本書を読み進めることによって、意味が分かりました。それは、希和子、そして特に恵理菜の思いを表現していたのです。蝉は、何年もの間、地面の中で過ごし、地上に出ると、七日目に死んでしまうといいます。だから、八日目まで生きてしまった蝉は、他の蝉とは違う自分が寂しく、悲しく感じられるというのです。始めはそう綴られていました。ところが、後に考えが変わっていっています。他の蝉とは違い、八日目まで生きられたのだから、前向きに生きていこう、という考えに。正に、恵理菜の思いではないでしょうか。
本書には、単なるサスペンス小説では片付けられない、現実感のある深い人間模様があり、強く引かれるものがあります。
文句なしにお薦めです。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.81:
(5pt)

これ以上の作品が書けるのか?

犯罪者を主人公にしており、人物描写がすばらしい。

とくに、主人公が身を寄せる施設にいるいずれも一癖もふた癖もある女性たちの造形がものすごく緻密で、一瞬桐野夏生を思い出した。

角田光代はこれで新境地を開拓したのではないだろうか。
人物の描写がすばらしく、とくに主人公の親友の「正しいのに心の温かい人」という理想的な人物像をごく自然に描いていた。

太田光が角田との対談で「これ以上の作品はもう書けないのではないですか?」といったらしいが、私も同感。

角田の作品は全部読んでいるが、残念ながらこれに及ぶものはない。作者は自らとんでもなく高いハードルを自分に課したのではないか?


八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.80:
(4pt)

人間の嘲かさと愛

八日目の蝉

読み出してすぐにはまってしまった。

人間とは、男、女とは、なんでこんなにも愚かなんだろう。
弱さゆえにはまり込んだ泥沼の中で、なんとも逞しく生きていく主人公。

ただ、そこには紛れもない愛があり、
無償の想いで助けてくれる他人がいる。

自分のもつ愚かさも再認識した気がする。

人間であるからこそ愚かさをみんな持っている。
でも、大抵の人間は、大きな罪を犯すことなく生きていけている。

ただ、越えてはいけない一線の手前で踏みとどまれるという
確証なんて誰だって持っていないだろう。

私は絶対そんなことをしない、と確信していても、極限状態に追い詰められたら
変わってしまうこともあるだろう、と思う。

この話で最大の被害者は、何の罪もなく醜い大人たちの騒動に振り回された子供。
どんな理由であれ、誘拐犯は犯罪者で、その行いは許されることではない。
それでも誘拐犯が、偽りでも母として子供に注いだ愛情と、
子供との関わりには暖かな微笑ましさを感じ、その状況が続くことを願ってしまった。

犯罪を犯した人と、被害にあった人のいる事件をもとにするのは心苦しいが、
でも、そういった追い詰められた犯罪者の心理や、被害者の心理に
私はどうしても興味を抱いてしまう。

八日目の蝉Amazon書評・レビュー:八日目の蝉より
4120038165
No.79:
(5pt)

生きる希望とか喜びとか

読み終わったあと、とても素直な素敵な余韻に浸りました。色んな環境や困難があって、色んな事件や人間模様があって、それでも勝手に我侭に、でも必死に生きていくことの、力強さ、人の営みの尊さを感じました。
読み物としても、単純にすごく面白いです。
人物の描写、心模様、そして美しい瀬戸の情景。切ないシーンも何故か心が暖まるような気持ちを感じます。
「八日目の蝉」というタイトル、とても奥が深くて、それだけでも作者の力量と言いますか、書き手としての強いメッセージを感じます。ここまでの満足感は久々です。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.78:
(5pt)

初めての小説で

私は自己啓発本やエッセイなどには目を通したことがありましたが、 ストーリー性のある物語は読んだことがなく…4月から映画公開というこもあり本屋さんでもズラーッと前列に並んでいたこちらの本に目が止まり、初めて小説を読んでみました。 まず、物語は… ある男(妻世帯)と愛し合った女が、男を忘れられずほんのささいな出来心からその男の「子供娘」を誘拐し、逮捕される約4年間の偽ともいえないなんとも親子のような物語(第一章)と、 本当の家族のもとに帰ってきてからの、その子供が大人になる自分自身や家族、その女との葛藤を描く(第二章)物語で構成されています。 一見愛憎劇でもくりひろげられるのか?とも思いましたが、 最後まで飽きることなくすんなり入ってくる文章から、私の心に残ったものは、全く言葉では表現しきれないほどの儚さと切なさと、「愛」でした。 それが やっていいこと 悪いこと になるとまた別の問題もありただの「誘拐犯」で終えてしまうと「うーん」とうなるようなものもありますが、 「この子を守りたい」 「どうしてもこの子と一緒に暮らしたい」と、 強く想うその女の気持ちや想いは、まさしく「母親」であり、むしろそれ以上のようなものさえ感じました。 読んで良かったなぁと 思える一冊でした。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.77:
(5pt)

これはまいった、素晴らしい

学生の頃、何度か小豆島へ行ったことがある。毎回季節は春だったので、この作品を
読みながら、のどかで静かな瀬戸内の風景を想い出した。
この背景は前半の”隠れ家”との比較でこの小説の完成度を引き上げている。

読み終わってからしばらく次の本が手につかずにいる。実に心地よい。
この作品の展開と構成は秀逸だ。半ばを過ぎたあたりから本当に没頭して止まらなく
なってしまった。映画になるということだが、小説の中での描写が上手いので、これ
は子供次第というところか。
特に最後はこれしかない、という終わり方と思うので是非、ラストシーンは隅々まで
美しく明るく撮ってほしいと思う。




八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.76:
(5pt)

なんといえばよいのか

ページを繰る手がとまりませんでした。この先どうなるんだろうと最後迄。
どう考えたってハッピーエンドはありえない道筋に、どう決着がつくんだろうとどきどきして読みました。
主人公希和子、その不倫相手、その妻。彼らはどうなったって自分で選んだ道だから、どうなったってしかたない。でも、薫は、まさに「なんで私なんだろう」だと思う。自分で選んだわけではないのに、自分は進んで誘拐される道を選んだわけではないのに、なぜ、この状況と。読み手としても理不尽だ、と彼女のおかれた立場に不幸を感じた。
でも、もしかしたらみんな多かれ少なかれ「なんで自分なんだろう」を抱えて生きているのかもしれない。希和子たちだって、好きで選んだわけではない、気づいたらここにいた、という状況だった。
与えられた状況の中で、最後薫が選択した未来は、希和子と薫が望んでいた幸せな未来かもしれない。そう思ったらどうしようもないストーリーの結末に、少し救われた。
面白かったけど、いろいろ考えてしまって、的確にその感想を選べないかんじの本でした。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.75:
(5pt)

もう一日生きてしまったら‥

不倫相手の家に忍び込み、その家の乳児をさらうという罪を問う前に、
作者の、乳児の描写に惹きこまれ、目の前にいたら
思わず抱きあげ、頬ずりしたい衝動にかられる。
容疑者野々宮希和子も、当初誘拐が目的ではなかった。
しかし部屋にいた赤ちゃんの笑顔に心を奪われ、
一瞬にして母性にスイッチが入ってしまうくだりは実によくわかる。
「私がまもる。すべてのくるしみ、かなしみからあなたをまもる」と。
そこから赤ちゃんを連れての逃亡の旅が始まる。

作品としての完成度の高さ、あえて平易な表現を使いながらも
緊迫感を維持したまま読者を終盤まで引っぱっていく文章の力。 
効果的に盛り込まれている輝く瀬戸の海の描写が
あたたかい余韻を残し、テーマの重さを救っている。

母性という言葉を一つも使わないで、登場人物の女たちの
その人なりの母性を表現している点も秀逸。
子どもを生んだことがないから母性が無いわけではない。
蝉の抜け殻のように「がらんどう」の子宮であったとしても
他人の子を慈しむことはできるのだ。野々宮希和子のように。

しかし作者は希和子に加担しない。
さらわれた子のその後の成長に視点を移行する。
この子はどんな成長をとげ、どんな母性を培うのか?
真に帰るべき場所、安寧のふところを見つけられるのか?
この小説がどう終結するのか気になり
ぐいぐいとページをめくる速度が早くなった。

七日で命を終える蝉が、もう一日生きてしまったら‥
その答えがこの小説のなかにある。心揺さぶる秀作。





八日目の蝉Amazon書評・レビュー:八日目の蝉より
4120038165
No.74:
(4pt)

ストーリー自体は良い。

0章・1章は母親視点から、2章は娘視点から書かれている(ただし、部分的に例外はある)。
前半は、緊迫感溢れる逃亡生活を、後半は、逃亡後を描いている。最後まで勢いは止まらない。比較的長い話だったが、一気に読んでしまった。

ただし、気になるのが、裏表紙の紹介文と映画(2011年4月公開)の広報帯(これらの点は、作者の力量とは無関係なので、レビューの星の数に反映はしていない)。
私は、この本を読んで感動した。少し泣いた。けど「クライマックス」で、ではない。
むしろ、こういった話にありがちなラストだと思ったので、ラストで真新しい感動はなかった。
あとは、帯の「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした。」のコピー。もしかしたら、映画の方は、そういう仕立てになっているのかもしれないが、小説を読んだ限りでは、このコピーは合わないように思う。子どもの方に、こんな温くて緩い感覚は感じ取れなかったけどな…。
読んだあとに違和感が残った。

八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.73:
(4pt)

哀し話

赤ん坊の笑みは、無条件で人を魅了する。
たとえ自分の子供でなくても、だ。
愛した男性の子供、自分ではなくその男の戸籍上の妻が産んだ子供、
その赤ん坊の微笑みに、3年間の逃亡生活を余儀なくされた女性。
愚かと言えば、全く愚かだ。
自分の人生も、子供の人生も、その両親の人生も、それで大きく狂ってしまう。
ただそれは結果であって、その時の彼女には、他に選択肢がなかったのだろう。
嫉妬、母性、復讐心、そのどれもなく、単に子供を抱きしめたかった。
哀しい話だと思いませんか。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
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No.72:
(5pt)

目の前にある、あまりにも儚い、幸せ

希和子は、愛した人の、生後6か月の赤ちゃんを連れ去り、
そして逃亡し、自分の娘として育て始める。
彼女の逃亡は、娘が4歳になるまで続き、ある日唐突に終わる。
それが描かれているのが第1章。

第2章では、成長した娘が、過去を受け入れるまでを描く。

読んでいて不安で不安で、切なくさせられるのは第1章だ。
希和子は、いつかこの幸せが、このもろく儚い幸せが壊され、
失われてしまうであろうことを知っており、
どうかこの瞬間が一瞬でも長く続きますようにと、
祈るような思いで日々を暮らす。
誘拐された娘は、理不尽な逃亡生活に付き合わされながらも、
あふれるほどの愛情をいっぱいに受けて、まっすぐに育つ。
その二人の健気な生きざまに、心を震わせずにはいられない。
儚すぎる幸せに、全てを賭けている様が。


八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.71:
(5pt)

ラストシーンに特に感動

1章の希和子が薫を連れての逃避行も、母の子(実の子ではないわけですが)に対する愛情が
よく描かれてよかったですが、
2章の最後の10数頁で、恵理菜(かつての薫)がお腹の中に赤ん坊を身籠った状態で、
幼い頃を過ごした小豆島に向かう途中、彼女の心の中で大きな変化が生じる場面、
それにラストで、出所した希和子が、岡山港で恵理菜とニアミスするシーンに特に感動しました。

女性の子供に対する愛情は、こんなに大きく深いものなのでしょうか。
女性が子供を身ごもり、生み、育てるという行為は、こんなにも尊いもので、
こんなにも女性を強くするものなのでしょうか。

たいへん感動的な物語でした。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.70:
(5pt)

素晴らしい!

角田光世氏の名前も前からしっていが、これが2冊目の読書となった。まず抜群に面白い。ネタばれになるため細か内容は割愛するが、特に第一章を描く緊張感をもった文章が素晴らしい。奪い、逃げ行く過程がスリリングで「すごいストーリーテラーだなあ」と感心しながら小説の中にぐんぐん引き込まれ、時間を忘れた。僕はつまらない小説を読むとストレスのため頭痛がする癖があるのだが(笑)痛みのいの字も感じさせないほどの一気読みだった。
ただ、純文学か中間小説なのかの微妙な域にある作品だが、これだけ完成度が高ければそんな事はどうでもいいと思わされた。本書の前「三面小説」を読み、その個性のない文体と手垢のついたモチーフに残念な感想をもったが、この作品を読んでそんな思いも吹き飛んだ。〜この5年程あまり本を読まず仕事にかまけていたが、そうした間にも素晴らしい作品がたくさん生まれ良い小説家が育っている。角田氏の小説は二本目であるため、残された本を読みあさるのが楽しみだ。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.69:
(5pt)

現実的な作品

第2回中央公論文芸賞受賞作。本作を原作として、NHKでドラマ化もされ、2011年4月には映画公開予定。不倫の果てに結ばれなかった男の子どもを誘拐した女の逃走劇を描く第1部と、成長したその子どもが自身の妊娠を機に、暗い過去と現実に悩みながらも、未来へ希望を持って羽ばたこうとする第2部で構成されている。子どもを誘拐された家族は両親の不倫が原因とマスコミによって暴露され、事件後も世間の目を逃げるように生活し、崩壊していく。「こんなはずではなかった」として人生や自身を受け入れられずに生きるこの家族の姿に、妙な共感をおぼえるのは、「こんなはずではなかった」的な悩みから派生する事件などを現在多く目にするからだろうか。ただ、そこから這い上がろうとする主人公の姿は、教科書通りのものではなく、悩みながらもとにかく一歩を踏み出した感じであり、何だかこちらも現実的で共感できる。この現実的であり、嘘っぽくない希望性がこの小説を素晴らしいものにしていると感じた。
八日目の蝉 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:八日目の蝉 (中公文庫)より
4122054257
No.68:
(5pt)

「家族」とは・・・、「生きる」とは・・・

不倫の末の6か月の子どもの誘拐から、3年半に渡る逃走劇。 希和子の行為は犯罪でありながら、読み進むにつれて無事に逃げることを望んでしまうのは何故でしょうか。 その逃亡は、戸籍もなく育児手帳も健康保険もないものです。 その綱渡りの逃亡劇に「母親」を感じてしまいます。 自分の産んだ子でなくとも、自分の愛した男の子であることで、十二分な愛情を注ぎます。 それは、彼女が子どもから奪ってしまったものを、償ってやるための様でもあります。 これでも一つの小説なのですが、そこから更に本筋に入って行きます。 後半は、この誘拐された子ども恵理菜(薫)の物語です。 4歳で大きな生活環境の変化に遭遇した彼女の心の痛みを中心に、エンジェルホームで出会った千草の助けを借りながら、そこから回復して行く姿を描いています。 自らを「八日目の蝉」と位置づけ、あってはならない存在として生きてきた恵理菜が、「八日目の蝉」だからこそ見られる人生を生きようとします。 「家族」とは何なのか? 「生きる」意味は? いろんな事を考えさせてくれる作品でした。
八日目の蝉Amazon書評・レビュー:八日目の蝉より
4120038165
No.67:
(5pt)

感じ方が合っているかはわかりませんが、、、

私は当然、男なので子供を産む事は出来ない。これは女性だけの特権である。この8日目の蝉という作品は知人から借りたものだが、私は最近では滅多に小説を読む事は無い。つい先日”悪人”を読んだばかりだが、それは本当に数年ぶりの事だ。いつもは電車という自分だけの閉鎖された時間の中で読むのだが、今日は自室という閉鎖された自分だけの空間でツイッターからの干渉から逃れるように集中して読みあさった。一言で言えば、親の存在とは先天的なものなのか後天的なものなのかといえば、後天的なものなのだろう。家族とは何か、絆とは何かそう言ったものが伝わってくるようであった。またここではカルト集団のような組織が出てくるが、相互扶助の精神の行き過ぎと、幼児誘拐事件の犯人の逃亡劇というコントラストが平和とスリルを交互に織り交ぜるあたりに技術の奥深さを感じる。この小説は2部構成になっていて、誘拐から逮捕までの母親の物語と、その誘拐された子が大人になって子供を授かり、生き別れたフェリー乗り場で育った場所へ戻っていく話になり、最後に二人はもう一度だけすれ違う。話の途中、蝉は7年土に居て、7日しか生きられないが、8日目まで生き残った蝉は何を見つめるのだろうかという部分がある。題名通りの8日目なのだが、本来存在しないはずの未来を見る事が出来たとき、そこには何が映っていたのかは解らないが、きっとそれは明るい未来だろうと理解する薫と、薫を失い絶望を背負いながらも、どこかで薫に会えるだろうと思う京子は、やはり血はつながっていなくても母子なのだ。近年、親が子供を育てられず、無惨にも死に至らしめる話がある中、ママゴトだった子育てが、誰にでも周りのサポートと経験を経る事で、きちんと行える事、そして、そこには血のつながりは関係のない事(言いたい事では無いにしろ)が書かれている。京子の行った事は決して褒められる事ではないし、犯罪だ。だがしかし、親で居る事、愛情を注ぐ事には何も変わらないのである。私たちは失った何かをもう一度、取り戻すべきなのではないだろうか?
八日目の蝉Amazon書評・レビュー:八日目の蝉より
4120038165
No.66:
(5pt)

今年最大の感動

最近極度の不眠症の為、この本を少し読んでぐっすり寝るつもりでした。
ところが、最後まで読まずに寝ることはできず、また読み終えた後も
本書のいろんな情景が頭の中を巡り、一睡も出来ませんでした。
私は高松に住んでいた時に、小豆島によく行っていたので
情景を描きながら読むことができました。
どこにでもある田舎町なのですが、夕暮れに染まる造成されていない自然の景色に
心打たれたことを思い出します。
優しい母親とそんな環境で育った薫は、一生忘れることができない大切な記憶として
残ってしまったのだと何となくわかります。
希和子は、不幸な境遇ながらも幸せだった期間は、残りの人生と引き換えにしてでも
意味のあるものだったのでは無いかというのもなんとなく理解はできます。
私も7年前に2歳だった息子と離婚によって別れ、未だに会えずにいますが子供を育てた
苦労や成長の実感はかけがえのない思い出でとして今でも宝物です。
ただ、物心がつく前に人生を翻弄された子供にとってはどうなのでしょうか。
事件さえなければ苦しまなくて済んだのに、楽しかった思い出を封印しなくてはならないのか
といった葛藤は一生続くのではないでしょうか。
最後に自分の過去を受け入れ新しい生命と共に強く生きて行こうとする恵理菜の姿に
ホッとし、できれば希和子と感動の再会をして欲しいと
思ってしまいましたが、そこは余韻として残しておくのですね。
今年最大の感動と過度の不眠でくらくらです。
八日目の蝉Amazon書評・レビュー:八日目の蝉より
4120038165

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