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(短編集)
私が語りはじめた彼は
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私が語りはじめた彼はの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.86pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全51件 41~51 3/3ページ
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きれいな文章。読み終わった時の静かな感情。奪った女は奪われるのを恐れ、子供は哀しく育ち、妬むものの人生は上手くは回らない。それはそうだ。私のひとりよがりは、せめて男に一人でも子供を愛しぬいてもらいたかった。 | ||||
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しをんさんは「おちゃらけの人」と、思いこんでいた私はこの小説を読んで驚き自分の無知を恥ました。端正で凛とした上質な美文です。・・・が連作短編の核となる「女の人にやたらともてる大学教授:村川」の魅力がさっぱり読む側に伝わってこないのです。どう読んでも彼がなぜもてるかわからない。容姿端麗でもないし性格が魅力的でもないしジゴロのようにホルモンが染み出てるわけでもないし・・・。せっかくこれだけの文章が書ける方なのにこれはとても致命的で、結局は人が書かれていないということになるのではないのでしょうか。なんでこんな半端な男に女が振り回されるのか・・・これがわからない私のほうが人生経験が浅いつまらない女なのかしらと自省もしたりはしたのだけど・・・。あっ、なるほどと思える一文(短文でかまいません)があれば星4つでした。もう一度、背筋が伸びたさえた文章がよみたいので次回作を待っています。 | ||||
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これを映画とかドラマとかにしてほしくない。と思う。エッセイでは、たのしく痛快な三浦氏が、この作品では別人のように、美しく鋭い文章で読者を惹きつける。一文一文をグッと噛み締めて読んでいきたい作品。ストーリー云々よりも、私は彼女の文章力というか、文章という名の芸術をこれでもか、というほどに堪能しきることができた。 | ||||
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美しい文章、うまい文章、というのはこういうもののことを言うのだと、実感した。 文章自体美しく、そして、内容も痛みを伴った美しさ。 村川という男女関係に奔放な大学教授を核とした6つの短編集。 村川自体は直接登場することなく、彼の存在によって人生に影響を受けた人々の人生が描かれている。 その6つに共通するのが身体のどこかにあけられた穴。 美しくも痛ましい穴が、彼らの中に開いて、そしてそれを自覚しつつ彼らは生きていこうとする。 あるものは虚しく、あるものは強い意志の元に。 ラストにはとくにラストらしい終わり方。 最後はうまくきれいに終わらせてくれるあたりもとても良い。 それが、とってつけたような簡単なわざとらしい感じになっていないのも、この人は本当にうまい作家なんだなぁと思わせる。 すごい。作家って、そう簡単になれるもんじゃない、と、自分との才能の差を実感させられる。作品。 | ||||
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ぐいぐい引きこまれて読みました。帯の金原瑞人氏の絶賛の言葉がなくとも、(帯が過剰に誉めている場合は、大抵半信半疑で読み始めるのですが)充分満足できる作品だと思いました。 暴露や殺人?絡みのミステリーの要素あり、愛を巡る心理的展開あり、軽さに流れ過ぎない程よいテンポに引っぱられて、全6章を一気読みでした。 章ごとに関係する人物が重なっていき、その関わりのおもしろさに、どこで繋がるのか?どう決着がつくのか?と、一人先走ってしまうほど。 「かつて、たしかに愛は存在した。」・・・帯のその言葉が、読了した時点で立ち上がってくるのです。愛を奪う者と、奪われたものとの間にある確執。そこから飛び出ることで、精神の安定を保とうとする元の妻。父を奪われたことで、人を恨むことを覚えた子供たち。章が進むにつれて、様々な謎が重なりあい、絡みあい、登場人物たちの内的世界の描写に魅惑させられました。人の心の襞、多面的な愛の様相、凄みをおびた執心、壮絶さ。暗くほとばしるような愛の物語を、三浦しをんさんは、語りきってくれました。 | ||||
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中国古代朝廷の研究をしている村川は「肝臓を悪くした狸」のような容姿をしているが、女性を惹きつける魅力を持ち、そのおかげで結婚して十年以上経つ彼の家庭はほぼ崩壊している。ある日大学に村川を告発する手紙が届く。教え子の三崎は犯人を突き止めるべく奔走する。この物語は六篇の連作から構成されている。それぞれの短編は、村井という自己中心的な欲望が生み出した歪んだ現状を映し出す。そして他者間のコミュニケーションの不可能性を描き出し、恋愛も最終的には成立しないことをこの連作は告げる。だから三崎には結局誰が犯人なのか突き止めることは出来ないし、村井の子供は彼の方法で現実を乗り越えるが、なぜ村井に捨てられたか分からない。いつまでも佐原直絵には村川綾子の死の真相は分からないし、村川ほたるの婚約者は以前仁和興産社長の「愛人の愛人」をしていたが、その女の真実を知ることはない。村井「先生は女たちに愛を求め、女たちは先生を愛した。だが、先生を理解したものはなく、先生に理解されたものはいない」のだ。他者との関係性において共感、共鳴をすることはできても、根本で他人の内面の真実を自分の内面の問題として引き受けることは出来ないという事実を描き出している点で、恋愛だけに終始する通俗小説とは一線を画する。しかし、作者も三崎も他者間の交通の関係性の不可能性を熟知しながらも「愛ではなく、理解してくれ。暗闇のなかできみに囁く私の言葉を、どうか慎重に拾ってくれ」「きみと話がしたい。きみの話を聞かせてほしい」と、最後に希望の欠片を持ったような語りで物語が閉じられることに私は不満を抱く。『私が語りはじめた彼は』とは、要するに物語内の様々な「私」が発話しているが、「彼は」に続く述語の不在によって、コミュニケーションの不成立の前提を端的に指し示している。間違ってもこの物語世界では、他者との関係性に希望を持ってはならないのだ。 | ||||
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身持ちが非常によくない古代中国史の教授にまつわる 人間関係の断片が連作されています。 前の話の一部を引き継ぎ次の人のことが語られてゆく趣向で, ミステリのような楽しみ方もできます。 三浦しをんは,力が入りすぎると少し文章に装飾が多くなる傾向があるものの, 非常に優れた書き手であることをこの小説は示しています。 著者の愛に関する心の秘密を明かしたような本です。 | ||||
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身持ちが非常によくない古代中国史の教授にまつわる人間関係の断片が連作されています。前の話の一部を引き継ぎ次の人のことが語られてゆく趣向で,ミステリのような楽しみ方もできます。三浦しをんは,力が入りすぎると少し文章に装飾が多くなる傾向があるものの,非常に優れた書き手であることをこの小説は示しています。著者の愛に関する心の秘密を明かしたような本です。 | ||||
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題名はある詩人の作品の一部を流用したものだそうだが、とても美しく心に残ることばだ。ふと我に返ると、背表紙の題名に突き動かされている自分に気づく。以前「ロマンス小説の七日間」(角川文庫)を読んだことがあったので、ぼくの中における三浦しをん観が180度ひっくり返った。ある大学教授がキーパーソンとなって様々な愛のかたちが描かれている。些細なことかも知れないが、男と女がいて、爪を切る場面があって、「月を切る」という表現が出てくる。ハッとさせられるような研ぎ澄まされたことばが到るところでスポンと作品全体におさまっている。ストレートには描かれていない愛の断面に、ぴったり添うような不思議な情緒を醸し出していると思う。読み終えたあと、心の中が静かになった。 | ||||
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一気に読み終わりました。。。最初2ページが非常に衝撃的で、精神的にショックが残った印象です。それが序章であったかのように、文章全体が非常に張り詰めた表現で満たされており、繰り広げられる緊迫した状況に心拍数が上がっていくのを感じました。登場人物がそれぞれの想像によって自身を追い詰めて行く様が印象的でした。人は想像力を勝ち得た分、自身の苦悩をも背負わなければならなくなってしまったのかもしれません。自分自身のエゴをもつきつけられるようでした。 | ||||
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~そこには彼を愛する人がいた。心底愛してしまった人がいた。けれども彼だって、愛される限りの人ではない。彼も、求め愛した人なのだ。でもそれだけでは足りないらしいのだ。結晶、残骸、予言、水葬、冷血、家路という連作短編集。三浦しをんの日本語が好きです。強く信念の通った一つの言葉が語り手を通して伝わってきます。~~それは辞書にも百科事典にも表せません。彼女の特別なものなのです。だから私には語れません。ただ、読んでください。~ | ||||
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