世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
評判
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの評価:
4.24/5点 レビュー 267件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全295件 121〜140 7/15ページ
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4.24/5点 レビュー 267件。 B ランク
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安倍吉俊監督のアニメ『灰羽連盟』は本作の「世界の終り」を範としている。またゲーム『AIR』『CLANNAD』の脚本を担当した麻枝准は、本作から強い影響を受けたと語っている。
日本文学の中で、必ずしも高い評価を受けてこなかった村上春樹が、なぜ世界中で読まれるのか。それは現象としては、日本製のアニメやゲームなどがオリエンタリズムとは無縁なポップカルチャーとして海外に輸出されている状況と連動していると見るべきだろう。翻訳上の問題が殆どない透明で平易な文体(これは吉本ばななも同様である)で書かれているということも大きい。
村上春樹は英語圏ではスリップストリーム(主流文学とSF・ファンタジー等の通俗文学との境界解体)やアヴァン・ポップ(前衛文学とポップカルチャーの融合)の枠組で捉えられているが、そういう観点から見た無国籍的で匿名的な日本文学としては、安部公房の系譜に連なるものともいえるかもしれない。
村上春樹の場合は、1960年代の学生運動の挫折という社会的背景もあったのだろうが、社会関係への参与を拒絶し内面性に引きこもること(村上春樹がいう「デタッチメント」)、現実を見ないことで傷付くことを避け、自己を防衛するという傾向があり、本作で描かれる「世界の終り」はその産物である。
それは主人公が潜在意識内で作り出した一種の仮想世界であり、外界から壁で隔てられたその街は、快楽も苦痛もない、アパシー(無感動)の、不死の安らぎの世界である。しかしそこでは主人公は心を、つまり自分自身を喪失せざるを得ない。本作はそのようなジレンマを幻想的な物語として表現しているが、総じて自閉的な独白に終始しており、そこには旧エヴァのような内在的な批評性も希薄である。結局、資本制のグローバル化による生活環境の均質化を背景に、孤独な個人が抱える喪失感を自己愛的な物語に解消しようとする癒しと慰めの装置でしかないのではないか。
東浩紀(『クォンタム・ファミリーズ』)や宇野常寛(『リトル・ピープルの時代』)は、かつての蓮實重彦や柄谷行人等による村上春樹批判に抗い、特に本作に着目して村上春樹をポップカルチャーの文脈で再評価し、かつ批判的に乗り越えようとしている訳だが、彼等の春樹評価は、柄谷・蓮實以降の批評が春樹を文学的にdisってきたことの反動で過大になっており、かなり無理があるように感じられる。