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欲望
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欲望の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.05pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全38件 21~38 2/2ページ
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物語は、主人公(類子)の語りと言う形で進行してゆきます。電車に乗っている現在から1ヶ月前、そして中学時代まで話は遡り、現在まで戻ってきます。 物語の中心は、類子の好きな正巳が事故で性的不能者であることにより、彼女の「欲望」が「精神的」なものと「肉体的」なものに二分されることにあります。一方の正巳も「肉体的」な「欲望」の解決する道がないために、頭の中の「肉体的欲望」を究極まで突き詰めています。この「精神的欲望」と「肉体的欲望」の分離が出来ている類子と出来ていない正巳の関係が悲劇を生みます。 この本の特徴は、「天人五衰」を思わせるラストに代表されるように、「春の雪」「仮面の告白」「金閣寺」等への言及もあり、物語の中でも三島由紀夫の自宅そっくりの屋敷を作ったりといった風で、明らかに三島由紀夫へのオマージュがあります。それは、筆者自身が、三島由紀夫が目指した「小説」の世界を引き継ごうと言う意思の表れかもしれません。 この本は、結構長い本なのですが、ストリー・テラーの筆者らしく、一気に読ませる本になっています。 | ||||
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三島由紀夫をモチーフにした作品。エロスとアガペーを追求した作品のようにも見える。阿佐緒は肉体的エロスの中に愛を求め、袴田は肉体的エロスを拒絶し、精神の中に美を求める。類子は、肉体的エロスへの欲求を能勢との情事の中に解消するが、正巳の中にアガペーを求める。正巳は、阿佐緒に肉体的エロスを求めるが、不能であるがゆえに充足できず、類子との一時的関係にアガペーを見出そうとするが、結局自らの不完全性を超克できずわが身を滅ぼす。要するに、全員が何らかの形で不能者であり、全てがすれ違ってかみ合うことがない。阿佐緒と正巳には最初から死の予感が漂っている。前者が袴田から車を買ってもらった時点で、それが彼女の死に繋がることが予感される。私は、阿佐緒が正巳を車に乗せ、一緒に未必の心中をするのかと思ったが、そういう展開ではなかった。やや図式的だが、かなりの力作で、「夜ごとの闇の奥底で 」よりは、余程感心した。 | ||||
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とても切ない物語である。それは何処かで人生の歯車が狂い死んでしまう人に対してでもあり、また歓びの裏にどうしようもない絶望を抱えながら死んでいくことに対して。 どうして生きてゆくということは、もしくは男と女の結びつきというものは哀しいものなのだろう。 とりわけわたしが興味を持ったのが主人公の類子の友人、正巳の存在である。完璧な肉体と精神を持っていながら彼は性的不能者なのである。セックスが出来ないことで、愛し合うことが出来ないということで、運命は残酷なほどに正巳を追い込んでいく。 肉体の交合がなければ愛にも辿り着けないのか?その事実が、たまらなく哀しいのだ。美しい物語であることりは違いないのだが・・・・ | ||||
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小池真理子という作家は、恐るべきスピードで成長を遂げている。筆も早く、読者をいたずらに待たせることをしない。かと言って、ザツなものを仕上げている訳ではなく、毎回こちらを驚かせるだけの素晴らしい作品を上梓している。今作では、高校時代に知り合ってからの長い間、不思議な三角関係を続けている男女の、プラトニックな愛情を描いている。男一人に女二人。この三人は、男一人を挟んだ三角関係だが、その関係がプラトニックであるだけに、不思議なほど仲が良い。小池作品には、決まったセオリーがあって、年の離れた夫を持つ女や、妻子ある男との情事に埋没している女が登場するが、この辺りは、今作でもセオリーとなっている。それでも、安っぽい三文小説にならない所が小池真理子の一流たる所以だろう。 | ||||
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作品全体としては読み応えのあるものだけれど... 全体に流れているテーマである性的不能者との恋愛というテーマは「仮面の告白」、全体に流れる空気及び類子と正巳の絡みは「豊饒の海・春の雪」、結末の雰囲気は「豊饒の海・天人五衰」。 オリジナルの箇所があまり目立たなかったような気がする。三島由紀夫あっての作品だと感じた。 | ||||
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読み終えてしばし考え込んでしまう。だけど一方で美しく透明感溢れるすがすがしさを感じられる。自分自身に置き換えると身動きが取れなくなる作品。男と女が惹かれ会い精神と同様に互いの肉体を求めることは誰にも止められない。お互いが欲しているものを与え合うことができるすばらしさがそこにある。だけど欲しても一方がそれを与えることができない場合,求める者は満たされぬ想いが「欲望」という形に姿を変えるのだろう。愛すれば愛するほど果てることのない想いとして。・・精神的な結びつきだけで深く愛し合う2人が過ごした南の島でのひととき。読んでいて救われたような気持ちになったが,休暇の終わりに手を振りながら沖に泳ぎ出し二度と戻らなかった正巳と,一人残された類子。2人の心を中を想い図ることはとてもできない。深く重いテーマでありながら,丁寧できめ細やかな描写が作品を美しいものにしている。小池真理子に脱帽します。 | ||||
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まず、読み終わったときに身動きが取れなくなった。こんなにも引き込まれ、まるで主人公の人生を自分がたどったかのような感覚になるのはこの本が初めてだった。そして、未だにこれ以上の恋愛小説に出会えていないと思う。正巳と類子の切ない関係も、正巳の体に起こってしまった運命も、類子が正巳を求めてしまう感情も、場面の一つ一つがすべてなんとも形容しがたい気持ちにさせる。苦しいほど相手を想う恋愛をしたことがある人なら、きっとこの小説の素晴らしさに衝撃を受けるだろうと思う。 | ||||
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交通事故が原因で性的不能となった青年との精神的な純愛という、悲恋の物語。女性がここまで心と肉を分けて考えられるのかどうか私には分からないのだが、主人公は一方で妻子ある男性と体だけの関係に溺れる。自分の愛する人とは決して肉の交わりを得ることはできない、故に激しく欲情してしまう。そして、最愛の人との精神的オーガズムという極地に到達した時、突然、肉欲だけの関係の男に興味が失せる。肉の喜びを味わいつくした上で、性的に不能の恋人と精神的な交合を欲する主人公と、肉体の快楽を味わったこともなく、セックスを観念でしか捉えられない青年の絶望。二人の会話のひとつひとつが、本当に切ない。二人で、南の島での静かな休暇を楽しんだ最後の日、沖へ永遠に泳ぎ続ける青年の姿。それをも彼の人生における至福の瞬間であったと、甘美な思い出にしてしまう主人公。性描写はあっさりしているが、精神的オーガズムという新しい官能の世界を切り開いている。他の登場人物もキャラが濃厚で、作品に彩りと不気味さをかもし出している。作中、登場人物たちにより三島由紀夫の作品が何度も語られており、三島文学を読まなければこの作品を本当に理解することはできないのかも知れない。小池真理子の作品を初めて読んだが、もっと小池ワールドに嵌ってみたくなった。 | ||||
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正直に言います。小池も林も変わらないと思っていたので、今まで馬鹿にしていて手に取ったことがありませんでした。小池さんごめんなさい。夜お風呂の中で読み始めて朝の4時まで眠らずに読みきってしまいました。誰でも自分が何かに迷ったときに小説を読んで主人公に自分を重ねたことがあると思うのですが、この本の主人公に、片思いをしている人・したことがある人なら(その内の99%は)圧倒的なシンパシーを感じることが出来ると思います。主人公の哀しみがこれほど手に取るように伝わってくる本はなかなか無いのではないでしょうか。今まで食わず嫌いをしていた人は、ぜひ一度読んでみてください。 | ||||
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私は小池真理子さんの作品の中でこの本が一番好きです。 この作品はタイトルからして、あまり期待せずに手に取った本ですが、タイトルとはあまり関係なく、主人公の3人がそれぞれ本当に切ないのです。 この作品は読んでいると、頭の中が「し~ん・・・」としてきて没頭してしまいます。ほんとうに映像が浮かんでくる文書です。もう何度も読み返していますが、その度にやはり「し~ん・・・」として、他のものが目にはいらなくなります。 これにはまるのは女性だと思いますが、是非読んでみてください。 | ||||
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こてこての恋愛小説。読み物としての完成度は優れている。作者の力量が現れている。但し、テーマは私としてはキツカッタ。変な意味ではないけど、女の子にオススメかもしれない。女の子のほうが実感として感じる場面が様々あると思う。振り返ってみると、恋愛小説ってあんまり読んでないんで的外れかもしんない。ごめんなさい。星3つ?です。 | ||||
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初めて小池真理子の作品を読んでみた。タイトルだけだとちょっと「ひく」かもれないが、予想よりメンタルなストーリーだった。三島の作品も過去に読んでいて多少なりとも共感できたのでこの本も興味深く読めた。他の作品も読んでみたいと思えた。 | ||||
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小池真理子は、小説のタイトルをつけるのが下手かも知れない。このタイトルだけでは、私は手に取れなかったと思う。描かれているのは、「特別」な相手と「特別」に思われている自分。こういう「特別」なものに浸りたい人にはたまらない一冊。手厳しく書いたけど、割と好きな作品で、時々読み返します。 | ||||
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どのような恋慕も、身体で愛を交わすことによってその一時はカタルシスを得ることができる。しかし、そういう肉体的な楔を打ち込むことができない想いというのは、一体どこまで続くのだろう?『果てることのない想い』-想像しただけで気の遠くなりそうな、気分の悪くなりそうな、それでいて不思議な陶酔を覚えるような観念だ。 また、『相手を求める』と簡単に言うことはできるけれど、その求める『何か』が肉体以外の何かであるのだとしたら(そして、多分そうなのだろうけれど)究極的に、私たちが愛する人に求めているその『何か』とは一体何なのだろう? 読後は暫し放心してしまった。 焦がれるような切なさが溢れる、秀逸なラヴストーリーだった。 なお、正巳の口からあるものが零れ落ちる場面といい、終盤に袴田の本からあるものがはらりと落ちる場面といい、小池真理子の演出の芸の細かさと上手さはいつもながらさすが…。 | ||||
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映画を観ているように映像があらわれます。ここちよいです。人物がうれいをおびていて、かなしい。自分が人生で経験しえないことが、読むことで自分のものにできるっていいなと思えた本でした。 | ||||
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本の最後にある書評を見て購入しましたが、正直言って少しがっかりしました。三島由紀夫の家を模倣して家をつくったインテリな人はもっと強烈な個性をもっているのかと思いました。現実のほうが信じられないくらいの個性的内面世界を持っている人がいるような気がします。総じて、登場人物が平凡すぎておもしろくなかった、というところでしょうか。ストーリーもいまいちでした。今はいろいろな文学賞があって、文学賞をとったからといってすべてが従来の文学賞受賞作レベルのものではないとも思います。しかし、森瑶子なき後、活躍してほしい作家です。 | ||||
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内容をまったく知らずに読み始めたら「無伴奏」に似ていると感じました。「無伴奏」は以前に読んでいたので少々がっかり。それでも飽きることなく最後まで読めたのは面白いからでしょう。 | ||||
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なんとなくなつかしい気持ちにさせてくれる本です。 欲望、とは不埒な意味ではないんですよね。 衝撃的なラストで、恋愛小説としての完結が美しいです。 恋愛文学賞をとっただけはある本だと思います。 | ||||
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