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三面鏡の恐怖
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三面鏡の恐怖の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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帯で、二階堂黎人氏が「私は、この鏡映的な長編で、木々高太郎を再発見した」と書いている。個人的には、「文学派探偵小説」を侮っていたわけではないし、これを原作とした映画も観たいと思っていたし、「心理的サスペンス」で彩られていてもいいとは思っていた。しかし、それでもこの長編にはたいそう感心した。唐突かもしれないが、どこか横山秀夫の作品とも似通ったティストを感じさせると思ったのだ。絶対悪というものをもうけず、止むに止まれぬ犯罪というものを実に論理的に、またあらゆる可能性の中で絶体絶命的に描いている、というか。横山の作品(実は彼の小説を原作としたTVドラマしか観たことがないのだが)がピンと張りつめた緊張感で一気に観せられてしまうのと同じように、この長編もまた一日で読まされてしまった。そして、その緊張感の持続から、かなり疲れさせられたが、何とも言えない爽快感をも与えてくれた。三面鏡…それは、一人の姿を三枚の鏡に映し出す。つまり、一人の姿を三つにプリズムさせる。日本では、プリズムのことを三稜鏡ともいったという。この三つに分かれた姿のうち、果たして偽者は混じっていないだろうか?すべて同一人物と言えるのだろうか?あるいは、人間とは、もともとこういう多面体なのかもしれない。この物語の中で三面鏡は、シンボリックに登場はするが、ほんの一瞬に近い。それでも、タイトルの通りそれが登場するときの目をそむけたくなるような「恐怖」は忘れがたいのだ。木々高太郎作品の美点でもある魅力的な女性の造型がここでも冴えわたっている。品格とは、もともと女性の属性であるかのようだ。 | ||||
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木々高太郎の戦後の長編の初文庫化である。昭和23年7月刊行高志書房。今回、初復刻と書かれていないのは、昭和30年に春陽堂の探偵双書に集録されているからか。 本書は、埋もれた大傑作とは言えず、古書価もそれほど高価ではないが、今回きれいな文庫本で読めるのはとてもうれしい。 また、本書は木々高太郎唯一(たぶん)の映画化作品であるうえに、新聞(サン写真新聞・・現在の毎日新聞の夕刊)連載中に上原謙、木暮実千代主演で、大映映画化が決まり、5月に連載完結、6月に映画上映と特異な経過を辿っている。そのため、高志書房本の表紙には、実に見事な木暮美千代のカラー映像が載っていて、売り上げに貢献した(確認できる限りでは、3版までは出ている)と思われるが、残念ながら、今回の文庫化では、この画像は復刻されなかった。 作者のあとがきによれば、本書は映画化を前提として書かれたわけではなさそうだが、人物設定、内容、展開は、かなり映画的である。これはよい意味では、人物の個性が際立っていること、展開がダイナミックで、ビジュアルな印象が強いことであり、悪い意味では会話が多く、地の文の描写が少なく、ややスカスカの感じがすること、ある場所から別の場所に移動するのに途中省略され、一瞬にして移動したような感のすること、等々である。 著者は冒頭で「心理的多元描写」を取り入れたことを強調しており、このこと自体が映画的と言えなくもない。カバー裏に書かれているように、亡くなったはずの恋人と新しい妻は姉妹の関係にあり、外見は瓜二つという謎が読者に提示されるので、「心理的多元描写」で、この謎がどうやって書かれるのか・・読者の関心を最後まで引っ張っていくところは巧みである。終盤の派手な展開は・・・略。 映画はDVD化はされていないが、日本映画傑作全集の1編として、セルビデオ化されてる。以前は図書館でも見かけたが、最近はほとんど処分済みだろう。たまにヤフオク等で見かける。 | ||||
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