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ヒトラーの防具



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ヒトラーの防具の評価: 4.27/5点 レビュー 41件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.27pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全31件 21~31 2/2ページ
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No.11:
(5pt)

戦争の産み出す悲劇

日本人武官、香田を通して語られる、大戦中のドイツと日本、そしてなにより戦争に巻き込まれ無残に死んでいくベルリンの人々。
実に深い感動を持って読了した。いくど涙をこらえたことだろう。
決して情緒に走らない記述が、かえって心に訴えかけるものがあった。
香田は記録があり、こうして語られることになったが、記録に残らない多くの人々にも同じようにかけがえのない人生があり、それが戦争によって無残に奪われていく。それは、ベルリンだけでない。空襲のあった日本の都市、広島、長崎も、もちろん、中国も朝鮮半島も東南アジアも同じである。

前後に現在を描くことで、決してこの物語は過去のものではなく、現在につながることを示した書き方も素晴らしい。また、戦争が単に一部の指導者のみに責任を負わせるものなのか、という暗に示される帚木氏の主張にも首肯する。
また、ネオ・ナチの描写が象徴することは、先の戦争は侵略でなかったという政治家と通底する。

文句なし、素晴らしい作品である。
ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)より
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No.10:
(4pt)

等身大の人間としての良心

第2次大戦下のドイツを、ベルリンに駐在した日本人(とドイツ人のハーフ)の目を通して語る歴史小説。
油断するとノンフィクションなのではないかと間違えそうな詳細な史実の記述によって、フィクションの存在である「サムライ」的な主人公の生き様もまた事実であったのではないかと錯覚させる優れた作品だと思います。個人的に言えば少々勧善懲悪的傾向が強すぎる気がするのと、ラブストーリーの部分が若干安易に感じられはしました。しかしそれを補って余りあるのが、スーパーマンになりすぎずに等身大の人間としての良心を貫く主人公のあり方に対する共感。タイトルの由来が明かされる前後の葛藤と、そこから導かれる結論もかなり納得です。
余談ですが、元々は「総統の防具」というタイトルだったそうです。本書の趣旨から言えば、「ヒトラー」という現代の視点からの呼び方よりは、当時のドイツの視点に立った「総統」の方がふさわしいのではないでしょうか。
もちろん「ヒトラー」の方がよりキャッチーなので、多くの人にこの良書をお届けするという点では優れていることは疑いようがありませんけどね…。
ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)より
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No.9:
(4pt)

飽きさせない歴史フィクション

正直なところ、著者の文章力には疑問を感じた。これで小説家なのか・・・?
まぁ実はお医者さんだと言うことを知らずに読んだのだが、文章のまずさにも
かかわらず、実は一気に読んでしまった。
本書の主な登場人物は、第二次世界大戦下のドイツに生きる一般人だ。もちろん
主人公は軍人(日本人)だが、世界の大局に対してはまるで無力であることは、
大家さんや兄や、その他の主要人物と変わらない(アドルフ・ヒトラーなども登場
するので全員ではないが)。激動の時代の中で一市民として、より良く生きようと
模索し、苦しむ人々の姿が胸を打った。ドラマとして非常に一本筋の通った構成で、
これで読むのを止めることが出来なかったのだ。
ところで最後のほうに出てくるヴァン湖はドイツ語では「ヴァンゼー」、その
湖畔でナチス幹部がユダヤ人の「最終解決」を相談した場である、ということを
心得ておくと、結末が身にしみてくる。
前後の現代(東西ドイツ統一直後)編は蛇足なような気もするが、主人公の
行く末を描くためには不可欠だったのだろう。また、個人が歴史の中に埋もれて
いくさまは、当然とはいえ、切なくもあった。
ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)より
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No.8:
(5pt)

戦争のもたらす悲劇を切々と描いている

ドイツ人の父と日本人の母を持つ香田は、ヒトラーに剣道の防具を贈呈する
ためにドイツにやってきた。駐在武官補佐官としてドイツに残ることに
なった彼は、「戦争」の悲惨さを目の当たりにすることになる。ナチスの
ユダヤ人迫害、そして香田の兄が体験した病院での悲惨なできごと。狂気の
沙汰としか思えないこれらのことも、当時は平然と行われてきた。それらに
逆らう者のたどる運命は、悲劇のひと言に尽きる。香田の兄、香田の
アパートの大家であるルントシュテット夫妻、そして香田に深く関わる
ヒルデ。彼らの生きざまにも涙を誘われる。どんなときもどんな場合も、
決して戦争をしてはならない。戦争がもたらすのは、悲しみと絶望だけでは
ないのか!
二つの国を結ぶ存在になりたかったであろう香田。彼は何を思いどのように
生きたのか?孤独の中に身を置く彼の姿が見えるような気がして、読後も
切なさと悲しさが残った。
ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)より
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No.7:
(5pt)

日本の少年たち、これからどう生きるのだという時代に逆行。

何とも懐かしい我らの少年時代を思い出す。「日本人はどう生きるべきか」という、古典的命題に達する。
敗戦後の日本国、このような命題の少年向けの小説は舞い散っていた。少年たちは、我らの「アイデンティティ」を、探し求めていたのだ。この作品は、昔、懐かしき時代を彷彿させる。ドイツのヒットラーは悪、ナチスは悪、日本のやってきたことは全て悪。現在のシンプルな価値判断で我らは育たず。
錯綜した価値観の中で敗戦前、敗戦後の日本を捉えさせられ、これからの社会の価値観を問われ続けていたと言っても過言ではない。それに、ピッタリの作品がこれだ。日本とドイツ。その中で生きてるエリート軍人の姿は、我らを少年時代に一気に戻してくれる。そして、今を考えさせられるのだ。日本のこれからは...?ハハキギも同世代だったのだるう。
ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)より
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No.6:
(5pt)

奪われることの悲哀

このような作品こそもっと広く読まれるべきである。心の底からそう思います。戦争という個人の力を大きく超えた酷烈な状況の中で、それでも人としてあるべき生き方を忘れない主人公。極限状況下で初めて人は「なにが正しいのか」ということを深く知ることになるのかもしれません。作中に出てくる「真実は弱者の側にある」という言葉が忘れられません。
ただ、あまりに悲しい。読後には深い感動と共に胸を締め付けられるような悲しみの想いが残りました。
ストーリ構成の点もすばらしい。これほどの分量にもかかわらず読者を飽きさせないところに帚木氏の力量のすごさを感得できます。
単なる戦争文学を超えた大作。長く読み継がれるべき作品です。
ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)より
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No.5:
(5pt)

親愛なる…

本作品を読み終え、あと残す所数冊。の箒木作品となりました。正直な所、上巻とほぼ同時に読み始めた同著者作である『薔薇窓』に気をとられはしたものの、下巻に入り久々に胸ときめいてしまったのは語り手である“香田少尉(昇進してゆきます)”。著者の思惑は全く別な視点であると承知の上ですが、女性ならこの『ヒトラーの防具』という歴史小説、思想哲学とも言えるこの作品を支える語り手に、心を奪われるのではないでしょうか?!
ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)より
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No.4:
(5pt)

よく練られた快作、手塚治虫:アドルフに告ぐを思い出しました。

著者の作品は「閉鎖病棟」「三たびの海峡」「逃亡」などみな読み応えがあって好きですが、この「ヒトラーの防具」がいちばん好きです。ナチズムと日本の帝国主義が手を携えて破滅に向かって進むさまを日独ハーフの血が流れる在独の日本武官コウダ・ミツヒコの目から緊張感あふれるテンポで描いていきますが、戦時下の精神病院にスポットをあてる視点は医師でもある著者らしいと思いました。前半部分は、ナチ政権下急速に戦時色を強めるベルリンに、エリート軍人として赴任した主人公と、その兄で精神科医のマサヒコが、精神病院におけるナチの「ある政策」を、弟に明かし日本が協力関係を結ぼうとするナチスはどのような集団なのかを問いかけるダイアローグがひとつのクライマックスになっています。兄の強烈な人間愛、正義感に突き動かされ、弟ミツヒコは日本軍人として自分のとるべき道に想いを致すようになりこの辺りからまず巧みなストーリー展開に引き込まれますが、中盤以降はミツヒコにおこった「ある出来事」をきっかけに急激に物語が転回します。史実にも詳しい言及がありますが、フィクションとのミクスチュアが絶妙でだらだらした記述はなく、最後まで面白く読めました。テンポの良い歴史フィクションものと言えば、小説とコミックスで分野は異なりますが、この小説と同じようなプロットの作品で手塚治虫さんの「アドルフに告ぐ」を思い出しました。(こちらもお薦め「星5こ」です)
ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)より
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No.3:
(5pt)

一気に読めます

1930年代、ドイツにナチズムが吹荒れる前夜に、主人公の陸軍武官はベルリンに到着する。そして、ナチズムの狂気に翻弄される日本人・ベルリン市民・精神病患者・ユダヤ人等を目の当たりしていく。やがて主人公自身もその剣の腕前から、ヒトラーの親衛隊に直々に指名されるという数奇な運命を辿る。作品全体を通して緊張感があって、読んでいて全く飽きなかった。史実とフィクションを実にうまく絡めたすばらしい作品だと思います。戦争という極限状態の中でも、人としての心を失わない人達がこの作品では多く登場します。彼らの存在が本書を読み終わった後も、深く心に残っています。
ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈下〉 (新潮文庫)より
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No.2:
(5pt)

近代史お勉強しなかった方にはお薦め!

旧東ベルリンで発見された”ヒトラーへ日本人から贈られた険道用防具”(コレは事実)。同時に見つかった”ソレを送り届けた日本人武官の日記”(コレはフィクション)仕立ての小説。近代史って、歴史の授業の時間切れでほとんど教わった記憶無し。その後も自ら学ぼうとはしなかったので、この本は随分とありがたいものでした。歴史書の様に難しく無いし。お薦めしま~す。
ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)より
4101288097
No.1:
(5pt)

時代と組織と人間の狭間で

帚木氏の作品は、自分が属する組織や時代が狂っていく中で、冷静な判断力を保とうとしたり、あるいはそうであったがために苦しい立場に追い込まれていく人物を描き出したものが多い。そして、本作や『三たびの海峡』、『逃亡』といった第二次大戦を背景とした作品では、そうした主人公の苦悩や辛苦を通して、私達は戦争の別の一面を知ることになる。外務省を舞台にした本作は、日本が枢軸国の一員として官僚組織・政治機構ともども自ら進んで戦争に呑み込まれていく過程と、ヒトラー政権下のドイツの狂気が、赴任地で一省員としてだけでなく、個人としても関わろうとした青年の目を通して展開される。物語の中で事態が緊迫して行くに連れて本を閉じることが出来なくなり、上下巻を一気に読まされた。多くの!方に勧めたい本書ではあるが、一点だけ注意して欲しい-涙腺の緩い方は、通勤電車で下巻を読まないように。
ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ヒトラーの防具〈上〉 (新潮文庫)より
4101288097

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