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王国記
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王国記の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.41pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
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3編からなる連作です。第1話の「ゲルマニウムの夜」ですが、ドン・セルベラ院長への主人公の性的奉仕は某芸能事務所の長年にわたるカスリマ・トップの性的虐待を連想させ、ある意味予言的小説であると、感じました。白という犬は白人神父を象徴しているのかも知れません。また、以下の表現は深い示唆に富んでいます。→社会は規模を拡大された、しかも壊れかけた修道院のようなものにすぎないのだから。 アスピラントとのセックスの描写で、<女の積極的な行動と体勢は記述をはばかられる>とあり、あえて過激な性的描写を避けたのか不明ですが、その辺をきちんと書いて欲しかったので、少しだけ残念です。 第2話の「王国の犬」ですが、私事で恐縮ですが子供の頃、友人と二人で先輩を漁網にぐるぐる巻きにして泣かしたことがあり、やはり子供や少年にはそのような残虐性が潜んでいるのだと振り返り、結構この主人公に共感してしまいました。 第3話の「舞踏会の夜」ですが、舞踏会とはそう言う意味であったかと、読んでみて納得しました。主人公が三浦の傍若無人ぶりに堪忍袋の緒が切れて、男性性器を強く蹴るシーンは(小説の中では蹴る理由は違っていますが)読んでいてすっきりしました。主人公がこのままやられっぱなしなのは虚構の世界の小説とは言え、辛いものがあります。現代社会に置いても、いじめ問題は学校でも会社でもどこでもありうる話で、この小説もそれに対して深い示唆をあたえてくれます。 全体的な感想としては、作者はキリスト教の矛盾を鋭く指摘していて感心しました。例えば、カトリックが真の宗教ならば、天皇制と相容れることなどあり得ないとか、モスカ神父が「神をつくったのは人間だ」と主人公に反論するシーンなど。ただ、議論の中で説明になっているところが多く見られ、その辺は説明ではなく描写するなりなんなり、別の方法で表現して欲しかったと思います。何れにしても、とても素晴らしい作品で大変気に入っています。 | ||||
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今まで読んだ中で最も衝撃を受けた小説です。 花村萬月さんは相当頭が良かったとのことですが、読んで納得しました。表現力とか感性が普通ではありません。「感傷がたけなわだ。」とか大好きです。 主人公は殺人したことや女性を犯したことに自分なりに心を痛めたりするのですが、それでもどこか他人ごとで、飄々としています。頭が良すぎるとそうなっちゃうのかな。とても真似できないですが。 花村萬月さんにはこれからも多大に期待いたします。 | ||||
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普通に生きていたら想いもしない発想の内容が詰め込まれていた。怖かった.... ただ、巻末の小川国夫さんと花村萬月さんの対談は非常に興味深くて、何度も読んでしまった。 | ||||
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読んでいて、面白いとか、良いとか思うことは無い。人に勧めるものとも思わない。むしろ、否定的で批判的なことばかりが脳裏をよぎった。 だが、若い頃にあこがれた悪の世界観や大人びた言動、背伸びした考え方の共感が、最後まで読み切らせたと思う。 | ||||
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主人公の心の動きは面白いのだが表現が少々回りくどいのが難点。狭い世界の中での出来事だからしかたないか。 | ||||
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特に面白かったのは二話目の「舞踏会の夜」でした。主人公の朧の中学生の頃のエピソードです。 朧は賢い子で、なかなかチャーミングだしリーダーシップもある。そんな朧に興味を感じて絡んでくる上級生がいる。好きなら好きと言えばいいのに、上級生はうま自分の気持ちを表現できず、朧も素直に受け止められない。そのへんの機微が変で、描き方を淡く変えたらこりゃBLですよ、しかも凄くリアルな。いやあ書いて欲しいなあ、満月さんのリアルBL。女には書けない暴力衝動も含めたら、余人には到底描けないと思うよ。変な感想だけど、満月さんの凄さを感じました。マジで一個ぜひ書いて欲しいなあ。 | ||||
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基督教信者の私もこれには心動かされた。 黒いものを書くならこの書の様に反吐が出る面白さは必要だろう。 人間の性が生きている素晴らしい内容と文章がまた読みたいという気持ちにさせてくれた。 文学として希少な宝。 決して時間に劣化しない特殊な輝きを放つ核心がある。 | ||||
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花村氏は本作で芥川賞を受賞した。 十年以上前、芥川賞受賞時の文芸春秋で読んだ。同時受賞は藤沢周の『ブエノスアイレス午前零時』(なぜに『ブエノスアイレス摂氏零度』とそっくり・・・?)。 個人的には、花村氏の書く物は好きではないが、この作品は別格である。 主人公は犯罪者で教会に逃げ込み、そこでも涜神的な行為にふけるという悪漢小説仕立てなのだが、暴力描写やラストシーン近くの妊娠した豚を殺し豚の胎児を火の中に放り込む黙々と赤羽神父の描写などがあまりにも強烈である。それ以来の10年間にわたってこれほど強烈な印象を残す芥川賞受賞作は出ていない。 続編にも目を通そうとしたが、この第一話ほどの凄みは無いのでやめた。一応、この一作で完結している(芥川受賞時に、選考委員の石原慎太郎だったかが完結物として読んだのにシリーズ物かよ、と文句を言っていた)ので、シリーズ物はハードルが高いと思わず、まずはこの一巻から読んでみることをお薦めする。 | ||||
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相変わらず自分の世界を築いて行く花村萬月。だれにでも書けそうなマニュアル化された小説が多い中、彼の様な存在は貴重だと思う。暴力と性に溺れる朧が、誰よりも優しく見えるのは何故なのだろう。 | ||||
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花村氏の作品はまだ数作しか読んでいないが、文章の表現、大胆かつ緻密な構成には著者の非凡さを窺わせる。。 また、エロ小説とは違ったいわゆるグロさが随所にみられ、かつての西村寿行氏の作品を彷彿とさせるところである。 本書はシリーズもののようなので続編が読みたくなった。 | ||||
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『ゲルマニウムの夜―王国記〈1〉』です。続編も出ています。第1巻である本書は芥川賞受賞作『ゲルマニウムの夜』を含む連作短編3本です。 この作品には残虐な描写、暴力描写、性描写が書かれています。そういったものに嫌悪感を抱く方は絶対に読まない方がいいです。 まがりなりにも「文学」であるからにはそういう描写もそれなりに必要でしょう。 本作の場合はまるでわざとのように(わざとかもしれませんが)ナマグサくてエグいネタをモロ出ししています。 文章表現は緊迫感があって巧みです。その巧さを、敢えてエグくナマグサく描写するために更に努力しているようです。 問題点を言うとすれば、露悪的すぎるということと、……まぁそのくらいでしょうか。 | ||||
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冒涜、倫理、キリスト教、修道院。迫力もあり、哲学的。特に第2集のモスカ神父と主人公の会話は圧巻、盛り上がる。久しぶりに他の作品も読みたくなった作家の一人である。これからも楽しみだ。 | ||||
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以前から、気になっていた花村萬月に触れた第1作目がこの本でした。本の中に漂う雰囲気・著者の知識の広さにぐいぐいひきこまれました。かなり暴力的だけど、一本筋の通ったロウ君、魅力的だなぁと思いした。インパクト大の小説です。 | ||||
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初めて、花村萬月さんの小説を読んだのですが、正直侮っていました。プロフィールとペンネームから、世俗的な小説家かと思っていたのですが、この文章力!圧倒的な存在感!描写されているのは、倒錯的とも思える虐待や性行為が多く、好き嫌いが分かれるところだと思うのですが、描きたかったのは、もっと先にあるものだと伝わりました。存在というもの、神というもの、観念を突き破る衝動の不思議、どういうアプローチをして、悟っていくのかは人それぞれで、この主人公の青年は修道院という檻の中で、その中でしか通用しないルールの中で、自我に目覚めていく。頭脳が明晰すぎると、常識にくるまれている安心感はもてず、その外にあるものまで見えてしまう。登場人物がなぜかリアリティがあり、怖い。でも、抗えない力がある。 | ||||
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まるで御伽の中のようなアブノーマルな世界の中の、人間味あふれるノーマルな登場人物たちが魅力的でした。面白かったです。 | ||||
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衝動的残虐性と性の揺らぎの中、背徳をもって宗教と対峙する主人公。彼を導き毎夜媾合を重ね、火刑を夢想しながら身悶えるアスピラント。肉欲の誘いに抗えない修道女。そして主人公を慕う美少年…。これだけ非現実的な状況設定でありながら、「臭い」と「色」によって全編に強烈なリアリズムを漂わせている。性描写が緻密すぎたので星5つにはしなかったが、文庫になってから読んだことを後悔させる久々の作品だった。 | ||||
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花村満月さんのプロフィールと、面白い題名に魅かれてよみました。主人公は修道院で、悪徳の限りを行うのですが、神や人間性を深く描いていて、期待以上に面白かったです。同性愛も扱っており、苦手な人もいるかもしれませんが、それは些細なことかもしれません。おそらく、作者の広い体験に基づいて、できた作品なのでしょう。こういう小説は、花村さんだけが書けるのではないでしょうか?そういう意味でも、作者の個性が光る作品だと思います。一見グロテスクですが、それゆえに人間性をよく描いていると思います。私は星5つです。絶対お勧めします。花村さんの他の作品も読んでみたいと思いました。 | ||||
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文庫版に収録されている小川国男氏と萬月氏の対談にあるように、萬月氏は小説をあまり読まない小説家だと自認している。そこにどんな意味があるのか? 文学体験が乏しい人が文学性に乏しい小説を書くとは限らない。(昨今の小説家志望者はそんなタイプの人が多くなっているのは事実だ。)この本を貶す人はこの小説の世界観が薄っぺらく感じられるのだろう。過激な性描写についていけなかったようだ。 私としては萬月氏の豊穣なエロス経験が反映されている宗教小説なので、宗教に毒されたトラウマをもった御仁に読んで頂きたい小説であると思う。「ゲルマニウムの夜」はの花村萬月氏のライフワークとなる「王国記」シリーズの一篇である。果たして氏の集大成がなるものを完全否定し、徹底破壊する結末を迎えるのか。それとも否定とも肯定とも取れない立場で奇蹟を描いて見せるのか。 きっと世界に残る、嘗てない宗教小説になるだろうと予感する。そんな小説がわが国で登場したことが驚きである。基督者作家の懊悩に比べたらこの小説は薄っぺらいといえるか。果たしてどうだろう。 「ゲルマニウムの夜」は遠藤周作氏や三浦綾子氏、小川国男氏などを読む方の書棚にそっと入れてみたくなる時計仕掛けのオレンジだ。 | ||||
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